T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

酒井欣也監督「東京さのさ娘」

江利チエミの魅力でひっぱる映画。

 

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【映画についての備忘録その77】

酒井欣也監督×江利チエミ主演「東京さのさ娘」(1962年)

 

浅草育ちの下町娘・杉本千枝子(江利チエミ)は、運送店をやっているやもめの父・文吉(有島一郎)とは別に、小さな不動産屋を開いている。そして兄の勘太郎渥美清)はやくざ気取りで家に寄りつかず、金に困っては時々千枝子を訪ねてくる。千枝子はなかなかのちゃっかりもので、大阪からやってきた未亡人・絹代(坪内美詠子)がおにぎり屋を開くための物件探しをしているというので、物件を世話したついでに、店内の電気工事や家具、引っ越しそばの手配まで請け負って、その仕事はそれぞれ親戚へ回し、そのディベートを受け取るといった具合。一生懸命にお金を稼いで貯めているのは、文吉の運送屋のために新しいトラックを買う資金を作りたいから。

そんな千枝子はガソリン・スタンドに働いている北川邦夫に(吉田輝雄)ほのかな思いを寄せている。ところが、芸者の花奴(牧紀子)も邦夫をお気に入りで邦夫をデートに誘ったりするので、千枝子も気が気でない。

そんなところへ、邦夫のペン・フレンドであるジミー・スコット(E・Hエリック)がアメリカからやって来た。ジミーは無銭旅行で邦夫を頼って日本へやってきたが、邦夫も安月給でガソリンスタンドの宿直室へ住んでいる身。困って千枝子を頼り、千枝子は自分の家の二階を下宿にかすことにした。邦夫と千枝子はジミーを連れて、文吉の店のトラックを従業員の正二の運転で走らせ、東京タワーや浅草を観光に出かける。邦夫は千枝子の下町っこらしい気風の良さと明るさにひかれていて、二人はジミーをほったらかしでデートを楽しんでいる。

一方、文吉はおにぎり屋の女主人絹代のところに通いつめている。二人はかつて恋仲だったが、文吉の父親が芸者との恋を許さず別れた過去がある。そうとは知らない千枝子は、ある日、一生懸命に貯めていたお金から30万円が知らないうちに引き出されていることに気づく。文吉が絹代のためにその金を使ったことを知り、文吉と喧嘩に。怒った千枝子は文吉とは口を利きたくないと、邦夫がジミーを日光観光に連れていくと知って、一緒に出掛けることに。その矢先、文吉の運転していたオート三輪がほかの車と衝突事故を起こす。相手の車は石油会社の重役の車で、その重役は邦夫の父親だった。千枝子は邦夫が大会社の重役の息子だと知って、邦夫との恋をあきらめようと思うのだが。。。

 

 

石井輝男吉田輝雄尽くしで年末年始を過ごしまして、年明けは1962年の松竹の吉田輝雄ヾ(o´∀`o)ノ「彫刻ですか?」といいたくなるような(*´ω`*)美術品のごときハンサムさ(というか美しさ!)のこの年。江利チエミさんとの共演作は1963年にかけて3作撮影されていて、その1作目。CSの衛星劇場で放送があると知って、初の衛星劇場加入でありますw

 

 

映画は浅草を主な舞台にした、ホームコメディーといった雰囲気の作品。脚本は「泣いて笑った花嫁」も書かれていた菅野昭彦さん、山根優一郎さんのお二人。「泣いて笑った花嫁」をかなり笑いながら見た身としては、コメディーの期待値高く鑑賞したわけなのですが、映画の魅力は、コメディーとしての面白さよりも江利チエミさんの存在感と、当時の東京タワーや浅草、日光など観光地の様子、それに車やファッションが鮮やかならカラーで収められていること、そして私的にはもちろんな輝雄さん(∀)にあった、という作品でした。

 

 

まずは何よりやはり江利チエミさん!私、江利チエミさんについては歌も映画も観たことはなく、知っていることと言えばとても活躍された歌手の方で美空ひばりさん、雪村いづみさんと三人娘と言われていたこと、高倉健さんの奥様だったこと、とそのくらい。そんな人間でも、この一作で江利チエミさんのキュートさに惹きつけられ、シーンに登場すると場が華やかになるのを感じます。千枝子は明るくてサバサバしていて、機転がきいて、というキャラクターですが、まさにそのまんまの人なのかな?というはまり具合。

劇中ではふんだんに歌唱シーンもあり(インスタント芸者です、と言って無理やり花奴のお座敷にきて場をさらって歌っちゃう展開も許せる(笑))、お兄さん役の渥美清さんとの掛け合いは丁々発止テンポがよくて、歌の才能とコメディーの才能と、リアルタイムを知らない人間にも江利チエミさんのスター性を十分に感じることができます。

 映画の出来映えそのものは、正直に言ってそれなりに面白いのだけれど、「泣いて笑った花嫁」に比べると十分にその面白さが引き出されていないような、と感じましたが(要因としては千枝子のライバル役が牧紀子さんでチエミさんの存在感に対してバランスが取れていないのと、あまりコメディーは得意ではなさそうなハマってなさや、笑いをとりにくるシーン―転けたりするような場面とか―が演出のせいなのか上手く機能していなかったり、全体的にあまりリズムが良くないシーンが多いと感じたため)、そういうちょっと足りない部分も、江利チエミさんが全部飲み込んじゃって、映画を最後まで引っ張ってくれます。

 

 

そして、できて間もなくの東京タワーからの眺めや(ハンサムタワーが東京タワーにいるよ!)、隅田川吾妻橋あたり?の様子(ボートに邦夫と花奴が乗ってるんだけど、隅田川がすでに綺麗ではなさそうで―花奴は“ドブくさい”と言いますw―これもなんか経済成長していく途中という感じ!?)といった変わっていく東京の姿と、今もほぼ変わらない、杉並木や日光東照宮華厳の滝と言った日光の観光地を観られるのも楽しいです。それから、この時代ならではのポップな雰囲気ー浅草松屋の上の遊園地のスカイクルーザー(めっちゃ乗ってみたいわ、これ!)とか、日光観光に出かける邦夫たちが借りた車の鮮やかな青、追いかける花奴の車のかわいらしいオレンジ(トヨタ?)、千枝子が着るワンピース、邦夫がつとめるガソリンスタンド(90オクタンって表記でその給油機のシンプルな形もかわいいのだ!この画像は一番下に)まで―も素敵。当時を知らない者としては、なんか全部可愛くて魅力的にみえるのです٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

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この車の色、かわいすぎる!後ろには花奴が運転するオレンジの車。

 

で、可愛いいといったら、こちらヾ(o´∀`o)ノ

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ガソリンスタンドにいたら無駄に給油しにいくってばw

はい、この笑顔!基本的にクールなハンサムというお顔立ちですが、笑うと無邪気な表情になるのが良いのよ(*´ω`*)

