T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「網走番外地 決斗零下30度」

三者三様のいい男と壮大な雪原のアクション。サービス満点の”娯楽映画”

 

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【映画についての備忘録その86】

石井輝男監督×高倉健主演「網走番外地 ~決斗零下30度」(1967年)

 

一面の雪の中を走る汽車の中、橘真一(高倉健)は、自身のこれまでの出来事を思い返していた。そんな時、小さな女の子が歌う童謡が聞こえてくる。その歌にひかれるように少女のもとへ向かうと、女の子は一人ぼっちで席に座っていた。女の子の名前はチエといい、この子の胸にはノサップのサガレン炭鉱に父親がいるので、送り届けてほしい、という札がかかっていた。

行く当てのない橘はチエを送り届けてやろうと決めたが、そこへ一人の女(国景子)が現れる。腕と度胸と正義の心があれば務まる仕事を請け負う男を探しているという。その仕事に乗り気になった橘だったが、トランプを華麗に操る男(吉田輝雄)が突然現れ、仕事をかっさらっていってしまう。

ノサップ駅の万屋で馬ソリをかり、炭鉱までチエを送り届けた橘。チエの父親は網走刑務所で共に過ごした大槻(田中邦衛)だった。久しぶりの親子の再開に炭鉱の休みを取って二人で過ごせという橘。サガレン炭鉱の支配人・関野(安部徹)は元のオーナーの西条に高利で貸し付け、その借金のかたに炭鉱を乗っ取った男で、その関野とつるんでいる坑夫長の蝮(田崎潤)は、強引に大槻を鉱山へ引き戻そうとする。その理不尽な態度に怒った橘は、部外者の入鉱を頑なに拒否する蝮を叩きのめして、一日だけ大槻の代わりに鉱山へ入る許可を得る。しかし、蝮はその間に、腹いせに橘がのってきた馬橇の馬を殴り殺してしまう。死んだ馬をソリに載せ、雪の中を万屋へと戻っていく橘。途中、力尽きて立ち止まっているところを、朱美(三原葉子)という女に声をかけられる。彼女はクラブ・コタンのホステスでオーナーの白木(丹波哲郎)の女だった。コタンで酒を飲んでいると蝮たちがやってきて傍若無人の振る舞いを始める。そこへ白木が現れ、蝮たちをいさめるのだった。

 

 

 

コロナ禍で非日常のような日常が続いて、なかなか更新の時間も余裕もできず・・・。でも、少しづついつもの感じが戻ってきているので、更新したい気持ちも出てきて、そのモチベーションの最後の一押しはやっぱり輝雄さんの作品の感想を書こう!というところ(・∀・)

更新してない間も、一日の終わりにハンサムさんを観て楽しむという日常?日課?は維持していて「決着(おとしまえ)」の鉄次さんや「古都」の竜助さん等々、兎に角色々と観ていたわけなのですが(・∀・)この間に東映チャンネルで4月に「網走番外地 決斗零下 30度」が放送されて久しぶりに全編鑑賞しました(輝雄さんの登場シーンだけ観る、とかは何回もやってましたがw)。石井監督の網走番外地シリーズの輝雄さんご出演作で、ここで唯一感想を書いていなかったこともあり、これを再開の最初にしよう!ということで。

 

本作、最初に観たのは吉田輝雄ファンになったばかりの頃。石井輝男監督作品も確か、「網走番外地 南国の対決」「網走番外地  大雪原の対決」を観ただけだったと思います(なんせ輝雄さんのファンになるまで「網走番外地」すら健さんの代表作ってことしか知りませんでしたから)。その時と、時間をおいて他の石井作品もたくさん観たあとの鑑賞とで受け止め方が違った本作。初鑑賞の時はのっけから困惑してしまってなんかよく分からないうちに終わったんですがw石井作品の経験値を積んで(笑)あらためて観ると、かっこいい男達とかっこいいアクションと、そして変化球の笑えるシーンがちりばめられていて、エンタテインメント精神満載の映画だと分かりました。

 

さて、何で最初は困惑したかと言うと、映画の最初にサービス精神溢れるシーンが続くんですが、初心者には理解が追いつかなかったから(^-^;

