T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

黒澤明監督「羅生門」

人間の本性ってどっちなんだろう。 

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【映画についての備忘録その10】

黒澤明監督×三船敏郎主演 「羅生門」(1950年)

平安時代、朽ち果てた羅生門の下。旅法師(千秋実)と杣売り(志村喬)が呆然と座り込んでいる。
そこへ雨宿りをしに下男(上田吉二郎)がやってくる。二人は、下男相手に自分たちが経験した奇妙な話を語り始める。
京の都で悪名高き盗賊多襄丸(三船敏郎)が山中で侍夫婦の妻(京マチ子)を襲い、夫(森雅之)を殺害したという。
だが、検非違使による調査が始まると、盗賊と妻の証言、はまったく異なっていた…。

 

Amazonプライムビデオで鑑賞。

超・超有名作品ですし、詳しいストーリーとか解説とかは他の方がきっといっぱい書いておられると思うので・・・。感想をツラツラと、まさに備忘録として。

 

ここまで1960年代の作品を観てきてましたが、一気にさかのぼって1950年。古い邦画初心者、初・黒澤明、初・三船敏郎

 

まず、のっけから羅生門のセットに圧倒されました。全編通してセットらしいセットはこの羅生門だけなんですが、ほんとに平安時代羅生門が目の前にど~んと出てきたのかなっていう感じ(ほんとの羅生門知らないけど)。かつては威容をほこっていたであろうその門が、都の衰退とともに、門扉がやぶれ、屋根が崩れている姿がこの映画全体の雰囲気を体現しています。華やかに飾られているのは表向きだけ、人の真の姿なんてこんなモノだ、とでも言いたげ。

 

羅生門はひどい雨の中にたたずんでいて、鬱々とした雰囲気。そこで旅法師と杣売りが話す多襄丸の話は夏の暑い日射しの中での出来事。白黒映画ですが、それがかえって日射しのきつさを露わにして、うだるような暑さであることが伝わってきます。そしてこの暑さと日射しが人間性の底のほうの何かドロドロしたもの、決してキレイではない何かを一緒にあぶり出している感じ。こんなクソ暑いときに畏まってらんねぇぞ、みたいな。んでもって、それが三船敏郎によって輪をかけて伝わってくるんですね。

 

初・三船敏郎。いやー、もう、「すごいな、この人😲」って思った俳優さんでした!熱演とかそういうんじゃなくて、ほんとに多襄丸がそこにいるみたい。演技を見てるって感じがしませんでした。

 

あともう一つ印象的だったのが、登場人物が山の中をひたすら歩いてるシーンがよくでてくるんですが、そこの躍動感。イキイキしています。ほんと、ただ歩いてるだけなんですが、ズンズン先にすすむその先に何が出てくるのかとか、それを思って今どういう心境でこの人物が歩いているのかとか、ひたすら歩くだけのシーンでそれを観てる側に想像させて面白かったです。

 

映画は基本的に人のキレイでない面、「人間は結局自分が一番大事なんだ」っていう方向で話が進むのに、最後は自分以外の人間に救いの手を差し伸べる、誰かを大切にする、やっぱり人を信じたくなるようなエピソードで締めくくられるます。黒澤監督が言いたかったのはきっとこの最後のシーンのはず、と救われた気持ちで映画を観終えることができました。

 

石井輝男監督「決着(おとしまえ)」

梅宮辰夫主演なのに、吉田輝雄がひたすらおいしい映画。

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【映画についての備忘録その9】

石井輝男監督×梅宮辰夫主演?「決着(おとしまえ)」(1967年)

関東秋葉一家は浅草を縄張りとするヤクザ。隣接する下町を縄張りにする大場一家とはその縄張りを巡り争いが起こっていた。
争いの最中、秋葉一家のシマで賭場を開いていた大場(河津清三郎)。8年前、秋葉組長(嵐寛寿郎)の跡を継ぐと言われていた辺見(大木実)は、その賭場が開かれている最中に乗り込み、大場の片腕を切り落として刑務所へ。

大場組はこれを機に解散したが、今はあらたに大場の傀儡として黒田興業が秋葉一家のシマを狙っていた。黒田興業は秋葉組の五郎(梅宮辰夫)の兄貴分・鉄次(吉田輝雄)と弟分・武(谷隼人)が一緒のところを襲い、武を殺害。仕返しをさせてくれという鉄次だったが、組長はそれを認めなかった。しかし、五郎は一人乗り込んで黒田を負傷させる。組長は自分の命に背いた五郎に破門を言い渡すが、「弟の不始末は兄貴分である自分の不始末だ」と指をつめた鉄次をみて、為吉に五郎の身柄を預け、外出を禁止するにとどめた。

そして、武の葬儀の日。秋葉一家がそろっているところへ、黒田は殺し屋の郡司(丹波哲郎)を送り込む。しかし、郡司は秋葉組長と、自分が盾になって組長を守ろうとする鉄次の侠気に、組長を殺さずに葬儀の場を跡にする。

やくざの争いに嫌気がさした秋葉組長は、辺見の出所を一家全員で出迎えたその日の晩、組の解散を宣言。五郎や鉄次は堅気の仕事につき、鉄次は武の四十九日を前に、武の妹・敏子の元を訪れ、一緒に墓参りに行こうと誘う。

組長は将棋センターを作って他の組員たちの仕事の面倒を見ていたが、秋葉一家が解散したあとの浅草は、黒田興業が横暴を尽くし、困り果てた浅草の商店主たちは秋葉に相談をしにやってきていた。

しかし、その四十九日の日の晩、商店主たちの頼みを聞いて黒田興業に話をつけに乗り込んだ組長が襲われて殺される。五郎、鉄次、そして辺見の3人は親分の仇を討つため、黒田興業に殴り込んだ。。。

 

ポスターの短髪の輝雄さんを見てからずっと、観てみたいなー(๑'ᴗ'๑)と思っていた「決着(おとしまえ)」。東映チャンネルの放送で観れました!ありがとう、東映チャンネルさん!

