T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「黄色い風土」

 石井輝男×松本清張はやはり石井調。

 

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【映画についての備忘録その69】

石井輝男監督×鶴田浩二主演「黄色い風土」(1961年)

 

 

「週刊東都」の記者若宮(鶴田浩二)は女性問題の権威島内輝秋(柳永二郎)の談話を取るため列車で熱海に向う。乗った車両は新婚夫婦でいっぱいでホームは見送りの人達であふれている。だが、そんななか、見送人もなく発車間際に新婚夫婦が駆け込むのをみて、どこか不思議に思うのであった。そして、なんとか見つけた席の隣には、カトレアの匂いを漂わせた美貌の女性(佐久間良子)が座っていて不思議な雰囲気を漂わせている。

熱海につくと村田通信員に迎えられた若宮は島内が宿泊している「つるやホテル」へ宿をとる。フロントで受付をしている間、列車で一緒だった新婚夫婦とすれ違う。

その晩、若宮の泊まる418号室の部屋に黒い服を届けにきた男がいた。心当たりのない若宮の怪訝そうな表情を見て、男は部屋を間違えたことに気づき慌てて出ていく。

その翌朝、錦ケ浦で自殺があった。現場にとんだ若宮は、その死体が例の新婚の夫で、新妻は失踪したと知らされる。若宮は、二人が泊まっていた部屋が413号室だと知って、昨晩の男は418号室と413号室を間違えたことに気づく。そして、ホテルに戻ると例のカトレアのにおいのする女が―。若宮の顔を見ただけでは訪ね先と間違ったことに気づかなかった男とその夫婦の関係は?カトレアの女は何か関係があるのか?若宮は週刊誌の特ダネ記事としてその謎を追いかけることにする―。

 

 

サスペンスなので、今回も検索でここにたどり着いた人にうっかりネタバレしないように、詳しく、具体的なことは書かないようにしつつ。。。

 

始まりました「石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷」キタ━━━(゚∀゚)━━━!!吉田輝雄ファンになってから、こういう特集がくるのを待ち望んでおりました!で、二週目からの参戦の予定だったのですが、一週目に所用で休みを取って午前中に用事が済んだので、「やっほ~い」とばかりに行ってきました。松本清張の原作を石井監督が撮っている、という(私的には)不思議な組み合わせに興味津々。

 

 

松本清張原作の映像化、というのは私が観たことがあって記憶しているのは中居くん主演の「砂の器」と米倉涼子さん主演の「黒革の手帳」。どちらも連続ドラマ。あと、他にも観たことがあるかもしれませんが、「松本清張=社会派なテーマを絡めたサスペンス」という印象。Wikipediaにも「社会派推理小説」なんて文字があるので、間違いじゃないよね。で、その松本清張×石井輝男監督。なんという違和感(旧作邦画ファン歴が浅いせい?)。と、いうことでどんな風になっているのかなぁ、と思って鑑賞した本作。印象は見出しの通り。私のイメージする松本清張より、私のイメージする石井輝男が勝っていました(そもそもの原作がそうなのか、石井監督の手にかかったからなのか、そこはいつか原作を読んで判断してみたいと思いますw)。

 

 

まずは作品のテンポ。無駄な部分をガンガン削ぎ落としてるのかなぁ、という、語らせすぎないストーリー展開。社会派ドラマというのは、大体、犯罪がおきた背景が重苦しくて、そこの解明にも時間を要する展開かと思います。そしてそれ故に犯人に対する同情みたいなものを感じ、そこがまたドラマに深みとかを与えていると思うのですが、本作はそういった部分はなし。偽札をめぐる犯罪の背景に、旧陸軍の部隊の繋がりがあり、そしてその主犯である兄とともに行動する妹。事実をかぎつけ金づるにしようとする新聞記者などなど。。。”社会派”ならばおそらくここに何か離れがたい絆やドラマが存在しているように思うのですが、そういう説明は一切なし。ただただ謎を解明するためにたどっていく、という感じです。89分の間、観客は鶴田浩二と一緒に息つく暇もなくひたすらに事件を追い続け、最後まで主犯に同情する余地はありませんでした。今作の脚本のクレジットは高岩肇さんだけで石井監督の名前はありませんが、社会派小説を原作にしながら、観客に小難しい説教をたれるような部分がなく、娯楽作品として仕上げる、石井監督らしさを感じるストーリー展開なのでした。

 

そして、最終盤のアクションシーンの絵。あちこちドカンドカンしてる(ここの舞台設定も面白かったので、ぼかします(笑))なかで犯人と若宮が逃げ惑うんですが、そこで、ドカン!の産物としてあるものが吹っ飛びます。で、吹っ飛んだそれをわざわざ写していて、社会派推理ドラマなら、それ、普通やりませんよね!?みたいな感じ。そんなところもとっても石井監督らしさを感じるのでありました。・・・原作どうなってるんだろ(^◇^;)

 

(あと、カトレアの女と若宮の関係がわりとさらっと描写されているところもなんかとっても石井監督らしいかも)

 

ラピュタ阿佐ヶ谷のこの特集、下村健さんの作品ごとの解説がとても充実してるんですが、「黄色い風土」の撮影で石井監督が鶴田浩二にキレられた話が面白いので、ぜひ、リンク先をご確認下さい(笑)

 

そうそう、私、鶴田浩二さんの声が役柄(吉岡司令補的@「男たちの旅路」なイメージとして)に対して高くない?ってずっとどこかで思ってたんですが、この作品をみて、「やっぱり高いわー」って思った次第(笑)ここは旧作邦画のファンの方は暗黙の了解であえて触れない案件・・・なの!?

