T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

酒井欣也監督「東京さのさ娘」

江利チエミの魅力でひっぱる映画。

 

f:id:kinakokan0620:20200111214423j:plain

 


【映画についての備忘録その77】

酒井欣也監督×江利チエミ主演「東京さのさ娘」(1962年)

 

浅草育ちの下町娘・杉本千枝子(江利チエミ)は、運送店をやっているやもめの父・文吉(有島一郎)とは別に、小さな不動産屋を開いている。そして兄の勘太郎渥美清)はやくざ気取りで家に寄りつかず、金に困っては時々千枝子を訪ねてくる。千枝子はなかなかのちゃっかりもので、大阪からやってきた未亡人・絹代(坪内美詠子)がおにぎり屋を開くための物件探しをしているというので、物件を世話したついでに、店内の電気工事や家具、引っ越しそばの手配まで請け負って、その仕事はそれぞれ親戚へ回し、そのディベートを受け取るといった具合。一生懸命にお金を稼いで貯めているのは、文吉の運送屋のために新しいトラックを買う資金を作りたいから。

そんな千枝子はガソリン・スタンドに働いている北川邦夫に(吉田輝雄)ほのかな思いを寄せている。ところが、芸者の花奴(牧紀子)も邦夫をお気に入りで邦夫をデートに誘ったりするので、千枝子も気が気でない。

そんなところへ、邦夫のペン・フレンドであるジミー・スコット(E・Hエリック)がアメリカからやって来た。ジミーは無銭旅行で邦夫を頼って日本へやってきたが、邦夫も安月給でガソリンスタンドの宿直室へ住んでいる身。困って千枝子を頼り、千枝子は自分の家の二階を下宿にかすことにした。邦夫と千枝子はジミーを連れて、文吉の店のトラックを従業員の正二の運転で走らせ、東京タワーや浅草を観光に出かける。邦夫は千枝子の下町っこらしい気風の良さと明るさにひかれていて、二人はジミーをほったらかしでデートを楽しんでいる。

一方、文吉はおにぎり屋の女主人絹代のところに通いつめている。二人はかつて恋仲だったが、文吉の父親が芸者との恋を許さず別れた過去がある。そうとは知らない千枝子は、ある日、一生懸命に貯めていたお金から30万円が知らないうちに引き出されていることに気づく。文吉が絹代のためにその金を使ったことを知り、文吉と喧嘩に。怒った千枝子は文吉とは口を利きたくないと、邦夫がジミーを日光観光に連れていくと知って、一緒に出掛けることに。その矢先、文吉の運転していたオート三輪がほかの車と衝突事故を起こす。相手の車は石油会社の重役の車で、その重役は邦夫の父親だった。千枝子は邦夫が大会社の重役の息子だと知って、邦夫との恋をあきらめようと思うのだが。。。

 

 

石井輝男吉田輝雄尽くしで年末年始を過ごしまして、年明けは1962年の松竹の吉田輝雄ヾ(o´∀`o)ノ「彫刻ですか?」といいたくなるような(*´ω`*)美術品のごときハンサムさ(というか美しさ!)のこの年。江利チエミさんとの共演作は1963年にかけて3作撮影されていて、その1作目。CSの衛星劇場で放送があると知って、初の衛星劇場加入でありますw

 

 

映画は浅草を主な舞台にした、ホームコメディーといった雰囲気の作品。脚本は「泣いて笑った花嫁」も書かれていた菅野昭彦さん、山根優一郎さんのお二人。「泣いて笑った花嫁」をかなり笑いながら見た身としては、コメディーの期待値高く鑑賞したわけなのですが、映画の魅力は、コメディーとしての面白さよりも江利チエミさんの存在感と、当時の東京タワーや浅草、日光など観光地の様子、それに車やファッションが鮮やかならカラーで収められていること、そして私的にはもちろんな輝雄さん(∀)にあった、という作品でした。

 

 

