T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「セクシー地帯(ライン)」

東京オリンピック(1964)前の銀座のリアルな街並みとキュートな二人にワクワク。

セクシー地帯 [DVD]

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【映画についての備忘録その2】

石井輝男監督 三原葉子×吉田輝雄主演「セクシー地帯」(1961年)

 

銀座の時計台(銀座・和光のあれです)の下で彼女と待ち合わせ中のサラリーマン・吉岡(吉田輝雄)。突然、女性にぶつかられて「あなたハンサムね」なんて言われてる間に、背広のポケットから、上司から預かった大事な書類をすられてしまいます。 あげくの果てに、刑事からスリの一味と間違われて、警察へ連行・・・。翌日には容疑が晴れて釈放されますが、大事な書類は戻らず、上司からは大阪への転勤を命じられます。

同じ会社に勤める彼女・玲子に「一緒に大阪に行こう」と誘いますが、玲子のほうは上司に転勤を取り消すように頼みに行けばいい、と言います。そんな簡単に!?と思いますが、玲子のほうはなんだか転勤命令が覆る自信がある様子。

それもそのはず、玲子は大会社の役員相手にコールガールを斡旋する売春組織「ビザールクロッキークラブ」のコールガールの一人で、吉岡の上司は客の一人。吉岡の知らないところで玲子が転勤を取り消すように上司に脅しをかけます。上司の転勤命令が覆ったところで、今度は売春組織を抜けるために、組織のボスに直談判。しかし、そちらはそう簡単にはいかず、玲子は殺されてしまいます。そうとは知らず、上司と話をするために、上司のマンションの前で待っていた吉岡は、ラジオで玲子が殺されたこと、その容疑が自分にかかっていることを知ります。途方にくれて街をさまよっていると、時計台の下でぶつかってきた女スリ・真弓(三原葉子)と再び出会い、それをきっかけに、吉岡の容疑を晴らそうと二人で売春組織の秘密を暴くことに・・・ というお話。

 

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数々の作品を世に送り出した石井輝男×吉田輝雄のコンビから、最初に取り上げるのは 石井監督の「地帯」シリーズ最後の作品です。これ、もう、オープニングからオシャレな映像に引き込まれ、驚きの連続です(この前に同じ監督の網走番外地見てたから余計ビックリよ)。オシャレってどういうことよ!?って感じかもしれませんが、それ以上にこの映画を端的に表す言葉がないかなってくらい。ほんと、オシャレです(しつこい)

 

オープニングタイトルは外国雑誌の切り抜きを模したような映像でフランス映画かと思うような始まり。そして、全編を彩るジャズの音楽。その上、新東宝の倒産が近いころに撮られた作品で予算もなかったために、白黒映画(シリーズ前作「黄線地帯」はカラー)で、ゲリラ撮影で銀座や新橋、浅草でロケをしていますが、予算がないせい、という負の要素すら、逆にこの映画をステキな作品にしています。

 

見ているほうはオリンピックを前にした開発途中の銀座の表通りと、舗装されていない道路に小さなお店が迷路のように並ぶ裏道(銀座でボートに乗ってデートなんて場面も。今じゃできないけどとっても素敵!)、おばあちゃん達には用のなさそうな猥雑な浅草、今と変わらず!?競馬とサラリーマンでごった返してる新橋。これらを、登場人物と一緒に歩いているようなワクワク感。売春組織の秘密を暴く、というサスペンス的な要素も楽しいのですが、今の視点で見ると、そちらよりも、吉岡と真弓が歩き回っている街並みや2人の距離が近づいていくラブストーリーのほうがキュートで魅力的です。

 

吉岡はめちゃくちゃイケメンさんなのですが、玲子との関係も、真弓との関係も、基本的に女性に主導権を握られてるようなちょっとぬけたところがあり、そこがまた何だか可愛らしい(๑'ᴗ'๑) 真弓と一緒に組織の秘密を暴くために、コールガールに近づきますが、その時はもう、完全に吉岡は真弓に手下のように扱われ、吉岡も頼もしいお姉ちゃんに目を輝かせてついていく子ども(子犬?)のようです。

二人のやりとりは終始こんな感じで、「1番好きなのはスリル、それからハンサムな男の子」と言われて、即効で「ボクのこと?」と答えるシーンは笑えますが、そりゃまぁ、この顔ですものね、って感じですw(石井監督、絶対意図的にこのシーン入れているのではないでしょうかw) 吉岡は「次はいつ会える?」と、会う約束を自分から切り出したり、真弓のせいで大変な目にあったことは忘れw真弓姉さんについていきます。

真弓役の三原葉子さんは、飛び抜けて美人という方ではないのですが、笑顔がキュートで、小悪魔的で天然な明るい役が似合う女優さん(吉田輝雄さんとは今作含めて石井監督作品では常連の組み合わせとなります)。今作では、サブリナパンツを可愛く履きこなし、三原さんの衣装もまた、この映画のオシャレ度に貢献しております。

 

さてさて、吉岡役(この後もいっぱい吉岡役をやりますが、初の吉岡。ゴールドアイも吉岡さんです。)の吉田輝雄さんは、当時としては背の高い178㎝という長身。細身で本当にスタイルが良いのですが(元モデルでその前は湯浅電池(今のGSユアサ)の営業マン)、その吉岡がクロッキークラブの秘密を探るために銀座の裏通りを歩き回るところを背後から手持ちカメラで撮影し、そこに劇伴のジャズがかぶされるシーンは出色で、もう、ここだけ名場面で切り取って映画史に残してもいいんじゃないかと思うレベル。観ているこちらは吉岡と一緒に迷宮のような銀座の街を組織の秘密を暴くために歩き回っている気分になります(これ、大きなスクリーンで見れたらもっと楽しいだろうなー)。んで、長身でスタイルのいい吉田輝雄が歩いてるってのが、これまたスタイリッシュで、映画のオシャレ感を増すのですね。 

 

と、もう、いろんな要素がからみあって、この映画をめちゃくちゃ素敵な作品に仕上げています。石井監督×吉田輝雄のコンビはこのあとの東映のエログロ路線までなんだかんだで続いていき、こちらの路線のほうでカルト的な楽しみ方をされている人のほうが多いのかもしれませんが、私は「セクシー地帯」のような作品が圧倒的に好き!これがあってこその石井×吉田コンビかと思います。DVDも今は新品で手に入れることが難しく、視聴する機会も限られていますが、ぜひ、いろんな方に見ていただきたい映画です。