 

中島貞夫監督「日本暗殺秘録」

至高の3/142

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【映画についての備忘録その68】中島貞夫監督×千葉真一主演「日本暗殺秘録」(1969年)

 

日蓮宗行者井上日召片岡千恵蔵)の元には彼の教えを学ぶために、民間青年や大学生、海軍の青年将校などが集っていた。貧困で苦しむ庶民を救おうと、国政改革を叫んで腐敗した権力者たちを標的に、一人一殺のテロを計画する。小沼正(千葉真一)は日召に従って革命を志して上京し、昭和7年2月9日本郷駒込小学校の演説会場に入ろうとした井上準之助前蔵相を殺害する―

 

 

先日、久しぶりに全編通して鑑賞しました。実は、一昨年の年末、問題作だったとかなんだとか、そんな事は一切知らず、吉田輝雄ファンになったばかりの私は、吉田輝雄@来島恒喜見たさにU-nextで鑑賞。以降、なんせ142分の長尺なので、その後はひたすらに来島恒喜パートだけ繰り返し視聴していました(いや、長尺なのはあまり関係ないか・・・とにもかくにもかっこよかったからそこだけ見たかったんです、はいw)。そしたら、諸事情によりU-nextでの視聴機会がなくなってしまい・・・。来島恒喜が観られなくなって(その区切り間違えてるって)半年以上経過した11月、東映チャンネルで放送があり、それをきっかけに久しぶりに最初から最後まで鑑賞した次第。

 

 

さて、いきなりですが、この映画の最後はこんな字幕で終わります

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そして現代
暗殺を超える
思想とは何か

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これ、観る人によっては何かしらの政治的主張を感じる人もいると思いますし、それ故に問題作のような扱いをうけたのだと思いますが(詳しくは検索すると色々出てくるのでそちらにお任せします)、私自身は娯楽作品的な映画、と感じました(暗殺が思想!?ってつっこみたくなるとこもあるしw)。

 

この映画は明治維新直前、桜田門外の変から二・二六事件までの、日本で起きた暗殺事件(二・二六は暗殺ってよりクーデターって感じですけど)をかなり偏った配分でオムニバス形式でつなぐ作品。上のあらすじはメインで時間が割かれている、血盟団事件のストーリーです。Wikipediaの力をかりて、この映画で取り上げられている事件と暗殺犯を演じた俳優陣をピックアップしてみます。

 

桜田門外の変】有村次左衛門:若山富三郎

大隈重信遭難事件】来島恒喜:吉田輝雄 (←ここ大事)

安田善次郎暗殺事件】朝日平吾菅原文太

【ギロチン社事件】古田大次郎高橋長英

血盟団事件】上記の通り

【相沢事件】相沢三郎:高倉健 

二・二六事件磯部浅一鶴田浩二 /栗原安秀 :待田京介 / 村中孝次 :里見浩太郎

 

(この映画のクレジットタイトルは血盟団事件のメインどころの俳優さん達が単独で出たあとに、輝雄さん、文太さん、待田さんの三人+ナレーションの芥川比呂志さんが一枚で出ていて、そこもなんか色々思いを巡らしたり。この時点でそれだけの活躍をされている素敵な俳優さんが翌年を最後に映画出演が途絶えてしまうとかなんと勿体ないのだろう😢)

 

これとあと2つ、紀尾井坂の変(これには唐十郎さんが出ている)と星亨暗殺事件が取り上げられています。

 

この中で時間を割いたドラマになっているのは

・ギロチン社事件(15分くらい?)

血盟団事件(1時間半くらい?)

二・二六事件(30分くらい?)

の3つ(カッコ内は体感w)。それ以外の事件は暗殺犯が登場し相手を殺害するまでを描くだけ、という構成。大体1件あたり3分くらいでしょうか。健さんも、若山富三郎さんも、その3分ほどのために出ています。この作品の紹介には大体、オールスター映画、と書かれているのですが、旧作邦画に興味を持つ以前から、作品やご本人を知らなくても名前だけは聞いたことがある、という俳優さんが沢山出ており、知識が浅い私でも”オールスター映画”というのは理解できるような、豪華なキャスティング(どれくらい浅いかっていうと、まともに演技を観た人はいまだにこの作品だけ、という人が多くて、千葉真一さんですら、関根勤さんが物まねしてる人がタランティーノの映画に出るって、ホントにすごい人だったんだね、というような認識だったのですw)。

 

で、もっとも時間のさかれている血盟団事件のパートは千葉さん以外にも、片岡千恵蔵さん(オープニングのテロップでは片岡千恵蔵さんが一人、ドーンとトップで出ます。)、田宮二郎さん、藤純子さん、小池朝雄さんと豪華。ほかにも橘ますみさんや賀川雪絵さんと、石井作品で重要な役を演じている女優さんの姿も。なのですが・・・私的にはほかのパート部分が短く強烈な分、かえって少し退屈な時間にσ(^_^;