まずは何よりやはり江利チエミさん!私、江利チエミさんについては歌も映画も観たことはなく、知っていることと言えばとても活躍された歌手の方で美空ひばりさん、雪村いづみさんと三人娘と言われていたこと、高倉健さんの奥様だったこと、とそのくらい。そんな人間でも、この一作で江利チエミさんのキュートさに惹きつけられ、シーンに登場すると場が華やかになるのを感じます。千枝子は明るくてサバサバしていて、機転がきいて、というキャラクターですが、まさにそのまんまの人なのかな?というはまり具合。

劇中ではふんだんに歌唱シーンもあり(インスタント芸者です、と言って無理やり花奴のお座敷にきて場をさらって歌っちゃう展開も許せる(笑))、お兄さん役の渥美清さんとの掛け合いは丁々発止テンポがよくて、歌の才能とコメディーの才能と、リアルタイムを知らない人間にも江利チエミさんのスター性を十分に感じることができます。

 映画の出来映えそのものは、正直に言ってそれなりに面白いのだけれど、「泣いて笑った花嫁」に比べると十分にその面白さが引き出されていないような、と感じましたが(要因としては千枝子のライバル役が牧紀子さんでチエミさんの存在感に対してバランスが取れていないのと、あまりコメディーは得意ではなさそうなハマってなさや、笑いをとりにくるシーン―転けたりするような場面とか―が演出のせいなのか上手く機能していなかったり、全体的にあまりリズムが良くないシーンが多いと感じたため)、そういうちょっと足りない部分も、江利チエミさんが全部飲み込んじゃって、映画を最後まで引っ張ってくれます。

 

 

そして、できて間もなくの東京タワーからの眺めや(ハンサムタワーが東京タワーにいるよ!)、隅田川吾妻橋あたり?の様子(ボートに邦夫と花奴が乗ってるんだけど、隅田川がすでに綺麗ではなさそうで―花奴は“ドブくさい”と言いますw―これもなんか経済成長していく途中という感じ!?)といった変わっていく東京の姿と、今もほぼ変わらない、杉並木や日光東照宮華厳の滝と言った日光の観光地を観られるのも楽しいです。それから、この時代ならではのポップな雰囲気ー浅草松屋の上の遊園地のスカイクルーザー(めっちゃ乗ってみたいわ、これ!)とか、日光観光に出かける邦夫たちが借りた車の鮮やかな青、追いかける花奴の車のかわいらしいオレンジ(トヨタ?)、千枝子が着るワンピース、邦夫がつとめるガソリンスタンド(90オクタンって表記でその給油機のシンプルな形もかわいいのだ!この画像は一番下に)まで―も素敵。当時を知らない者としては、なんか全部可愛くて魅力的にみえるのです٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

f:id:kinakokan0620:20200111214128j:plain

この車の色、かわいすぎる!後ろには花奴が運転するオレンジの車。

 

で、可愛いいといったら、こちらヾ(o´∀`o)ノ

f:id:kinakokan0620:20200110200505j:plain

ガソリンスタンドにいたら無駄に給油しにいくってばw

はい、この笑顔!基本的にクールなハンサムというお顔立ちですが、笑うと無邪気な表情になるのが良いのよ(*´ω`*)

江利チエミさんの存在感が映画の足りない部分を飲み込んで引っ張れば、この笑顔は、この映画の設定の、違和感がある部分を飛び越えてwストーリーをすすめます。

邦夫はガソリンスタンドの店員さんなのにアメリカにペンフレンドがいて時々お育ち良さそうな言葉遣いをします。それから、千枝子の目の前で、花奴から野球のチケットが手に入ったからとデートに誘われて、千枝子のことが気になってるはずなのに、なんの屈託もなく笑顔でチケットを受け取ってしまったり(デートに誘われてるって気づいてなさそうなのw)。あとで考えると「千枝子ももっと早く邦夫の育ちの良さに気づかない?」とか、「なんで目の前でニコニコとデートの約束しちゃえるのさw」みたいな、ツッコミどころがあるんだけど。+゚(*ノ∀`)、初登場シーンからこの笑顔で、これがたびたび出てくるので、下町にいても違和感のない人なつっこい邦夫、というキャラクターが立って、なぜかひっかからずに観れてしまうwまさに吉田輝雄の魅力であります(〃'▽'〃)

f:id:kinakokan0620:20200111214249j:plain

この笑顔であります(・∀・)

 

