T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「女体渦巻島」

中毒性の高い無国籍アクション&ラブロマンスムービー 

女体渦巻島 [DVD]

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【映画についての備忘録その3】

石井輝男監督 吉田輝雄×三原葉子主演「女体渦巻島」(1960年)

戦前は大陸侵略の足がかりであった東洋のカサブランカ(そうなの?)・対馬。戦後は人身売買と麻薬密売の中継基地となり、悪徳と汚辱にまみれていた。。。(映画でそういってるんですが、対馬の人みたら怒るだろ、この設定)

香港を拠点とし、対馬で商売をするこの麻薬密売組織の一員で拳銃の名手・大神信彦(吉田輝雄)には百合(三原葉子)という恋人がいたが、百合は信彦が東京へ出張している間に、組織のボス・陳雲竜(天知茂)の情婦となってしまう。今では対馬にあるキャバレーのマダム、という表の顔を持って、麻薬密売を仕切る女ボスとなっていた。

信彦は自分を裏切った百合と陳雲竜に復讐するため、組織にも内緒で単身、対馬に乗り込むが、百合への想いは立ちきれず。。。というお話。

 

TSUTAYAディスカスでDVDをレンタル。その後Amzonでも購入しました。

前エントリーに続き石井輝男×吉田輝雄のコンビから。今回取り上げるのは 二人が初めてコンビを組み、【全女性あこがれのハンサム吉田輝雄(公開時の惹句です)の初主演作となった「女体渦巻島」です。怪しいあれやこれやの想像をかきたてるタイトルですが(DVDを購入したあと、夫にアクション映画であることを説明しておきました)、内容はアクション&ラブロマンスの全うな?映画です。

 

1960年、今はなき映画会社新東宝が長身のハンサムな若手俳優4人(吉田輝雄菅原文太寺島達夫高宮敬二)を「ハンサムタワーズ」(当時できたばかりの東京タワーにあやかっています)と銘打って売り出します。そして、その4人を売り出すために、それぞれに若手監督をつけてコンビを組ませます。で、石井監督が指名したのが輝雄さん。

本作の前の輝雄さんの出演作はたったの3作品。「ハンサムタワーズ」の4人目を探していて(ほかの3人はすでに新東宝で俳優デビュー済み)、その最後の一人として当時の新東宝の社長夫人にスカウトされて入社、映画俳優としてデビューとなります。いわゆるニューフェースってやつですね。ニューフェースって入社したら演技の勉強とか色々するのは新東宝でも同じだったようですが、ご本人のインタビューを読むと、そんな時間も殆どないまま、映画へ出演とあいなった様です。だからなのか!?本作における吉田輝雄は観ているこちらが気恥ずかしくなるくらいにガチガチの演技^^;台詞に抑揚は殆どないし、動きは「ここまで来たらストップしてこっち向いて台詞を言う」みたいな、指示通り動いてます、みたいなロボットのような動き^^; これ観たら、あらゆる「この人下手やなー」と思うような俳優さん達すら上手く見えるレベルです(ホントに)。ただそのガチガチぶりを鋭い目線でカバーして(しきれてないけど)、悪の組織の一員で🔫の名手、でも、一途に1人の女性を愛している、というクールで切ない役をこなしています(こなしきれてないけど)

 

石井監督はこのガチガチな新人にこれでもかってくらいキザな台詞を連発させます。が、不思議なことに上記の通りのガチガチぶりが、そのキザな台詞と相まって、純粋で真っ直ぐな百合への愛を際立たせて(ここはひいき目かもしれませんがw)、ラブストーリーとして観てるとかなり切ないのです。

百合が陳雲竜の情婦になってしまったのは麻薬で意識を失っている間に・・・なのですが、そうとは知らない信彦は「俺のボスは恥知らずで俺の恋人は貞操のない女だった」と百合に言い放ってみたり、アブサンを愛飲していて、「随分強いお酒がお好きなんですね」と言うバーテンに「俺の気持ちみたいな酒さ」なんて言ったりします。百合に裏切られたという思いと、一方で断ち切れない愛と、その狭間でどうしようもない荒れた気持ちが、ガチガチで抑揚のない演技のせいで、逆に心閉ざして生きてる感が出てくるのです。不思議。で、このちょっと他に類を見ないレベルの輝雄さんのガチガチな演技wが見出しにつけた通り、中毒性の高い要因その1です。

 

さてさて、「セクシー地帯」と同じく、「女体渦巻島」も音楽がとても印象的な作品で、対馬が舞台なのに「無国籍なアクション映画」なのも、この音楽がかなり貢献しております。音楽は渡辺宙明さんでゴレンジャーとかマジンガーZとかの作曲をされた方。さらには劇中でキャバレーでロカビリー歌手が歌う物凄い詞の歌(悪魔のKiss 地獄のクイーン♪月の海辺に寝転んで~ミイラみたいに寝てし~ま~え~)まで、耳にすると忘れられません。仕事の途中で席立ってトイレ行くときに脳内で突然流れてきたりします。これが中毒性の高い要因その2です。 

 

んで、映画のクライマックスに向けて、投入されるボス、陳雲竜役の天知茂。最初の出番は、百合が信彦の残していったアブサンを飲んでロカビリー(♪ミイラみたいに寝てし~ま~え~)にあわせてダンス(このダンスも1回みたら忘れらないインパクト)をしているうちに幻想の中に現れます。もう、見るからに怪しさ満点です。この映画の無国籍な雰囲気をより一層際立たせます。で、実際に対馬にやってきてからは冷酷で非道なボスぶりをその落ち着いた声と堂々の演技で魅せます。あくどいシーンとかほとんどないんですけど、そこはさすがという感じ。最後の岩場での 信彦VS陳 の直接対決も 手足の長さの違いをものともせず!?がっつりアクションを見せてくれます。この、出番は後半からなのに存在感十分な天知さんが中毒性の高い要因その3。

 

三原葉子さんはいろんな衣装をとっかえひっかえ(ガーターベルトをつけるセクシーなシーンからかわいいピンクのドレスを着てのダンス、革のスーツに赤いスカーフでライフルをぶっ放すシーンまで)いろんな姿を見せてくれますが、百合は影のある女性で、個人的にはセクシー地帯のような天真爛漫な役が似合っていると思うので、そこはちょっともったいない感じです。

 

と、いうわけで、飛び抜けた傑作とか名作とか、そういう映画ではないのですが(DVDは新東宝名画傑作選というシリーズで出されていますがf^-^;)、なんだか不思議と観たくなる、そんな映画です。店頭でレンタルするには勇気のいるタイトルですので、ぜひ宅配レンタルをおすすめしますw

 

 【全女性あこがれのハンサム】

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 (ちなみに、対馬といいながら、千葉でロケしてたそうです)