T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石川義寛監督「怒号する巨弾」

そら(天知茂のほうが)そう(惚れられるわ

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【映画についての備忘録その99】

石川義寛監督×宇津井健天知茂主演「怒号する巨弾」(1960年)

 

与党の代議士・内田が謎の失踪をする。失踪当夜に重工業社長・松山と会っていた事が判明し、担当刑事の宇野が事情聴取をするが有益な情報を得られなかった。しかし松山は何者かによって、内田の身柄と二人の密談を録音したテープの対価として大金を要求されていた。そして、その松山も誘拐されてしまう。行方不明となった二人が監禁されていたのはパリー座というストリップ劇場の地下であった。そこに天田(天知茂)という男が現れた。彼の父親はある航空機メーカーの社長であったが、終戦の年にこの二人の偽証によってスパイとされ、獄死した。これは彼の父親のための復讐の始まりなのであった。

警視庁は宇野警部(宇津井健)を長とした捜査本部を設置し、この事件の捜査にあたる。宇野は警視総監の志賀(九重京司)も信頼を置く、有能な刑事である。

捜査を進めるにつれ、天田の父親が逮捕された事件にたどり着く。志賀が刑事部長として捜査にあたっていたのだった。

宇野は射撃場で知り合いとなった宮本がこの天田であることに気づく。そして、宮本は復讐のため、志賀の娘・洋子(三ツ矢歌子)に近づき、二人は結婚を約束するまでになっていたのだが―

 

 

 お久しぶりの更新ですm(_ _)m我が子の卒園やら入学やらでなかなか気持ちも落ち着かず、仕事もバタバタ、で、ブログを書く余裕がなく、2カ月空いてしまいました(^-^;)(今もあまり状況は変わらないので、また次も間が空くかもですがorz)今作は昨年の秋にシネマヴェーラ渋谷でお馴染みの!?新東宝特集が組まれた時に鑑賞していたのですが、感想を書いていなかった作品。で、それが、3月になって日本映画専門チャンネルの 

上坂すみれの新東宝シアター ―天知茂、痺れるほどキザで、ニヒルで―|日本映画・邦画を見るなら日本映画専門チャンネル

で放送!録画していたのでを4月になって鑑賞し、感想も書こう!ということで。

 

宇津井健VS天知茂、ヒロインは三ツ矢歌子さん(お人形みたいな美しさ(^-^))という、新東宝スターの豪華顔合わせの映画でございます!そんなわけで、宇津井さんにも天知さんにも見せ場があって、最後は見せ場のためかな、って感じのやや強引な展開もあったり(そこが新東宝!?)。・・・も!戦争時のスパイ疑惑に端を発した復讐というサスペンスの筋、警察側にいる裏切り者の存在、思いもよらなかった協力者やーこの人はなんでこんなことしてんのかな?みたいな謎は分からないままですが(そこも新東宝!?)ーとか展開は面白くできていて、何よりこの二人の個性が存分にいかされていて、楽しめる映画でした。

 

さて、その二人。宇津井健さんは正義感あふれ、真面目さと誠実さの見本のような警察官。宇野警部は若くて優秀で、警視総監は勝手に(!?)娘との結婚を決めております。出世街道まっしぐら!だけど、宇津井さんが演じると政略結婚的な嫌な感じが微塵もないところはさすがw洋子が天田の復讐に利用されているのではないかと気付き、洋子にそれを話したりするわけなのですが、そこには曲がりなりにも婚約者として、ほかの男にひかれている彼女にヤキモキする、と言った風は感じられず(^_^;)むしろ、お父さんやお兄ちゃんのように心配しているように見えます(笑)洋子の保護者のようなこの感じは、もう、これって宇津井さんならでは!?石井作品でもそれに負けない宇津井健ワールドを作り出してしまうだけあって、恋人だとか彼氏だとか言った“熱”よりも、穏やかな空気のような安心感みたいなものが圧倒的に勝ってしまうのであります。

 

一方、天知さんの宮本(天田)は、天知さんの影のある雰囲気がいかされた、裏と表の顔を使い分けつつも、表のほうに“危険な香り”というのがにじみ出ている人物。結婚を考えていると洋子には言いながら、復讐のためなので、お父さんには付き合っている事は言わないようにと口止めしたり。安心感とは無縁な感じで、洋子と遊園地でデートしたりもしますが、先の尖った靴にビシッと決まったスーツ、ポマード(?)でガッチリ固めた髪型の男がそこにいる違和感w

 

宇野と宮本(天田)は射撃場でよく会い、互いにひけをとらない銃の名手。そして、互いに、傷痍軍人の奏でるアコーディオンの演奏に感傷で投げ銭をいれたり、と共通点を持ちながら、方や安定と安心、方や不安定で危険。お人形のように美しいお嬢様がどちらに惹かれるのか。。。想像に難くないわけです!

 

順調にすすんでいたかと思われた天田の復讐。その最後に天田は洋子を人質に別荘へ向かいます。宇野から彼の目的を聞かされていた洋子は、自分が父親への復讐に利用されたのだ、ということを明確に知ることになります。しかし、破滅がまっていると感じながらも、恋人同士として惹かれ合っていく二人。(天知さん、ドハマリで切ないのよ、この展開!)。

 

で、別荘で追い詰められた天田。なんかもう、色々とありましてwクライマックスは洋子のいるなか、草原のような場所で、宇野VS天田で、車を反対方向から走らせ、すれ違いざまに銃で撃ち合う、という決闘になります(なぜ?)。最後、これがどういう決着になるかは二人の俳優のカラーを考えただけで想像できる展開。この結末がまた、洋子は宮本のことをずっと好きなんだろう、と思わせます。で、そんな突然な決闘シーンも、三ツ矢さんも含め、スターの見せ場だったりして、唐突な展開はさておきで、見応えあり。

 

というわけで、新東宝の二大スター(で、良いの?)共演の本作、「怒号する巨弾」って、ライフル銃のことかしら?とか戦争映画のごとき壮大なタイトルからは想像つかない、復讐劇でしたが、しっかりと面白い作品で、そして何より、「そらそうよ」と納得の展開になる、スターの個性にピタリとはまる、宇野と天田の二人なのでした。