小沼正の実家はそこそこの規模の農家か何かのようでしたが、兄(高橋昌也)が会社の人に騙されて退職する羽目になったりで、大学へもいけなくなり、東京へ奉公に出ます(茨城出身)。奉公先のカステラ屋の主人(小池朝雄)は、昭和天皇の即位にあわせてカステラを大々的に売り出そうと設備の拡大をすすめますが、警察に賄賂を送らなかったせいで営業許可が下りず、その商機を逃し、借金をかかえて倒産。一緒に働いていたたか子(藤純子)や仲間たちもばらばらになり、たか子はカフェーの女給に身を落とします。こうして、自身も含めて真面目に働いている人が不況や不正でひどい目にあっていくなかで、井上日召に出会って感化され、血盟団事件を起こすに至る―という展開。不正に対する義憤や庶民の苦しみに心を痛めるといった美談のようにまとめられているのですが、こういう事件を起こす人の背景としては、独善的な印象も含めて想像できうる範囲。また、正は貧しい人たちを助けるための革命のはずなのに女給になったたか子に慰められたりとか、その時々で身の周りにいる女性に慰めを求めたり、何というか、理想論だけ立派で、地に足ついてないナルシストのように見えて(「青春残酷物語」を見た時の感じに近いかな)、個人の物語を描いているわりに、その動機や生き方に共感したり感情移入するようなものがないのです。暗殺犯に共感したらダメだろ、とかいうのは置いといて・・・。あと、身体弱い設定なのに千葉真一さんが全然死にそうに見えないので、そこも感情移入できないポイントだったかもσ(^_^; 

 

ここを除く他のパートは、上記の通り、個人的な生い立ち等は描かれず、ひたすら事件を起こすにいたった背景(不況や汚職、外交姿勢への怒りなど)と暗殺シーンが描かれて、テンポ良く展開し、その割り切った描き方が面白い。長いドラマになっているギロチン社事件(高橋長英さんの真面目だけれど若さ故の危うさがにじみ出ている感じは印象的でした)と二・二六事件とその引き金となっているらしい相沢事件(健さんの、静かに現れて永田鉄山を颯爽と(?)しとめる姿は武士を観ているようなかっこよさでした)でも基本的に同様。二・二六事件などは、最後に陸軍将校が次々と銃殺刑にされる場面などは目を背けたくなるような描写です。で、私にはこれらの短いエピソードのほうがインパクトが強く面白かったので、この映画の印象は「暗殺犯をアウトローなヒーローのようにとらえて描いた、過激な暴力描写が売りのオールスターによる娯楽作品」という感想になった訳です(ヤクザ映画を得意とする東映である、と考えるとその作りは納得だし、やや退屈だった血盟団のパートも、男だらけになりそうな映画で、藤純子さんや橘ますみさん、賀川雪絵さんら、女優陣を起用する展開を用意し、華を添えるための構成と考えるとしっくりきます)。

 

 

で、その娯楽作品という印象の今作の備忘録につけた見出し。正確には3じゃなくて2.5くらいか。その意味を文章よりも雄弁に語るキャプチャをまずはご照覧下さい。

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ファーッヾ(≧∇≦)142分の映画のなかのほんの3分ほどのシーン(つまり、そういうこと)ですが、もう、これを眺めるられる幸せヾ(≧∇≦)山高帽にフロックコート(そして傘もステッキのようにしてもって)のスタイルの美しくてカッコいいこと!

 

この輝雄さんが演じる来島恒喜のエピソードですが、同様に3分ほどで作られているほかの事件と比較すると、テイストが結構異なっています。各エピソードの暗殺シーンはおおよそ、犯人は怒りを表に出して切りかかったり銃口を向けるなど、直接相手と顔をつきあわせ、その後も返り血を浴びたり、警備・警護する側の人達と対峙します。ところがこのエピソードは、来島は外務省の門の外で「友人と待ち合わせている」といって素知らぬふりで大隈重信が戻ってくるのを待ち伏せしていて、大隈が門内に入ったところを背後から投弾して暗殺を試みる、というもの。来島は現場【門の内】のすぐ近く【門の外】にいながら犯人として疑われることもなく、皇居(だと思うんだけど)に向けて厳かに一礼をし、喧噪をよそに自らの喉を短刀でかき切り、誰にも邪魔されることなく自害します。つまり、他の事件が全体の印象としては”動的”で”泥臭い”描かれ方なのに対し、このエピソードは”静的”で”洗練された”描かれ方。どれも強烈なインパクトだった短いエピソードの中で、この印象の残り方は、性質が異なっていました。

他のどの事件、どの俳優でもなく、このエピソードに輝雄さんがキャスティングされたということに、このときの”吉田輝雄”が持っていた個性と魅力が東映のなかでも特別なものであったからなんだろうな、と想像したりします。当時の東映任侠映画が主流であったと思いますが、その中で“異端児”であろう、石井作品の主演俳優。東映的な男臭さとは異なる、洗練された雰囲気。その一方で、それ以前の正統的な「決着」シリーズなどで表現してきた不器用で真っ直ぐなアウトローの強さと脆さ。自身が正義と信じる信念に殉じて美しく散ってみせるこのテロリストにはその両方が必要で、それを魅力的にみせてくれる。たった3分のなかに、それが写し出されていて、“至高の3/142”ということなのでありました。

小田基義監督「ゴジラの逆襲」

これは怪獣映画だ。 

 

 

 

 

【映画についての備忘録その67】小田基義監督×小泉博主演「ゴジラの逆襲」(1955年)

 

大阪に本社を構える株式会社海洋漁業の魚群探査機パイロットの月岡(小泉博)は、岩戸島に不時着した同僚の小林(千秋実)の救助に向かい、島へ着陸する。そこで二人は断崖の向こうにゴジラの姿を見る。ゴジラに襲われるかと思われたとき、さらに巨大な怪獣が現われ、両者は格闘しながら海中に沈んでいった。

