T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

井上梅次監督「犯罪のメロディー」

吉田輝雄と久保菜穂子の大人カップルがステキすぎ。

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【映画についての備忘録その25】

井上梅次監督×待田京介主演「犯罪のメロディー」(1964年)

 

ボクサーの青島(待田京介)はチャンピオンベルトをかけた試合でチャンピオンをダウン寸前まで追い込んだところで突然倒れ、医者から脳腫瘍で余命3ヶ月であると告げられる。マスコミは八百長だと騒ぎ立てるが、事実を公表して同情されるのが耐えられないと、青島は医者を口止めして事実を告げず、ジムからも解雇されてしまう。

青島のマンションの向かいの部屋には足に障害をもつ少年とその姉で看護婦の美紀(鰐淵晴子)が住んでいた。美紀の勤める病院には障害をもつ子供のためのリハビリ施設を作る計画があったが、資金不足で思うように計画が進んでいなかった。ちょうどその頃田舎に残していた母が急死。自身の保険金500万の受け取りを母にしていた青島だったが、これを施設に寄付することを決め、外交員の長崎のもとを訪れる。しかし、長崎は客から集めた保険金を着服、それを持って逃走中だという。同じく長崎の被害者だと言う望月(寺島達夫)という男と長崎を追い横浜へと向かう。

しかし、長崎は何者かに殺害され水死体として発見される。遺体確認のために警察署を訪れた青島と望月。そこで、青島の行きつけのクラブのトランペッター・手塚(吉田輝雄)と顔をあわせる。手塚は長崎とともに闇金融M組織の正体をさぐり、その非合法の金を手に入れようと画策し、秘密を知った長崎は組織に殺害されたのだった。

手塚もまた肺を病んでいて余命わずか。金よりもスリルが味わいたいのだという手塚と金が必要な青島。二人は組織の金を奪うべく手を組むことに…。

 

 

松竹大谷図書館でこの映画のスチル写真(トップ画像参照)を見てから、あまりにハンサムなので(もちろん吉田輝雄が)「超みたい!!」と思った本作。観る機会をいただきました。ありがとうございます!いやー、もうカッコよすぎました(//∇//)出番は多くないけどσ(^_^;

 

 

映画のビリングでは待田さん、寺島さん、輝雄さんの三人が並列でトップで出てきます。一応、主演三人って感じの扱い。が、出番は圧倒的に待田さんが多くて、(スチル写真は輝雄さんが主演にしか見えないんですけどw)待田さん主演です。ただ、待田さんは脇でいい味出してるというのがあっているような気がして(「網走番外地 望郷編」なんかはハマってますよね)、主役だとちょっと存在感が薄い感じがします。そして、個人的にはすんごい悪役顔に見えてしまうため(小沢仁志並みに。「~望郷編」もいつ本性出すんだろう、とか思ってみてましたw)、この良い人役がどうしてもなじめませんσ(^_^;(めちゃめちゃ失礼だな、私σ(^_^;)

お話のほうも登場初っ端から「きっとこの人がM組織のボスだろうなー」と思った人が案の定ボスだったりとか、青島と美紀、そして田舎にいた幼なじみ(桑野みゆき)が上京して…の恋の話と、いつの間にやら手塚との間に友情が芽生えてたりとか、詰めこみすぎてアレアレ!?みたいな中途半端な展開σ(^_^; 待田さんの演技も決して上手という感じではないし(まぁ、主演三人とも演技派ではないですがwただ、アクションシーンのキレはすごかった!さすが!)と、そんな訳で主役に映画をひっ張ってもらえないまま過ぎる96分、半端になっちゃったストーリーとそれを埋め合わせられる演技陣でないため(^-^;)映画全体の出来としては結構微妙な仕上がり。

 

でその映画についてなんで備忘録書いてるかというと、見出し。いやー、もうステキすぎて(๑'ᴗ'๑)この二人をメインにストーリー作ったほうが良かったんじゃないかと(笑)久保菜穂子さんは映画を観るのはこれが初めてだったのですが、まさにクールビューティーという感じ。この久保さん演じるあけみがクラブの歌手、そして、輝雄さんがトランペッター(ピアノも弾いちゃいます)。

まず、この二人のクラブでの演奏の姿がカッコいい(〃'▽'〃)輝雄さんは言うまでもなく(もう言い過ぎてますけど)、久保さんも長身でスタイル良く、黒タキシードの手塚と黒いドレスのあけみ二人が並んでステージに立ってる姿は絵になりすぎ!手塚のトランペットを伴奏にあけみが唄う歌は梅次監督が作詞してるんですが、これが手塚の生き方を詞にしたような歌でムードたっぷりで色っぽい。

