T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

村山新治監督「夜の歌謡シリーズ  伊勢佐木町ブルース」

“ヒモ”なのにかっこいいとはどういうことだ。

夜の歌謡シリーズ 伊勢佐木町ブルース [DVD]

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 【映画についての備忘録その60】

村山新治監督×梅宮辰夫主演「夜の歌謡シリーズ  伊勢佐木町ブルース」(1968年)

 

伊勢佐木町でバーやキャバレーの新開店の準備を請負う”オープン屋”の宮田(梅宮辰夫)。土地成金で農家の大倉(伴淳三郎)は、開店したばかりのキャバレーで出会った宮田に、1500万円でバーの開店を依頼する。ただし、ママになる女を自分の愛人にするのが条件。この仕事を引受けた宮田は、人気ホステスだったれい子(宮園純子)を口説き落とす。伊勢佐木町裏にあったバーを買収して、大倉の愛人になる話はふせたまま、彼女をママにしてバー「れい子」が開店した。

大倉は、宮田が自分の愛人になる話をれい子に承知させていないばかりか、夜をともにしている事に腹を立てて、愚連隊を集めて宮田を囲み、何とかしろと迫る。しかし、れい子を差し出す気のない宮田は、自分を慕うホステス、チャコ(清水まゆみ)に、大倉の相手をさせるのだった。

その夜、宮田がれい子のマンションを訪れると、そこにはれい子のかつての男で、刑務所から出てきたばかりの竹村(吉田輝雄)がいた。ベッドで抱き合う二人にショックをうけた宮田は、竹村にれい子から手を引かせるため、金で話をつけようとするのだが・・・。

 

 

「夜の歌謡シリーズ  伊勢佐木町ブルース」はソフト化&レンタルもされている映画で、輝雄さんファンになったばかりの昨年の1月、まだこのブログを書き始める前、TSUTAYAでレンタルして鑑賞した作品です。今作の輝雄さんは予想を裏切る方の格好良さで、いつかこれも感想を書こうと思っていたところ、今年7月になって、ある特別なプレゼントとともに(それについては次の記事で)私の元にDVDがやってきてくれて、1年半ぶりの鑑賞となりました。

 

で、この作品、なんか小難しいことはさておいて、という映画。女たらしの男とそれを取り巻く女たちの話。うん、文字通り、それだけの映画。個人的な好みの問題です、という前置きをしつつ、ストーリーはこれといって取り立てたものはないし、伴淳三郎さんのコミカルなパートも、大物コメディアンということは知っているのですが、この作品に関して言えば、やりすぎ感、出すぎ感があって笑えないし…。”歌謡映画”として青江三奈さんが「伊勢佐木町ブルース」を劇中で唄ってくれている、というサービス以外はとくにうまくいっている感じがしません。梅宮さんは軟派路線が受けていたということですし、梅宮さんを生かすストーリーと伊勢佐木町ブルースのヒットにあやかって、なんとか作った映画、という印象。

 

そんな印象だというのにこうして感想を書いているのは、はい、もちろん、上述の通り、吉田輝雄がカッコよかったから(・∀・)「決着」二作品と同じくで、主演の梅宮さんよりかっこいい(役回りはそんなことないのにw)!硬派な役が多い輝雄さんが“ヒモ”を演じているという貴重さと(他に映画でのこういう役は未見の「霧子の運命」くらいなのかな。)、ヒモなのにというか、もっと言えば自分の女を金で渡す話に乗っちゃうようなひどい男なのにw他の映画では観られない類のかっこよさと色っぽさを醸し出していて、硬派な作品のそれとは違う方向で、観ていて(//∇//)ってなっちゃう作品。なんだかご本人も、この竹村という役を楽しげに演じておられるように見えます(・∀・)

 

竹村が2年の刑務所暮らしの後に出所すると、組長が逮捕されていて組も解散。行く当てもなくて、昔の女だったれい子の元を訪ねます。バーにやってきた竹村の姿にドキッとするれい子。

鋭い視線でれい子を見つめますが、

「おまえのことは忘れられなかったぜ」

という甘いセリフ。竹村にれい子は刑務所に入っていた間に手紙も送らなかったことを、社交辞令なのか本心なのかといった風に謝り、竹村は「誰だって務所に入った男なんざ、縁を切りたくならぁね」とさらっと笑顔で流します。優しくて理解あるような台詞からの…

 

「アパートどこだよ。鍵を貸してもらおうか」

 

この流れがやたらカッコいいんだヾ(*´∀`*)ノヒモなのに!低いトーンで当たり前のように、そして、有無を言わせない感じで、れい子から鍵を受け取って、彼女のマンションへ転がり込みます。  

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アパートの鍵を貸せというのに、めっちゃ色っぽいのよ。

 

で、もう、あとは宮田の前に障壁のように立ちはだかります。れい子も宮田に対して竹村のことを「あの人」なんて言っていて、宮田を好きだけど竹村にも情が残っている、という雰囲気。そりゃ、こんな男前が帰ってきちゃったらねぇ(っ´ω`c)

同じ1968年の「続・決着」では、真っ直ぐな恋を演じていた輝雄さんと宮園さんの組合せでしたが、こちらでは、真逆なようなカップル。いやー、ありがとうございますw

 

 

立ちはだかった最後は二人で決闘となります。ここは宮田の見せ場。相手は出所してきたばかりのヤクザ。敵うはずのない相手に命がけで挑むあたりのかっこよさ。軟派だけどカッコいいみたいなとこが、らしさ、なのかな。

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このアクションシーンは短かったけど、展開もスピーディーで、緊張感のあるシーンでした。

うん、で、やっぱり(!?)、この二人が並ぶと輝雄さんのスタイルの良さを再確認することになって、結局ここでも竹村のかっこよさに(っ´ω`c)となったり。

 

 

最後に。この映画、梅宮さん主演だし、輝雄さんにフォーカスして書いてますが(それは仕方ないw )、物語の主役はチャコとれい子の女性二人でした。とくに清水まゆみさんのチャコは、女ったらしに振り回され、利用され、それでも離れられない、まぁ、普通に言ったら“バカな女”です。もし、友達がこんな状況なら、こんな男とはさっさと別れちゃえ!って言う感じ。でも、清水まゆみさんの演じるチャコはかわいらしくて、いじらしくて、何となく応援したくなる。最後に宮田が戻ってきてくれて良かったね、と思える。

伊勢佐木町ブルース」の歌詞の世界、女性が主人公な気がするしね。そうなるか、なんて思いつつ。

 

うーん、それにしても、ヒモがこんなにカッコよくていいんだろうか(//∇//)