 

え~っと、まず最初に、梅宮辰夫主演?ってそんな書き方あるかよ!と思われるかもしれませんが、この映画観た人が間違いなく抱く感想です(断言)

 

と、それについてはあとで詳しく書くとして。映画としては、テンポよく、配役も適材適所って感じで、その配役、役者の魅力でひっぱられて楽しく観られる映画でした。

 

網走番外地シリーズでは個人的に微妙だな~と思っていた丹波哲郎が、今作では黒のスーツに黒の中折れ帽子の拳銃を使う殺し屋として登場。颯爽とやってきて颯爽と去っていくニヒルな殺し屋。出番は少ないけど場面をさらっていきます。こういう役のほうが個人的には丹波さんには似合っているなぁ(たぶん、ドラマの丹波さんよりバラエティー丹波さんのイメージのほうが強いからだと思う)と思います。 

 

親分役のアラカンさんは言うまでもなく。物理的には弱そうなのに、迫力十分。関東秋葉一家はかなり大きな組で歴史もありそう(舞台は昭和42年ですが、蒋介石と戦うために戦地にかり出されるという話wとか、戦後すぐに戦勝国だー、と言って朝鮮人が浅草の街を荒らしまわるのに怒り、片をつけたりするシーンが冒頭に)なのですが、そんな組をまとめあげるのも納得の存在感。最後に黒田組に襲われるところはちょっとした立ち回りを見せ、死に際も貫禄たっぷりです。

 

出所したと思ったら最後の殴り込みまでほとんど話に絡まない大木実とか、出番5分くらいで死んじゃう谷隼人(もう、若いときはどう見ても日本人じゃないよねっていう顔立ちw)とか、黒田興業の面々(安定の極悪な親分を演じる方々や、チンピラ役の石橋蓮司さんとか)とか、小さい役まで役者さんたちの魅力というか味というか、存分に引き出されていて楽しいです。

 

はい、で、そんななか、梅宮辰夫。この作品、軟派路線で売れてきた梅宮辰夫をもう一回硬派な役に戻そうと作られることになったらしいのですが(石井監督のインタビューより)、結論から言うと失敗してるやん(゜ロ゜;)です。黒田興業に一人で乗り込んじゃう冒頭こそ、弟分を殺された怒りでって硬派な動機付けになってますが、逃げるのにトルコ風呂の部屋に飛び込んで、そこの女の子と調子良く話したりとか、遊び人っぽさ満載w硬派で売り直す気あるのかな?っていうw 堅気になってからの仕事もストリップ劇場の照明係で「たまんねーな」みたいな感じ。劇場の女の子にショーの途中にちょっかいを出してくる黒田興業の面々に怒って、照明落として殴りかかる→一通り倒したらまたしれっと仕事に戻って照明つける、なんてあたりは面白いですが、やっぱり硬派とは違うような^^;石井監督なりに梅宮辰夫をできるだけ硬派にしてみたけど上手くいきませんでした、って仕上がりになっていますw普通に見てたら面白いんだけど。

 

で、上手く行ってない硬派な梅宮辰夫ですが、その分を吉田輝雄がカバーしています。っていうか、輝雄さんのほうが圧倒的に硬派でかっこ良く、本来、主役がになうべき美味しいところを全部輝雄さんが持って行きます(≧∇≦*) 堅気の仕事も自動車板金の工場勤めです。硬派です(こういう映画の鉄板っすね)。基本的に東映任侠映画は男性がターゲットだと思うのですが、そうすると、多分、東映でずっと映画撮ってる梅宮辰夫のファンの男性って結構いたのでしょうし、輝雄さんの場合は松竹で女性向けの作品に多く出ていたこともあり、この作品を輝雄さん見たさで来る男性ファンとかどの程度いたのやら?と。梅宮辰夫主演だと思ってきたら美味しいとこ全部吉田輝雄だよ!って当時劇場で見た観客はどんな感想だったのでしょう^^; (そもそも、映画の前半部分で親分の言いつけに背いて謹慎を言い渡される時点で、どうやって活躍するんだよ、です)

 

一方、現代の吉田輝雄ファンとしてはもう、カッコイイ場面の連続でとにかく楽しいです!(訂正:吉田輝雄ファンじゃなくても面白いです😏)親分や兄貴分、弟分を心底大事にし、命をかけて守ります。

郡司の拳銃の楯になって親分を守ろうとするところなんてもう「惚れてまうやろー!」です。片手に銃を持って乗り込んできた郡司。自分に斬りかかろうとする秋葉組の面々をその銃でもって、手首を狙いうち、ひるませます。組長はこれ以上混乱しないようにと自ら郡司の前に現れ、自分を撃て、と言うのですが、5発目が組長に!というところで鉄次が駆けつけ、腕に銃弾をうけます。

「やい!殺し屋よ、俺がここに立った以上、親分には楔状の傷もつけさせねー。おい兄弟達よ弾はあと1発でおしまいだ。突っ込んで叩き切れ!」

ここで他の組員が郡司に斬りかかり、ここでも手首を銃ではじき、郡司の銃弾はなくなります。そして再び鉄次も郡司に斬りかかろうとしますが、

「兄さん、弾はまだ6発あるぜ」

と、もう1挺の拳銃を取り出します。

「その6発の弾が俺の体に何発入るか、やってみたらどうだい」

「親分のためなら喜んで楯になるって訳か」

「どうせ白い着物か青い着物かどっちか着るのがヤクザの決まりだ。さぁ、勝負だ!」

「ちくしょう、痺れるぜその台詞」

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郡司じゃなくても痺れますってー!輝雄さんと丹波さんのアップの切りかえでテンポよくこの台詞。もう、なんなのー!!かっこ良すぎるー!っていうかだからこれ、梅宮辰夫がほんとはやるべきなんじゃないのー!?です。

 

女の子との関係も、どっちが主役やら、ですw五郎の相手は訳ありっぽいトルコ嬢で、鉄次の相手は武の妹で食堂で働く純情な女の子・敏子。

敏子は鉄次が訪ねてきたことで勤めていた食堂に黒田興業がやってきて、そのせいで食堂をクビになります。でも、墓参りの日には新しい仕事が見つかり、一方、同じく黒田興業が来たせいで板金工場をクビになった鉄次にはまだ次の仕事が見つかりません。

