T’s Line blog~映画についての備忘録~

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「続・決着(おとしまえ)」

やっぱり梅宮辰夫より吉田輝雄がおいしかった、悲恋に泣かされる任侠映画。

 

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【映画についての備忘録その14】

石井輝男監督×梅宮辰夫主演「続・決着(おとしまえ)」(1968年)

 

横浜。須藤組の五郎(梅宮辰夫)の兄貴分・譲二(吉田輝雄)は、組長(阿部徹)の命令で橋場組に一人殴り込んで橋場組長を斬り、8年の刑に服していた。しかし、出所というその日、組からの出迎えは誰一人としてなかった。須藤は今では古株の太田(南原宏二)を片腕に須藤芸能という会社を興してそれを表向きの稼業としている。自ら組に出向いた譲二に、須藤組長は警察の目が厳しく表の稼業に影響が出るからだと説明するが、裏の仕事を自分に押しつけた挙げ句の組の態度に、譲二はヤクザに見切りをつけ、懐に入れていた盃を組長の前で叩き割った。五郎は行く当てのない譲二を心配するが、ヤクザをやめることはできず、組に残りパイラーをして金を稼いでいた。

出所した譲二は、橋場組長を斬ったことを詫びるため娘・美也子(宮園純子)の元を訪れる。美也子は聾唖者で話すことができず、今は元組員の塚(砂塚秀夫)と丸山(由利徹)がその面倒を見ながら一人で暮らしていた。譲二は組長を斬ったことを美也子に言い出すことができなかったが、罪滅ぼしに、美也子の行く末を見守ることを決意する。

一方、五郎には六郎(谷隼人)というトランペッターの弟がいる。六郎は須藤組長の娘・佐知子(大原麗子)と恋仲だったが、須藤組長は地元の権力者・黒田(田崎潤)の息子と佐知子を結婚させるつもりで、五郎に二人を別れさせろと命じるのだった…。

 

 東映チャンネルの放送で観ました。「決着(おとしまえ)」の輝雄さんにキャッキャッしてからの~、「続・決着(おとしまえ)」。こちらもやっぱり期待に違わない!?主演の梅宮辰夫より吉田輝雄がおいしい映画でしたヾ(o´∀`o)ノ

 

【前作についてはこちら】 

kinakossu.hateblo.jp

 

「続・決着(おとしまえ)」とか言いつつ、前作とのお話のつながりはなくて、梅宮辰夫(弟分)×吉田輝雄(兄貴分)の設定だけが残り、全く新しいお話。

「決着(おとしまえ)」は五郎と鉄次の二人を中心にして、二人のヤクザとしての生き方、恋、堅気の生活の話が対になるようにそれぞれ描かれていたのですが、「続・決着」のほうは、堅気になった譲二とヤクザの組に身を置く五郎(同じ名前だけど違う五郎です。ややこしい)という立場。譲二は橋場組長の娘・美也子との恋の話を中心に、五郎は弟・六郎との兄弟関係を中心に、とそれぞれ異なる視点の物語が展開します。その分登場人物が多くて90分のなかであちこち話が飛び、また、ちょっと蛇足かな、と思うようなシーンもあり、「決着(おとしまえ)」ほどのテンポの良さはありませんでした。それでもところどころに挟まれる石井作品おなじみの砂塚さんと由利徹さんのコミカルなシーンに笑ったりで飽きることなく、最後には「任侠映画なのに、悲恋に泣かされる」という思わぬ展開に、見終ったあとに余韻の残る満足感のある作品でした。(今回も結末まで書いてますm(_ _)m)

 

映画は「決着(おとしまえ)」同様の、誰が主役なんだよ!?みたいな展開からスタート。映画の始まりは輝雄さんのどアップで(〃∇〃)譲二が橋場組に殴り込むところから始まります。

橋場組に現れて「おとしまえをつけに参りました」と名乗る譲二。その譲二に向けて何かが投げつけられます。反射的に玄関のガラス戸をしめて身をかわし、ガラスが割れると「続・決着(おとしまえ)」のタイトル画。いきなり印象的な演出。