報告を受けた大阪警視総監は緊急会議を開く。そこにはゴジラを目撃した月岡と小林、さらには東京でゴジラ対策にあたった動物学者山根(志村喬)もいた。二人の目撃情報から、ゴジラとともに目撃された怪獣はアンギラス、学名アンキロサウルスと推定された。アンギラスもまた、水爆実験で眼覚めたのである。

緊急会議でゴジラ対策を、と助言を求められた山根は、防ぐ方法はなく、ゴジラを大阪へ上陸させないようにすること、と答える。その方法とは、水爆実験の記憶から光を憎悪し向かって行くゴジラの性質を利用し、徹底した灯火管制を敷いて市街地から遠ざけるというものであったが―

 

 

ゴジラ」シリーズ第2作目。「これは怪獣映画だ!」って当たり前だろ!と言われそうですがwなんでこんな見出しにしているかというと1作目の印象がこんな感じだったから。 

kinakossu.hateblo.jp

 

 1作目はドラマ部分で交わされる会話の切迫感、なかなか全貌を現わさないゴジラの形として見えない恐怖、そしてズシリズシリと動く姿の脅威、観終わったあとに戦争映画のような印象を与える作品でした。

 

で、その「ゴジラ」の大ヒットを受けて作られた第2作は、まったく雰囲気の違う作品でした!重たい戦争映画からみんなが楽しめる娯楽映画にシフトした印象。

 

ゴジラは序盤から惜しげもなくw姿を見せ、アンギラスとかなり俊敏に戦います(早送りでスピード感を出している様子)。

大阪に上陸しないように灯火管制を敷いていたのですが、石油工場が大爆発してその明かりに吸い寄せられるように大阪に上陸すると(途中、四国方面に向かったって喜ぶシーンがあって、四国に上陸したらどうすんだよ、と思いましたがw)、大阪の街を破壊しまくり。大阪城淀屋橋もなんかきれいな建物(中之島公会堂っぽいけど違うみたい)も、ガンガン壊され、鉄道も橋もボロボロ。ひゃっほ~い!って感じでゴジラの大サービス。敵怪獣と戦い、街を壊しと、私が抱く“THE 怪獣映画”のイメージを裏切らない仕上がり。

 

人間のほうも、主人公の月岡は戦時中は飛行機乗りで、戦争を想起させる部分―当時の仲間たちと生きて再会して喜びあうシーンやあるいは灯火管制を行ったり―はありますが、基本的にみんな前を向いて明るく描かれています。「ゴジラ」では戦争を引きずっていた感があり、登場人物がみんな重く、悲壮感や絶望感を抱えているような作品でしたが、「ゴジラの逆襲」ではそこから決別して次へ行こう、という空気を強く感じます。月岡や小林は、大阪の本社のスタッフ(社長令嬢の彼女も)と飛行機の無線で冗談を言い合います。ゴジラが上陸して会社や工場を壊されても、海洋漁業の社長や社員も、ただ悲嘆にくれるのではなく、立て直すことを力強く決意し、進んでいきます。そして、ゴジラの犠牲になった同僚の死を無駄にしないために、主人公・月岡は果敢にゴジラに挑みます(「ゴジラ」では芹沢博士の死を賭した戦いを見守っただけになった主人公・尾形との対比として、この映画の娯楽映画としての後味の良さも生んでいます)。

 

どちらがいいのか、というのは世代、時代、そして、私のような怪獣映画にさほど縁のない子供だったかどうか、とか観る人の背景によって感じ方は色々かと思います。大人向けかときかれれば、私は「ノー」と答えるかな、という作品ですが、これがテンプレになって、子供に受け入れられやすくなり、結果的にシリーズが続いていくことになったのだろうと想像しています。時代が変わっていくなかで、いつまでも重い戦争映画の趣であったなら、きっとあっという間に観客と乖離してしまって、こんな息の長いシリーズとして、そして世界中で受け入れられる作品として、今も愛される“ゴジラ”は残っていなかったのではないかな、と思ったり(007シリーズだって変化しながら続いてますからね)。

 

そのほかにも、今作は音楽が伊福部昭さんのアレじゃなくて、「あの曲ってやっぱり偉大だなぁ」と思ったり、「小泉博さん、ちゃんとヒーローらしくてかっこよかったな」と思ったり、前作からかなり舵を切った感のある「ゴジラ」シリーズ第2作でした。

 

あ、そうそう、今回最大の謎が解けました!ゴジラって一匹で何度も生き返ってきてる設定なのかなぁ、って思っていたんですが、そうじゃなくて“ゴジラ”って種類の怪獣ってことなのね、ってσ(^_^;いやー、無知過ぎてすみません。

曲谷守平監督「暴力五人娘」

いつもの(!?)大蔵新東宝流。名は体を表さない“ゆるかわ映画”

 

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【映画についての備忘録その66

曲谷守平監督×大空真弓主演「暴力五人娘」(1960年)

 

白百合服飾大学の教頭中園(沢井三郎)は、無類の善人でそして少し頭の弱い理事長・権藤伝右衛門(国方伝)を更送し、自分が理事長のを画策して、中園のバックには、大学を乗っ取らせたあとに観光ホテルを建てようと企んでいる河田組がついていて、河田(並木一路)の手下を利用して理事長排斥運動を学内で叫んでいたりと、あの手この手をしかけてくる。さらにそのバックには中国人の黒幕(大友純)がついている。