橘の回想シーンから始まる今作。ここは「望郷編」の杉浦直樹さんとの最後のシーンとか、名シーンのダイジェスト。これが、初鑑賞の際は順番通りに観ていなかった私には「シリーズの過去作の場面なんだなぁ」と予測はつくものの、そこにいたる状況が分からず、まず最初の躓き(笑)(まぁ、順番通りに観てなかった私が悪かったw)でも、全作制覇してあらためて見直すと、リアルタイムで熱くこのシリーズをみてた観客に対しては最高のサービスだったのだろうな、と感じます。

 

そして、そこを乗り越え(!?)、チエと橘のほんわかした会話に微笑ましく思っていると、いきなりトランプを投げてくるハンサムが登場!

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どんなキザな役も格好良くこなしてしまう吉田輝雄ですが、トランプだけじゃなくて、銀色の小さなトレーから火を出すマジックまで披露してしまうのでwこれはどうにも突飛過ぎて(観ていてちょっとこちらが恥ずかしくなります)、なんなんだこれは。+゚(*ノ∀`)とかなったりw

でも、このマジックは引田天功さんがされているそうで、華麗な手さばき(輝雄さんご本人も指が長くて美しいのでー「愛染かつら」で手を重ねるシーンや、「続・決着」の煙草を咥えてるシーンとかめちゃステキ♪ーどっちの手なのかな?って感じですw)。こんなクセのある登場シーンも、きっちり一流のマジシャンが担当していて、これもやっぱり、石井監督流の、観客を楽しませようというサービス精神なんだなぁ、と思ったり(で、見返すとこの訳分からん具合が面白いw)。

 

そして、極めつけ(!?)はこの後に出てくる由利徹さんと吉野寿雄さん(吉野さんはほんとにゲイバーのママさんだったんですね。これ書くのに調べて知りました)。過去のシリーズでも登場しているお二人ですが初めて見た時はどう見ても無理のある、学生服姿の由利さんと妊婦姿の吉野さんと当たり前に絡む健さんに困惑しまくりw

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これもあらためて観ると、無理矢理でもこの二人を出して笑いをとってきてるんだな、と感じて、まさにエンタテイメント(困惑から放たれてみると面白いですしw)。シリーズもののリアルタイムの観客としては、一番最初のハードな橘の回想シーンからお約束のこの変化球でめちゃめちゃ楽しかったのではないかと思ったり(この二人、この後出てこないんですけど、鬼寅さんが待ってるよ、っていう大事なことを橘に言い残しますw)!

 

で、最初にサービスシーン(?)を詰め込んだあとは、順調にストーリーが進むかと思ったら、中盤で突如林の中から鬼虎さんが現れます。多分、シリーズ中最高に唐突すぎる登場(笑)もう、最初に観たときはこんな(・д・)なってましたwでも、これもシリーズ全部見終わってから観ると、シリーズ作品のお約束を外さない、ファンに取っては大事なシーンなんだよなぁwと思うわけでして!

 

というわけで、最初に観たときは上に書いたような場面のおかげで困惑したまま終わったわけですwでも、見直して観ると、これが面白く思え、さらにはカッコいい三人の男とアクションシーンで、娯楽映画らしい楽しみがいっぱいなことに気付きます(・∀・)

 

カッコいい三人の男ー健さん演じる橘、丹波さん演じる白木、そして輝雄さん演じる吉岡(なお、劇中で名前は出ませんw)。それぞれの俳優の魅力をいかした、タイプの異なるカッコよさ。

 

橘はいつも通り、熱く、優しく。

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特に今回は網走刑務所の仲間だった大槻と娘のチエのためにと奔走するシーンが多くて、優しさと熱さあふれる男気をたっぷりみせてくれます。

チエと一緒の場面も多く、大人びたことを言うチエに翻弄されちゃうかわいいところも見れて、橘真一というキャラクターの魅力を存分に楽しむことができます(・∀・)

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白木は、憂いを含んだ渋さ。

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影を感じさせるのは関野達に協力しているが故(何で協力することになったかは描かれていないのはさておき)。朱美との関係は惰性のようでいて互いに愛しあっているようであり、突然現れた妹(大原麗子)に対しては、恥ずかしくない兄であろうとします。関野に騙されて炭鉱を爆破し、坑内に人が残されていた事を知った白木が、「人間はな、誰でも自分のやったことの勘定を払わなくちゃいけないんだ」と関野を単身追いかけていく姿に、影を背負って生きてきた白木の格好良さが詰まっています。石井監督のギャング映画でも見た、善でも悪でもない、両方を含んだ複雑さを感じさせる丹波さん。

