T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

三輪彰/石川義寛/石井輝男監督「恋愛ズバリ講座」

新生・新東宝のキュートな一作

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【映画についての備忘録その100】

三輪彰/石川義寛/石井輝男監督×天知茂菅原文太・沖竜次主演「恋愛ズバリ講座」(1961年)

 

 

第一話:吝嗇(けちんぼ) 

リッチマン会社の社長は女遊びもお手の物、なドンファンだがケチな男(天知茂)。ある日、一人の美しい女社長(小畠絹子)を見染めて浮気の虫が動き出した。ところが、彼女も社長におとらぬケチンボだった。ケチな二人は互いに金を使わずに相手の会社を手に入れようとするのだが…。

第二話:弱気(よわき)

ある田舎に原子力発電所が建設されることになった。バスから降りてきたスーツを着た男性に、下見の役人がきた!と大歓迎。村長や村の有力者は自分の土地に立ててもらおうというので、娘や二号を宴会にかり出して大騒ぎである。だが、実は彼(菅原文太)は村長の娘(池内淳子)の恋人で、自身の弱気で逃げられた娘を追って、この田舎にきたのだった。勘違いされて言い出せないまま、ついに本物の役人がやってきて…

第三話:好色(こうしょく)

家族や友人が大勢集まった、幸せそうな結婚式。そのまま二人は車で新婚旅行へ。しかし、新郎(沖竜二)の運転する車は事故を起こし、新婦は帰らぬ人になってしまう。実は新郎は女と組んで、遺産相続などで大金を手にした女性を狙った結婚詐欺師だったのだ。次に狙ったのは、東北訛りのある幼稚園の先生(三原葉子)。純朴な彼女には素行の悪い弟がいる。詐欺師はいつしか彼女に本気になり…。

 

 

今回も、前回に引き続きこちらの放送で観ることができた作品! 

上坂すみれの新東宝シアター ―天知茂、痺れるほどキザで、ニヒルで―|日本映画・邦画を見るなら日本映画専門チャンネル

 

実は、これで私、吉田輝雄×石井輝男作品、全制覇でして!その記念として(!?)こちらを【備忘録 その100】として書きます!

本作、大蔵貢社長が退陣となって、初めて制作された作品で、スタッフやキャストもノーギャラだったとか。他の作品なら主演してるような新東宝のスターがカメオ出演してたりして、それを発見するのも楽しかったり。そんなわけで、この作品、いつものいかがわしいwタイトルも、セクシーな踊り子も出てこない(葉子姉様のダンスはあったけどw)。タイトル通りの映画に仕上がっております。監督も出演者も異なる、全三話のオムニバス形式のラブコメディ(で、いいのか?!)。

 

 

第一話はなんとも実験的!?個性的!?な作品。天知さんも小畠さんもドケチな社長。どちらも自分が損をせずに得できるよう、それぞれの”けちんぼ哲学”で行動します。

個性的、実験的、と思わせるのは特徴的な演出のせいで、天知社長と小畠社長は早口で喋るシーンが多く、また、この二人をはじめ、社員や行きつけのバーのホステス、秘書まで、登場人物の殆どが目をあわせずに会話し、淡々と感情を廃したようなしゃべり方をします。天知社長の遊び相手で、バーのホステスの女の子・星輝美さんが社長に「お金を使ってるんじゃなくて使われてるのよ!」と言うのですが、それが象徴的で、登場人物、ほぼ全ての人が、このしゃべり方でお金に使われている“ロボット”のごとし。シニカルな笑いがみちています。最後はまさかの結末で、その結末の主犯二人が、それまでの演出をひっくり返すようなイキイキとした姿で、この皮肉がよけいに効きます。

けちんぼのエピソードもモリモリで、小畠社長を待っている二時間ほど、駐車料金と会社までのガソリン代でどっちがお得か、洗車したばかりの天知社長の車に乗りこむには土足厳禁、相手をたらしこもうというのにプレゼントはバーゲンセールのネクタイかイミテーションの指輪か、なんて徹底してます。あまりにけちんぼなので、総務部長やゴルフのインストラクターからは、”けちんぼ”という心の声が漏れちゃう次第w

 

 

