T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

梅津明治郎監督「霧のバラード」

食うには主役が弱すぎる…!?

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【映画についての備忘録その98】

梅津明治郎監督×栗塚旭主演「霧のバラード」(1969年)

 

 乾(栗塚旭)は、なじみのスナックのママ・文江(朝丘雪路)から、坂口(吉田輝雄)という男の密航の手助を頼まれる。坂口は玄田組のヤクザだったが、ブラジルに住んでいる母が危篤だと聞いて足を洗ってブラジルに渡るつもりでいた。しかし、組を抜けると代貸に伝えたその日、背後から襲われて乱闘になって組員を一人殺害してしまい、横浜へと恋人とともに逃げてきていたのだ。乾はその恋人が、かつて自分を裏切った女・加代(佐藤友美)だとわかり、手助けを断るのだった。

 だが、翌日訪ねて来た坂口から密航の目的を聞いて、その依頼を引受けた。船は翌朝出帆することになっていた。しかし密航計画は、横浜のヤクザ・黒川興業に知られる。そして、そこには、復讐のためにつけ狙っている玄田組がいた。加代は坂口をおびき寄せるため、黒川興業に誘拐される。

 乾は、坂口が玄田組に襲撃されると、彼を顔なじみの小山外科院長に預けた。そして、黒川興業の身内だが自分を慕う三郎の協力を得て、加代を救いだした。その夜、三年ぶりに会話を交した乾は、加代が乾を裏切った理由を知る。しかし、乾は坂口が加代を愛していること、そして、加代が坂口から離れられないことを感じる。

 いよいよ、密航を決行するという晩、小山の病院から出た乾や坂口たちに気づき、港で玄田組がとうとう坂口を追い詰める…。

 

 

こちらも、『続・東京流れ者』と同様、随分前に鑑賞済みだったのですが(すでに感想をつけている「犯罪のメロディ」と同じころ観ております)、感想を書いてていなかった作品。これで、鑑賞済みの輝雄さんの映画、すべて備忘録を書くことになります( ̄∇ ̄)

タイトルはまだ”中世的な魅力”といった感じの、若き美川憲一さんの歌う曲からとられていて、”歌謡映画”であります。で、映画は美川さんの歌う姿から始まります(美川さんは映画のストーリーの中でもしっかり活躍します!)。

他の方のブログでこの作品の解説をされているものを拝見したら、石原裕次郎さんの『夜霧よ今夜も有難う』のようなお話だとか。そちらは観たことがないのですが(石原裕次郎の映画をまだ見たことがないという!)、裕次郎さん⇒栗塚さん、二谷英明さん⇒輝雄さん、浅丘ルリ子さん⇒佐藤友美さん、ということのよう。

 

映画そのもののストーリーは可もなく不可もなく、という感じでしょうか。アクションも大人の恋も、歌謡映画なので歌も!と、色々と詰め込んであります。それ故か、梅津明治郎監督、『純情二重奏』の時に感じたのと同様、色々詰め込んだものの加減を整理しきれていない感じで、揺れ動く女性の気持ちと、裏の世界を知っている男二人の、終盤にさしかかってうまれる信頼関係のようなものと、そのどれもが踏み込めてなくて中途半端な感じ。こちらが今ひとつ乗り切れないまま映画が展開します。

 

 

かつて坂口が刑務所に入っていた時期に乾と加代は出会い、二人で駆け落ちを決意します。しかし、いよいよという日、刑務所に入っていた坂口が出所してきて、加代は待ちあわせに行けなくなり、そのまま別れたという過去がありました。そして、坂口の密航を頼むため、二人は再会します。一方で、加代は出所した坂口をほおってはおけず、そして今、危篤の母のためとはいえ、殺人を犯して犯罪者になっている坂口と一緒に密航しようとしています。二人で新しい生活をしようと決めた男と、その手を引き止めてしまった男、という加代の人生の中で大きな存在である二人の男性。・・・なんだけど、再会したところから思いっきり気持ちが乾のほうにうつっていて、加代は断れなくて流れで坂口についてきているような演出というか構成というか。。。彼女からは、揺れ動く心情を感じ取ることができません。 

 

そして、男二人の信頼関係のほうも、加代を巡っての互いのわだかまりからの変化がいまひとつ見えてきません。二人とも加代に対して未練というか執着があるのを感じられるセリフが多いのですが、そこを越える信頼関係が築かれるような変化を感じとれるシーンがない。。。のに、最後、坂口は危険を顧みず乾を守る行動をとるので、それが唐突に見えてしまう(^_^;)

 

ただし(!?)、今作、アクションが意外と面白かったのです!冒頭、中盤、終盤とアクションシーンが挟まれるのですが、スピーディーで、俯瞰で見せたりとか、なかなかの面白さ!梅津監督、『純情二重奏』とか、今作のような映画よりも、アクション満載の映画のほうが向いているんじゃないかと思ったり(2作しか見てないのにこんなこというのもなんですがw)。

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冒頭、坂口が襲われるシーン。アクション、キレッキレです。

 

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このシーンもスピーディーな画面展開で面白かったです。

 

そして、歌謡映画なので、途中、美川さん以外にも西郷輝彦さんとかが、キャバレー(?)で歌うシーンがあって(そこに加代が拉致されていたからなんですけど)、とか、レコード会社も、がっつり協力。

 

さて、本編とまったく関係なさそうな見出しについて(笑)

栗塚旭さん、こうして古い邦画を見るようになる前から、テレビドラマで土方歳三役を演じてとても人気があった、ということは知っていて、当時のお写真をテレビで見たときは「かっこいいなぁ!」と思った方。…が!本作は現代劇。時代劇で活躍している俳優さんが現代劇に出てくると、「あれ?」ってなるのは思いあたる方が多いわけですが(笑)栗塚さんもそんな感じ。低音のイケボなのですが、洋服を着た立ち姿のアンバランスさが…。しかも、横にいるのが吉田輝雄なもんですから、余計に際立つ(^-^;)

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で、テレビが主戦場の方が映画に出てくるとこういうことなのかな?という感じで、例えば『伊勢佐木町ブルース』とか『網走番外地』で、主役をくっちゃう魅力を発揮する輝雄さんも、肝心の主役が弱いとその魅力も十分に発揮できないのかな!?という雰囲気(主役をたてるために控えめにしてるのかな、と勝手に想像しています。いつものかっこよさと存在感でいくと完全に栗塚さんより目立ってしまいますからね😏)。この作品の2カ月後に『やくざ刑罰史 私刑』が公開されているんですが、あの作品でみせてくれる存在感とかっこよさが、この作品では十分に伝わらない(´・ω・`)

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佐藤友美さんとの2ショットもこの格好良さなので輝雄さんのほうが似合っているのですw

 

というわけで、助演での輝雄さんの魅力を発揮するにはやはり、主役がしっかり立ってないとな!と思ったりしたのでした。