江利チエミさんの存在感が映画の足りない部分を飲み込んで引っ張れば、この笑顔は、この映画の設定の、違和感がある部分を飛び越えてwストーリーをすすめます。

邦夫はガソリンスタンドの店員さんなのにアメリカにペンフレンドがいて時々お育ち良さそうな言葉遣いをします。それから、千枝子の目の前で、花奴から野球のチケットが手に入ったからとデートに誘われて、千枝子のことが気になってるはずなのに、なんの屈託もなく笑顔でチケットを受け取ってしまったり(デートに誘われてるって気づいてなさそうなのw)。あとで考えると「千枝子ももっと早く邦夫の育ちの良さに気づかない?」とか、「なんで目の前でニコニコとデートの約束しちゃえるのさw」みたいな、ツッコミどころがあるんだけど。+゚(*ノ∀`)、初登場シーンからこの笑顔で、これがたびたび出てくるので、下町にいても違和感のない人なつっこい邦夫、というキャラクターが立って、なぜかひっかからずに観れてしまうwまさに吉田輝雄の魅力であります(〃'▽'〃)

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この笑顔であります(・∀・)

 

べた褒めですがwこの笑顔も江利チエミさんによるところが大きいのかな、と思ったり(・∀・)なぜかって、千枝子と一緒のシーンとそれ以外のシーンの演技の自然さが違うんだわw

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チエミさんと二人のシーン。この表情の自然体なことヾ(*´∀`*)ノ

本作で輝雄さんとからむシーンががあるのは江利チエミさん、牧紀子さん、E・H・エリックさん、渥美清さん(柳家金語楼さんや有島一郎さんは同じシーンにいるけど台詞はなかったり)なんですが、千枝子には笑いかけるシーンも諭すシーンも、怒るシーンも自然なのに、チエミさんがいない場面での他の役者さんとのシーンはなんかかたい、かたいよ!ぎこちないぞ゚∀゚)花奴と喧嘩してるシーンとか、千枝子を怒ってるシーンと比べて、なんか仕上がりのレベルが全然違うんだ!が、その差がまたなんだかかわいかったりして、観ながら「頑張って!」と応援したくなって、これはこれでまた良かったりするのですが(笑)これは、本作から60年近くを経て、母性本能くすぐられてるのか(∀)(今作を観ると、この後に撮った、「泣いて笑った花嫁」はかなり自然になってきているなぁと感じ、そしてこれより前に「今年の恋」の正さんの演技を引き出した木下恵介監督ってやっぱりすごいな、と思ったりw)。

 

 

と、江利チエミさんとのシーンが自然なのは、チエミさんのセンスに加え、チエミさんからご指名を受けての共演だった、というところも影響してるのかな!?と思ったり。

 

kinakossu.hateblo.jp

 

以前、松竹大谷図書館でこの映画のスクラップをワクワクしながら読んだのですが(・∀・)その際に、チエミさんが松竹で映画を撮る契約をするにあたって、相手役に輝雄さんを指名した、という記事があったんですよね。チエミさん曰く、各映画会社で契約するときに一番ハンサムな人を相手に指名してる(だから東映健さん、日活で石原裕次郎さん、ということらしい)とのことで( ゚∀゚)で、松竹では吉田輝雄が相手(うん、そうだね、何なら各社総合して一番ハンサムだね( ゚∀゚))。先日のトークイベントでも撮影後にチエミさんと一緒に銀座に行ったときのお話をされていたりして、仲の良さというか、フィーリングの合い具合というか、がそのまま映画に(というか演技に!?)出てきてるのかな、なんて感じたり(*´▽`*)

 


 と、いうわけで表題。映画そのものは江利チエミさんの魅力でもって、作品が仕上がっている、という感じ。輝雄さんと江利チエミさんとの共演作はあとは1963年の「咲子さんちょっと」と「スター誕生」の2本。この二人の共演作が観られる時を楽しみにしつつ、他の江利チエミさんの映画も観てみたいなと思った、鑑賞後でありました。

 

 

【感想その他あれこれ】

上に書いてないけど思ったこと。まとめられなかったのでw書き足し。

 ・有島一郎さんと渥美清さんの掛け合い面白い。さすが喜劇役者!

 ・菅原文太さんも出てるんですけど、文吉の運送屋の従業員三人のうちの一人、というポジション。一応、千枝子の見合い相手になる!?とかいう三人の中ではハンサムであることが売りの役でしたが、ハンサムタワーズで新東宝で主演してた俳優さんの扱いとしてはかなりひどいのでは(^-^;)

・チエミさんが芸者に扮して歌うシーン、音声は後からかぶせてるんだろうな、というのは分かるんですが、撮影時も実際に歌ってたのかな。輝雄さんもE・H・エリックさんも、ほんとに聴き惚れてる感。

・輝雄さん、めちゃめちゃ細い!!上でも書いた松竹大谷図書館で読んだスクラップ記事にも、チエミさんに、その細さをからかわれてるようなのがありましたがwほんとに細くて。ガソリンスタンドの制服のズボンとかなんか大きそうに見えます(笑)

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半袖だと細さがよく分かる。あわせて作ってるんだろうに制服の身幅にけっこう余裕ありげ。

 

石井輝男監督「暗黒街の顔役 十一人のギャング」

 娯楽アクションかフィルム・ノワールか。  

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【映画についての備忘録その76】

石井輝男監督×鶴田浩二主演「暗黒街の顔役十一人のギャング」(1963年)

 

 

権藤(鶴田浩二)と別当杉浦直樹)は大鋼管メーカーの浜松工場の従業員給料5億円の強奪を企み、綿密な作戦計画を建てる。会計室から5億盗み出すその計画には、運び屋、計画を実行すための出資者、そして見張り役に3人、そしてその3人と権藤を逃がすための車運転手が必要だ。二人は浜松-東京の定期便運転手で前科もちの沢上(高倉健)、女実業家の美和と用心棒の芳賀(丹波哲郎)、銃の腕に覚えのある海老名(江原真二郎)、葉室(待田京介)、広岡(高英夫)を仲間に加えることにする。権藤は作戦に必要なワルサーを東京・立川で米兵の集うバーのマスター(アイ・ジョージ)から手に入れる。ところが、沢上の恋人のまゆみ(三原葉子)は浜松の裏の世界の実力者・黒部(安部徹)と通じていたことから、何か大きな計画が実行されようとしていることを黒部が知ることとなり・・・。

 

 

2019年の映画納めは石井輝男監督。前の日にスターウォーズ観に行ったんですけどね、石井輝男で終わることにしてw石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷へ再び。この前の「決着(おとしまえ)」とあわせて観てきました。

 

旧作邦画にはまったく疎かった私、東映ギャング映画、とかいうくくりがあるのも知らなかったわけで、このカテゴリーのものを観るのは今作が初めてとなりました。お正月のオールスター映画ということらしく、それに見合った豪華なキャスト、悪そうな(笑)男達がいっぱいのポスター。そしてこのタイトル。クライムア・クション映画って感じの、娯楽作品だろうと想像して見はじめました。最初はまさにその通りの展開でしたが、終わってみたらまったく違う印象に。

 

 

権藤と別当が手製の地図を広げて計画とその進捗を確認しあうところから映画はスタートします。仕立てのいいスーツを着て、ビジネスのように淡々と、それでいて緊迫感のある雰囲気を醸し出しています。二人がどんな人物でどういう繋がりか語られなくても、有能な二人が大きな仕事をやろうとしていること、そして互いに深く信頼しあっているということが分かります。