べた褒めですがwこの笑顔も江利チエミさんによるところが大きいのかな、と思ったり(・∀・)なぜかって、千枝子と一緒のシーンとそれ以外のシーンの演技の自然さが違うんだわw

f:id:kinakokan0620:20200111214714j:plain

チエミさんと二人のシーン。この表情の自然体なことヾ(*´∀`*)ノ

本作で輝雄さんとからむシーンががあるのは江利チエミさん、牧紀子さん、E・H・エリックさん、渥美清さん(柳家金語楼さんや有島一郎さんは同じシーンにいるけど台詞はなかったり)なんですが、千枝子には笑いかけるシーンも諭すシーンも、怒るシーンも自然なのに、チエミさんがいない場面での他の役者さんとのシーンはなんかかたい、かたいよ!ぎこちないぞ゚∀゚)花奴と喧嘩してるシーンとか、千枝子を怒ってるシーンと比べて、なんか仕上がりのレベルが全然違うんだ!が、その差がまたなんだかかわいかったりして、観ながら「頑張って!」と応援したくなって、これはこれでまた良かったりするのですが(笑)これは、本作から60年近くを経て、母性本能くすぐられてるのか(∀)(今作を観ると、この後に撮った、「泣いて笑った花嫁」はかなり自然になってきているなぁと感じ、そしてこれより前に「今年の恋」の正さんの演技を引き出した木下恵介監督ってやっぱりすごいな、と思ったりw)。

 

 

と、江利チエミさんとのシーンが自然なのは、チエミさんのセンスに加え、チエミさんからご指名を受けての共演だった、というところも影響してるのかな!?と思ったり。

 

kinakossu.hateblo.jp

 

以前、松竹大谷図書館でこの映画のスクラップをワクワクしながら読んだのですが(・∀・)その際に、チエミさんが松竹で映画を撮る契約をするにあたって、相手役に輝雄さんを指名した、という記事があったんですよね。チエミさん曰く、各映画会社で契約するときに一番ハンサムな人を相手に指名してる(だから東映健さん、日活で石原裕次郎さん、ということらしい)とのことで( ゚∀゚)で、松竹では吉田輝雄が相手(うん、そうだね、何なら各社総合して一番ハンサムだね( ゚∀゚))。先日のトークイベントでも撮影後にチエミさんと一緒に銀座に行ったときのお話をされていたりして、仲の良さというか、フィーリングの合い具合というか、がそのまま映画に(というか演技に!?)出てきてるのかな、なんて感じたり(*´▽`*)

 


 と、いうわけで表題。映画そのものは江利チエミさんの魅力でもって、作品が仕上がっている、という感じ。輝雄さんと江利チエミさんとの共演作はあとは1963年の「咲子さんちょっと」と「スター誕生」の2本。この二人の共演作が観られる時を楽しみにしつつ、他の江利チエミさんの映画も観てみたいなと思った、鑑賞後でありました。

 

 

【感想その他あれこれ】

上に書いてないけど思ったこと。まとめられなかったのでw書き足し。

 ・有島一郎さんと渥美清さんの掛け合い面白い。さすが喜劇役者!

 ・菅原文太さんも出てるんですけど、文吉の運送屋の従業員三人のうちの一人、というポジション。一応、千枝子の見合い相手になる!?とかいう三人の中ではハンサムであることが売りの役でしたが、ハンサムタワーズで新東宝で主演してた俳優さんの扱いとしてはかなりひどいのでは(^-^;)

・チエミさんが芸者に扮して歌うシーン、音声は後からかぶせてるんだろうな、というのは分かるんですが、撮影時も実際に歌ってたのかな。輝雄さんもE・H・エリックさんも、ほんとに聴き惚れてる感。

・輝雄さん、めちゃめちゃ細い!!上でも書いた松竹大谷図書館で読んだスクラップ記事にも、チエミさんに、その細さをからかわれてるようなのがありましたがwほんとに細くて。ガソリンスタンドの制服のズボンとかなんか大きそうに見えます(笑)

f:id:kinakokan0620:20200111215127j:plain

半袖だと細さがよく分かる。あわせて作ってるんだろうに制服の身幅にけっこう余裕ありげ。