T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「やくざ刑罰史 私刑!」

暴力描写に目をそらしつつ、キザな殺し屋を凝視する。 

やくざ刑罰史 私刑!

やくざ刑罰史 私刑!

  • メディア: Prime Video
 

 


【映画についての備忘録その80】

石井輝男監督×菅原文太大木実吉田輝雄主演「やくざ刑罰史 私刑」(1969年)

 

第一部江戸時代。「やくざ渡世に二つの法度“盗みをするな、間男するな”」

黒崎組の組長、剛造(菅井一郎)はあがりのいい賭場を奪うため対立する組に出入りをしかけ、その賭場を奪う。賭場の仕切りは出入りでもっとも働きのあった、代貸の友造(大友柳太朗)に任せる。剛造の女であるおれん(藤田佳子)の弟・新吉(宮内洋)は手柄がなく、子分の常(菅原文太)は新吉をかばって指をつめた。剛造は新吉がかつて自分の名を借りて縄張りを荒らしていたのを知って咎め、その償いにとおれんを自分の女にしていた。それを知っている常は二人に同情し、新吉のために指をつめたのだ。弟をかばった常に思いを寄せていたおれんは、常のもとへ詫びに行き、その夜二人は結ばれた。だがその場を蝮の六(石橋蓮司)に見られてしまう。見せしめに目玉をくりぬかれる常。常の兄貴分の友造は、剛造の非道ぶりに怒りに耐え兼ね、剛造に刃を向ける…。

第二部大正時代。「親分並び一家に迷惑を及ぼしたる者は所払い、それを受けし者がふたたび士地に戻りたる時は白刃をもって制裁を加える」。秋葉一家組員、尾形(大木実)は、代貸岩切の命令で桜井一家の親分を斬った。しかし、後ろに大きな組織がついているとしって仕返しを怖れる秋葉により関東所払いの回状が廻された。だがそれは桜井の縄張りを狙う岩初が仕組んだ罠だった。所払いになるならば恋人・さよ(橘ますみ)を連れて逃げようと思い立った尾形だが、桜井にだまされて連れ出され、会えないまま尾形は逮捕される。三年ぶりに刑務所を出た尾形は、さよを忘れがたく、土地に戻ってきた尾形は、掟に従って制裁を受ける。そして、さよが秋葉組の好敵手・雨宮(山本豊三)の女房となっていることを知るのだが…。

第三部現代。「組の組織を破壊、秘密を漏洩せる者は理由の如何にかかわらずこれを抹殺する」橋場組から、その資金源である金塊が盗まれた。組長の橋場(沢彰謙)の命令で代貸の島津(藤木孝)らによって捜索が続けられ、組員の一人の男がつかまった。男はヘリコプターからロープでつるされ、凄惨な私刑にあうが口を割らなかった。だが、男のもっていた金塊は奪われたうちの半分。島津は組を乗っ取り金塊を手に入れるため橋場の殺害を企むが、最初の計画は失敗。それを苦々しくみていた島津の前に、ある男(吉田輝雄)が現れる。その男の曲撃ちの見事な銃の腕前に、島津は”金の延べ板で一億を、殺しの新聞記事と引き替えに払う”という条件で、組長殺害を依頼するのだが…。

 

 

 

なんで「風の中の子供」のあとにこれ!?という備忘録の並び(笑)12月からこっち、石井監督作品観すぎです。Blu-rayレコーダーに保存している「ゴールドアイ」を観ていて、吉岡さん的な役の輝雄さんが他にも観たい!というスイッチが入りw、それならば、と、AmazonプライムビデオのJUNK FILM by TOEIで、約2年ぶりの鑑賞。

 

あらすじの通り全部で三話あるオムニバス作品。前回観たときは、私自身がまだ「網走番外地」の数作品と新東宝作品くらいしか石井監督作品を観たことがなかったころだったので、タイトルバックから始まり次々出てくる強烈な暴力描写に面くらってちょくちょく視線をそらしつつ(^◇^;)、輝雄さんの演じる殺し屋(多分。映画のデータベースの粗筋だと金庫破りとかなんとかなってますけど)の、かっこよさに惚れ惚れして終わった映画。そして、今回久しぶりに観たら、初見の後に「異常性愛路線」とかも経験した故か石井作品の免疫がついてきてw前回観たときに比べるときちんと映画を観ることができました(それでもあんまりどぎついところは目をそらしちゃうんですけど・・・)。