 

 

クールな二人組がどんな風に仕事を成功させるのか?という始まりに、健さん演じる沢上が加わるとちょっとコミカルな感じもでてきて、緩急の差(それは野球用語ではw)が出てきて、映画はどんどん面白くなります。沢上はキャバレーでホステスをしているまゆみに熱をあげているのですが、まゆみは気が多いのか家に帰ってこない事もしばしばで、どうやらまゆみに振り回されてる様子。健さんの演じる沢上のちょっとだらしない雰囲気や、前歯が1本銀歯になってるっていう、キャラクターの遊び心みたいなのもあってクスクス。でも、まゆみのことは本気で好きで、別当の持ちかけた危ない仕事にためらいながら、彼女を繋ぎ止めるための大金を手にするため、そして、恐らくはこのままトラック運転手として終わってしまうことへのためらいのようなもの―別当と話をしているのは船のドック?何か大きなプールのような場所。沢上が返事を躊躇っているところで、プールの底を掃除する男性がドックへ出てきます。男性と、彼が流した水と真っ黒な砂が混じり合う様を見ながら、沢上は仕事をうけることを決めます―から、仲間に加わることにします。

 

 

権藤は海老名に声をかけて仲間を集めさせ、銃を調達し、計画に必要な準備を進めていきます。あとは銀行からの不正融資の事実をネタに一度揺さぶりをかけた美和に計画のプレゼンをして計画の実行に必要な1200万の出資(海老名たち見張り役の三人に先渡しする報酬)を取り付けるだけ。

 

 

この計画を進めていく合間に、権藤と別当の個人のストーリーも描かれ、それが映画のラストを余韻の残るものにします。別当は黒部に情報を流すために後を追って浜松から東京まで来ていたまゆみと恋に落ち、本気で愛し合うように。権藤には貧しい暮らしをしている母と妹と、ナイトクラブでダンサーをしている恋人・ユキ(瞳麗子)がいます。母と妹のところへは時折顔を見せて、二人の暮らしぶりを心配しているよう。母から、妹は修学旅行のお金を作るためにオモチャ工場でバイトをしていると聞いて、修学旅行の費用にと、お金を渡します。妹は久しぶりに会った兄に、兄に渡すつもりで工場からもらっていた廃棄予定だったおもちゃ―外車のミニカー―をプレゼントします。そして、ユキとはこの仕事が終わって金を手に入れたら、まっとうな暮らしをしようと思い合っている。そして、彼女は権藤が危険な仕事をしようとしていることを察して、見張り役の海老名たちを逃がすための運転手の役割を買ってでます。

 

美和からの1200万もそろい、準備万端で迎えたはずの決行当日。沢上はまゆみが突然いなくなってしまったことに仕事を引き受ける気をなくし、別当に仕事をおりると連絡します。まゆみの働いていたキャバレーで酒をあおります。計画が頓挫しそうになり、別当が説得にあらわれ、そしてまゆみがあらわれたことで二人のことをさとり、やはり仕事をうけることにします。

 

この計画の実行犯となる人間たちは、計画をした権藤や別当、そして沢上やその周辺の女達にとっても、”真面目にやっていれば報われる”なんてものは持たざるものをおとなしく働かせるための欺瞞のように思っていて、この犯罪は社会の底辺から這い上がるためのもの。計画に障害がおきてもクリアして作戦を決行していく権藤と別当をみていて、途中からは、映画の結末はきっと、黒部達の横やりがあっても作戦を成功させ、二人がそういう世の中に復讐を果たし、カタルシスを誘うような展開になるのだろうというような予想をして観ていました。工場に侵入してから5億を奪って逃走を始めるまでテンポ良く展開し、まさに娯楽作品のクライム・アクション映画。

 

 

しかし。結末は実際に体を張った人間達ー横やりを入れてきた黒部達を含め―は誰一人として報われることのないエンディングを迎えます。そして、おそらく5億は出資しただけの美和の手に渡ることが想像される結末。権藤のスーツのポケットからは、妹からもらったミニカーが落ち、それは現場にかけつけた警察官たちに知らずのうちに踏みつけられていきます。もがいても結局、社会の底から這い上がることができなかった権藤や別当、沢上たちの姿をそこにかぶせているよう。その結末はアクション映画というくくりでは収まらない、絶望的な物語。

 

 

というわけで見出し。テンポの良いアクションムービーのように始終展開し、しかし、結末は予想外で強い衝撃と余韻を残して終わった本作。これは娯楽アクションムービーか、フィルム・ノワールなのか、そんなことを思った、鑑賞後でありました。

 

 

石井輝男監督「殺し屋人別帳」

 お兄様たちがカッコイイ映画。 

 

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【映画についての備忘録その75】

石井輝男監督×渡瀬恒彦主演「殺し屋人別帳」(1970年)

 

 

浦波興業会頭・浦波(沢彰謙)は殺し屋の黒岩(田崎潤)と宇野木(小池朝雄)に金を積んで、福岡を縄張りとする組の組長を殺害させ、北九州一帯を傘下に修めていく。残るは長崎の竜神一家のみ。竜神一家の二代目・統一(吉田輝雄)がまだ若いこともあり、浦波はこれを自分で片を付ければよいと考え、用済みの二人を消そうとする。しかし、逆に黒岩と宇野木に射殺される。さらに黒岩は相棒の宇野木をも殺し、浦波の縄張りを手中におさめ黒岩組と改称した。

流れ者の真一(渡瀬恒彦)が長崎に現われたのは、黒岩組が竜神一家を潰そうとこの地に乗り込んで来たおりだった。ある日、真一は長崎港の岸壁で車に接触して転倒した松葉杖の娘ナオミを介抱した。この光景に感動した黒岩の娘ミッチーの世話で、真一は黒岩組の客分になった。同じころ、モンマルトルの鉄(佐藤允)も黒岩組の客人となる。

竜神一家は統一の父親・先代の遺言を守り、ドスに封印をかけている。黒岩組の妨害を受けながら、竜神海運は堅気として長崎の海運業者たちを守ろうと、木口(中谷一郎)や秀(荒木一郎)は統一を支えていた。しかし、黒岩組が荷上げ作業妨害作戦に出た。苦境に立つ統一。一気に竜神一家をつぶそうと、黒岩は一切を賽の目で勝負をしようと持ちかけるが…。

 

 

輝雄さんのファンになったばかりの頃、すぐにTSUTAYAでレンタルして観た映画。その後、東映チャンネルでの放送も鑑賞し、今回、石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷での上映で初めて大きなスクリーンで観られたので備忘録を書くことにしました。初めて見てから備忘録を書くまで時間がかかってるのは観てるとちょっと複雑な心境になってしまうからでして。

 

 

さて、まずは見ていただきたい、このポスターの惹句。「東映秘蔵っ子2大新人が競う殺しのアクション!」…競ってなかったし!