「鉄次さんもきっといいところが見つかるわ!」

「そうなるといいんだが」

「絶対よ!丈夫で、優しくて、それにすごく男性的だもの!」

「はははっ、最高だな(苦笑)」

「ほんとよ!ほんとに、そう思ってるの!」

(男性的だもの!って褒め言葉に笑ってしまいましたがw)優しい表情で敏子に接する鉄次。敏子も鉄次に恋心を抱いている様子。そりゃ、ステキですもんね!!って、だから、これも硬派な役で売り直すんだったら梅宮辰夫がやるべきなんじゃないのー!?です^^; 輝雄さん目当てに観てる側としては(≧∇≦*)なのですけどね。

 

他にも、五郎の背中の彫り物がおかめの面だったり、殴り込みの時の服が、3人ともお揃いの上下(あの、ヤクザの人が着る七分くらいの長さの袖とズボンの丈の服はなんて言うのだろう。スーツじゃないよね^^;)なんだけど、中に着るダボシャツ?が五郎と辺見が青で鉄次だけ白とか、「いや、だから主役の扱いがちがうだろ!」みたいな突っ込みが次々と(^◇^;)

 

あと、今作は輝雄さんのアップのシーンがとても多かった印象。目力で観る人を釘付けにします。武の仕返しを止められてグッとこらえている時や、堅気になってからの勤め先に黒田興業の面々がやってきた場面で殴り返さずに耐えてる時などは、迫力と威圧感のある鋭い目。敏子と話してる時はニッコリと優しい目に。アップの場面もやっぱり梅宮辰夫より多いんだよなー!

 

本当に最初から最後まで、「主役は吉田輝雄だよね?」な映画でした(๑'ᴗ'๑) 石井監督って、作品の中で活きる俳優さんとそうでない俳優さんがはっきりしているなーとここまでいくつか観てきての感想。梅宮辰夫が主役なのにイマイチかっこ良くなかったのは、石井作品の常連さんたちのなかに放り込まれたからかもしれません(^◇^;)

 

あと、五郎と鉄次の距離がやたらと近くて、腐女子系の人が喜びそうな場面(実際喜ぶかはさておき)がいっぱいなのも付け加えておきます。最後なんて、鉄治に頬すりつけて泣くんだよ>五郎。

 

その後、続編も放送されたので「続・決着(おとしまえ)」についてはこちら

 

kinakossu.hateblo.jp

 

石井輝男監督「網走番外地~大雪原の対決」

雪原を駆ける馬とアクション。網走舞台のテンポの良い西部劇

 

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【映画についての備忘録その8】

石井輝男監督×高倉健主演「網走番外地 ~大雪原の対決」(1966年)

 

橘真一(高倉健)が収容されている網走刑務所から白熊(内田良平)と呼ばれる男が脱走した。看守の木暮は橘の弟分・秀がその手引きをしたと疑い秀を拷問にかけて死なせてしまう。間もなく出所した橘は秀の遺骨を持って秀の父・竜作を訪れることに。
そしてその道中で吉岡(吉田輝雄)という男と出会う。

その土地では石油が出るらしく、竜作(沢彰謙)は娘の千恵(大原麗子)とともに自分の土地から石油を採掘することに生涯をかけていた。

石油が出ると思われる竜作の土地を巡り、親分が”八人殺しの鬼虎”だという地元のヤクザ・権田(上田吉二郎)一家が土地の利権書を手に入れようと画策。一度は権田一家に奪われた利権書だったが、橘と、権田一家に身分を隠して潜り込んでいた鬼虎(嵐寛寿郎)の機転で取り返す。しかし、その直後、竜作は事故を装って権田の息子・白熊に殺されてしまう。

橘は竜作の無念を晴らすべく、鬼寅と、そして権田に「話をつけることがある」という吉岡とともに馬を駆って権田一家へ乗り込んだ。

 

石井監督の網走番外地シリーズ、7作目。私的には1作目とともに上位3本に入ると思う1本です。前半の網走監獄の中のエピソードと後半の出所後の話が上手く繋がれていて、雪原の中のアクションも、前半と後半それぞれに見せ場があり、登場人物も魅力的。全てがバランス良く作られていて飽きません。1966年の邦画興行収入1位だそうです。

 

約90分ほどの映画で、前半30分は網走監獄の中のお話。白熊は刑務所の作業中、伐採した木を馬そりで運ぶ途中に馬を暴走させ、その混乱に乗じて脱獄します。このシーンがまず圧巻。猛スピードのそり、そりの後ろにひかれている橘、ソリに乗っている囚人たちの混乱。そして、その脱獄のエピソードに、橘が出獄後の話につながる場面がさらりと挿入されていて、後々で「おおっ」という気づきになります。ほかのシリーズも監獄→出所後の構成のものは多いのですが、監獄の話は出所後の橘の行き先とその後のお話の導入を示しているだけなのですが、今作はきちんと(?)つながっている、よくできたお話になっています。そして、いつも神出鬼没の鬼虎さんの登場も、上記のように自分の名を騙る権田が堅気に迷惑をかけないようにと権田一家に潜り込んでいるので、いつもに比べて無理がありませんw

 

そして、出所後の橘=健さんは、たぶん、シリーズのほかのどの作品よりもコミカルで、そして、道中で一緒になった吉岡=輝雄さんとの関係は、バディムービーを観ているよう。雪原の中を馬を駆るアクションシーンが壮大でカッコイイのですが、それとの対比で、二人のじゃれ合い?はかわいらしく。

吉岡は道中で財布を落としてしまって酒を飲む金もなく、橘におごってもらおうと「兄弟、こう寒いと一杯ひっかけたいね」と声をかけます。調子いいですw橘も文句言いつつも、吉岡を連れて、(そうとは知らずに)権田一家の仕切る酒場へ。

「ジョニ黒のスカッチ」(スコッチじゃなくてスカッチって言うんです)を吉岡が頼もうとすると、それがどんな酒なのか分からない橘は「外国かぶれは大嫌いなんだよ」と言って焼酎を頼み、つまみにたくあんを指定。ジョニ黒のスカッチが焼酎になってしまったうえにつまみも指定されて、吉岡はヘソを曲げて「らっきょだ!」

 