第二話は、弱気なサラリーマン(菅原文太)が主役ですが、村長(林寛)、村会議員(沢井三郎)、助役(石川冷)がそれを上まわる大活躍で、映画をさらって行きますw

自分の持つ土地に原発をたててもらおうと、サラリーマンを役人と勘違いして至れり尽くせりの接待をする3人。助役は袖の下をこっそり渡したり、自分のお気に入りの芸者や後家の恋人を寝床に入り込ませたり。村長は自宅に泊めて(これも、3人のうちの誰の家に泊めるか、大根をそれぞれで引っこ抜いて、一番大きい人の家に泊める、というw)、娘をこの役人の嫁にしようと考えを巡らせたり。

全部勘違いなのに、なかなか言い出せないまま、逃げ回る文太さん(東映の姿を知らないので、この役がとてもよく似合っているように思えますw)と、しっかり者で弱気の文太さんに喝を入れる池内さん(これはもう、イメージそのまま!)の組み合わせもキュート。

最後は二人で駆け落ちしよう!とバスに飛び乗りますが、残してきた父親(村長)が気になってやはりバスを降りようか、とお互いに不安になったり・・・。最後の決断は遠くに見えるバス停が答えを教えてくれる演出も素敵です。

そうそう、第二話は台詞の少ないところにたくさんの主演級の俳優さんたちが登場していて、それを見つけるのも楽しかったです!役人を出迎えるための楽団(消防団)に宇津井健さん、鳴門洋二さん、高宮敬二さんがいて、二人が乗り込むバスのバスガイドには大空真弓さん。豪華です!

 

 

第三話は、石井輝男監督。そして、石井作品の助演で存在感を発揮していた沖竜二さんがついに(!?)主演。で、沖さんの相手役が三原葉子さん。お二人とも、石井作品の常連らしく、存分にその存在感がいかされております。

沖さんは男前というわけではないのに、色悪の詐欺師がよく似合っています。葉子先生のつとめる幼稚園に子供たちのクリスマスプレゼントを届けたり、銀座で葉子先生とデートして、ダンスを優しくリードしたり、好青年の雰囲気を出しながら、隠しきれない悪っぽさ。だから、逆に本気で葉子先生に惚れちゃう展開に意外性を感じてビックリ。

そして、葉子先生も東北なまりの純朴な女性の雰囲気がよくお似合い(もともと岩手県のご出身だそうで、東北なまりが上手なのも最もなわけですが)。今回の三原葉子さん、最初は長いスカート丈のスーツに黒縁めがねの女性という地味な服装で完全防備。それが、色悪な沖さんに誘われて、少しづつ(いつものような!?)小悪魔な雰囲気に変化していくのですが・・・そんなところで素行の悪い弟(浅見比呂志)が登場して、弟に振り回されるかわいそうな姉という一面に憐れみが加わって・・・なるほど、詐欺師は詐欺じゃなくて本気で葉子先生と結婚しよう、と思うわけです。守ってあげよう!みたいな。(しかも実はセクシーだしw)

が、実は葉子先生は・・・というさらに意外な展開が待ち受けます。次々と展開するテンポの良さはさすがの石井監督で、短い時間に、いつも以上に無駄なく、ぎっしりストーリーのつまった、仕上がり。 そうそう、浅見さんがさりげに劇中で「悪魔のキッス」(『女体渦巻島』でロカビリー歌手として歌うあれ!)を歌っているのも楽しいです!

 

三話いずれも、新東宝のおなじみの俳優さんたちがイキイキと楽しそうな作品で、ストーリーもさることながら、”新東宝”が気になる人には楽しい作品。「本当はこういうのやりたかったんだよ!ずっと!」って声が聞こえてきそうな「恋愛ズバリ講座」なのでしたw

 

最後に・・・。吉田輝雄×石井輝男作品とか最初に書いてるのに、吉田輝雄はどこで絡むんだ?と思われた皆さん!(誰w)吉田輝雄は銀座でデートしていた葉子先生が酔っ払って絡んじゃう、吉田輝雄役で登場します!!

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「あなたこないだ新人賞とった。。。吉田輝雄でしょ!」

最初は迷惑そうにしながら、最後は皆でクリスマスパーティで楽しく踊る、かわいい吉田輝雄なのでありました♪