二話はちょっと地味目な話ですが、一話も三話もそれぞれ独立して90分の映画にして作れそうな迫力。なかでも、映像のスタイリッシュさとか作品のテンポ、音楽のはまり具合とか、石井監督らしいカッコよさは第三話でもっとも出ている感じがして、第三話の現代編が1番面白いです。

 

 

第一話は文太さんが主演ですが、大友柳太朗さんの友造の渋い存在感が作品を締め、石橋蓮司さんの底意地悪そうな蝮の六のいやらしさが光る作品。ストーリーの始まりの出入りのシーンの迫力はさすがで、そして、友造の颯爽とした殺陣と、隠れてうまく立ち回る六という、登場人物の人間性が出ています。大友柳太郎さんは時代劇の俳優さんなんだな、というのはこの最初の殺陣の風格が別格で、しっかりと感じることができました。

一話は指が落とされるのは当たり前ってな感じで、耳が切られたり、目玉がくりぬかれたり、かなりきつい描写が多くて、視線をそらすシーンが一番多いお話だったかも。。。

 

第二話はこの映画のDVDのジャケ写になっている大木実さん主演ですが、大木さんが頭から血を流すシーンは・・・ありません!残酷な描写もほとんどなくて(桜井組長が一人切り込んできた尾形に手首を切り落とされる、というのが一番の描写だったくらいで。これは網走番外地とかでも見てるし慣れてるw)、尾形とさよ、雨宮の純愛物語に、ヤクザが邪魔しに絡んでくる、という感じ。異常性愛路線では輝雄さんが担当してきたような、美しい物語が展開されます。一話と三話が強烈な分、”やくざ刑罰史”というには印象が薄くて、大正時代の雰囲気とか、建物とかモダンな感じがステキでした。

 

 

はい、で本題のw第三話。

石井監督らしいかっこよさ、というのはやはり輝雄さんの存在抜きには語れない。というわけで、ここからはイイ男のキャプチャ多めでお送りしますw

 

最初の登場は、盗まれた金塊の入ったアタッシュケースを持って歩道橋の上を逃げる橋場組の組員の行方を、白いスポーツカーの中からニヤリと眺める、というシーン。もう、最初からキザな雰囲気全開。これが文句なしに似合っているヾ(≧∇≦)

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金塊を盗んだその組員は島津の運転する車につかまります。途中、車からおりて逃げたかと思うと、組長の乗るヘリコプターが現れます。するとヘリからおろされたロープで組員はつり上げられ(そんなことが可能かどうかはさておき(^◇^;))、海にたたき落とされ、浜辺を引っ張られ、と、かなりむごい私刑にあいます。あまりの酷さに「楽にしてやるぜ」と遠くからライフルでロープを切り落とし、

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007かな。


死んだ男に向けて弔いの十字を切る、と。f:id:kinakokan0620:20200207160920p:plain


うっほーい!めっちゃキザ!!そして、はまっているぅヾ(o´∀`o)ノ

 

一話も二話も主役はヤクザでまさに"やくざ刑罰史”。菅原文太大木実も私刑に遭うのに(文太さんにいたっては目玉くりぬかれるし(°∇°;))、第三話の吉田輝雄はヤクザとは一線を引いていて、そんな目にはあわず、ハンサムなお顔に傷を負うこともないw突然あらわれては美味しいところをかっさらう。きつい暴力描写の部分は島津役の藤木孝さんとその弟分の高英男さんと林彰太郎さんが担当で、裏切った橋場組の組員たちに私刑を加えていく、という構成なので、輝雄さんはもう、ただひたすらキザでかっこいい部分のみを担当。なんというか、吉田輝雄のPVかな、これは?と錯覚しそうw

 

島津は殺し屋に殺害を依頼しながら、自ら橋場組長を手にかけます。そして、殺し屋を罠にかけて犯人に仕立て上げ、新聞には容疑者として殺し屋の写真が。組長を殺すことはできなかったが、島津の“予定通り”犯人に仕立てられたのだからと、男は報酬を受け取るべく、再び島津の前に姿を現します。

 

んで、この登場がまためっちゃキザでかっこいいんだわヾ(o´∀`o)ノ

 

島津と対立する大村組の組長。金塊が奪われたのはこの大村組の工作。で、どういう理由か分かりませんがw島津と大村の二人がクレー射撃で対決していて、勝ったほうがスタイル抜群の美女を景品として受け取れる、ということに。二人の勝負を背後の離れたバルコニーから眺めている殺し屋。大村が、的代わりにされたペンダントヘッドの端にかするように当てると、今度は島津の順番。その時、男は背後からライフルを撃ち、ど真ん中にあて(゚ω゚)島津が勝負に勝ったように見せかけます。