一人で橋場組の組員をどんどん斬り倒していきます。様式美みたいな型を見せるような立ち回りで、もう、超かっこいい(〃∇〃)このシーンの上にキャストやスタッフの名前がかぶるんですが、その演出もカッコいいです。で、対する五郎のほうはというと・・・。出迎えのなかった譲二は一人、五郎がパイラーをしている飲み屋へやってきます(譲二は組に出所することは伝えていましたが、五郎にはそのことは伝わっていませんでした)。が、五郎はグループサウンズのメンバーみたいな服とカツラ(^◇^;)前作では「梅宮辰夫を硬派で売り直す」という努力のあとが見られたのですが、「続」のほうはもうそのコンセプトはなかったことになってるのか!?っていう扱いw譲二が五郎と一緒に須藤組に戻り、盃をたたき割って組長に返すまでの冒頭15分くらい、もう、ひたすら、かっこいいのは吉田輝雄の役目です(〃∇〃)

 

それでも、前作よりは梅宮辰夫は主役らしい扱いを受けていてw

五郎はパイラーとして外国人相手に紹介していたエミ(国景子)との仲が恋に発展します。エミの気持ちに気付きながらも知らないふりをしてエミに客を紹介していた五郎。エミはそんな五郎を忘れるため須藤芸能が募集している東南アジアに派遣する舞踊団に参加することにします。しかし舞踊団というのは口実で実は身寄りがなかったり家出した女の子たちを集めて外国へ売り飛ばすのが目的。五郎はエミに舞踊団に入るなと言い、エミの気持ちを受け入れます。

このエミも弟・六郎との話の展開に絡んできてりして、前作では華を添えるためという程度だった五郎の恋も、軽いタッチではありますがきちんと描かれています。

 

はい、で、軽いタッチなのになんで悲恋に泣いちゃったのかと言えば、そこはもちろん輝雄さん担当のお話のほうで、やっぱり美味しいところは吉田輝雄が持って行くのであります。

譲二は出所後、美也子の元を訪れます。それは橋場組長を斬ってしまったことを詫びたかったからなのですが、結局言い出すことができませんでした。しかし、障害を抱えて一人で暮らす美也子(塚と丸山という楽しい元組員の助けはありますがw)のことが気にかかり、見守っていこうと考えます。

口のきけない美也子と話ができるようにと、譲二は手話ができる人を探し、街の易者で美也子の知り合いであるウラナリ先生(嵐寛寿郎)から手話を習い始めます。それまで、鋭い目でヤクザをにらみつけ、五郎や佐知子など自分を慕う人達にすら緊張感みたいなものを漂わせていた譲二が、ウラナリ先生から手話を習うときは穏やかな表情で一生懸命に手話を覚えます。堅気になってから出会う気の置けない仲間を前に譲二は少しずつ心を開いていきます。そんな時、美也子が須藤組に連れ去られます。美也子に御執心の黒田に美也子を差し出すためです。美也子の窮地に塚、丸山とともに駆けつけ、黒田から救いだし、横浜の海を眺めながら歩く二人。譲二は美也子を見つめて、覚えたばかりの手話で

 「キレイデス」

えっ?という表情をする美也子を見て、譲二は恥ずかしそうに

「船ガ キレイデス」

そんな譲二をみて、美也子は

「アナタノ心モ キレイデス」

 気持ちを伝えてみたものの恥ずかしくてごまかしてしまう譲二とその気持ちに気付きながらもやはり同じようにストレートに好きとは言えない美也子。お互いに内に秘めた想いを伝えることはできないけれど、一緒にいられることが幸せ。え、これヤクザ映画ですよね!?と言いたくなるような面映ゆくなるシーンですヾ(o´∀`o)ノ

