T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「ギャング対Gメン 集団金庫破り」

手堅く楽しめるクライムアクション・ムービー。  

ギャング対Gメン 集団金庫破り
 

 

 


【映画についての備忘録その78】

石井輝男監督×鶴田浩二主演「ギャング対Gメン 集団金庫破り」(1963年)

 

 

囚人護送車が襲われ、警官一名を射殺、金庫破りの名人・譲治(田中春男)が脱出した。殺された警官・増田には幼馴染で元スリの菊川志郎(鶴田浩二)がいた。今は堅気として生きているが、警察はこの交友関係から増田の背後を怪しんで、かつて菊川の世話をした刑事の尾形(加藤嘉)を差し向けるが、尾形は菊川が事件に関係のないこと、増田は偶然巻き込まれただけであることを確信する。菊川と増田の友情に感じ入り、尾形は警察のつかんでいる情報を菊川へ伝える。時を同じくして網走監獄から金庫破りの名人・松井(十朱久雄)が出所したこと、神戸に住んでいる同じく金庫破りの名人・矢島(江原真二郎)を警察がマークしていること―。

松井は網走にいる間、大きな金庫破りの計画を練っていて、菅沼(杉浦直樹)を片腕に金庫破りの名人たちを集めいていた。譲治を脱出させたのも菅沼だ。松井は計画成功のカギを握るのは矢島だと考えていたが、松井も菅沼も矢島の顔を知らず探しあぐねていた。増田の仇を討ちたい菊川は、尾形からの情報をもとに神戸に向かい、二人よりも先に矢島を探し出し、矢島に神戸から姿を消すように話をつける。そして、矢島に成りすました菊川は松井たちの計画に加わり、増田を射殺した男を探すことにする―。

 

 

輝雄さんの松竹作品という毛色の違った作品の感想をはさみwまた石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷の鑑賞記録です('◇')ゞ「ギャング対Gメン 集団金庫破り」。公開日を調べるとこの前に観た「暗黒街の顔役 十一人のギャング」が1963年の1月15日公開、こちらが同年の2月23日公開。その間、約1か月。いや、もう、すごいなこれ。

 

 

さて、たった1か月をおいてギャング映画を続けて撮っておられるわけですが、内容は「暗黒街の顔役 十一人のギャング」とは別物の面白さ。「暗黒街の~」が、登場人物の内面を感じさせる描写が挟まれ、ややウエットな物語だったのに対し、こちらはもっとエンタテインメント性を押し出したような作品。友人の復讐という部分もありはしますが、そこは菊川の動機付けとして機能しているけれど、あまりそこには比重はありません。

 

 

イントロ部分の譲治の脱出シーンからして、スピーディーで面白い。護送車が通る道路のすぐ横の高架を汽車が走り抜けるすさまじい騒音を見計らって、これをカモフラージュとして護送車を襲い、譲治を脱出させる。

 

なぜ、こんなことが起きたのか?それは尾形がそうそうに菊川のもとにやってきて情報提供することで観客側も理解して、あとはその具体的な方法ー菊川がどうやってこのギャングたち(=金庫破りの名人たちのチーム。もろもろ入れて計画に関わる者は全員で9人)に潜り込み、そしてどんな計画が実行されてギャングは最後につかまるのかーがどう展開されるのか、ストーリーをおって楽しむことになります。

 

 

矢島になりすまし、松井と菅沼が集めたギャングたちの仲間となる菊川。様々な特技をもつ金庫破りたちが集い、三億を盗み出す計画を実行します。その間、菊川と同じく金庫破りの仲間・玲子(佐久間良子)との駆け引き、尾形へのつなぎ役をしていた青年たちの犠牲とか色々ありつつ、ギャング達は無事に(!?)それぞれの特技をいかして金庫破りをして大金をゲット。しかし、そっから仲間割れやら計画を怪しんでいたヤクザ(計画のために金庫のある建物の横のキャバレーを脅して占拠していて、そのキャバレーのボス)の横槍が入ったりで、最後は菊川、玲子、菅沼の三人になり...。

 

 

と、86分の中に「この先どうなるの!?」っていう展開が次々用意されていて、飽きるところがありません。ラピュタ阿佐ヶ谷のホームページにある本作についての下村健さんの解説によると、公開当時、「外国映画からのパクリだらけだ」という批判があったそうですが、とりあえず、元になる外国映画が大して思いつかないような者からすると、パクリだろうが何だろうが、石井監督の作品として面白いからいいや(∀)って感じ。先に観た「暗黒街の十一のギャング」に比べるとアクションシーンの派手さが足りなかったり、最後の決めゼリフを言うキザな鶴田浩二が私にはハマってこなかったりで(笑)そちらに比べると作品のインパクトは薄くて物足りなさもありましたが、それでも手堅く楽しめるクライムアクションとして仕上がっている映画でした。

 

 

さてさて、私的にはハマらない主演の鶴田浩二さんですがwその主役よりも助演陣が印象的だった本作。

丹波さん(元刑事・手塚。女で身を持ち崩す)とか、江原真二郎さん(最初に思わせぶりな感じで退場して、最後まで出てこなくて「出番あれで終わりかい!」ってなる)、田中春男さん(スケベで粗野なのになぜか憎めない。そして、石井作品でまともな関西弁を喋ってる人を初めて観ましたw)とか、八名信夫さん(大きな体に丈の長いチェスターコート(かな?)がよく似合っていてギャングというよりマフィア)とか。で、一番印象深かったのが杉浦直樹さん。なんか、石井監督作品の杉浦さんは自分の中にあった、堅物のお父さんというイメージと全然違って、とがっていて危なっかしくて面白い。今回二本のギャング映画の杉浦直樹さんを観て、この後に改めて「網走番外地 望郷編」とか見なおしたら、また違った楽しみ方ができそうだなぁ、なんて思ったり。

 

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2番目に名前があるのに梅宮辰夫さんの出番はめっちゃ少なかったです(^_^;)