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渡瀬恒彦さんのデビュー作で、この惹句からも想像できるとおり、渡瀬さん(と、伊吹吾郎さん)を売り出したいから企画された映画のようです。映画のストーリーは「網走番外地 望郷編」をなぞっていて、主人公の名前は真一だし、舞台は長崎だし。渡瀬さんを健さん的に売り出したい、という思惑が分かります。

なのに、映画見終わった印象は「吉田輝雄佐藤允中谷一郎がカッコよかった映画」。若い二人じゃなくて、お兄様たちがカッコいい映画なのでありました(あとでちゃんと思い出すと、渡瀬さんにも伊吹さんにも見せ場はあるんだけど、お兄様たちがかっこよいせいで印象が薄いw)。

 

 

 

モンマルトルの鉄、佐藤允。白いスーツに黒のマント、口笛で”フランシーヌの場合”を吹きながら登場し、会話にフランス語を挟んでくるというとてもキザなキャラクター(「網走番外地 望郷編」の杉浦直樹さんの役みたいな感じね)。黒岩組にわらじを脱いでいても、自身のなかの”正義”みたいなものは曲げず、スマートにナオミや木口の苦境に手をさしのべる。しかし、最後は黒岩組の客人としての恩義を晴らすべく、真一との勝負を選ぶ。

 

木口、中谷一郎。統一の心の内をよく理解して、陰に日向にしっかりと支える男。黒岩組から因縁をつけられ、背中の彫りものが気にくわないと言われて、それならばと、ライターを差し出して「消してくれ」という時のかっこよさと言ったら。若い者にも慕われ、黒岩組と喧嘩になって先代に破門された詩郎(伊吹吾郎)も頼りにする男。

 

竜神統一、吉田輝雄。父親の遺言を守って、堅気として竜神海運の舵取りをし、長崎の他の海運業者を黒岩組から守るため厳しい仕事も引き受ける。竜神一家のシマを狙う黒岩の策略で賽の目で決着をつけようと誘い出されるが、その裏を読み取ってあえて黒岩の用意した賭場へ出向き、八百長を見抜いてシマを守る。黒岩組の横暴にも耐え続けるが、木口が犠牲になったことでついに封印していたドスを手にし、黒岩組との決闘に挑む。まさに任侠。

 

と、いった次第。お兄様たちだけじゃなくて、「網走番外地」と同じく鬼虎として出てきちゃうアラカンさんの立ち回り(ポスターにある“子守唄を聞くと人を斬りたくなる”とかいうの、鬼虎さんのことだったしwしかもこの子守唄、「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」のあの子守唄なのよ)、悪役の田崎潤さんの潔い死に様と、おじさま?おじいさま?達もそれぞれ素敵で印象的です。

 

 

なかでも、輝雄さん演じる統一はやっぱり、というべきか、かっこいいところをかっさらっていきます。賭場の緊迫した場面でのやりとり、黒岩組との多勢に無勢の決闘。とくに、銃の弾が飛び交うなかで黒岩にドス一本で迫っていく決闘のクライマックスなんて、この映画の中で最高の見せ場。このときの、黒岩目線でとらえた、迫ってくる統一の鬼気迫る表情は、美しいわ渋いわで、スクリーンに引き込まれます。もうね、これもすごいハンサムなの!!2年ほどの異常性愛路線の作品が続いている間に重ねた年齢とそれにともなってあらたに引き出された魅力―渋さの増したかっこよさと色気とでも言いましょうか―が、耐え忍ぶ統一を通して現れていて、その前に撮っていた2作の石井監督の任侠映画(「決着(おとしまえ)」「続・決着(おとしまえ)」)とは違った侠気で魅せてくれます。

 

 

と、いうわけで石井監督は今作でもとてもハンサムに輝雄さんをフィルムにおさめてくれているのですが、異常性愛路線をへて、これで輝雄×輝男の蜜月が終わってしまうという作品でもあります。先日のラピュタ阿佐ヶ谷でのトークイベントでもそのことをお話されていますが、統一のかっこよさにほれぼれしながら、撮影当時の輝雄さんの心境などを想像してしまって、観ていて複雑な気持ちもよぎったり(上で書いたのはそういうことで)。再びお二人が「無頼平野」で組むまで25年を要します。

 

kinakossu.hateblo.jp

 

 

殺し屋人別帳」のあとに、私が輝雄さんを知るきっかけとなったテレビドラマ「ゴールドアイ」があって、「ゴールドアイ」ではさらに渋く、大人の男のかっこよさ(後でこれで34歳だったと分かった時の衝撃と言ったら!)が増していて、遊び心みたいな大人の余裕も感じさせてくれます。だから、今作のあともっと二人の映画があったら、年齢を重ねていく輝雄さんの姿をかっこよく撮ってくれていたに違いない、と思ったり。

 

 

そうそう、この映画、最後に渡瀬さんが歌う映画の主題歌が流れます。真一が鉄と勝負して、傷つきながらナオミとの約束の船に乗ろうと港へと向かうシーン。本来ならとても余韻の残るシーンなのですが、渡瀬さんの決して上手いとは言えない歌で色々台無しになっている感wなんでそこに歌入れちゃうかな!輝雄さんを格好良く撮ることには注意を払いつつ、主演の扱いはぞんざいな石井監督なのでありました(笑)

 

石井輝男監督「神火101 殺しの用心棒」

 ジェームズ・ボンドが主役・・・じゃない!! 

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【映画についての備忘録その74】

石井輝男監督×竹脇無我主演「神火101 殺しの用心棒」(1966年)

 

香港ー偽札偽造組織がアジトにしているホテルの一室。組織の首領格の一人が電話を受け、秘密警察・神火が新たなエージェント・101(吉田輝雄)を香港に送り込んできたとの連絡を受ける。その電話の途中、部屋に盗聴器が仕掛けられたのに気づく偽造組織。神火はそれを察してアジトに乗り込み逮捕を試みるが、互いに大きな犠牲を払う。しかし、肝心の盗聴の記録となったテープは行方不明。そのテープは神火に追われた組織の一人が息絶えたナイトクラブの前の鉢植えの中に隠されていたのだった。

神火の手にも組織の手にもわたらないテープ。それを見つけたのはクラブで働く阿蘭(吉村実子)だった。阿蘭は自分の働くクラブの前で起きた殺人事件とそのテープに関連があるのではないかと考え、恋人のタンレイ(竹脇無我)にそのテープの存在を伝える。テープを聞き、偽造組織の存在と神火101の存在を知ったタンレイ。水上生活者・蛋民のボス(嵐寛寿郎)の手を借りながら、暗躍する悪の存在を追求することにする―。

 

 

 

石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 の鑑賞記録、まだまだ続きます。通いすぎw3回券何回買うねん。

 

石井監督が松竹で撮った3本の、3本目。1本目と同じく竹脇無我さんの主演。ポスター画像でもわかりますが香港とマカオでロケをした作品。「日本映画の輸出に貢献する」とかいう趣旨の今まで見たことない決意表明のテロップから映画が始まります。

 

