T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

梅津明治郎監督「純情二重奏」

メロドラマの要素が詰め込まれたリメイク作品…も、詰め込みすぎてしまったようで。

 

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【映画についての備忘録その91】

梅津明治郎監督×倍賞千恵子主演「純情二重奏」(1967年)

 

信州の美しい湖畔ー孤児養護施設の保母・栄子(倍賞千恵子)は、母のきくが死ぬ時に残した日記帳を見て、自分の父が、作曲界の重鎮河田武彦(北竜二)であることを知る。河田に会うことをためらった栄子だったが、日記を栄子に残した母の思いを感じ取り上京して河田の元を訪ね、きくの死を告げた。河田は栄子を自分の娘であると思いながらも、今の家族ー作曲家としての恩師田島(早川雪洲)の娘である妻・恒子と、もうすぐ二十歳になる娘・八千代(倍賞美津子)ーのことを思い、娘と認めることができなかった。

きくの思いを無碍にされたような思いで怒りを抱えながら街を歩く栄子は、関(吉田輝雄)という男と知り合う。彼は河田の弟子で新進作曲家としてレモンレコードに所属している。栄子は父への反抗心もあり、関を通じてレモンレコードでテストを受けることにする。歌の才能を認められ、レモンレコードでデビューし、新人賞の候補と目される栄子。しかし、八千代もまたレコードデビューをしたばかりで、同じく新人賞候補であった。

新人賞の候補を決める会議―審査員の意見が分れ、河田の意見で決定するというとき、河田は八千代で行くことを決めた。それを私情だと怒る関に、河田は栄子が実の娘であり、八千代が実の子ではないことを打ち明ける。八千代は恒子が戦時中に身ごもった子供で、その相手は学徒出陣し、戦死した。恩師の苦しみを見た河田は恒子と結婚することを決めたのだ。それ以上何も言えなかった関は、新人賞候補に落選してしまった栄子に八千代の出生の秘密を打ち明けながら、励ますのであった。

しかし、複雑な思いを抱え、栄子は故郷へ帰っていく。関はその後を追い…。

 

*いったん公開してたのですが、ラストの曲名が純情二重奏かと思い込んでたら「たそがれの母情」で、全然違う曲だったので(^_^;)修正して再度アップしました。いやー、なんで信州で二人で話した後の流れで「純情二重奏」じゃなくて「たそがれの母情」になるのかw

 

こちらも輝雄さんから送っていただいた!!作品ですヾ(≧∇≦)輝雄さんのフィルモグラフィーを観ると、これがメロドラマ映画としては最後の作品になるのかな、と思います。正統派のメロドラマでの正統派の二枚目を堪能しましたヾ(≧∇≦)

 

 

戦前に高峰三枝子さんと木暮実千代さんで制作された松竹のヒット作をリメイクした作品で、倍賞姉妹の初共演作だそうです(映画の中では高峰さんがベテラン歌手としてレコーディングしているシーンもあります)。劇中で映画のタイトルと同じ「純情二重奏」が歌われて、これも戦前のヒット曲のようです。

オリジナル版を観ていないのでどのくらい元の作品を意識して制作されたのかは分かりませんが、どうしても古さを感じてしまうところはありました。リメイク版の劇中で栄子が口ずさむ「純情二重奏」はオリジナル曲をそのまま使っているんだろうな、という時代を感じてしまうメロディ。クライマックスで歌う「たそがれの母情」もそんな感じです。台詞も、1967年とはいえこれは流石に…と思うような、オリジナル版そのままのような“くさい”台詞もあり。その台詞は主に輝雄さんに割り当てられているのですがwそこは吉田輝雄。違和感なく見せてしまうという、王子様ぶり٩(๑❛ᴗ❛๑)۶というわけで、輝雄さん@関の王子様ぶり&眼福なシーンをはさみながら(っていうか、こっちがメインのような気もw)、備忘録をつけたいと思います。

 

 

オリジナル版は前後篇と分かれていたようで、それを89分に仕上げているのでこの映画は長いストーリーをかなり短くまとめているのではないかと思います。

で、見出し。血のつながりがない複雑な関係の姉妹。姉は母子家庭で育ち、方や、妹は有名作曲家の娘として不自由なく育つ。妹は姉を姉とは知らず、その二人がライバルとして歌手を目指し、一人の男性に互いにひかれる。妹は姉に辛く当たり、姉は妹を思い身を引くが、男は姉を追い…と、もう、端折って書いただけでも昼ドラにもなりそうな、メロドラマの要素がふんだんにもりこまれています。これをギューッとまとめた結果、テンポ良く話がすすんでいいな、と感じられる部分と、それ故に心の揺れみたいなところを踏み込んで描けてなくて、姉妹の葛藤も、そのどちらにもいまいち感情移入できない残念な部分があって、なんだか勿体ない…。倍賞姉妹に輝雄さんとかいう素敵な組みあわせなのに。