智代(大空真弓)、信子(万里昌代)、直子(三条魔子)、礼子(扇町京子)、義江(橘恵子)ら五人の学生はその悪事に気づいてあれやこれやと伝右衛門の世話を焼き、自分たちに下心で自分たちに近づいてくる中園や河田をやりこめる。

そんなわけで一向に進展しない理事長更迭に業を煮やした河田は、殺し屋の和彦(菅原文太)を送り込んでくる。家の前で車が動かず困っていた伝衛門を助けるふりをして近づいた和彦。伝衛門を河原に誘い出して車の事故に見せかけて殺そうとするが、かえって自分がケガをしてしまう。そんなこととはつゆ知らず、和彦の看病をしてやる伝右衛門。その人の好さにすっかりほだされ、和彦は智代らとともに理事長を助け、学園の乗っ取り阻止に手を貸すことにするのだが。。。

 

 

シネマヴェーラ渋谷の新東宝特集―玉石混淆!? 秘宝発掘! 新東宝のとことんディープな世界Ⅳ―、『ママの新婚旅行』で「いい映画観たなぁ」とホッコリしたあとに続けて観たのがこちら!もう、見出し通りで(笑)いいです!こう言う振り幅が昨年、今年とこの特集上映に来てみて楽しいところ!

 

まずもって、素晴らしいタイトル!タイトルとメインビジュアルの一致していない感、すごいですよね。これだけですでに気になる!”暴力”なんていかついタイトルですが、映画そのものはそれに該当(!?)するシーンもゆるくてコミカルでクスクスしながら見ていた次第。

 

五人娘はみんなそれぞれビジュアルに個性があってかわいく、この5人がかわるがわる活躍するので目にも楽しい♪

なかでもメインは大空真弓さんで、智代はかわいらしい外見なので、中園や河田が下心で寄ってきますが、それをうまく利用しちゃう勝気さと賢さの持ち主。ネグリジェショーを開きたいというのがかねてからの夢(服飾大学だからファッションショーやりたいのは分かるけど、なぜネグリジェ⁉大蔵新東宝的なサービスと思われて楽しいw)。そのためのパトロンを紹介してあげるからと中園に食事に誘われると、高級レストランへ案内させ、いつの間にやら一緒についてきていた信子たちの分も一緒に注文wパトロンとして河田を料亭で紹介されるも、うまいこと逃げて(おちょうしを並べてその上にたたせて”調子に乗ってる”とかいうダジャレをはいて逃げるというゆるさw)、でも、ちゃっかりネグリジェショーは開催して代金は河田へ請求、とかw

 

信子は新聞社でバイトをしていて、特ダネを追いかけてバイクにまたがる男勝りの女の子。万里さんのきりっとした眉や目が信子にぴったり。三条さんの大阪弁のかわいらしさ(東京のご出身のようですが)とかセクシーな扇町京子さんとか、頭が良くて真面目そうな橘恵子さんとか、他の作品で見てきた女優さんたちのそれぞれの持つ個性がスクリーンのなかでイキイキとかわいらしく写し出されます。

 

んで、かわいらしいのは女の子だけじゃなくてw国方伝さんの無邪気な子供みたいな伝右衛門さん(家の中はおもちゃ箱のような発明ラボになっていますw)や、殺し屋なのにちょっと抜けてて、女の子たちの言われるままに女装までしちゃう菅原文太さんの和彦とか、男性陣もやたらとかわいい(^^)

 

私は東映のヤクザ映画の菅原文太をまだ観たことがありません。「夜の片鱗」で脇でガチガチのヤクザを演じているのを観ただけで、多分、これが後の東映作品の役の系譜に連なると想像しています。一方、新東宝の役はここまで観た作品はそれとは違って、いずれも都会的でソフトな雰囲気の役。今回の和彦は登場だけは凄腕の暗殺者のクールな雰囲気でしたが、ベルトが切れてパンツ丸見えになったりw、伝右衛門の純粋さにほだされてあっという間に寝返ったりwと、二枚目なのに抜けているコミカルな役がはまっていて好印象。ヤクザ役がはまっていたからこそ、スターになっていったのだとは思いますが、個人的にはソフトで都会的な菅原文太、いいなぁ、と思いました!

 

 

ゆるくてかわいいシーンが多くてあれこれ書きたいので、ちょっと箇条書きにしちゃいます。

 

・河田の後ろにはさらにバックに中国人実業家(マフィア?)がついていて、もちろん演じるは大友純さん

・唐突に始まるネグリジェショー。

・河田、ついに理事長を捕まえようと家へ乗り込むが、忠臣蔵の討ち入り状態

・討ち入られるも伝右衛門が作ったロボットが動き出しで大活躍(笑)

・河田のアジトはなぜか仕掛けがいっぱいのお化け屋敷のよう

 

とかとか!

 

曲谷監督の作品は今回初めて観たので、沢井三郎さんと並木一路さんとかこれまで馴染みのなかった(沢井さんはフィルモグラフィに「女巌窟王」が入ってたので観たことはあるらしい)俳優さん達の存在感もたっぷり楽しめました。沢井さんの理事長役には特に何度も笑わせていただき、次に新東宝作品を観るときは沢井三郎さん、要チェックです!