さて、このタイトル「007は殺しの番号」(「007 ドクター・ノオ」の公開時のタイトル)とか「007 危機一発」(「007 ロシアより愛を込めて」の公開時のタイトル)とかみたいですよね。ね!ね!・・・ね!なんなら007シリーズの各タイトル、このルールですし。こりゃ、敏腕エージェント・神火101の大活躍だね!って思うじゃないですか!んで、竹脇無我主演ですから、竹脇無我さんが101だと思うじゃないですか!!…じゃなかったんだよぉ!101は吉田輝雄で、101は主役じゃないんだよぉ。+゚(*ノ∀`)輝雄さんはまさに、ジェームズ・ボンドのごとし、だったのですが(≧∇≦*)

 

 

タイトルと構成の不一致をはじめ、いろいろとあって、モヤモヤがつきまとうこの映画(笑)

無我さん(どうしてもファーストネームで書きたくなるお名前)は101じゃないんだったら何なのか?というと、よく分からない。国の諜報員というわけではない。警察官でもない。正義を貫くジャーナリストとかいうわけでもない。何のために我が身を危険にさらして秘密を探っているのか分からない。そして、後半になって明かされる、「国際冒険家」とかいうよく分からない分類。ん??何それ??とりあえず、悪には与しない、正義の人なのは分かったけど、我が身を危険にさらす趣味のある人?

タンレイは女性にモテて、切れ者で、偽造組織の手先(菅原文太さん)にも対等に渡り合う腕力もある(何なら途中、101と殴り合いになったりしますが、負けません)。黒いスーツでナイトクラブにあらわれ、ルーレットに勝ち、香港の夜の街をオープンカーで走ったり、彼女との甘いシーンもあるしで、裏も表も知った大人の男。この人物像は完全にジェームズ・ボンド意識してますやん。でも、演じている無我さんはそういう振る舞いをするにはどうにもまだ若くて大人の色っぽさが足りないし、榊原伊織のごとき生真面目さと表の世界でまっとうに生きてる人感が醸し出されていて、残念ながら、しっくりこない。「チャオ!」とか言っちゃうけど、全然似合ってないし(^◇^;)「日本ゼロ地帯 夜を狙え」の時もそうでしたが、演じている役に求められるもの(というか石井作品?)と個性が違いすぎない?しかも不運なことに(!?)神火101が輝雄さんなので、竹脇無我さんの役のあってない具合が目立つ。

タイトルロールが主役じゃない、国際冒険家というよく分からないお仕事、そして、この主演俳優と役との不一致。モヤモヤするぅ^_^;

 

加えて、ボンドガール的な立ち位置の阿蘭。キャラクター的にはかなりかわいいのですが(お別れのキスをせがむような女の子ですし)、吉村実子さんが、すみません、あんまり似合ってない、というか美人とは言い難いのもモヤモヤ(^◇^;)ボンドガールなのにこれはダメでしょ、っていうσ(^_^;バニーガール姿は可愛かったけどね。

 

 

さて、そんななか?神火101=吉田輝雄。はまりすぎ。似合いすぎ。ド派手なアクションと女の子とのイチャイチャは国際冒険家に譲りますが(というか、石井監督は輝雄さんに女の子とのそういうシーンは演じさせないですよね。異常性愛路線はあれだけど、それでもだいぶ抑えめにしている気がする。いつも硬派ないい男なんですよね)、まさに007、敏腕エージェントといった佇まい(〃ω〃)出番は多くはないけど、この年の輝雄さんのかっこよさを思う存分愛でることができます(〃ω〃) タキシード着てナイトクラブに現れるシーンとか、完全にジェームズ・ボンド。惚れ惚れします(いつもしてるとかいうツッコミはなしで)。単独行動のスパイなので、全然喋りませんが(台詞あるシーン、すごい後半なの!めっちゃ待たされるの!)同じ場所にいる黒いスーツ姿の無我さん、主役なのに完全に割り食ってます。神火101、デキる男感、いい男感、醸しだしすぎ(≧∇≦*)国際冒険家と二人で偽造組織を追いつめたときの銃撃戦も、スラリとした長身と長い手足で華麗にこなし、白い砂浜で銃を撃つシーンとかめちゃめちゃ絵になる(≧∇≦*)黒幕の乗ったセスナを銃で撃って、何やら目的を達成したようなニヤリ、も様になる。

ジェームズ・ボンドのようなハンサムがそこにいて、しかもタイトルロール。なのに主役じゃないwおかしいってばw石井監督もほんとは神火101を主役にしたかったんじゃないかなぁ。だって明らかに神火101のほうがかっこいいんだもん!!

 

今回の備忘録、どんな映画なのか全く伝わらないw後で自分で見返したときにストーリーを思い出す助けになるんだろうか、これw内容を知りたくて読んだ方も、こんなんですみません(;^_^A

 

香港の街を駆け回るアクションやオープンカーで疾走するシーン、たくさんの船が係留された場所で暮らしている水上生活の人達、レパルス・ベイ(「女体渦巻島」で死ぬ間際に百合が信彦に話してた思い出の場所はここなのか!と思いましたw)やマカオの様子、まさかの黒幕と面白い要素もあったのですが、映画そのものについてはモヤモヤがつきまとって消化不良な感じだった、石井輝男監督の松竹3本目。アラカンさんとか大木実さんとか、いつもの俳優さんも出てくるし、一つ一つのアクションの面白さといった部分はありましたが、石井監督らしいテンポのよさや切れ味はあまり感じられませんでした。香港の漫画が原作、香港のキャスト・スタッフ大勢、といった環境では、石井監督も思うようにできなかったのかな?とか思ったり。。。

 

 

今回のラピュタ阿佐ヶ谷の特集で、1966年の石井監督が松竹で撮った3本の輝雄×輝男作品をすべて観ることができました(ラピュタ阿佐ヶ谷さん、ありがとうございますー)!主演に竹脇無我さん、宍戸錠さんと普段起用しない俳優さんが使われたことで、かえって、石井作品における輝雄さんの存在感とその世界観の体現ぶり、また、石井監督作品だからこそ引き出される輝雄さんの魅力をあらためて感じたり。輝雄を1番かっこよく撮るのは輝男なのであります('◇')ゞ(持論)。松竹3作…輝雄さんの役はどれもテイストが異なっていて、そしてどれもかっこよかったなぁ(//∇//)やっぱり1966年の吉田輝雄は最高だヾ(≧∇≦)

これで、あと観られていない輝雄×輝男の映画は「恋愛ズバリ講座」のみ(あと、テレビで火サスで石井監督が撮ったものに輝雄さんが出演されているものがあるようですが。「おんな怨霊船」は鑑賞済み)。一気に観られて嬉しい反面、「見たことがない作品が観られる」楽しみがなくなってちょっとさみしい気分だったりσ(^_^;(わかっていただけますかね、この感じw)

 

そして、ほんとにこの3作、ソフト化してください!!お願い、松竹さん!!