ここの一連のシーン、繰り返しますがかわいいのです(๑'ᴗ'๑)(健さんと輝雄さんつかまえてかわいいってwとかいうのはありつつ)なんか、ちょっとした兄弟喧嘩みたい(兄=健さん、弟=輝雄さん)。輝雄さんが健さんの相手役を勤める網走番外地シリーズ3本はいづれも二人の関係性が「兄にあこがれる弟」みたいなテイストなんですが(杉浦直樹さんが相手役の3本は二人の関係性は対等な友人、という感じで描かれています)、「大雪原の対決」は健さんと輝雄さんのこの関係性がMAXで出ていてヾ(*´∀`*)ノ キャッキャッ♪します。

 

【兄弟喧嘩してるみたいな二人。いつもの役とのギャップに萌えますw】

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なお、このとき、「ジョニ黒のスカッチ」を知らなかった橘は覚え間違え、繰り返し「ニグロのスピッツ」と連発しますw真面目顔で繰り返し言うのでジワジワきます(今じゃ絶対映画でいえない台詞ですねf^-^;)必見のシーンです(キリッ

 

 

で、「網走舞台の西部劇」について。

そう感じた要素はいくつかあって、まずは衣装。健さんはいつもの白い上下にポンチョのようなモノを羽織っています。権田一家の面々もテンガロンハットにウェスタンブーツ。権田一家の酒場はホステスが住み込みで働いていて二階はホテルも兼ねています。西部劇に出てくる安ホテルみたいです。

 

そして何より、雪原を馬で駆ける橘、吉岡、鬼虎。どこまでも続く雪の大地を駆ける姿は、荒野を駆ける馬をイメージさせます。

【夕陽に荒野、ではなくて真っ白な雪原】

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吉岡はライフルで権田と対峙しますが、橘もドスだけではなくライフルを使います。こんなところも西部劇風。

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・・・なんて感想で見終った後にあれこれ調べてみたら、当時はマカロニウェスタン全盛期で実際に西部劇を意識して作られていたようです。西部劇を網走番外地にフィットさせる石井監督、すごいですw

 

鬼虎=アラカンさんの迫力のある啖呵とか、大原麗子さんのかわいらしさとか、他にも見所十分で、あっという間の90分です(プログラムピクチャーってだいたい90分で1本終わるから気軽に観られるところが良いです)。

 

最後に。本作でも吉岡な輝雄さん。元々ハンサムさんですが、この時期は特にお顔がほっそりして、個人的にはハンサムさんぶりが際立っているなぁ、と今作も含め網走番外地シリーズを見ながらニヤニヤ。「~大雪原の対決」では、ホステスとして街にやってきた女性(国景子)との恋を思わせるようなシーンもあり、馬上で敬礼して別れを告げるシーンとか、もう、めちゃくちゃかっこいいのです (*ノェノ)キャー こんなおとぎ話の王子様みたいな(ヤクザ映画だけど)素振りもステキな吉岡=輝雄さんなのでした。 

 

石井輝男監督「網走番外地」

モノクロで映える雪の大地とクレイジーな悪役が印象的

 
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【映画についての備忘録その6】

石井輝男監督×高倉健主演「網走番外地 」(1965年)

 

橘真一(高倉健)は敵対するやくざの親分を斬り、網走刑務所へ護送される。網走刑務所の同じ房には殺人鬼“鬼寅”の義兄弟と称して幅を利かせていた牢名主の依田、一緒に護送されてきた権田(南原宏治)、大槻(田中邦衛)、夏目(待田京介)といった面々が収監されていた。

厳しい監獄生活の中でも、保護司の妻木(丹波哲郎)は親身になって相談に乗ってくれる。そんな中、故郷に残した妹からの手紙で、母が死の床にあり1日も早く戻ってほしいという。同情した妻木は仮釈放の手続きを約束してくれた。

一方、依田、権田たちは同じ房の者たちを巻き込んで脱走計画を練っていた。仮釈放を約束してくれた妻木の言葉を信じて、刑を勤めあげたい橘。しかし、密告すれば渡世の仁義を踏みにじるイヌとされる。密告せず巻き込まれたら仮釈放はない。苦悩する橘をみて、この脱走を直前になって失敗させたのは同じ雑居房にいた阿久田老人(嵐寛寿郎)であり、彼の正体こそが“鬼寅”だった。

翌日、森林伐採の労役でトラックに乗せられた依田らは無蓋の荷台から飛び降りる。権田と手錠でつながれた橘も彼と一緒に飛び出すことになり、結局、脱獄囚とされてしまう。怒った妻木は、橘に出された仮釈放の書面を破り捨て、二人を追うが・・・

  

U-nextの配信で観ました。網走番外地シリーズ1作目。ついにタグに吉田輝雄が入ってないエントリーです😏しかし、T’s LineのTに高倉健は入ってないんですがw

シリーズを見た順番は 6→8→7→3→4→5→そして!1という順番です。吉田輝雄編、杉浦直樹編を見終わったので、それじゃあ1から観ようかな、っていう。

 

いや~、面白かったです、1作目。

橘の暗い過去(母親は自分と妹を食べさせるために望まない再婚をして嫁ぎ先で虐げられ、これに耐えきれず橘は都会へでてやくざになります)、網走監獄で抑圧された中での囚人たちの駆け引き、牽制、深い雪のなかでの労役、道連れにされた脱獄のシーンまで、テンポよく色んなエピソードが展開します。

ヤクザ映画なんでしょうけど、それよりもアクション映画の名作を見た、という印象。

 

網走番外地シリーズ、健さんの相手役でくくると杉浦直樹編と吉田輝雄編と(あとは相手役としては連続して出てくる人がいない)その他、ってくくりかな。で、杉浦さんと輝雄さんの場合は、相手も男気のある好敵手、という描かれ方で二人ともキザなかっこよさがあるんだけど、一作目は橘の男気(侠気?)を際立たせるためか、橘を脱獄の道連れにする権田(南原宏治さん。1作目における橘の相手役)は、もう、とことん悪です。笑い方とか凄くクレイジーな感じで、監獄のなかも脱獄した後も、橘を踏みつけにして自分が優位にたつ、ということを常に考えてるようなイヤな奴です。

見終わった後に、クライマックスのトロッコのシーンと一緒に南原さんの笑い顔がとても印象に残りましたね。シリーズ屈指の悪役かと思います。南原さん、昔はイケメンさんだったのではないかなぁ、という整った顔立ちなので、その分、権田の狂気みたいなものが凄みをましているんですね。

 

