T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「決着(おとしまえ)」

梅宮辰夫主演なのに、吉田輝雄がひたすらおいしい映画。

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【映画についての備忘録その9】

石井輝男監督×梅宮辰夫主演?「決着(おとしまえ)」(1967年)

関東秋葉一家は浅草を縄張りとするヤクザ。隣接する下町を縄張りにする大場一家とはその縄張りを巡り争いが起こっていた。
争いの最中、秋葉一家のシマで賭場を開いていた大場(河津清三郎)。8年前、秋葉組長(嵐寛寿郎)の跡を継ぐと言われていた辺見(大木実)は、その賭場が開かれている最中に乗り込み、大場の片腕を切り落として刑務所へ。

大場組はこれを機に解散したが、今はあらたに大場の傀儡として黒田興業が秋葉一家のシマを狙っていた。黒田興業は秋葉組の五郎(梅宮辰夫)の兄貴分・鉄次(吉田輝雄)と弟分・武(谷隼人)が一緒のところを襲い、武を殺害。仕返しをさせてくれという鉄次だったが、組長はそれを認めなかった。しかし、五郎は一人乗り込んで黒田を負傷させる。組長は自分の命に背いた五郎に破門を言い渡すが、「弟の不始末は兄貴分である自分の不始末だ」と指をつめた鉄次をみて、為吉に五郎の身柄を預け、外出を禁止するにとどめた。

そして、武の葬儀の日。秋葉一家がそろっているところへ、黒田は殺し屋の郡司(丹波哲郎)を送り込む。しかし、郡司は秋葉組長と、自分が盾になって組長を守ろうとする鉄次の侠気に、組長を殺さずに葬儀の場を跡にする。

やくざの争いに嫌気がさした秋葉組長は、辺見の出所を一家全員で出迎えたその日の晩、組の解散を宣言。五郎や鉄次は堅気の仕事につき、鉄次は武の四十九日を前に、武の妹・敏子の元を訪れ、一緒に墓参りに行こうと誘う。

組長は将棋センターを作って他の組員たちの仕事の面倒を見ていたが、秋葉一家が解散したあとの浅草は、黒田興業が横暴を尽くし、困り果てた浅草の商店主たちは秋葉に相談をしにやってきていた。

しかし、その四十九日の日の晩、商店主たちの頼みを聞いて黒田興業に話をつけに乗り込んだ組長が襲われて殺される。五郎、鉄次、そして辺見の3人は親分の仇を討つため、黒田興業に殴り込んだ。。。

 

ポスターの短髪の輝雄さんを見てからずっと、観てみたいなー(๑'ᴗ'๑)と思っていた「決着(おとしまえ)」。東映チャンネルの放送で観れました!ありがとう、東映チャンネルさん!

 

え~っと、まず最初に、梅宮辰夫主演?ってそんな書き方あるかよ!と思われるかもしれませんが、この映画観た人が間違いなく抱く感想です(断言)

 

と、それについてはあとで詳しく書くとして。映画としては、テンポよく、配役も適材適所って感じで、その配役、役者の魅力でひっぱられて楽しく観られる映画でした。

 

網走番外地シリーズでは個人的に微妙だな~と思っていた丹波哲郎が、今作では黒のスーツに黒の中折れ帽子の拳銃を使う殺し屋として登場。颯爽とやってきて颯爽と去っていくニヒルな殺し屋。出番は少ないけど場面をさらっていきます。こういう役のほうが個人的には丹波さんには似合っているなぁ(たぶん、ドラマの丹波さんよりバラエティー丹波さんのイメージのほうが強いからだと思う)と思います。 

 

親分役のアラカンさんは言うまでもなく。物理的には弱そうなのに、迫力十分。関東秋葉一家はかなり大きな組で歴史もありそう(舞台は昭和42年ですが、蒋介石と戦うために戦地にかり出されるという話wとか、戦後すぐに戦勝国だー、と言って朝鮮人が浅草の街を荒らしまわるのに怒り、片をつけたりするシーンが冒頭に)なのですが、そんな組をまとめあげるのも納得の存在感。最後に黒田組に襲われるところはちょっとした立ち回りを見せ、死に際も貫禄たっぷりです。

 

出所したと思ったら最後の殴り込みまでほとんど話に絡まない大木実とか、出番5分くらいで死んじゃう谷隼人(もう、若いときはどう見ても日本人じゃないよねっていう顔立ちw)とか、黒田興業の面々(安定の極悪な親分を演じる方々や、チンピラ役の石橋蓮司さんとか)とか、小さい役まで役者さんたちの魅力というか味というか、存分に引き出されていて楽しいです。

 

はい、で、そんななか、梅宮辰夫。この作品、軟派路線で売れてきた梅宮辰夫をもう一回硬派な役に戻そうと作られることになったらしいのですが(石井監督のインタビューより)、結論から言うと失敗してるやん(゜ロ゜;)です。黒田興業に一人で乗り込んじゃう冒頭こそ、弟分を殺された怒りでって硬派な動機付けになってますが、逃げるのにトルコ風呂の部屋に飛び込んで、そこの女の子と調子良く話したりとか、遊び人っぽさ満載w硬派で売り直す気あるのかな?っていうw 堅気になってからの仕事もストリップ劇場の照明係で「たまんねーな」みたいな感じ。劇場の女の子にショーの途中にちょっかいを出してくる黒田興業の面々に怒って、照明落として殴りかかる→一通り倒したらまたしれっと仕事に戻って照明つける、なんてあたりは面白いですが、やっぱり硬派とは違うような^^;石井監督なりに梅宮辰夫をできるだけ硬派にしてみたけど上手くいきませんでした、って仕上がりになっていますw普通に見てたら面白いんだけど。