 

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二人は恋人同士で、あけみは手塚が肺を病んで余命わずかなこと、そして長崎と組んで危険な仕事をしようとしていることを分かっています。手塚を心配して、長崎と仕事をすることもトランペットを吹くこともやめてほしいと思って止めたりするのですが、すがりついたり自分の思いのたけをぶつけるようなことはしないで、彼のやりたいようにさせています。そして手塚はあけみのその優しさに心地よく甘えているようで、わがままを通します。クラブで八百長だと罵られて喧嘩してヤクザに追われた青島を楽屋に匿った時の二人の会話がその関係を感じさせます。

 

「どうしたのかしら、この人」

「何か悪い病気が心の中に穴をあけたのさ。僕と同じらしい」

「ねぇ、入院してくれない?そんなやけにならないで」

「やけ?冗談じゃない。今までの僕には春ってものがなかった。だからちょっぴり好きなことをやって楽しみたいだけさ。考えてもごらん、億って金が転がってるんだ。ゲンナマでこの日本のどこかに。面白いじゃない」

「危ないわ、そんなこと!」

「僕はね、スリルがほしいんだよ。」

 

このあと、匿われていた青島が楽屋を去り際に「命を大事にしろ、死ぬと決まった時ありがたみが分かるもんだ」と手塚に言うと「そんな気持ちはとうの昔に卒業しましたよ」と答えます。ここのやりとり、あー、何度もこうやって彼の体を気遣って話してきたんだろうなー、って感じの大人の空気感漂いまくりです(公開時期から考えて久保さんが31歳、輝雄さんが27歳とか二人とも若いんですが、なんでこんなカッコいいんだ)。と、この映画、青島と手塚の二人に共通しているのが、「才能があるのに思うようにいかない」という自分自身に対するシニカルな態度(とはいえ、青島は最初はすごく苦悩するわけですが。。。そして手塚は“ペットを吹かせれば日本一”だと言うのに肺が悪く思うように吹けません)。ハッピーエンドには絶対に向かわないんだろうという、上手くいかない人生とそれを受け入れてそれでも何かをやろうとする二人の生き方を男の美学的に描いていて、手塚とあゆみの静かに寄り添っているという感じの関係がこの美意識にあうんですよね。

 

あゆみは手塚の体を心配し、一方でやりたいようにしている手塚という場面が他にもいくつかあって。あゆみが心の内に秘めて耐えている気持ちを想像するとねー(また久保さんの表情が良いのです)、なんて苦しいんだろうか、と。んで、久保さんがちょっと輝雄さんよりお姉さんなので、余計ステキなんですよねー(この感じを伝えられないボキャブラリーのなさorz)

 

はい、そして今作も!?主役は待田京介さんなのにwかっこいいとこは吉田輝雄が全部持っていきます(//∇//)仲間を助けるために自分の命を犠牲にし、井上監督があてがうキザな台詞もピタリとはまります(゜∀゜)このキザな台詞がかっこよくて、井上梅次らしさってこういうの?って感じ(まだ二作目なので分からないσ(^_^;)。しかも手塚の一人称が「僕」で、相手のことを「君」と呼び、敬語でしゃべっちゃうのが、これまた病弱なキャラクターとあいまって、危険な事してるのに品が良くてえらくステキ(〃'▽'〃)

 

というわけで、映画本編は置いといて(!?)輝雄さんのかっこよさを楽しむための映画という意味では価値ある作品で、観られて良かった!な一作でありました(๑'ᴗ'๑)(繰り返すけどもっと出番があったら言うことなしだったぞ!)

 

補足。

寺島達夫さんを「ゴールドアイ」の敵役以外で観るのはこれが初めてでした。望月は青島と手塚の計画に横やりを入れて金を奪おうとする男なのですが、実は警察官だった、という役。前半の嫌な男のパートもやっぱり善人な感じは漂っていましたが(笑)、警察官だと分かってからの正義漢ぶりがピッタリでした。

あと、安部徹さんも貫禄の!?悪役ぶり。横浜の中華街にあるお店を仕切っている店主。裏の顔は闇金融暴力組織のトップといういかにもな悪人。同じ井上監督の「真赤な恋の物語」での警察官とは全く違う役で、イキイキとしておりましたw