んで、クライマックス。手錠に繋がれたまま雪の中をトロッコで猛スピードですすみ、二人を後ろから銃をもってトロッコで追いかける妻木。そして飛び降りて逃げおおせ、手錠を断ち切るために線路に横になって汽車を待つまで、怒涛の展開。雪原の中で繰り広げられるアクションはハラハラドキドキです。

 

モテ男らしい待田京介、このシリーズによく出てくるのにあんまり重要な役じゃなかった田中邦衛、神出鬼没じゃない凄みのきいたアラカンさん、と後のシリーズとの違いも面白かったです。(丹波哲郎は出番は多くないけどいい役なんですが、別にこの人じゃなくてもいいんじゃね?みたいな感じ。決闘零下30度編もかっこいい役なんだけど、出番と役割の重要さのわりにはなんかあんまり印象的じゃなくて。なんでだろ。)

 

石井監督の網走番外地シリーズ、杉浦直樹編と吉田輝雄編はどれもよくできた娯楽映画という仕上がりで、それ以外は出来がマチマチなのですが^^; シリーズ1作目は全作を通して上位3つに入るなー、という仕上がりでした。そりゃ、シリーズ化されますわ。

 

 

石井輝男監督「網走番外地~南国の対決 」

返還前の沖縄の風景を楽しみ、よく喋る高倉健に驚いた。

網走番外地 南国の対決
 

 

【映画についての備忘録その5】

石井輝男監督×高倉健主演「網走番外地~南国の対決 」(1966年)

 

竜神一家のために命を張って、網走刑務所に送り込まれた橘真一(高倉健)は、出所の日に先代親分が沖縄で事故死したことを知った。
何か裏がありそうだ、そう考えた橘は出所した自分を出迎えた大槻(田中邦衛)と一緒に沖縄へ。その途中の船で、橘は母を探して沖縄へ渡る少年・一郎(町田政則)と、先代親分の後を継いだ関森(沢彰謙)に雇われた殺し屋・南(吉田輝雄)と出会う。
やがて沖縄へ着いた橘は、関森が豪田と手を結んで、先代親分と関係の深ったギボ建設を潰そうとしていることを知った。
橘はギボ建設に義理立てして関森の企てを阻み、そして、先代親分の死の真相に迫っていく・・・

  

U-nextの配信で観ました。網走なのに南国?とかいうのはおいといて。。。

網走番外地シリーズ6作目。なんで6作目から取り上げるかというと、本作が私の初・網走番外地&初・石井作品だから。で、なんで6作目から観てるのかと言えば、そりゃ、吉田輝雄が出てくるからでして。これ以降何作か観ていますが、「健さんのライバル的立ち位置の役が誰か」を基準に順番にピックアップしているため、6→8→7→3→4(3と4は杉浦直樹さん)という、めちゃくちゃな順番です。

ただし、「神出鬼没の鬼虎(アラカン嵐寛寿郎)」問題について自分の中でクリアできれば、というか、それを楽しめれば、順番は関係なく楽しめます。逆に「あ、なんかそういうのもありな映画なのね」っていうのがダメな人には向いてないかもしれませんw鬼虎さんは007における、Qの秘密兵器みたいな感じ。

 

上のようにストーリーは書きましたが、ぶっちゃけ、ストーリーというよりは、それぞれの個性たっぷりの登場人物(怪しい関西弁の調子のいい田中邦衛、めちゃめちゃかわいい大原麗子千葉真一由利徹の漫才のような掛け合い(千葉さんはもちろんアクションも!)、そして!キザな吉田輝雄)の見せ場と返還前の沖縄の風情を楽しみながら観てたら終わってた映画、という感じです。

 

美しい沖縄の海。あちこちに走ってるアメ車。守礼門の前でのエイサー。伝統漁船のレース、ハーリー。とっても印象深くとらえられています。

 

で、何より驚いたのが、渋くない、というかよく喋る高倉健健さんの映画は「ブラックレイン」と「ミスター・ベースボール」くらいしか観たことはなかったのですが、まぁ、それでも「=寡黙な渋い男」のイメージ。が、健さんはパスポートを船で出会った少年にすられて入管で足止めをくらって、大槻と一緒に慌てふためく茶番劇(by 殺し屋・南)。南と船上で直接対決、のはずが、橘の男気に惚れていた南と殴り合う芝居をして関森の目を欺く、が、芝居なのにほんとに殴られてしまい、「芝居じゃなかったのかよ!」とキレて南と本気の殴り合いに発展してしまったり。コミカルなパートも受け持ち、よくしゃべります。こんな高倉健があったのか、と。

 

1966年度興行収入第 3位、ということのようですが、本当に、難しいこと考えずに娯楽として楽しむ映画、だと思います。石井監督はカルト映画の王様、みたいに言われるようですが、これ、結構疑問です。カルト映画って一部の人が楽しむ映画、って感じだと思いますが、そんな人が興行収入第 3位(ってか、同じ年に公開された   「網走番外地 大雪原の対決」が同年の1位だそうです)を撮る人がカルト?っていうね。稀代のヒットメーカーというほうが正しいのではないかなぁ、と。「へりくつこねないで皆が楽しめる映画を作ることに徹した人」なのだと思います。

 

最後に、我らが(?)吉田輝雄健さんもTシャツ1枚で過ごす暑い沖縄で、前半は黒のスーツにネクタイで、船上の喧嘩芝居の後の再登場では白のスーツにネクタイで登場します。黒のスーツ着て「暑い、暑い」とか言いつつ、決して着崩しませんw涼やかですw  スタイル良すぎて、結婚式でもないのに白のスーツも違和感がありませんw 出番はそう多くないのに、印象に残る、素敵な殺し屋・南さんなのでした。

 

健さんはTシャツ1枚なんだよな~。暑いもんな、そりゃ。

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白いスーツも似合います。さすがに黒いのは暑かったかw

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テレビドラマ「ゴールドアイ」(1970年)

クールなプロフェッショナル。世界の平和を守るのもビジネスです。

 

ゴールドアイ DVD-BOX デジタルリマスター版

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鉄は熱いうちに打て・・・ではないのですが、いずれ書きます、と最初の投稿で書いていたテレビドラマ「ゴールドアイ」について、東映チャンネルでの全話放送が終わったばかりのタイミングで、書き残しておきたいな~、と思い、書くことにします。