 

(ハンサム・タワーズのそれぞれに若手監督をつけて組ませた、というの、文太さんの場合は曲谷監督なのかな。何本か一緒の作品があるみたいだし)

 

 

 

きちんと筋道たった映画でないと認めない、というタイプの方にはおすすめできないのは大蔵新東宝のいつものこと(だよね?)でwそういうのも良いよね!という方にはぜひ一度観てみることをおすすめします(・∀・)

佐藤武監督「ママの新婚旅行」

心が温かくなる優しい映画。

 

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【映画についての備忘録その65】佐藤武監督×山田五十鈴主演「ママの新婚旅行」(1954年)

 

朝倉隆三(山村聡)と絹子(山田五十鈴)の夫婦には洋子(長谷川裕見子)、俊次(和田孝)、圭子(小沢路子)、敏夫(小池保)の4人の子供がいる。洋子はすでに工場勤務の夫と結婚して独立している。隆三は研究に没頭して金のことは気にせず、家計はいつも苦しい。そんな家庭に船のコックをしていた兄の鉄之助(藤原釜足)が失業して転がりこみ、毎日のやりくりはさらに厳しくなるのだった。

長男の俊次は家計を助けるため裕福な酒屋金山家の娘・マリ子の家庭教師のアルバイトをし、次女の圭子も家にお金がないからと、修学旅行には行かないという。子供たちは絹子に負担をかけまいと贅沢を言わず、家族は慎ましやかに暮らしている。

そんな折、俊次はマリ子の姉の三枝子と恋に落ちる。三枝子を家に呼び、クラシックのコンサートに出かけ、彼女の日本舞踊の発表会を観に出かける。幸せに過ごす二人だが、発表会の日、三枝子の友達が兄(江見俊太郎)を連れて三枝子の踊りのお祝いに訪ねてきた。元華族学習院卒だという兄を三枝子の両親はいたく気に入り、二人の結婚に乗り気だ。その様子を見て、俊次は貧しい我が身との身分差を思い、家庭教師をやめ、三枝子に別れを告げるのだが―。

 

昨年のこの時期も行っておりましたシネマヴェーラ渋谷の新東宝特集。昨年は「男の世界だ」と「大虐殺」を観るために4日間くらい通いましたが、今回は夏休みやら仕事の都合やらで行けたのは1日だけ。作品よりも行ける日を基準に行ってきたのですが、そんな計画でも素敵な作品に出会えるもので。今回はこの作品と「暴力五人娘」(これもあとで感想書くつもり)という、両極端な新東宝作品を連続で観てきてどちらも楽しんできました。

 

「ママの新婚旅行」は家族愛を描いた良作。小津作品を観た後の温かい気持ちに似たものを感じる作品でした。

 

絹子さんは本当に素敵なお母さん。子供達のことを信頼し、尊重、優しく見守りながら大事なとこで手をさしのべます。

修学旅行に行かないと明るく言う圭子の本心を察し、自分の帯留めを質屋に入れ、お金を工面し、鞄とコートをプレゼントして修学旅行へ送り出します。その喜びで絹子にひっしと抱きつく圭子のシーンはとても印象的で心温まります。

また、あるとき、家庭教師をしているはずの俊次が、日本橋(かな?)の橋の上で他の学生たちと一緒にサンドイッチマンのようなことをしているところを見かけます。家に帰ってきて妹や弟の前で気丈にふるまい、自分の部屋に戻ったところをそっと追いかけ、俊次が三枝子と別れ家庭教師をやめたことを知ります。しかし、それでも俊次の決めたことを尊重し、彼を信頼し、問い詰めたり怒ったりすることもしません。

 

隆三は研究に没頭し、お金の苦労をかけてしまっていますが(家計が厳しいのに義兄の居候を許してしまうような人でw)、絹子を中心に朝倉家はまとまっている感じ。その隆三に洋子の夫の会社の月給7万円という工場長の話が持ち上がります。洋子は今頃会社の人達がお父さんに話しをしているはず、と絹子や弟妹、鉄之介に話をしにやってきます。みんなが隆三は工場長の話を引き受けるだろうと期待して帰宅を待ちます。

しかし、隆三は自分には工場長など向いていないからと断って帰ってきます。俊次はそれを隆三のエゴであると責め、三枝子とのこと、修学旅行をあきらめようとした圭子のこと、そして母が結婚以来、よそ行きの着物を買ったことがないこと、隆三の生き方で自分たちがどういう思いをしているのか、とぶちまけ喧嘩をして家を飛び出します。

 

その後、隆三は疲労もあって肺炎で倒れて入院します。俊次のことを気にかける隆三に、絹子は居場所が分かったと嘘をついて、隆三の看病を兄に託して探し出し、家につれて帰ります。そして、やはりこのときも俊次を責めずに彼の気持ちを聞き、一方で隆三の気持ちや結婚してから二人がどんな生き方をしてきたか、それを隆三とともに子供たちに話し、それをきっかけに家族はまた絹子を中心に一つにまとまります。

 

タイトルの新婚旅行というのは結婚して新婚旅行にも行っていなかった二人への子供たちからの贈り物。バイト代や貯金を少しずつ出し合って、隆三と絹子に旅行をプレゼントします。見送りには俊次と一緒に三枝子も。最後まで家族が互いを思いやる温かさを感じる優しい映画。

 

絹子さんじゃなかったら、こうはいかないよな、っていうまさに良妻賢母。良妻のほうはさておきwこんなママになれるといいなと思う、そんな素敵なママ。唯一行けた日にこの作品を観られたという幸運に感謝するのでありました。