譲二はその後もウラナリ先生に手話を教わりに通います。

「(ウラナリ先生の手話を真似ながら)仲良くしましょう」

「そう!」

「もっと強烈なやつないですか!?」

「え?」

「つまり、アイラブユーですよ!分かってるでしょ?」

「おー、そうかい(笑)もっと早く言やあいいのに!(手話をしながら)私はあなたを愛しています」

教わった後はにっこりと「ありがとうございます!」。ヤクザだった頃の張りつめた雰囲気はそこにはありません。(前半の譲二の緊張感と、美也子やウラナリ先生、塚たちと一緒の時の穏やかな笑顔と両方楽しめる、やはり吉田輝雄のための映画です(∀))

 

しかし、堅気になった譲二の穏やかな時間はそう多くはありませんでした。六郎が佐知子と駆け落ち。佐知子は連れ戻され、六郎は殺されてしまいます。そして、夕方から美也子の姿も消えていました。六郎を殺されて怒った五郎は、堅気になった譲二を巻き込まないように一人で殴り込みをしようとしますが、譲二は「死ぬときは一緒だって兄弟の盃をかわしたじゃねぇか」と二人で須藤組に乗り込みます。

 

殴り込みに行くときに流れる曲は前作「決着(おとしまえ)」でも流れていた梅宮辰夫が唄う任侠映画らしい“いかにも”な曲なのですが、これが最後に死を覚悟して二人で組織に立ち向かう、という前作とのコンセプトの繋がりを感じさせるいい仕掛けになっています。

 

須藤は黒田とともに港に停泊している貨物船に乗っていました。集めた女性たちを東南アジアへ送るための船です。船に乗り込み、須藤組と対峙する五郎と譲二。

譲二は地下の船室に閉じ込められて黒田に襲われそうになっていた美也子を救い出し、船室にそのままいるように伝え、黒田を連れて甲板まで戻ってきます。五郎はその時甲板の隅まで須藤を追い詰めるも、銃を向けられて身動きが取れなくなっていました。

黒田にドスを突きつけたまま「五郎から手を引け」と言う譲二。パニックになった黒田は「あの娘には手をつけていない」と視線をやります。そこには譲二を心配して甲板まで来てしまった美也子がいました。

その姿を見た須藤は譲二が橋場組長を斬ったのだ、と美也子に向かって叫びます。

「言うな!黙るんだ!」と言う譲二にかまわず、須藤は美也子に話し続けます。須藤に盃を叩きつけた時ですら冷静さを失わなかった譲二に、静かにでも確実に感情の揺れがおこります。それでもなお美也子に話し続ける須藤。そしてついに譲二は怒りに任せて須藤を斬りつけようと黒田に向けていたドスを振り上げます。その隙を見逃さず、須藤は銃の引き金を引き、銃弾は譲二の胸に。譲二は力を振り絞って手にしていたドスを須藤に向かって投げつけ、五郎がとどめを刺します。

銃弾をまともにうけた譲二はもう立っていることもできず、五郎に抱えられて横になります。

「兄貴、しっかりしろ!」

「こんなところで死ねるかい。あの娘さんの行く末を見届けるまでは」

息も絶え絶えになりながら、そばに立つ美也子に手話で思いを伝えます。

「オ父サンノコト事ヲドウシテモ言エナカッタ」

「許シテイマス」

「アリガトウ」

「死ナナイデ 死ンジャイヤ」

譲二はそっと笑顔を浮かべます。

そこで警察が駆けつけ譲二は担架で船から降ろされ、五郎も警察に連れられて下船。美也子は譲二を船の上から見守り、「死ナナイデ」と必死に手話で話しかけます。その姿を見た五郎は救急車に乗せられようとしている譲二の肩を起こして美也子の姿が見えるようにしてやります。

「愛シテイマス」

と繰り返し伝える美也子。それを見て静かに微笑む譲二。しかし、譲二には自分も伝えたかったその言葉を伝える力はもうなく・・・

 

兼業主婦、ここでポロポロ涙しました。まさか任侠映画観てて恋の話に泣くとは思わなんだ。美也子のために生きていたいと思っているのに消えていこうとする自分の命。それを感じながら伝えたのは美也子への謝罪。覚えたのに伝えることができなかった「愛シテイマス」の言葉。切なすぎだ!!