早々と映画じゃないエントリー^^;

 

「ゴールドアイ」は1970年2月から半年間、トヨタの提供で放送されたアクションドラマ。「ゴールドアイ」はこのドラマの主人公達の組織の名称。Wikiによると世界刑事警察機構の下部組織ってことらしいですが(でも、勝手に自分たちの意思で首つっこんでる案件もあって、ドラマでは組織も正体も不明、という設定です)日本や世界の秩序を乱そうとする者達に立ち向かう組織です。

ゴールドアイの主なメンバーは

香月(ボス):芥川比呂志
高井:高松英郎
吉岡:吉田輝雄
豪:若林豪
柴田:柴本俊夫(柴俊夫)
宮内:宮園純子

渡瀬(まんまやん!):渡瀬恒彦⇒5話から

藤:藤岡弘⇒12話から

(柴田君は10話あたりでいつのまにやらいなくなりますorz)。

当時すでに名の通った方々と、これから売れていくメンバーが混在していて、今見ると豪華なキャストです。

 

「ゴールドアイ」、色々と書きたいことが多くて何から書くべきか・・・。ということで、「ここが素敵なのよ!ゴールドアイ」を箇条書きスタイルで連ねてみたいと思います(個別に好きな話はまたあらためてピックアップしたい・・・)。

 

このドラマは視聴率の問題なのか、途中で構成やドラマのカラーが少し変わってしまいます。

8話まではボスがメンバーを集めて直接指令を出します(これがまた、大型のボートの船室に集まってたりしてめちゃカッコイイ)。が、9話からは、ボスは冒頭にナレーションで指令を下すだけ、という構成。また、それにあわせて、ドラマ部分に重きがあった展開が、アクションやギミックが目立つように。どちらのパターンも楽しめますが、個人的には「ゴールドアイ」のかっこよさはボスのいる8話までが特に抜きん出ているように思えて好きです。

 

アクションが売りのドラマなんて西部警察(第3シリーズ)以外見たことがない人間なので(特捜最前線もはまってましたが、あれはアクションは売りではないし。。。)「そんなのほかのドラマでもあるよ!」みたいなつっこみがあるかもしれませんが、あくまで「ゴールドアイ」の感想として。

 

 【その1】ボスがクール

ボス役は芥川比呂志さん。あの芥川龍之介の息子だそうです。「ゴールドアイ」の放送を見て初めて知ったのですが、この方、エリート銀行員みたいなスマートな容貌です。刑事ドラマとかこういうタイプの作品のボスのイメージは「情に厚くてみんなから慕われ、いざとなったら腕っ節も強い」ですが、そういう固定したイメージを覆します。クールでドライな頭脳派。「ゴールドアイ」は世界や日本の秩序を守るために活動しますが、それを「我々のビジネス」と語ります。熱い使命感とか、そういう感じがありません。

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【その2】年長さんグループにプロフェッショナルとしての矜持がある

 年長さんグループの3人(高井さん、吉岡さん、豪さん)はボスからの命令に反論したり、ボスに内緒で勝手に仕事したり、ボスに従順、とは言えません。高井さんはボスの推理を否定するし、豪さんは高井さんが持ちかけた、ボスに内緒の仕事にノリノリです。吉岡さんも、ドル紙幣偽造事件を追えというボスの指令に、日本でつかまるのなんて末端の人間なんだから意味がない、とか、みんなしょっちゅう、ボスに意見します。号令で前ならえじゃなくて、それぞれが自分の能力に自信があって事にあたります。 その姿がかっこいい。

ボスに内緒で仕事しようとするお三方

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【その3】熱い色男とクールな色男が並び立つストーリー

柴さん、渡瀬さん、藤岡さん、と若き(当時)イケメン俳優さん達がメンバーに加入しますが、恋のお話は若林豪さんと吉田輝雄さんのお兄さんコンビが担当します。

豪さんは熱血漢。粗野な脱獄犯と逃亡する羽目になったときも、脱獄犯の生い立ちに感情移入してしまって、事件を解決するよりも脱獄犯を助けることを優先するような人(第2話)。女性との恋の話も誠実です。12話では昔の恋人のことを今でも忘れられず、恋人の友人だった女性に惚れられても、昔の恋人に思いを残していて決してなびきません。

一方、吉岡さんは自ら認めるプレイボーイで、女性には優しいですが、ドライです。4話で母親に捨てられた、という過去を話しますが、そう言ったところが影響してる様子。女好きなせいでちょくちょく痛い目(慣用句的ではなくて実際にw)に会ったりしますが、一方でそのハンサムぶりを利用して敵方の女性に近づく、なんて振る舞いも当然のようにこなします。ビジネスです。

この2人、別々のお話でメインをはることもありますし、一緒にコンビのように動いたりすることも。この2人の色男の存在が異なるカラーのストーリーをみせてくれます。

 

【その4】イチイチかっこいい台詞たち

第1話の脚本が中島貞夫さん。だからなのか、とにかく、男っぽいかっこいい台詞が随所にでてきて、「ゴールドアイ」という組織の非日常感を醸成しつつ、現実的な世界(日本とアメリカ以外の登場する国は仮想の国だけど)とを結びつけます。そして、このムードを8話まで引き継いでいきます。

第1話ではボスの過去とドル紙幣偽造組織の謎が交錯する話。戦時中に諜報員として活動していたボス。ボスは偽造組織のことを聞き出そうと、その秘密を知っているらしい当時の同僚・中原と誰もいない国立競技場で顔を合わせます。そのシーンでは、東京オリンピックの映像や学徒出陣の映像がはさまれ、光り輝く未来へと進もうとする日本と軍の諜報員だった時代の影を引きずって生きる自分を比較し、「もう俺の住める日本ではない」と中原は語ります。つか、もう、書き出したらほんと止まらないくらいここ、ずーっとかっこいい台詞の応酬。

1話の最後には、中原(=日本陸軍)によって日本側のスパイをさせられていた中国人女性(吉行和子)を助けようとする高井さんに、豪さんは「戦中派のセンチメンタリズムですか」なんて言ったり。