 

石井輝男監督「霧と影」

あと15分長かったら、どんな映画になっただろう。

 

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【映画についての備忘録その73】

石井輝男監督×丹波哲郎主演「霧と影」(1961年)

 

能登半島の青蛾小学校の教員笠原が観音崖の上から遂落死を遂げた。毎朝新聞の記者・小宮(丹波哲郎)は、笠原とその妻・雪子とは学生時代からの親友で、地方版に載った笠原の死亡記事を不審に思う。高所恐怖症だった笠原が危険な断崖の上を歩くのは不自然だと感じたからだ。
笠原は事件のその日、猿谷郷に住む長期欠席児童宇田清の家庭訪問に行ったまま消息を断ったのだという。猿谷郷は宇田本家と分家、矢田本家と分家、という、たった4戸からなる貧しい集落で、清の叔父甚平(安井昌二)はその集落を嫌って東京へ出たという。
小宮は地方通信員の坂根(梅宮辰夫)と協力して、笠原の足取りを追った。その結果、笠原はその日、富山の薬売りと一緒に猿谷郷から山を下ったという情報を得る。
その薬売りは松本貞次郎という名で、もう一人の連れの男と東京へ発ったことも分った。また、「紳士録を作る」といって宇田甚平の身元調査をしている、興信所の井関と名乗る得体の知れない男の動きも知った。
東京へ帰った小宮は、デスクと緊密な連絡をとりながら、井関、宇田甚平の身辺調査にあたるが…。

 

 

今回も 石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 での鑑賞記録。

3回目の「大悪党作戦」の鑑賞(行き過ぎw)のあと、観てきました。水上勉原作×石井輝男監督。そしてはからずも梅宮辰夫さん追悼。

 

 

原作を読んだことはないのですが、それでも「これは上映時間83分じゃ足らないだろ…」という映画でした。水上勉原作の映画は「はなれ瞽女おりん」を観ていて、その内容と、本作の設定を思うと、せめて100分くらいにしておくれ、と😅

 

なぜかというと、登場人物が多いのと、猿谷郷の設定がおもしろかったから。

 

笠原は東京の大学を出たのに能登で教員をしているという、少し変わった人物だし、小宮と雪子には、それぞれはっきりとは言わないけれど何かの思いがあったんじゃないかと思えるような表情や空気。笠原の教員生活はどんな風だったのかな?とか、宇田甚平が猿谷郷を出る決意をした経緯(貧しかったことは語られるけど)、一人をのぞいて名前しか出てこない矢田本家の人とか、学校に来られない清はどんな風に過ごしてるのかとか、もうとにかく、気になる人物が多過ぎ!最終盤に明かされる井関の正体も、分かるとまた、そちらのお家の人達はどんな思いだったのか!?とか。少ししか出てこない人達の、背景がめちゃめちゃ深そうなんですよね。でも、83分なのでそういうとこはバッサリ😅そんでもって、人はやたらと出てくるから、もう、誰が誰やら整理しながら観るのが大変σ(^_^;原作読んでから観てたらもう少し違ったかなぁ。

 

そして猿谷郷。たった4軒の、しかも里のほうとは離れた集落。清のお父さんは気が触れてしまって土蔵に閉じ込められてるし、奥さんと父親がくっついちゃってるし。貧しくて子供が学校に行けない(父親の代わりに働き手にされているため)ほど、それでたった4軒とかもう、中にいたら絶望的な気分になりそう。そういう環境は別としても、小さな集落がどう過ごしてるのか、っていう人間関係の密度(矢田の家とはどういう風に関わってるのか?とか甚平と父親の関係は?とか)こっちもすごく気になる!でも83分じゃそこまではむり(^◇^;)っていう感じ。

 

小宮の勤める毎朝新聞の記者達の様子(電話がモリモリで、デスクがさばき、記者達がかけまわる。そして、鉛筆をやたら鼻に突っ込んじゃう面白い人がいるのは石井監督的(笑))はテンポよくて面白かったので、それとの対比で、その辺の人間関係をもう少しじっくり描いていたら、どれだげ面白かったのだろうか!?と。そんなわけで見出し。今回は作品の時間の短さ、テンポの良さで“石井監督らしいね”というよりはあと15分ほど長く“石井監督がそこを描いていたら、いったいどんな風に物語にし、どんな映画になっていたのかな!?”という興味がわいた作品でした。

 

そして梅宮辰夫さん。田舎の通信員で雪子の妹・良子に恋心を抱く、爽やか好青年(驚)。これ以前に私が観た最も若い梅宮さんは「決着」(1967年)で、この時はすでに、私の知ってる梅宮さん(「スクールウォーズ」のラーメン屋?中華料理屋?の主人。ぽっちゃりしたオジサン)だったので、本作を観て、爽やかさにビックリ。「決着」で硬派なほうに軌道修正させようとした、というのに納得なのでした。

丹波さんは「ホテル」の丹波さんを思い出し(「Gメン」の丹波さんは知らないのでσ(^_^;)、とっても似合っておられました!

 

そうそう、亀石征一郞さんが出ていたんですけど(オープニングのクレジットにも名前があった)、結局どこにいるか気付くこともなく、データベースみて井関役だったことを知りましたw次観た時は気をつけてみます(笑)

 

 

(あ、矢田本家って言ってたと思うんですが、確認できる資料が検索してもひっかからなかったので、違ってたらすみませんσ(^_^;原作読んでみよう。)

 

石井輝男監督「大悪党作戦」

競馬。雪山。ため息が出るいいオトコ。

 

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サインしていただいた「大悪党作戦」のスチル写真です。



 

【映画についての備忘録その72】

石井輝男監督×吉田輝雄宍戸錠主演「大悪党作戦」(1966年)

 

勝負は競馬の最終レースの2分間。売上金の1億を奪う―。

ボスの郡(嵐寛寿郎)が計画をたて、轟一郎(高英男)、その弟分の次郎(アントニオ古賀)南(吉田輝雄)、角(待田京介)、真弓(三原葉子)、郡の若い愛人・リカ(真理明美)らによって、実行される。が、その決行前日、下見にきた轟は見知らぬ男に突然顔を切りつけられ、大けがをする。筧(宍戸錠)というその男は、自分がその計画に加わるために、あえて轟を襲ったのだ。顔に怪我をおった男が仲間にいては目立ってすぐにつかまってしまう。代わりの人間が必要なはず・・・。郡は筧の魂胆とその裏にいるであろう仲間たちの存在に感づいてはいたが、計画を実行するため、筧を仲間に入れることにする。ただし、計画の詳細は教えないまま。筧もまた、その腹を探るために郡が仕向けたリカの誘惑にのるでもなく、逆に、リカには金を二人で山分けしないか、と持ちかける。そして、郡の読み通り、筧は仲間の槙(安部徹)や工藤(諸角啓二郎)たちにこの計画を伝えるのだった。

そして決行の日。大観衆で熱狂している競馬場の馬券売り場の中へ、警備員に化けた角と、事務員真弓の手引きで筧と南が押し入った。最終レースの2分の間に袋いっぱいに1万円札を詰め込む。角と真弓がその間に逃げる。2分きっかり、南は外で待っていた次郎に袋を渡す。次郎はその袋を運び屋に渡す。そして、別に用意していた千円札をバラまいて、これに殺倒する群衆の混乱を利用して、運び屋は無事に場外に袋を持ち出し、南と筧も場外へ。その袋は最後は角の恋人路子(清水まゆみ)に渡り、路子は貸別荘で郡とたちと落ち合い、金を渡す手はずだった。だが路子はホテルへ向かわず恋人の角と落ち合う。そして角と路子は奪った金を二人で山分けするつもりで、立山連峰へ逃げ込む。金を取り返そうと追う郡たちと、その金を横からかっさらうつもりの筧、そして筧の後を追う槙。大金は誰の手に・・・!?