 

忘れないように最後に付け足し。鉄之介のひよこの商売が失敗するというエピソードはこの映画のなかの変化球で笑いましたが、この鉄之介と一番下の敏夫のやりとりも微笑ましくて良かったですw

番匠義彰監督「抱かれた花嫁」

花嫁シリーズ第1弾は大人の恋が印象的。

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【映画についての備忘録その64】

 番匠義彰監督×有馬稲子高橋貞二主演「抱かれた花嫁」(1957年)

 

 

浅草の老舗寿司屋の娘・和子(有馬稲子)。兄(大木実)と弟(田浦正巳)がいるのだが、二人は寿司屋を継ぐのを嫌い、兄は劇場の座付作家、弟は外交官を目指すという。母のふさ(望月優子)は男勝りで、戦後一人で店を大きくし、その店を看板娘でもある和子に継がせるため、浅草の老舗袋物屋の三男坊、秀人(永井達郎)を養子に迎えようとする。

和子には店の客で動物園の獣医師の福田(高橋貞二)という恋人がいる。ところが、福田は、ふさの気性に自分が気に入られるはずがない、寿司屋もできない、となかなかプロポーズの踏ん切りがつかない。さらには友人の大村(片山明彦)と一緒に暮らす下宿先のアパートの隣家に住むニュー・フェイスの富岡千賀子(高千穂ひづる)も福田のことが好きだという。

いつまでたってもはっきりしない福田。そうこうしているうちに秀人が店の手伝いにやってくるという。和子は、彼をふさに認めさせるため、福田を店の手伝いに入らせることにするのだが。。。

 

 

9月は映画を観ていなくて(輝雄さんゲスト回の「ターゲットメン」11話の放送に向けて予習で「ターゲットメン」の各話を観ていたためw)、久々の映画鑑賞はラピュタ阿佐ヶ谷。「今年の恋」を去年の1月に観に行って以来のラピュタ阿佐ヶ谷は、今回もラブコメ。特集名もずばり、「ラブコメ大好き!」。

4月に輝雄さん主演の「泣いて笑った花嫁」を大いに楽しんだ身としては気になる、“花嫁シリーズ”の第一作というわけです。この日は「危険旅行」と“旅行シリーズ”の第一作の上映もあって(こちらも輝雄さん主演作「求人旅行」―こっちはまだ観れてないけど―があとに連なるし)、このラブコメ特集、私もラブコメ大好きなので(まんま)、三回券買って参戦(あと、「泣いて笑った花嫁」と「今年の恋」を観に行くんだ!)してきました٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

 

「泣いて笑った花嫁」についてはこちら

kinakossu.hateblo.jp

 

 

私、有馬稲子さんも高橋貞二さんもこの日が初鑑賞(有馬稲子さんは「やすらぎの郷」で初めてお名前と顔が一致したような次第)。同じ日の2つ前の上映で同じコンビの「危険旅行」も観て、二人の魅力が詰まっているのはこっちかな、という印象。有馬さんの勝ち気な下町娘はかわいく、高橋貞二さんのちと頼りない獣医も大事なところはキチッと決める(でも、ちょっと抜けてるw)、いい男。恋のライバルの高千穂ひづるさんも綺麗だったけど、有馬さんのオーラと存在感がスゴすぎて、ライバルというには物足りないくらい^^;

 

と、書いておりますが、映画そのものの印象は、この二人の恋の話よりもふさのほうに持って行かれた感じ(笑)私が「稲妻」鑑賞以来、望月優子さん気になりすぎなせいか!?

 

ふさは和子には家業を継ぐよう、昔ながらの結婚をすすめるのですが、自分も若い頃は浅草の劇場でオペラ歌手として活躍していた古島(日守新一)と情熱的な恋をした身。でも、家業のために恋をあきらめ、三人の子供を生み、育てます。そしていよいよ和子の縁談を、というおり、ストリップ劇場のポスターに古島の名前をみつけます。

一人劇場に足を運び、そこで、昔と変わらぬ古島の歌声を聞き、再会を果たすふたり。互いの決して思い通りにはいかなかった人生の重みと、過去の思い出として割り切れないような切ない思いが交わります。そして、昔なじみの店でのデート。古島の歌うレコードをかける、二人の過去を知るマスター。それにあわせて踊るふさと古島の姿は、心の奥底にしまってある思いをにじませ、とてもステキでした。

 

なんかコメディらしからぬ感想ですがw それもそのはずで、桂小金治さんは今作もしっかり笑いを提供してくれるし、永井達郎さんのちょっとなよっとした坊ちゃんも面白かったけど、全体的には先に観ていた「泣いて笑った花嫁」より、笑いは控えめ(「泣いて笑った花嫁」は桂小金治さん以外にも藤山寛美さんとか、コメディアンの方盛りだくさんでしたし)。ラブコメの「花嫁シリーズ」第一弾はコミカルなシーンよりもしっとりした大人の恋が切なく、印象的。「泣いて笑った花嫁」しかりだけど、番匠監督、ほんとはサブストーリーであるはずの大人の恋を描きたいのかな!?と思ったり。

 

 終盤、店が火事にあったり、三人の子供達それぞれとケンカしたり、和子と千賀子の福田を巡るあれやこれやと色んなこと起こるんですが、望月優子さんが全部もってっちゃうんだ!たかだか二作しか観てないけど、ステキな女優さんだなぁ、とやっぱり思った次第。

 