4話では上記の通り、吉岡さんが母親に捨てられた過去を独白します。きっかけは同じように自分をおいて出ていった母親を探すポール(宮内洋)という日米ハーフの米軍兵士を基地近くで車に乗せたこと。この時、車で寝てしまったポールを見ながら「この坊や、どっか俺に似ている。おふくろが行っちまってたったひとり、誰も頼るものもなく打ちのめされていたガキの頃の俺に」と過去の自分を重ね合わせます。

第1話と同様、第4話もキザな台詞の連発で、テレビドラマっつうより映画のような、日常とは離れた空気。これが、警察でも検察でもない組織、ゴールドアイの特別感を醸し出します。

 

【その5】1970年の「時代感」

ゴールドアイのメンバーは

戦争を兵士として体験した世代:ボスと高井さん

子供だった世代:吉岡さんと豪さん

と分けることができます。

この当時、ひょっとしたら当たり前に交わされていた会話なのかもしれませんが、よくこの世代差を表す会話がかわされます。

先に書いた第1話の中国人女性を助けようとする下りでは、高井さんは「その人の運命は俺達日本人が作ってしまったんだ。スパイとしてしか生きられないんだ」といい、これに対する豪さんの返事が先の「戦中派のセンチメンタリズムですか」となります。

4話では、ボスから拳銃を渡された吉岡さんは楽しそうに指でクルクルっ!カチャッ!とやります。ボスに「手慣れたもんだね、最新型の分解を知ってるなんて」(カチャッの部分が分解なのか?)と言われ、「戦後の暗黒街に育ったんで、つまらないことばかり覚えちまってね」と悲壮感もなく(これは輝雄さんだから可能なのかもしれませんが)、当たり前のようにさらりと返します。

この時代だからこその会話のように思われ、それぞれの世代で戦争を体験した故に人生で背負ってきた重みのようなものが感じられて、キャラクターに渋みを加えます。

 

【その6】服とクルマ

トヨタの提供だったので、当時のトヨタのクーペが次々と出てきて、そしてよく走ります。さすがに「007は2度死ぬ」の2000GTみたいなスペシャルなスポーツカーは出てきませんが、この時代の車のデザインは見ていて楽しく、どれもカッコいいです。あと、敵方はほぼ間違いなく左ハンドルの外国車に乗っていて、それもスポンサーを意識してのことかと思うと笑えたり。

大活躍のトヨタ

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このすごい顔の車は何でしょうかf^-^;敵のみなさんの御用達。

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そして、着てる服は今見てもかわいい。4話メインゲスト宮内洋さんと児島美ゆきさん

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13話の2人のスーツとワンピースもステキ。

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スーツは基本的に今でも違和感ない細身なスタイルでステキ。さらには吉岡さんも豪さんも、柴田くんも渡瀬くんも、もれなくポケットチーフを忘れずにさしています。仕事中なのに、みんなオシャレさん。

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吉岡さんと渡瀬くんはサマーランドにこの服装でやってきますw

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チンピラ役ででてくる小林稔侍すら、着ているスーツはビシッと決まっています。吉岡さんの胸にはもちろん白いチーフが。

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【その7 かっこいい吉岡さん】

そして、これを書かないわけにはいかない、カッコイイ吉岡さん(๑'ᴗ'๑)

長身のハンサムで、本場(イギリス?)仕立てのスーツもさらりと着こなすオシャレさん、英語も使えて腕っぷしも強い、そして女性には優しい。もう、こんなの007やんか!です。

6話の冒頭で休暇中の吉岡さんが、砂浜に車を止めてキレイなお姉さんとキスしてると、ボスから電話がかかってきます。すぐには受話器をとりません。女性に「なに?」と聞かれると「無粋な目覚まし時計さ」と答えて放置。もうね、こういうこと、ジェームズ・ボンドが言いそうでしょ!!(「リビングデイライツ」の冒頭で「やっぱり二時間後だ」と言ったボンドさんを思い出しました)しかも、「もう休暇は終わった」、というボスに「まだ今日という日は7時間もありますよ。僕一人が働きバチになる必要はないと思いますがね」と答えるあたりもカッコイイ!これ、もうボンドさんです😆

んでまた、吉田輝雄さん、石井監督のもとでハンサムさんな役を沢山演じてこられた故か、こういう設定にすんなりとはまっていて、キザな台詞やプレイボーイっぷりも、ナルシスト的な嫌味がなくてスーっとはまっているのです。ナチュラルなキザ(意味分からない感じの言葉になってますが)で女性に優しいプレイボーイ。このボンドさんのような非日常的な男前っぷりが「ゴールドアイ」の世界観にピッタリなのです😆

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と、何だかんだで7つになった「ゴールドアイ」の素敵ポイント。たった半年で終わってしまったドラマですが、もっと続いててほしかったなぁ、と思うドラマでした。

 

【2019/7/13追記】

「ゴールドアイ」がきっかけでおきた特別な出来事について。吉岡さんはやっぱりかっこいいのであった!というお話

 

kinakossu.hateblo.jp

 

小津安二郎監督「秋刀魚の味」

共働き夫婦って、2018年も1962年も同じらしい

  

【映画についての備忘録その4】

小津安二郎監督 笠智衆主演「秋刀魚の味」(1962年)

平山(笠智衆)には幸一(佐田啓二)、路子(岩下志麻)、和夫(三上真一郎)と3人の子供がいます。幸一はサラリーマンで結婚して独立していますが、妻に先立たれており、平山と和夫の身の回りのことは長女の路子があれこれと世話をしてくれます。平山は路子はまだ子供で結婚なんて先の話、と思っていましたが、同窓会の後に高校の恩師を家まで送って、年老いた父娘2人を目の当たりにしたり、同級生の友人からは、路子ちゃんもそろそろ結婚しないと独身のまま歳をとってしまうぞ、と言われ、娘の結婚を考えはじます。。というお話。

もっと簡単に言うと、父親が娘を嫁に出す決意をして送り出すまでの話、です。 

 

Amzonプライムビデオで観ました。

石井輝男監督からいきなり小津安二郎監督作品。吉田輝雄フィルモグラフィーからチョイスしていくとこうなります。出演作がバラエティーに富みすぎています。

 

私、これが人生初の小津安二郎です。名前は知っているし、巨匠なのも知っているけど、自分が観るような映画ではないだろうと思ってずっと食指が動かなかったのですが、輝雄さんご出演、ということで観てみることに。したら、めっちゃおもろいやんけ!です。食わず嫌いって良くないですね。