 

 

ただし、詰め込んだ分、逆に映画の前半の栄子が歌手デビューを果たすまでのところは、まとまっていてテンポよくすすみます。

母が亡くなり、河田の元を訪れるも、娘と認められず失意のまま街を歩き。。。偶然に寄ったレストラン。関がジュークボックスで自分の曲をかけて聴いていると、曲が終わってまた栄子が同じ曲をかけます。でも、曲の途中で出て行ってしまい、それを見た関が気になって栄子の後をおって声をかける。。。なんという偶然!しかも関は河田の弟子(映画だからいいのだ)!住むところがないというので、関は自分が住むマンション(山手芸術村、という芸能関係の仕事を目指している人たちの住むマンション、っていう設定で面白いです)を紹介して・・・翌朝、オーディションを受けに行くことに。

その前に関の部屋に八千代が訪ねにきて最初の姉妹の遭遇、二人で関を取り合うことになるのね、と無駄なく進んで物語の本題に入り、だるい展開にならずいい感じ(このマンションには本作のコメディ担当?漫才師の晴乃チック・タックさん‐当時人気の漫才師さんだったようで‐が住んでいて、個性の強い大家さんと一緒に笑いを誘ったり、何というか「泣いて笑った花嫁」などを観たときに感じた安心して観られる雰囲気を感じてそれも良かったり)。

 

 

はい、でここで最初の輝雄さんの眼福シーンが登場ヾ(^▽^)ノ関は作曲家なので、自分の部屋にピアノがあるのですが、このピアノの前に座る姿がめちゃ素敵なのです♪「たそがれの母情」のメロディの曲を作曲する人には見えないっていう大問題はあるのですがw浅黒くて、煙草を浅くくわえてる姿(→このブログでたびたび書いてますが、この姿がほんとかっこいいんですよねぇ(〃▽〃))が渋くてつやっぽくて良いのだ!これでこの時31歳ってどういうことヾ(≧∇≦) 

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作曲家というよりジャズピアストやっててほしい感じ(*'▽')

 

栄子はオーディションに合格して、レッスンを受けながらレコードデビューを果たします。

 

と、ここまでは良かったのですが、本題に入ってからもこのテンポでエピソードを積み重ねていくので、姉妹の歌手としてのライバル関係、親子の絆、関との恋愛、あと、河田と栄子の母親の思い出も、どれもが足早に描かれていきます。それぞれ内容濃いので、このうちのどれかに焦点をあてて描いていたら、何かが残ったんじゃないかなぁ、と思うのですが、全てが足早であっさりで、とくに印象に残るエピソードがなくて、結局どこが主題なのだ?と言う感じ(「愛染かつら」もきっと同じように長いお話だったのだと思いますが、うまくエピソードをまとめているんだろうなぁ、と思います)。

 

 

…そんな駆け足で流れていく展開ですが、東京を離れた栄子と、彼女を追いかけてきた関が二人で歩くシーンは印象的です。新人賞の候補が八千代となり、そのお祝いの席上で関との婚約までほのめかされた栄子はショックをうけてしまい、信州へ帰ります。川辺(千曲川?)を歩く栄子の前に現れる関。このときの信州の自然と、その中を歩く栄子と関の美しさよ。スタッフの方のお名前を見ると撮影が小津作品の撮影をされていた厚田雄春さんで、だからあんなに美しく映し出されているのかしら、と思ったり。このシーンが綺麗なので、この中を二人で歩きながら、栄子が前に進むことを決意し、新たに曲が生まれて行く(というここもなかなかの急展開だけどw)、というのもなんだか説得力が出てきます。

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そして、ここのシークエンスは私的に眼福なシーンの連続(゜∀゜)輝雄さんの王子様ぶり全開のセリフと表情が盛りだくさんです(゜∀゜)東京から栄子を追いかけてきた関は…

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「栄子さん。…僕はとうとうあなたを呼び止めてしまった。呼び止めた気持ちを分かってくれますね。僕は、あなたを選んだのです。はじめて会ったときから君を愛し、君を理解することができていた。ほんとだよ」

 

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「逃げるだけなら誰でもする。逃げてはいけない。この体を突き抜けていくような悲しみ、喜びもそれを歌や芸術に昇華することによって僕たちの値打ちが生まれてくる。涙の替わりにピアノで泣こう。喜びを歌で歌おう。僕たちはそうしなきゃいけないんだ。いつまでも後ろに気をとられちゃいけない。こうして二人が歩いて行くように前に向かってどんどん進むんだ。前に。」

 

ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

 

見返して冷静に聴いたら“くさい”台詞なんだって気付くんですがw関さんがハンサムすぎるので、ただひたすらかっこいい台詞にしか聞こえないヽ(≧▽≦)/要するに、少し古い香りのするガチガチのメロドラマを真面目に成立させてしまう、飛び抜けたハンサムさなわけです!