 

で、上手く行ってない硬派な梅宮辰夫ですが、その分を吉田輝雄がカバーしています。っていうか、輝雄さんのほうが圧倒的に硬派でかっこ良く、本来、主役がになうべき美味しいところを全部輝雄さんが持って行きます(≧∇≦*) 堅気の仕事も自動車板金の工場勤めです。硬派です(こういう映画の鉄板っすね)。基本的に東映任侠映画は男性がターゲットだと思うのですが、そうすると、多分、東映でずっと映画撮ってる梅宮辰夫のファンの男性って結構いたのでしょうし、輝雄さんの場合は松竹で女性向けの作品に多く出ていたこともあり、この作品を輝雄さん見たさで来る男性ファンとかどの程度いたのやら?と。梅宮辰夫主演だと思ってきたら美味しいとこ全部吉田輝雄だよ!って当時劇場で見た観客はどんな感想だったのでしょう^^; (そもそも、映画の前半部分で親分の言いつけに背いて謹慎を言い渡される時点で、どうやって活躍するんだよ、です)

 

一方、現代の吉田輝雄ファンとしてはもう、カッコイイ場面の連続でとにかく楽しいです!(訂正:吉田輝雄ファンじゃなくても面白いです😏)親分や兄貴分、弟分を心底大事にし、命をかけて守ります。

郡司の拳銃の楯になって親分を守ろうとするところなんてもう「惚れてまうやろー!」です。片手に銃を持って乗り込んできた郡司。自分に斬りかかろうとする秋葉組の面々をその銃でもって、手首を狙いうち、ひるませます。組長はこれ以上混乱しないようにと自ら郡司の前に現れ、自分を撃て、と言うのですが、5発目が組長に!というところで鉄次が駆けつけ、腕に銃弾をうけます。

「やい!殺し屋よ、俺がここに立った以上、親分には楔状の傷もつけさせねー。おい兄弟達よ弾はあと1発でおしまいだ。突っ込んで叩き切れ!」

ここで他の組員が郡司に斬りかかり、ここでも手首を銃ではじき、郡司の銃弾はなくなります。そして再び鉄次も郡司に斬りかかろうとしますが、

「兄さん、弾はまだ6発あるぜ」

と、もう1挺の拳銃を取り出します。

「その6発の弾が俺の体に何発入るか、やってみたらどうだい」

「親分のためなら喜んで楯になるって訳か」

「どうせ白い着物か青い着物かどっちか着るのがヤクザの決まりだ。さぁ、勝負だ!」

「ちくしょう、痺れるぜその台詞」

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郡司じゃなくても痺れますってー!輝雄さんと丹波さんのアップの切りかえでテンポよくこの台詞。もう、なんなのー!!かっこ良すぎるー!っていうかだからこれ、梅宮辰夫がほんとはやるべきなんじゃないのー!?です。

 

女の子との関係も、どっちが主役やら、ですw五郎の相手は訳ありっぽいトルコ嬢で、鉄次の相手は武の妹で食堂で働く純情な女の子・敏子。

敏子は鉄次が訪ねてきたことで勤めていた食堂に黒田興業がやってきて、そのせいで食堂をクビになります。でも、墓参りの日には新しい仕事が見つかり、一方、同じく黒田興業が来たせいで板金工場をクビになった鉄次にはまだ次の仕事が見つかりません。

「鉄次さんもきっといいところが見つかるわ!」

「そうなるといいんだが」

「絶対よ!丈夫で、優しくて、それにすごく男性的だもの!」

「はははっ、最高だな(苦笑)」

「ほんとよ!ほんとに、そう思ってるの!」

(男性的だもの!って褒め言葉に笑ってしまいましたがw)優しい表情で敏子に接する鉄次。敏子も鉄次に恋心を抱いている様子。そりゃ、ステキですもんね!!って、だから、これも硬派な役で売り直すんだったら梅宮辰夫がやるべきなんじゃないのー!?です^^; 輝雄さん目当てに観てる側としては(≧∇≦*)なのですけどね。

 

他にも、五郎の背中の彫り物がおかめの面だったり、殴り込みの時の服が、3人ともお揃いの上下(あの、ヤクザの人が着る七分くらいの長さの袖とズボンの丈の服はなんて言うのだろう。スーツじゃないよね^^;)なんだけど、中に着るダボシャツ?が五郎と辺見が青で鉄次だけ白とか、「いや、だから主役の扱いがちがうだろ!」みたいな突っ込みが次々と(^◇^;)

 

あと、今作は輝雄さんのアップのシーンがとても多かった印象。目力で観る人を釘付けにします。武の仕返しを止められてグッとこらえている時や、堅気になってからの勤め先に黒田興業の面々がやってきた場面で殴り返さずに耐えてる時などは、迫力と威圧感のある鋭い目。敏子と話してる時はニッコリと優しい目に。アップの場面もやっぱり梅宮辰夫より多いんだよなー!

 

本当に最初から最後まで、「主役は吉田輝雄だよね?」な映画でした(๑'ᴗ'๑) 石井監督って、作品の中で活きる俳優さんとそうでない俳優さんがはっきりしているなーとここまでいくつか観てきての感想。梅宮辰夫が主役なのにイマイチかっこ良くなかったのは、石井作品の常連さんたちのなかに放り込まれたからかもしれません(^◇^;)

 

あと、五郎と鉄次の距離がやたらと近くて、腐女子系の人が喜びそうな場面(実際喜ぶかはさておき)がいっぱいなのも付け加えておきます。最後なんて、鉄治に頬すりつけて泣くんだよ>五郎。

 

その後、続編も放送されたので「続・決着(おとしまえ)」についてはこちら

 

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