 思えば、「女体渦巻島」でも、信彦がアブサンを飲んでいたところに百合がやってきて、一瞥するとグラスを残して去り、残された百合はグラスを換えようようとしたバーテンを制して、同じグラスでアブサンを飲む、というこれまたなかなかに切ないシーンを描いていた石井監督。この辺は新東宝から続く、石井監督的吉田輝雄の生かし方なのかもしれません。いや、もう、ほんと切なかったっす。

 

最後、命尽きて救急車で運ばれていく譲二を五郎が「俺も兄貴のところへ行きたい!」と泣きながら追いかけるシーンもかなり切なく。「決着(おとしまえ)」でも、五郎(違う五郎なんだけど)が鉄二の死に号泣するシーンがあって、このシリーズはどちらも凄く感傷的。任侠モノとしてイメージするものとは違って、ウェットなドラマで、それ故に見応えがありました。

んで、硬派になりきれてない梅宮辰夫と硬派な吉田輝雄というこの組み合わせも良くて。役柄的な対比も面白く、もっとこの組み合わせも見たかったなぁ、と思いました。

 

「決着(おとしまえ)」も「続・決着(おとしまえ)」も、輝雄さんに任侠映画ってどうなんだろう?と思っていたのですが(私の中ではゴールドアイの吉岡さんのようなクールでスマートなイメージ。網走番外地の役もヤクザではないですし、タイプ的には吉岡さんなのですよね)、石井監督にかかるとスーッとはまるんだなぁ、と思いました。鉄次も譲二もどちらかというと寡黙で、思いを内に秘めるタイプの役。梅宮さんの五郎は思いっきり喋って泣いて、感情を外に出すタイプ。網走番外地の橘・健さんを二人で分けたような感じです。この頃にはもう輝雄さんにも演技の堅さとかはないのですが、感情を爆発させるような熱演型の演技ではないのは変わらず。で、そのあたりがまた、このシリーズの熱い思いを内に秘めながら冷静さを失わない、という役柄にマッチしていて、表情だけの演技で色々な感情が伝わってくる役でした。この後、石井監督が異常性愛路線に行っちゃって、それに付き合ったが故にご本人の俳優としてのキャリアもほぼ終焉してしまったのがほんと勿体なく。主演デビューからの数年のビックリするような下手さ加減からwここまで上手くなったわけで、ずっと一線で役者をされていたらどうなってたのかなぁ、と思ってしまいます(基本的に演技が上手ではない俳優さんとして認識されている人についてこんな考察をしているのは私くらいだと思いますが(^◇^;))

 

それから、今作で他にも印象的だったのが、美也子の設定とその描き方でした。任侠映画にまさかこういう設定の物語が存在すると思ってなかったというのもありますが、その障害を「泣かせる」ための装置にしていなかったこと。当時、どのくらい手話というものが知られていたのか分かりませんが(譲二は「唖の人と話をするにはどうしたらいいか教えてくれる人を探しているんだ」といって夜の街を歩くので、手話が今ほど知られていなかったのかな?と想像)、二人にとってはあくまで意思疎通としての手段、という風な描き方。いうなれば外国語を学ぶような感じです。泣かせにかかるような設定にはもっていってなくてそれが逆に最後に涙ポロポロ…につながったように思います。

 

あと徒然と思ったことオタク的メモ。

輝雄さんの浅くくわえたたばこの先をクイッと下げた仕種がめちゃくちゃカッコいいのですが(アイコン参照)、出所してから五郎を訪ねたときにこの姿が見られたり、今作はスーツ姿&トレンチコート姿での登場が多く、おかげでスマートで小顔で長身、というスタイルの良さが際立っていてすんごいカッコよかったり(かっこいいしか言ってない)、砂塚さんと由利さんとの絡みでのコミカルなシーンがかわいらしかったりと、ストーリーとは別に眼福(//∇//)なシーンが多くてそれもまた自分的には本筋とは関係ないとこで作品の評価のアップするポイントでありましたw

 【クイッと下げてます】

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