T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

番匠義彰監督「泣いて笑った花嫁」

美男美女と芸達者さんたちのいいバランス。

 

f:id:kinakokan0620:20190416165034j:plain

 

【映画についての備忘録その53】

 番匠義彰監督×鰐淵晴子・倍賞千恵子吉田輝雄主演「泣いて笑った花嫁」(1962年)

 

浅草の玩具問屋の一人息子・杉山俊男(吉田輝雄)は、問屋の仕事とかけもちで歌劇団で演出助手をしている。父・常造(佐野周二)には内緒にしていたが、いよいよ演出家として独り立ちすることが決まり、常造に打ち明けることに。しかし、案の定、常造とは喧嘩となり、家を出ることに。俊男はひとまず劇場の楽屋で寝泊まりすることにし、劇団員でダンサーである早苗(倍賞千恵子)や問屋の番頭である文吉(桂小金治)が彼を心配して楽屋にやってくるのだった。

文吉が探してきたアパートに引っ越した俊男。その部屋の隣には美大生の岡本京子(鰐淵晴子)が住んでいて、彼女は偶然にも常造がアルバイトで雇ったばかりの学生だった。互いに顔をあわせ、挨拶をし、京子は舞台の初演出にむけて台本を書く俊男に、差し入れをしたりと親しくなっていく。

常造は、京子がかつて自分が奉公していた京都の老舗呉服問屋の孫娘であることに気づき、何かと京子を気にかけていた。京子の母である政代(高峰三枝子)とはかつて恋仲だったが、祖母のはつ(沢村貞子)に認めてもらえず、それぞれ別の相手と結婚したのである。

一方、俊男は舞台で早苗をソロに抜擢するつもりで台本を書きすすめている。自信がないという早苗を励まし、頑張ろうと言う俊男。早苗も俊男に想いを寄せていて、俊男の初演出の舞台に向けて練習に励むのだが、京子の存在に不安が募り・・・。

 

 

1961年に新東宝がなくなって松竹に移籍した輝雄さん。1962年は1月公開の「今年の恋」に始まって11本の映画にご出演されていて、1年の締めくくりの作品が12月公開の「泣いて笑った花嫁」。大忙しです!「求人旅行」の前に倒れて入院されていたようですので、それがなかったら月一本ペースですやん!26歳の輝雄さんがめちゃめちゃ頑張ってお仕事してくれたおかげで、今こうしてカッコイイ(つか、この年は美しいんだ(っ´ω`c))姿がフィルムに収められていて、そして、観る機会をいただけるという。ありがとうございます!

 

映画はかわいいタイトルバックから始まって。。。

f:id:kinakokan0620:20190417154754p:plain

オープンカーや人形など、当時のおもちゃが次々出てきてめちゃかわいいのです♪

若く爽やかな美男美女の恋と(と、大人の男女のノスタルジーと)芸達者なコメディアンの方達の絶妙な按配で、結論は分かっているけど楽しめる安心の恋物語の展開と、次々押し寄せる笑いどころで、あっという間に終了。「花嫁シリーズ」ってシリーズものになっているようで、そして番匠監督は喜劇の得意な監督さんであったということで、なるほど!という感じ。「釣りバカ日誌」を作った松竹らしい、ほんとにいい人たちばかりの庶民的な、素直に楽しめる映画でした。

 

お笑い担当の役者陣は、もう、出てくると必ずなにか笑いをとっていく、そして、それが本筋の流れを邪魔していない、という素晴らしさ。“若旦那”の俊男を心配してあれこれ世話を焼く番頭さん・桂小金治さん、俊男の師である演出家の亀山・八波むと志さん(実は八波さんは今回初めて拝見したのですが、由利徹さんと同じ脱線トリオの方だったのですね)、呉服問屋の番頭さん・芦屋雁之助さん、高利貸しで政代に横恋慕する南都雄二さん、そして常造が京都で宿泊する旅館の番頭さん・藤山寛美さん、みなさん、普通のお芝居を担当する俳優陣(主演の3人や佐野周二さん、高峰三枝子さん)を巻き込みながら、心地良い笑いを提供してくれます。まじめなお芝居と笑いの部分が、ほんと上手く行ったり来たりしていて、違和感がないのですよね。

どう面白かったか、はネタばれになりますのでwここで詳しく書きませんが(∀)(一つだけ!東京ゴム糊とかいう会社名だけで何度も笑えるんですけど)こういう面白い映画が、ソフト化もされず、配信もかからず。。。旧作邦画に詳しい方なら有名なシリーズなのだと思いますが、一般的には寅さんのような知名度がないわけで…知られずにあるなんて、ほんと勿体ないなぁって思うのでした。

 

恋の物語のほうは、俊男を巡る三角関係・・・なのですが、そこは”明朗超特急”なんて惹句がついてるだけあるな、って展開。

京子はいまどき(!?)な感じで、おばあちゃんに借金で傾く呉服問屋の立て直しのために政略結婚させられそうになりつつも、自分の結婚相手くらい自分で探す!と言い切り、俊男のこともボーイフレンドとしてあっけらかんと周囲に話します。

早苗は倍賞さんが演じていることもあって、レビューのシーンが多く入れられていて、普段のところはあまり描かれていないのが残念なのですが、素直な下町っ子、という雰囲気。

俊男は、輝雄さんの素直そうな雰囲気が感じられるキャラクターで、京子のサンドイッチを頬張り、互いの部屋を行き来して、なんて設定なのに、なんというか天然な感じで嫌みがない(笑)ありがたく世話になります!みたいな男の子。

俊男×京子は隣の部屋で親密に行き来している感じがあるのに対し、俊男×早苗は劇場と劇団を介してのシーンが殆どで二人きりのシーンはあまりなくて、形勢はかなり早苗に不利な設定。でも、俊男がそんな感じなので、京子のアプローチもあんまり効果がなさそうで、三人の恋の行方はどうなるのかな!?と思いつつ、やっぱりどこか安心して観ていられるのでしたw

f:id:kinakokan0620:20190417161617p:plain

早苗といるときは、大体他の誰かも一緒で(^-^;)(しかし、ほんと文句ないハンサムさんぶり٩(๑❛ᴗ❛๑)۶)

 

 

さて、輝雄さんご出演となるとやっぱり本筋と関係ないことも書きたくなるので、ちょっとだけw「今年の恋」に始まって、「泣いて笑った花嫁」で終わっている1962年。どちらもコメディなのですが、「今年の恋」に比べると、その後に撮っている作品だというのに、ちょっとコメディの演技に苦労しているように見えて、順調に上手くなってる訳じゃないというのが不思議。+゚(*ノ∀`)小津作品にも石井作品にも馴染んじゃう輝雄さんですが、このコメディにはなんとなく漂う存在の違和感があります(笑)ここまで色んな作品を拝見して、監督によって演技の質が違うような気がするのですが、これも監督の演出の違いなのかもw

f:id:kinakokan0620:20190417155655p:plain

「今年の恋」に続き!?背が高くて頭ぶつけちゃうネタw

 


最後に一つ。映画の展開については不満がないわけでもなくてw佐野周二さんと高峰三枝子さんの大人の二人の恋物語にも、しっかりストーリーが用意されています。ただ、こっちにも時間が割かれている分、若い三人のお話の時間が足りない。だから、”花嫁”とかいうタイトルなのに、くっつくべき二人がくっつきそうでよかったなぁ!で、話は終わってしまって、ちょっと消化不良。だから、どのあたりが“花嫁”なのさ!?という感じなのでしたw