 

 

石井監督作品の感想が続きます(゜∀゜) まぁ、石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 に通いまくってるからそうなるんですけどね(笑)

 

石井監督が松竹で撮った2本目、「大悪党作戦」。前作「日本ゼロ地帯 夜を狙え」とは打って変わって、スタイリッシュなクライムムービー。たった2分間の大仕事、大金を巡っての雪山でのチェイス&アクション、そして、文句なしのいい男。最初から最後までハラハラドキドキが散りばめられ、最後に予想外の結末と胸が熱くなる展開が待っている、最高に楽しい映画でした。

 

 

ド迫力の競馬のレースからはじまるオープニングタイトル。八木正生さんの軽快なジャズっぽい音楽もはまって、お馬さんたちと一緒にストーリーもスピーディーに展開します。筧が轟を切りつけ、逃げ、追いかける南に捕まってチーム・アラカン(勝手に名付ける)の待つホテルへ。郡は筧が乗り込んできた裏に感づいて、大まかな計画を伝えるだけ。裏を探るために仕向けられたリカに誘いをかける筧。チーム・アラカンはどうやって競馬場から金を持ち出すのか?リカは郡を裏切るのか?そして筧とその仲間達はどうやって郡たちから大金を奪うつもりなのか?この映画の仕掛けの種が一気にばらまかれて、最初からワクワク!

 

 

作戦決行当日。レース開始のサイレンがなり、南の時計は4時ちょうど(筧の時計は3秒早いw)2分間の仕事の始まり。時計とレースと、やるべき仕事。時間との勝負のドキドキ。チーム・アラカンのメンバーは計画を立てるアラカンさんをリーダーに、それぞれ大事な役目を担っています。メンバー全員個性があって、役割があって、疎かにされてるキャラクターがいない。みんな手際よく仕事をすすめて、この2分間と、その後1億円を競馬場から持ち出すまで、瞬間瞬間で誰が写っていても楽しいです。

 

 

前半の競馬場を舞台にしたワクワクが終わると、次は金を巡っての立山でのチェイス。最初はゆっくりと。登山客の風情で列車に乗り、今にも崩れそうな吊り橋を渡る角と路子。同じ道をたどり追いかける郡、リカ、南、真弓、一郎、次郎、筧。ひたすらに山道を登る角たちと追いかける郡たち。この登って行く先、どこで二組がかち合うのか。こちらは郡たちの目線と歩くスピードに合わせて、一緒に追いかけていきます。途中立ち寄った山小屋で朝早く角と路子がたったことを知ると、険しい道行きに、郡だけを残して再びの行軍。そして、そこに槙たちが追いつくと、雪の残る美しい立山をとらえながら、三者で激しいチェイスと銃撃戦になります。雪山の斜面を走る角や筧、南たちを、地面スレスレと思えるような位置から見上げるように捉えていて、それが斜面を転げ落ちるようなスピードを感じさせます(あと、多分少し早回ししてるのもあるな)。そして、その映像がほんのりと白くなっていて、それが降り積もった雪がその激しさで舞いあげられてるように見え、追いかける側と逃げる側の高揚感みたいなものを体験させらているよう。体当たりのアクション。スタントなんかなしで役者がガチでやってるんだな、っていうのが分かるんですよね。壮大でスピーディーで、美しく、そしてカッコイイ。角以外の男達は雪山をスーツで駆け回ってるし、路子以外の女たちーリカと真弓はミニスカートで男達を追いかけてるし、リアルではあり得ないんだろうけど、これがめっちゃクールでめっちゃかわいいくて、いい!

 

この立山のシーンは、雪の部分と緑が目立っている部分があって、郡と離れてからは、両方が代わる代わる映し出されながらのチェイスが展開されます。この2つは画面のなかで役割分担しているように思え、緑の目立っている部分では三者が直接にぶつかり合うということがなくて、“次をどうするか”を考える、一時の安堵の場所・安全地帯のような役割。一方、銃撃戦や殴り合い、金と女の交換の駆け引きは雪の多く残る部分で展開されて、ここはいつ命を失うか分からない危険地帯、そんな感じに見えます。この役割分担が、最後に追いつめられた5人―南、轟、次郎、真弓、リカ―の結末として、南が残り、轟、次郎、真弓、リカは山を降りる、というシーンで、雪へ向かって再び歩き出す南の置かれた状況の絶望感とそこへあえて飛び込んでいくかっこよさと、緑のある麓へ向かっていく真弓たちへ抱く安堵感とがないまぜになった複雑な感情を観ている側が抱くという、すごい場面を作り上げています。

 

 

そして、競馬場でも雪山でも、ため息のでるようないい男、南。スラリとした長身に浅黒い精悍なマスクの超ハンサム(吉田輝雄ですからヾ(≧∇≦))。口数少なくクールだけど、情に厚く仲間思い。郡を信じ、轟を信じ、物静かに正確に仕事をこなす。いい男なのに女には興味がないと言って、心地いい言葉をかけたりはしないけれど、さりげなく優しくてそしてちょっと少年のような部分を残し、”母性愛をくすぐる”ような魅力を持っている。男の理想とする男と、女の理想とする男の両方を持ち合わせています。そして、最期は自分を犠牲にして仲間を助ける男気。白いスーツに白いコートで雪山を駆ける南の、雪に同化したような最期は、その心の美しさを表しているようで、ため息がでるようないい男(書きながら思い出して(。ノωノ)ってなるわw)。新東宝時代、若き吉田輝雄の真っ直ぐで、素直な雰囲気をとらえた石井監督は、そこに年齢を重ねて加わった渋さをのせて、さらにカッコよくカメラにとらえてくれているのであります(仲間を逃がすためにしんがりを務めて、雪山を銃を撃ちながら逃げるシーンがあるのですが、ライトがあてられるてるんだろうと思うけど、真っ白な雪山のなかに南さんが一人浮かび上がるように写し出されて、ここもすんごいカッコいいです(。ノωノ))。

 

 

と、輝雄さん@南のかっこよさを思う存分書いておいて(゜∀゜)この映画、日活の宍戸錠さんが他社出演作の第一作目として選んだ作品ということだそうです。が、ヒットメーカー・石井監督の作品、初の他社出演で主演、とかいう話題になる要素が多かったであろう作品ですが、宍戸錠さんの扱いはなかなかにひどいような気がします(笑)私は「肉体の門」しか見たことがないので、宍戸錠の個性とか良さが生きるのはどういう役、とかいうのは良く分からないのですが、まずもって、輝雄さんとW主演の位置なのに、ただひたすらにイヤな男でヒーロー的要素はなく(笑)そして何より、出番多い役で待田さんとのアクションの見せ場とか、色男っぽくリカを誘惑したり、なんてシーンも用意されているのに、その割に印象が・・・薄い!!(最後は「え?これでスクリーンから退場なの!?」っていう終わり方だし(笑))監督の愛情が感じられないっていうか。+゚(*ノ∀`)(ちょっと絡むだけの田中邦衛さんとか、無理やり役を作ってる感もあるw由利徹さんへの愛はすごい感じますw由利徹さんめちゃ笑わされるしw)