弟の恋人が朝丘雪路さんで松竹歌劇団のダンサーでキャピキャピだったり、松竹の大木実さんを初めて観たけど、10年後(「決着」)も姿は変わってないなぁ、とか思ったり(笑)と、主演の二人を差し置いて他のキャストが気になって仕方なかった本作。最後に福田が家出した和子を迎えに行くシーンはとってもかわいくて良かったけど、先に観た「危険旅行」とあわせて、このコンビの良さが分かるには、もっとお二人の作品を観てみないとかな、と思った鑑賞後なのでした。

 

小林恒夫監督「怪談片目の男」

ホラーっていうよりサスペンス。

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【映画についての備忘録その63】

小林恒夫監督×西村晃主演「怪談片目の男」(1965年)

 

恩田産業社長恩田晃一郎(西村晃)が、片目がつぶれた無惨な水死体となってあがった。原因は夜釣の舟が転覆したための事故死だという。葬儀の後、宇野と呼ぶ見ず知らずの弁護士からの呼び出し状を持って別荘に関係者が集められる。晃一郎の妻・美千子(中原早苗)、晃一郎の支援をうけてプロのカメラマンとなるが、美千子と関係をもっている下田宏(川津祐介)、恩田産業の専務で会社乗っとりを企んでいる大西重雄は秘書を伴って。さらには恩田の義弟で、晃一郎を検死した主治医の深沢哲夫。かつて、晃一郎の車にはねられ、半身不随となり、晃一郎が面倒を見ていたという園雪子。それに「パパに会いにきた」という幼ない女の子・陽子。

だがその夜から恩田邸では怪事件が勃発し始める。晃一郎のコレクションのバイオリンの音色が邸内に聞えたり、雪子はバスルームで晃一郎を見たといい、葬儀の参列者を撮った下田の写真には晃一郎の姿が写っている。不思議な事件は続き、晃一郎の亡霊につりつかれたように、関係者が次々と命を落としていくのだが…。

 

 

夏も終わるけど、感想は怪談続きw東映チャンネルで鑑賞しました。「怪談せむし男」を録画するのに番組表観てたら「怪談片目の男」というのがあって、これも西村晃さんだし面白そう!と思って録画。「怪談せむし男」と「怪談片目の男」は当時一ヶ月違いの上映だったよう。今回も、ホラー映画ですので、ネタバレは極力さけた備忘録とします。

 

 

今回はこの流れで佐藤肇監督かと思いきや!小林恒夫監督(音楽は菊池俊輔さんじゃなくて木下忠司さん)。今のところ、小林監督の映画はまだ拝見したことがないのですが(輝雄さんご出演の「陸軍諜報33」の監督をされているのでこれもいつか観れますように!)、テレビドラマ「ゴールドアイ」の第10話の監督をされていて、このお話は出入りする登場人物も整理されていて、タイムリミットのある中で「ゴールドアイ」のメンバーがトリックを仕掛けていく、というスリルのある展開を楽しめる作品になっています(あと、白バイ警官に扮装しているめちゃめちゃかっこいい吉岡さんが拝めます(っ´ω`c))。で、この「怪談片目の男」もそんな感じ。沢山の登場人物をさばき、それぞれの関係性に重点があり、ホラー映画というよりは、スリラーとかサスペンス映画といった感じで、怪談らしい怖さはあまりありません^^; Wikipedia見ると、小林恒夫監督はそういうジャンルを得意とする監督さんだったようですし、なるほどね、なのです。

 

 

登場人物の大半は後ろ暗いところがあって、晃一郎の死に思い当たる節がある。美千子と宏、大西専務と秘書。それぞれに財産を手にしようと晃一郎を裏切っていて、特に若さと男前っぷりで金持ちの年上の女性を落としたっぽい宏と、美貌を利用して晃一郎の金が目当てで結婚したような美千子の二人が中心に物語が展開するので、二時間サスペンスのような趣。晃一郎の、周囲の恵まれなさに同情したい気分になります。そんな中で心が洗われるのが足の不自由な雪子の存在なのですが。。。と、ネタばれになりそうなので、お話についてはここまでw 終盤に明かされる意外な設定と怒涛の展開は楽しんだのですが、そこもやはりホラー映画的な要素とは関係なくて、サスペンス映画って感じ(2回目)。あらすじ部分で書いたようにホラー映画の仕掛けがところどころ入ってきますが、映画の結末までみると(「吸血鬼ゴケミドロ」的にスルーするにはひっかかりすぎなw)「何でそうなったの?」みたいな場面も結構あってσ(^_^;「ま、その場面単品では楽しめたから、いっかw」っていうタイプの(どんなタイプよ!?)ホラー映画でした。

 

 

というわけで、表題。今回は主演の西村晃さんが最初に死体で登場して以降、なかなか出番がなくて、出てきても、亡霊のような登場の仕方がほとんどで(笑)、西村晃さんの怪優的な魅力を堪能できたのは映画の後半。中盤まではほとんどはその周囲の人間たちの群像劇、といった感じで、怨霊じゃなくて人間の欲が怖いよねぇっていう映画で、やっぱりホラー映画じゃなくて、サスペンス映画(しつこい)。

 

しかし、出番は少なくてもやっぱり存在感は抜群だった西村晃さん。最初と最後のモノローグもとても印象的で、色々つっこみたい部分も、西村晃さんの締めのモノローグでなんだか丸め込まれてw収められてしまったような、そんな鑑賞後なのでした。