T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「霧と影」

あと15分長かったら、どんな映画になっただろう。

 

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【映画についての備忘録その73】

石井輝男監督×丹波哲郎主演「霧と影」(1961年)

 

能登半島の青蛾小学校の教員笠原が観音崖の上から遂落死を遂げた。毎朝新聞の記者・小宮(丹波哲郎)は、笠原とその妻・雪子とは学生時代からの親友で、地方版に載った笠原の死亡記事を不審に思う。高所恐怖症だった笠原が危険な断崖の上を歩くのは不自然だと感じたからだ。
笠原は事件のその日、猿谷郷に住む長期欠席児童宇田清の家庭訪問に行ったまま消息を断ったのだという。猿谷郷は宇田本家と分家、矢田本家と分家、という、たった4戸からなる貧しい集落で、清の叔父甚平(安井昌二)はその集落を嫌って東京へ出たという。
小宮は地方通信員の坂根(梅宮辰夫)と協力して、笠原の足取りを追った。その結果、笠原はその日、富山の薬売りと一緒に猿谷郷から山を下ったという情報を得る。
その薬売りは松本貞次郎という名で、もう一人の連れの男と東京へ発ったことも分った。また、「紳士録を作る」といって宇田甚平の身元調査をしている、興信所の井関と名乗る得体の知れない男の動きも知った。
東京へ帰った小宮は、デスクと緊密な連絡をとりながら、井関、宇田甚平の身辺調査にあたるが…。

 

 

今回も 石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 での鑑賞記録。

3回目の「大悪党作戦」の鑑賞(行き過ぎw)のあと、観てきました。水上勉原作×石井輝男監督。そしてはからずも梅宮辰夫さん追悼。

 

 

原作を読んだことはないのですが、それでも「これは上映時間83分じゃ足らないだろ…」という映画でした。水上勉原作の映画は「はなれ瞽女おりん」を観ていて、その内容と、本作の設定を思うと、せめて100分くらいにしておくれ、と😅

 

なぜかというと、登場人物が多いのと、猿谷郷の設定がおもしろかったから。

 

笠原は東京の大学を出たのに能登で教員をしているという、少し変わった人物だし、小宮と雪子には、それぞれはっきりとは言わないけれど何かの思いがあったんじゃないかと思えるような表情や空気。笠原の教員生活はどんな風だったのかな?とか、宇田甚平が猿谷郷を出る決意をした経緯(貧しかったことは語られるけど)、一人をのぞいて名前しか出てこない矢田本家の人とか、学校に来られない清はどんな風に過ごしてるのかとか、もうとにかく、気になる人物が多過ぎ!最終盤に明かされる井関の正体も、分かるとまた、そちらのお家の人達はどんな思いだったのか!?とか。少ししか出てこない人達の、背景がめちゃめちゃ深そうなんですよね。でも、83分なのでそういうとこはバッサリ😅そんでもって、人はやたらと出てくるから、もう、誰が誰やら整理しながら観るのが大変σ(^_^;原作読んでから観てたらもう少し違ったかなぁ。

 

そして猿谷郷。たった4軒の、しかも里のほうとは離れた集落。清のお父さんは気が触れてしまって土蔵に閉じ込められてるし、奥さんと父親がくっついちゃってるし。貧しくて子供が学校に行けない(父親の代わりに働き手にされているため)ほど、それでたった4軒とかもう、中にいたら絶望的な気分になりそう。そういう環境は別としても、小さな集落がどう過ごしてるのか、っていう人間関係の密度(矢田の家とはどういう風に関わってるのか?とか甚平と父親の関係は?とか)こっちもすごく気になる!でも83分じゃそこまではむり(^◇^;)っていう感じ。

 

小宮の勤める毎朝新聞の記者達の様子(電話がモリモリで、デスクがさばき、記者達がかけまわる。そして、鉛筆をやたら鼻に突っ込んじゃう面白い人がいるのは石井監督的(笑))はテンポよくて面白かったので、それとの対比で、その辺の人間関係をもう少しじっくり描いていたら、どれだげ面白かったのだろうか!?と。そんなわけで見出し。今回は作品の時間の短さ、テンポの良さで“石井監督らしいね”というよりはあと15分ほど長く“石井監督がそこを描いていたら、いったいどんな風に物語にし、どんな映画になっていたのかな!?”という興味がわいた作品でした。

 

そして梅宮辰夫さん。田舎の通信員で雪子の妹・良子に恋心を抱く、爽やか好青年(驚)。これ以前に私が観た最も若い梅宮さんは「決着」(1967年)で、この時はすでに、私の知ってる梅宮さん(「スクールウォーズ」のラーメン屋?中華料理屋?の主人。ぽっちゃりしたオジサン)だったので、本作を観て、爽やかさにビックリ。「決着」で硬派なほうに軌道修正させようとした、というのに納得なのでした。

丹波さんは「ホテル」の丹波さんを思い出し(「Gメン」の丹波さんは知らないのでσ(^_^;)、とっても似合っておられました!

 

そうそう、亀石征一郞さんが出ていたんですけど(オープニングのクレジットにも名前があった)、結局どこにいるか気付くこともなく、データベースみて井関役だったことを知りましたw次観た時は気をつけてみます(笑)

 

 

(あ、矢田本家って言ってたと思うんですが、確認できる資料が検索してもひっかからなかったので、違ってたらすみませんσ(^_^;原作読んでみよう。)