T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「網走番外地~大雪原の対決」

雪原を駆ける馬とアクション。網走舞台のテンポの良い西部劇

 

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【映画についての備忘録その8】

石井輝男監督×高倉健主演「網走番外地 ~大雪原の対決」(1966年)

 

橘真一(高倉健)が収容されている網走刑務所から白熊(内田良平)と呼ばれる男が脱走した。看守の木暮は橘の弟分・秀がその手引きをしたと疑い秀を拷問にかけて死なせてしまう。間もなく出所した橘は秀の遺骨を持って秀の父・竜作を訪れることに。
そしてその道中で吉岡(吉田輝雄)という男と出会う。

その土地では石油が出るらしく、竜作(沢彰謙)は娘の千恵(大原麗子)とともに自分の土地から石油を採掘することに生涯をかけていた。

石油が出ると思われる竜作の土地を巡り、親分が”八人殺しの鬼虎”だという地元のヤクザ・権田(上田吉二郎)一家が土地の利権書を手に入れようと画策。一度は権田一家に奪われた利権書だったが、橘と、権田一家に身分を隠して潜り込んでいた鬼虎(嵐寛寿郎)の機転で取り返す。しかし、その直後、竜作は事故を装って権田の息子・白熊に殺されてしまう。

橘は竜作の無念を晴らすべく、鬼寅と、そして権田に「話をつけることがある」という吉岡とともに馬を駆って権田一家へ乗り込んだ。

 

石井監督の網走番外地シリーズ、7作目。私的には1作目とともに上位3本に入ると思う1本です。前半の網走監獄の中のエピソードと後半の出所後の話が上手く繋がれていて、雪原の中のアクションも、前半と後半それぞれに見せ場があり、登場人物も魅力的。全てがバランス良く作られていて飽きません。1966年の邦画興行収入1位だそうです。

 

約90分ほどの映画で、前半30分は網走監獄の中のお話。白熊は刑務所の作業中、伐採した木を馬そりで運ぶ途中に馬を暴走させ、その混乱に乗じて脱獄します。このシーンがまず圧巻。猛スピードのそり、そりの後ろにひかれている橘、ソリに乗っている囚人たちの混乱。そして、その脱獄のエピソードに、橘が出獄後の話につながる場面がさらりと挿入されていて、後々で「おおっ」という気づきになります。ほかのシリーズも監獄→出所後の構成のものは多いのですが、監獄の話は出所後の橘の行き先とその後のお話の導入を示しているだけなのですが、今作はきちんと(?)つながっている、よくできたお話になっています。そして、いつも神出鬼没の鬼虎さんの登場も、上記のように自分の名を騙る権田が堅気に迷惑をかけないようにと権田一家に潜り込んでいるので、いつもに比べて無理がありませんw

 

そして、出所後の橘=健さんは、たぶん、シリーズのほかのどの作品よりもコミカルで、そして、道中で一緒になった吉岡=輝雄さんとの関係は、バディムービーを観ているよう。雪原の中を馬を駆るアクションシーンが壮大でカッコイイのですが、それとの対比で、二人のじゃれ合い?はかわいらしく。

吉岡は道中で財布を落としてしまって酒を飲む金もなく、橘におごってもらおうと「兄弟、こう寒いと一杯ひっかけたいね」と声をかけます。調子いいですw橘も文句言いつつも、吉岡を連れて、(そうとは知らずに)権田一家の仕切る酒場へ。

「ジョニ黒のスカッチ」(スコッチじゃなくてスカッチって言うんです)を吉岡が頼もうとすると、それがどんな酒なのか分からない橘は「外国かぶれは大嫌いなんだよ」と言って焼酎を頼み、つまみにたくあんを指定。ジョニ黒のスカッチが焼酎になってしまったうえにつまみも指定されて、吉岡はヘソを曲げて「らっきょだ!」

 

ここの一連のシーン、繰り返しますがかわいいのです(๑'ᴗ'๑)(健さんと輝雄さんつかまえてかわいいってwとかいうのはありつつ)なんか、ちょっとした兄弟喧嘩みたい(兄=健さん、弟=輝雄さん)。輝雄さんが健さんの相手役を勤める網走番外地シリーズ3本はいづれも二人の関係性が「兄にあこがれる弟」みたいなテイストなんですが(杉浦直樹さんが相手役の3本は二人の関係性は対等な友人、という感じで描かれています)、「大雪原の対決」は健さんと輝雄さんのこの関係性がMAXで出ていてヾ(*´∀`*)ノ キャッキャッ♪します。

 

【兄弟喧嘩してるみたいな二人。いつもの役とのギャップに萌えますw】

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なお、このとき、「ジョニ黒のスカッチ」を知らなかった橘は覚え間違え、繰り返し「ニグロのスピッツ」と連発しますw真面目顔で繰り返し言うのでジワジワきます(今じゃ絶対映画でいえない台詞ですねf^-^;)必見のシーンです(キリッ

 

 

で、「網走舞台の西部劇」について。

そう感じた要素はいくつかあって、まずは衣装。健さんはいつもの白い上下にポンチョのようなモノを羽織っています。権田一家の面々もテンガロンハットにウェスタンブーツ。権田一家の酒場はホステスが住み込みで働いていて二階はホテルも兼ねています。西部劇に出てくる安ホテルみたいです。

 

そして何より、雪原を馬で駆ける橘、吉岡、鬼虎。どこまでも続く雪の大地を駆ける姿は、荒野を駆ける馬をイメージさせます。

【夕陽に荒野、ではなくて真っ白な雪原】

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吉岡はライフルで権田と対峙しますが、橘もドスだけではなくライフルを使います。こんなところも西部劇風。

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・・・なんて感想で見終った後にあれこれ調べてみたら、当時はマカロニウェスタン全盛期で実際に西部劇を意識して作られていたようです。西部劇を網走番外地にフィットさせる石井監督、すごいですw

 

鬼虎=アラカンさんの迫力のある啖呵とか、大原麗子さんのかわいらしさとか、他にも見所十分で、あっという間の90分です(プログラムピクチャーってだいたい90分で1本終わるから気軽に観られるところが良いです)。

 

最後に。本作でも吉岡な輝雄さん。元々ハンサムさんですが、この時期は特にお顔がほっそりして、個人的にはハンサムさんぶりが際立っているなぁ、と今作も含め網走番外地シリーズを見ながらニヤニヤ。「~大雪原の対決」では、ホステスとして街にやってきた女性(国景子)との恋を思わせるようなシーンもあり、馬上で敬礼して別れを告げるシーンとか、もう、めちゃくちゃかっこいいのです (*ノェノ)キャー こんなおとぎ話の王子様みたいな(ヤクザ映画だけど)素振りもステキな吉岡=輝雄さんなのでした。