 

 

まぁ、でもこの扱いの酷さ(^_^;)が、石井監督お気に入りのキャストで揃えたと思われる、チーム・アラカンのメンバー―クールな切れものだけど弟分(次郎・アントニオ古賀さんも兄貴を慕ってついてくるピュアな感じが良かったです!)との絆を大切にする熱い男・轟(高さんがこの役に意外にもwハマっている!そしてアントニオ古賀さんのギターにあわせて歌うシーンがあるとかいうサービスも!)、待田さんの、頭の良い武闘派だけどどこか危険な感じのする角(最初の登場がシャワー浴びて上半身裸で出てくるんですが、素晴らしい肉体美w)、三原さん演じる真弓の天然の可愛らしさ、真理さんのリカの小悪魔的な美しさ、そしてもちろん!な輝雄さんと!―の魅力を引き立てていて、それはそれで良かったのかもwそうそう、南と真弓のシーンは、この二人、新東宝に戻ってきたのかな!?って思うような可愛らしさで、そこも石井監督の愛情を感じたりw相変わらず、輝雄さんは三原さんに振り回されるような役だしね(*´ω`*)

 

 

というわけで、ストーリーの面白さと映像の魅力と何よりいい男・南と、最初から最後まで楽しかった「大悪党作戦」。「日本ゼロ地帯 夜を狙え」と同じく、めちゃめちゃ観てみたかった松竹の輝男×輝雄作品は、期待以上に面白くて格好良くて。この特集でついに観られたことに感謝感謝、なのでした!(・・・松竹さん、DVDにしてよぉ!)

 

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石井輝男監督「リングの王者 栄光の世界」

 石井輝男ワールド、夜明け前。

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【映画についての備忘録その71】

石井輝男監督×宇津井健主演「リングの王者 栄光の世界」(1957年)

 

魚河岸の青年塚本新一郎(宇津井健)はかねて東洋新聞の記者・畑から拳闘界入りをすすめられていた。新一郎も拳闘の世界で勝負をしたいという思いはあったが、母志づや恋人の京子(池内淳子)の反対もあり、その一歩を踏み出せずにいた。しかし家の借金や足の悪い妹敏子の手術代を手に入れるため、新一郎は拳闘家になることを決心し、畑を訪れた。畑は銀座裏のバーに彼をつれて行き、元ボクサーの岩崎(中山昭二)にトレーナーを頼む。岩崎は一旦は断ったが、畑の情熱と新一郎の熱意に動かされてトレーナーを引き受けることにする。

クラブで岩崎を相手に猛練習を続ける新一郎。その才能の片鱗に、同じクラブでライト級の有力選手、三田村(細川俊夫)やその取り巻きからは疎まれるのであった。やがて新一郎は前座に出て派手なデビューをしたが岩崎や畑の祝をよそに京子と連れだって帰る姿に、畑は京子を訪ね拳闘に女は禁物だ、彼の将来のために暫らく遠去かってくれと頼む。京子の姿がみえなくなり新一郎は落胆するが、果されなかった自分の夢を彼に託す岩崎の指導は厳しく、新一郎もそれに答え、連戦連勝を重ねていく。

その頃、試合毎に観戦に現れる女がいた。キャバレーのマダム、ルリ子。彼女の誘惑に心ならずもひきづられて行く。岩崎はそんな新一郎にかつて女のために身を持ち崩した自分を見て忠告をするが、新一郎はだんだんとルリ子にのめり込んでいくのだった―。

 

 

 

 

石井輝男監督の監督デビュー作。そして「無頼平野」で岡田奈々さんが歌う「ジュテーム」がもともとはこの映画で歌われていた歌だと教えていただいて気になっていた作品。石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 で観られる!と思って楽しみにしていたのですが、なんせ輝雄さんのトークイベントのあった日の、その前の上映回だったもので、映画への集中力はややかけ気味での鑑賞だったのは否めませんσ(^_^;

 

 

そんな状況で観た映画のほうは「やっぱり石井監督だね」よりも「やっぱり宇津井健だね」のイメージの作品でありましたw私にとっての宇津井健さんは”薄汚ねぇシンデレラ”(By 石立鉄男)をこっそりと助けに来る刑事(笑)品行方正、公明正大な真面目な大人。で、本作はそういう映画で、石井作品に抱くイメージよりも宇津井健さんに抱くイメージの映画。石井監督も元々は清水宏監督とかにつかれたりしてたわけですし、そういう系統の映画になっても不思議じゃないか。

 

メリーゴーランドに乗る宇津井健さん。デートで照れる宇津井健さん。池内淳子さんも「セクシー地帯」の時とは違って少しふっくらしていて純情な少女。最初から爽やかすぎて、石井輝男監督の映画を観ている気がしません。まだ若い宇津井健はふらっと道を外してしまったりもしますが、ちゃんと軌道修正して真っ当に生きて、最後は京子と元サヤにおさまり、そしてボクサーとして成功をおさめる。ファイトマネーで妹の足も手術ができて治り、素晴らしいハッピーエンド。よくまとまった、絵に描いたような青春映画。

 

 

石井監督のインタビューを読むと、プロデューサーの佐川さんがこの企画をもってきたんだけど、アクションなんてやったことないから監督をうけるかどうか渋った、なんて話があります。でも、三田村とのノンタイトルマッチはスピード感があって流石。この後にアクション映画でヒット作を作っていく才能がすでにこの時点で感じられるのでありました(細川さんのほうがボクサーの雰囲気があってかっこよかったなw)。

 

 

とかなんとか書きつつ、やっぱり印象度としては石井輝男監督より宇津井健さんなわけです(笑)というわけで見出し。このコンビでいくつか作品もあるのは知ってはいるのですが(「スーパージャイアンツ」はいつか観たいw)、やっぱり石井監督の作品のイメージからするとあまり結びつかない宇津井健さん。作品自体が石井監督の世界観ができあがる前という感じで、だから可能だった組み合わせなのかも、と思ったり。そりゃ、天知茂(天知さん、この映画にも出演しているんですけど台詞が殆どなくて見逃しそうになりますw)、吉田輝雄と主演俳優が変わっていくわけですわ。

 

 

そうそう、劇中で歌われた「ジュテーム」。キャバレーの男性歌手(旗照夫)が白い手袋をはめて(歌詞の通りですね)歌います。「無頼平野」のレビューシーンとは違ってしっとりと歌い上げる歌は、旗さんの歌声の魅力もあって、これもまたとっても素敵でありました。(旗照夫さんについてWikipediaを読んでいたら「おかあさんといっしょ」の初代レギュラー、と書いてあって、「どんな”おかあさんといっしょ”だったんだ!?」と思ったことも書いておきますw)