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どんな凄腕w

 

景品の美女を手に入れて得意げな島津と、それをニヤリと笑って背後から面白そうに眺める男。そして、島津はホテルの部屋で美女とベッドへ・・・というところでドアがノックされる音が。島津が女にドアを開けさせると、女はそこに立つ殺し屋の顔を見てうっとりして、この通り↓ 

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007だね

 

うん、これ、ジェームズ・ボンドだねヾ(o´∀`o)ノというか、漫画のごときこのキザさw洋画のスパイものならこんなシーンもありそうだし、様になるのも分かるんですけど、日本の映画でこれやって、そしてちゃんとかっこよくはまってるって、どういうこと!?長身でスマートで、飛び抜けてハンサムな俳優のビジュアルと、ギャング映画もこなすスタイリッシュな映像を撮る監督の組合せのなせる技(・∀・)(いやー、やっぱり「神火101 殺しの用心棒」は輝雄さんの主演で作るべきだったでしょ(笑))

 

この時、大村が別荘に情婦と二人でいる、という情報が入り、金塊を狙う島津は男のことを苦々しく思いながら、ホテルを後にして大村の別荘に弟分らと向かいます。男は女の報酬はきっちり受け取りつつ(笑)金は受け取れずじまい。

そこで、二人の関係は互いに利用しあいながら続いていきます。大村の別荘に向かった結果、大村組の面々に囲まれてピンチになった島津の前に男が颯爽と登場して救ったり。殺し屋が大村組のカジノで女ディーラーの八百長に気付いたことで殺されそうになったところへ、島津が現れてカジノから連れ出してくれたり。

 

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このカジノがまたアバンギャルドな雰囲気で絵になってる。この場面も島津と殺し屋のやりとりがかっこよくて楽しい。

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金塊を巡っての争いのクライマックスは現代ヤクザらしい裏切りでガタガタっと立場が入れ替わりながら、最後は島津と殺し屋の二人が生き残り、一騎討ち。殺し屋は右腕を背後から島津に撃たれ、銃も使えず絶体絶命。しかし、振り向きざまに左手で島津の額を撃ちぬき、金塊は男の手に。

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この片膝落としてる姿も絵になるよぉ(*´ω`*)

 

 

そして、口笛を吹きながらアタッシュケースをロープで引きずって(この時だけその姿が荒っぽくてそれがまたかっこいいのだが(゜∀゜))工場から出て、スポーツカーに乗り込み

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十字を切ってニヤリ。

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白いスポーツカー似合いすぎ(*´▽`*)



ラストは、高速を駆け抜けて行くスポーツカーの姿を捉えながら映画は終わり。第三話はカーアクション、銃撃戦、カジノの雰囲気、助演の藤木孝さんや高英男さん、そして、鏑木創さんの音楽のはまり具合(あと、もう、やり過ぎて苦笑してくるグロい私刑と)と、私のイメージする石井輝男の世界観が濃く出ていて、色々とスタイリッシュでかっこいい要素は沢山なのですが…でも、それも含めてやっぱりキザでかっこいい吉田輝雄のPVなのである(違っ)!

 

 

今回、久しぶりに観て気づきましたが、この作品、輝男×輝雄のコンビで、唯一のナンパな吉田輝雄が観られる映画。カジノから島津の車に送られて出てくるとき、車を運転している島津の彼女(片山由美子)を見ながら「かわい子ちゃんを見ると腹が空くクセがあってね。ごちそうになれませんか」とか言ってたり(゜∀゜)「ゴールドアイ」の吉岡さんの原型かな、という感じでキザで軟派なのにナルシストっぽさがなくてかっこいい!ショーン・コネリーのボンドを思わせる感じ(*´▽`*)日本人的な感覚だとカリカチュアされたような二枚目像で、ともすると邦画でこれをやったらムリがあって笑えてきそうな気がするんだけど、輝雄×輝男のコンビならきっちりカッコよく魅せてくれるというわけで。吉岡さん@「ゴールドアイ」のかっこよさに輝雄さんのファンになった私、硬派なだけじゃなくて、こっちのハンサムの引き出しをあけた作品も撮っておいてくれた石井監督に激しく感謝なのでした(笑)

 

 

・・・あれ、映画の感想じゃなくて殺し屋がいかにカッコよかったか、って感想になってないかい、これ(〃∇〃)