 

そして、東京に戻り前に進もうと決めた栄子に見せるこの笑顔(*´▽`*)

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もうこれ王子様ですやん(*´▽`*)

東京帰っちゃいますよね(*´▽`*)

 

と、もりあがってこれでハッピーエンドを迎えて終わりじゃなくてもう一波乱二波乱ありまして。この辺がなんか盛り込みすぎてかえって浅くなっているというもったいない感じなのです…。

 

栄子の母が河田のことを思って書いた詩をもとに、栄子を追って信州を訪れた関がその空気を感じて曲を書き、河田がアレンジして完成した作品「たそがれの母情」。それは栄子が歌うのが相応しい曲。が、この曲を聴いた八千代が自分が歌いたい!と河田に言い出します。

 

八千代の我がままと河田の心境を察して、関は八千代に、この歌を歌うべきは栄子であり栄子が八千代の姉であると伝えます。しかし、八千代と河田に血の繋がりがないことまでは話せず。

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この厳しい表情がまたいいんですよねぇ(*‘∀‘)

 

栄子は八千代のことを思い、そして河田が栄子の母を思いこの曲を作ってくれたと感じ、それで満足だと身を引く決意をします。関は「自分が幸せになることを考えろ」と言うのですが…

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お母さんと同じ生き方になってしまうじゃないか、と栄子を諭すのですが…。

八千代の時とはまた違った厳しい表情でこれもまたカッコいい(←結局これw)。

 

結局、栄子は歌手をやめて信州に戻ります。

 

…が!しかし!「たそがれの母情」が芸術祭の大賞をもらうことになり、その発表が近づく中、八千代は河田と関が話しているのを聞いて、自分が河田の娘でないこと、栄子が実の娘でありながら、河田と八千代のために身を引いた事、すべてを知ることに。

そして、関の名前で電報をうち、芸術祭に栄子を招待します。「たそがれの母情」を舞台上で歌う八千代は、知らずに芸術祭の会場へ訪れた栄子を見つけ

 

「私にはこの歌を歌う資格はない」

 

と、歌うことをやめ、栄子を舞台によびます。

そして、曲の最後は河田の指揮するバンドの演奏で二人で歌い

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改めて姉妹として再出発して大団円。

 

 

ということで90分弱の映画の後半で、2回も故郷に帰ってしまう(^-^;)エピソードの詰め込みようで、”出来事”を追いかけるので精いっぱい…。2回目に故郷に帰る前とか栄子と関の別れのシーンみたいなのもなくて、気が付いたら関は栄子のことをなんとか吹っ切っていたりして(^_^;)どこかの要素をそぎ落として、その分、栄子と八千代の葛藤にもっと踏み込んだ描写があったり、関と栄子のシーンがしっかり描かれていたりしたら、最後ももっと幸せ感あふれる結末になったと思うのですが、そこらへんが薄いので感情が追い付かないまま「良かったね」っていう感じで終わり。せめて2部作にするくらいで作ってあったらな、と思ったり。せっかくの題材とキャストなのに…もったいない。

でも、輝雄さんがめっちゃかっこよかったのと、倍賞姉妹の共演が観られたという点は言うことなし♪

 

そうそう、輝雄さんはこの時期すでに石井作品、東映作品への出演が増え始めていたからか、浅黒いハンサムさんで男性向けの映画に似合う雰囲気(*‘∀‘)で、松竹大谷図書館で見たこの映画の公開時の資料では、”久しぶりにホーム(=メロドラマ)に戻ってきた”みたいな記事が( *´艸`)そんなわけで、「愛染かつら」の浩三様のようなメロドラマにぴったりの白面の貴公子、ではなかったのですが、このビジュアルでメロドラマの相手役という、ちょっとほかでは観られそうにない王子様ぶりで、これもいいわ!と思ったり(*'▽')新東宝⇒松竹⇒東映で男性向けも女性向けもこなしていた輝雄さん、いったいどちらがご本人的にはホームだったのでしょうか( *´艸`)

 

 

 【本編と関係ないところの感想】

ちなみに、最後はこんなシーンでおわり。松竹歌劇団出身ということでこの展開なんだと思うんですが…突然これw

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なぜ最後、色違いのおそろのワンピで踊るというシーンで終わるのか、ここだけおかしいw

 あと、終始、栄子の服装が参観日のお母さんみたいだったのが気になってしょうがなかったなぁ(^-^;八千代はオシャレで可愛かったのにw