 

ストーリーは前述の通り。お話の展開としてはそんなに劇的なことは起こりません。まだ戦争を兵士、将校として体験した世代が社会の中核を担っている時代で、それを背景とした濃いシーンもありますが、基本的には何でもない日常を淡々と写す、そういう映画になっています。

だから、まぁ、日常って、結構、普通に生きてたら愚痴いったりとか、小言言いたくなったりとか、しょうもない冗談で笑ったりとか、そんなもんっすよねっていう、そういう出来事の連なりで映画が進みます。だからこそ、すごく身近な感じがして面白いです。

ストーリーとしての大きな変化は、平山が友人から路子のお見合い相手を具体的に提案されますが、路子はどうやら他に好きな人がいて、それが幸一の会社の後輩・三浦(吉田輝雄)らしい。好きな人がいるならそいつと結婚させてやろう、と思うのですが、三浦には同じ会社に既に結婚を前提に付き合っている人がいました(そもそも、三浦も路子のことが好きだったようですが、それとなく幸一に聞いてみたらまだ結婚する気もないよ、という返事で、路子もそんな風な返事だったため、諦めてしまった、という)、というところ。しかし、これすら、豚カツ屋さんで幸一と三浦が豚カツ食べながら会話してるだけ。で、三浦は幸一のおごりで豚カツ食べに来てるんで、ビールは追加するわ、豚カツももう一枚頼むわで、何とも言えないおかしみがあって、ほんと、日常の一コマです。

 

お父さんは友達とよく飲みに行き、若いお嫁さんをもらった友人に「薬飲んでるのか?」みたいなことを聞いてみたり、行きつけのお店での待ち合わせに遅れてる友人を死んだことにして葬式の相談をしているんだ、とお店の人をからかったり、連絡なしで飲みに行っては路子に怒られたりします。50年前とか父親ってまだまだ威厳があったのかと思ってましたが、そうでもないのね、っていう。

 

で、特に印象深いのが、幸一と妻の秋子(岡田茉理子)の子なし共働き夫婦(DINKSっすね)のやりとり。まさに、「今と変わらねー!!」なのです。

幸一は三浦の友人が手放すことにしたゴルフクラブ(なんか有名なモノらしいです)を2万円で買わないか?という話を持ちかけられます。いったん、三浦から預かって家に持ち帰り、秋子に相談してみますが、即効で却下^^;「あんたみたいなサラリーマンがゴルフなんて分不相応なのよ」的な言われよう。夫婦で稼いでますからね、夫の一存では決めさせませんw渋々諦めますが、休日ははぶてて家でゴロゴロ。秋子に家事を頼まれてようやく動く、といった具合。

と、同時にこの夫婦、電気冷蔵庫も欲しいらしいのですが、先立つものがなく、幸一は仕事帰りに父親にお金を借りる話をしに行きます。この時、秋子に黙って多めに借りる話をして、休日に路子が届けに来たのは5万。ゴルフクラブを買うためのお金も上乗せです。そこへ三浦がゴルフクラブを抱えてやってきます。「友だちが2000円の10回払いでもいいと言ってます」と。それでもやっぱり秋子はダメだと言うのですが、最後には折れて、路子が持ってきたお金から2000円をだします。で、その代わり「私も革のハンドバッグ👜買うから!割に高いのよ!」です。折れるけどその代わり私もほしい物買うから!って、あれ、こういう事私、言った覚えがあるぞwwwです。

 

こういうシーンはあげていくとまだまだあるのですが、随分と昔のような気がする50年前の家族のありようが、わりと今と変わらなくて、その軽妙なやりとりが本当に面白いのです。ストーリーは淡々としているのに最後まで飽きません。これが小津監督の特徴なのでしょうかね。

 

さて、この「秋刀魚の味」が小津監督の遺作となるのですが、小津監督は次回作の準備も進める中で亡くなられています。その次回作が最終的に他の監督で撮られた「大根と人参」という作品。小津監督は俳優さんにアテ書きされる方だったようですが(この辺はまだまだ不勉強です)、その次回作、主役はもちろん笠智衆さんなのですが、息子役は吉田輝雄さんが予定されていました。そして、笠さんの親友の娘が岩下志麻さん、で、「秋刀魚の味」では結ばれなかった輝雄さんと志麻さんが結婚して終わる、というお話。

まだ「秋刀魚の味」1作しか小津映画を観ていませんが、それでも笠智衆さんが小津映画の常連さんだ、というくらいの知識はあります。で、これを観て察するに小津監督はあまり演技をさせたくない方(演技くさい演技はいらない、という感じ?)なのだなー、と。笠さんだけじゃなくて、佐田さんや岡田さんも、かなりナチュラルで、押し付け感がなく、出てくる俳優さん、みんなそんな演技です。これが小津監督の作風なのでしょう。輝雄さんはと言えば、「女体渦巻島」の衝撃(いろんな意味で)の主演デビューからまだ2年そこそこ。演技も勉強中、という感じで、固さが残っている感じ。それが逆に小津監督の求める演技にマッチしているというか、演技に色がついてなくて小津カラーに染まっているというか、作品のなかにすんなりと収まっています。(石井作品でキザな台詞を連発してたのに、ここではホントにどこにでもいるサラリーマンのよう。実際、3年前までサラリーマンだったわけですがw)

ご本人のインタビューでも小津監督に気に入っていただいた、という話をされていますが、次回作で今作よりずっと重要な役をあてられていた、というのですから、小津監督はまだ自然体な輝雄さんを自分のカラーに染めたかったのだろうなー、と思います。輝雄さんの役はあのビジュアル&石井監督の常連さんなため、「なんでもない日常のなかの普通のサラリーマン」みたいな役は調べられる限りでは殆どなく、たぶん、今作くらい(セクシー地帯だって、サラリーマンだけどとんでもない状況におかれますしね)。でも、小津監督がこんなに早くなくなられず、まだまだ映画を撮っておられたら、小津映画の常連さんとして、また違った役者人生となり、今観られる映画とは異なった吉田輝雄もいっぱい観れたのかなぁ、などと想像してしまいます。もっと小津映画の輝雄さん、観てみたかったなぁ。

 

「とんかつもう一ついいですか」

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