 

 

そして、女性を守る騎士のような吉岡。

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そもそも汽車の中で橘からかっさらったお仕事の、その話を持ちかけた女性は炭鉱の元の支配人・西条さんの娘さん。で、彼女は暴力も厭わないあくどい関野から権利書を取り返すためには弁護士を立ててのまともな手続きではどうしようもないな、ということで、“まともでない”男に仕事を頼もうと考えます。と、いうことはアウトローなわけです。でも、女性の傍(それも炭鉱の支配人の娘、というお嬢様)に立っていて違和感のない佇まいを兼ね備えていて、まさに輝雄さんのスマートさがあってこそ、の役。

炭鉱に乗り込んで関野から権利書を取り返した後、馬橇で街まで帰ろうとする途中、(万屋から借りて、手綱を握るのは万屋の主人(沢彰兼)の娘さん)蝮たちに追い立てられ、多勢(蝮とその手下)に無勢(吉岡+女性二人)。もう、どうしようもないんだけど、そんな中でも、「女の子に手を出すんじゃねぇ。話はそれからだ」と啖呵を切る。まさに騎士(王子様でも可)。

 

そして、アクション。「網走番外地 大雪原の対決」でも、雪の中で展開される西部劇のようなアクションが面白かったのですが、「決斗零下30度」はさらにグレードアップ。

雪原を大きくとらえて、深い雪のなかをたくさんの馬が駆ける迫力。

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こんな急坂を橘、吉岡、鬼虎が馬で降りたり(これ、かなり雪深いけど本人が演じておられるんですよねぇ、きっと。すごい) 。

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全体的に「大雪原の対決」は雪原を駆けるスピードが印象的な映画でしたが、こちらはスピード感に加えて、雪原の広さをとらえたアクションが印象的で(最後の関野・蝮たちVS橘・鬼虎・吉岡の撃ち合いも、隠れる場所なんてほとんどないとこで、よく銃弾が当たらないなっていう、まさに広大さ重視w)、大きなスクリーンでこそ映えそうで、大画面で観たい!と思う作品。

 

というわけで、最初に観たときは困惑しまくった本作ですが(^-^;再鑑賞してみて(&石井作品の経験値を積んで!)映画の印象は変化。安部徹さんと田崎潤さんの贅沢な悪役コンビに、田中邦衛さんや由利徹さんにアラカンさんと刑務所仲間の面々の大事なシーンも入れてと脇の楽しみを詰め込みつつ、メインであるカッコいい男たちと、アクションもしっかり楽しめる、サービス満点の”娯楽映画”「網走番外地 決斗零下30度」。個人的にはこの後の2作がやや迷走してるように感じたこともあり(でも、「悪への挑戦」が1967年の邦画興行収入10位で本作はベスト10圏外なんですよね。不思議w)、網走番外地シリーズのエンタテインメント性を突き詰めていった最終型かな!?と思うのでありました。

 

 

【感想その他あれこれ】

上で書いてないけど書きたかったことをつらつらと。

 

輝雄さんご出演の雪の中の網走番外地二作はどちらも衣装が黒づくめ。そのため、真っ白な雪の中で輝雄さんの長身でスマートで小顔というスタイルの良さが際立って、その立ち姿はまさに眼福(*´ー`*)でもって、吉岡(二作ともね)は旧友とかでもなく突然現れる助っ人で、なんなら最初の印象もよくないはずなのにw橘×吉岡のシーンはなんだか友達っぽくて、楽しそうな笑顔のシーンが多くて最高(*´ー`*)

「南国の対決」の南さんもめちゃめちゃカッコいいけど、北海道舞台の二作は特に好きですw

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そして、この2作とも馬に乗る吉田輝雄を観られ、これもまた騎士というか王子様というか、絵になってステキ(*´ー`*)今のところこの二作でしか馬上の吉田輝雄にお目にかかれていないのですが、他にもあるのかしら。。。馬上の姿&馬から降りるとこ、どっちもかっこいいの!!