T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

中村登監督「愛染かつら」

すれ違いにハラハラし、浩三さまにドキドキする。

 

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【映画についての備忘録その46】

中村登監督×岡田茉莉子吉田輝雄主演「愛染かつら」(1962年)

 

高石かつ枝(岡田茉莉子)は津村病院で看護婦として寮に住み込みで勤務している。津村病院は独身であることが採用条件だが、かつ枝は幼い娘・敏子がいることを病院に隠し、姉のさだ枝(三宅邦子)に預けて働いていた。しかし、ある日、娘と公園にいるところを同僚たちに見つかってしまう。問い詰められたかつ枝は、敏子の父親は生まれてすぐに病に倒れて死んでしまったこと、娘を育てるために苦労して看護婦になったことを話し、同情した同僚たちは敏子の味方になると誓った。

津村病院創立25周年祝賀の日。かつ枝は余興として歌をうたうことになったが、伴奏者がいないのを知って、津村病院院長の長男で医者である・津村浩三(吉田輝雄)が伴奏を買って出る。思いを寄せ合っていたかつ枝と浩三だったが、かつ枝は身分違いであること、そして敏子の存在もあり、浩三の気持ちを受け入れられずにいた。だが、親が進める縁談も断り、かつ枝に自身の真剣な愛を伝える浩三。かつ枝はその熱意に、愛染堂の桂の木の下で手を重ねあわせ、互いの愛を確かめあうのだが―。

 

「古都」のところで「いつか観たい!」と書いていた「愛染かつら」。拝見する機会をいただきました。ありがとうございます!!もう、輝雄さんめちゃめちゃカッコよくてヾ(*´∀`*)ノ(ここはまた後でアホほど書きますw) 年始から「正月ボケなんかしてらんねぇぞ」みたいな仕事だった自分に、ステキなプレゼントを頂いたような気分でありました(*´∀`*) 

 

「愛染かつら」もこうして古い映画を観るようになる前から、それが何かもよく分からなくても(映画だって分かってたようないなかったような。。。)その名前と主題歌の「旅の夜風」はなぜか聴いたことがある、そういう作品であります。詳しいことはWikipediaYoutubeにお任せするとして・・・。川口松太郎の小説をもとに、戦前に上原謙さんと田中絹代さんの主演により映画化された松竹の名作。戦後も鶴田浩二さんなどで映画化されているようですが、ご本家松竹がリメイクしたのがこの作品。戦前は前後編、続・完結編とあるようで、かなり長いお話だと思います。

 

浩三の愛は熱くてまっすぐ。一方、かつ枝は浩三を愛しつつも身分差と敏子のこともあり、結ばれるはずなどないと思っている―と、いうのがこのお話の前提。で、長いストーリーを100分にまとめているからか、二人が互いを好きになっていく過程は丁寧に描かれてはいなくて、ピアノを伴奏した祝賀パーティーの日まで言葉を交わすシーンもなくて、伴奏した次の日には、浩三はかつ枝に「話がある」と赤坂で待ち合わせをします。

そして、自分の気持ちを伝える浩三。

「昨日や今日の気まぐれな気持ちではないつもりです。もしかすると僕の親たちは反対するかもしれない。でも、僕としてはあくまでも押し切ってる覚悟なんだ」

「ご好意は忘れません」

「好意の問題じゃない。僕にとっては一生の問題です」

「どうぞもう、そんなお話はおやめになって・・・」

「じゃあ、日をあらためてもう一度会ってくれませんか?このままろくに話ができなくなるなんて、そんなのは嫌だ。もう一度会ってください。会ってくれるね。」

もう、浩三、真っ直ぐすぎる(強引ともいう)!!

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浩三と別れたかつ枝は敏子と姉の住むアパートへ。動揺を抑えきれないかつ枝は、敏子の顔をみてしっかりと抱きしめ、母である自分を確かめます。

 

再度病院の外で会う二人。

しかし、かつ枝はやはり浩三の気持ちに応えることはできないと思っています。

「私、もうこれ以上先生とお会いしないほうが・・・」

「どうしてそんなことばかり言うんです・・・」

そして、永保寺の愛染かつらの木の下へ。

「この木につかまりながら恋人同士が誓いを立てると、たとえ一時は思い通りにならなくても、将来は必ず結ばれるという言い伝えがあるんです。」

「ねぇ、君、嘘だと思ってこの木に触ってくれないかな。迷信だと笑わないで、僕の心に勇気をつけてほしいんだ。君の心が僕の上にあることを信じたいんだ。そしていつかはきっと結ばれるんだと」

躊躇っているかつ枝の手をとって、浩三は自分の手に重ね合わせます。

「これでいいんだ。誓ってください、僕と結婚してくれるって」

だから、真っ直ぐすぎるって(強引ともいう)!!

【茉莉子さんの表情の切ないこと】

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二人で会って、愛染かつらの木の下で愛を誓い合うまでのこのエピソードは映画のなかでは5分程度。あっという間にトップスピードに。ここからは愛し合っているのにすれ違いからなかなか結ばれない二人のストーリーが展開されます。下手すると置いてけぼりをくらいそうな構成と人物像なのですが(押しまくる浩三も娘がいるのに恋に走っちゃうの!?ってかつ枝も普通だと「あり得ないわー」で終わりですからね(^-^;))、輝雄さんと茉莉子さんがどちらもはまり役で美しくて、真っ直ぐすぎて強引な浩三にも、母と女の間で揺れるかつ枝にもどちらにもついて行くことができます。まさしくメロドラマの展開にハラハラし、真っ直ぐな浩三様にドキドキ(//∇//)しながら、十分に楽しむことができました(輝雄さんがめちゃかっこよかったので、浩三様による加点がすごく高いかもしれませんw)

 

博士の娘との縁談を進められそうな浩三は、看護婦との結婚など親が許すはずもないと考え、かつ枝と2人で大学の先輩・服部(佐田啓二)を頼って京都へ行こうと誘います。かつ枝のほうは母である自分と浩三への愛で悩み、また敏子のことを打ち明けることができません。姉に反対されますが、敏子のことで浩三の気持ちが変わったらその時はあきらめる、短い間であったとしても浩三の傍にいたい、と娘を姉に預けて浩三と京都へ行く決意をします。

【もう、かっこいいしキレイだし】

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が!ここで最初のすれ違い(´;ω;`)東京駅へ向かうために病院の寮を出ようとした時、姉から電話が。敏子が熱を出してしまってお母さんに会いたがっている、来てほしい、と。津村家へ電話をしますが、すでに浩三は出てしまった後。とにかく二人が住むアパートへ向かうかつ枝。医者を呼びに行き、落ち着いたところで、浩三が駅で待っていることを姉に伝えます。京都へ行くことは諦めようと思っても、浩三に会って今は行けないのだということだけでも伝えたい。タクシーで東京駅へ向かいます。

東京駅、21時30分発の筑紫号(新幹線の開通前!)の一等の切符を2枚買ってかつ枝がくるのを待っている浩三。

【駅での立ち姿もきれいでハンサム(//∇//)】

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タクシーの運転手はかつ枝に「信号につかまらなければ間に合いますよ」と言いますが、信号につかまりまくり。東京駅の時計の針と、赤信号、あせるかつ枝、待ち焦がれる浩三の表情が代わる代わる映し出され、間に合って!とドキドキ。

しかし、やっとの思いで駅のホームに着いた時には筑紫号は出発してしまったところ・・・。「浩三さま!」と叫びながらその姿を必死に探すシーンが切なくてねぇ、もう。

【浩三さま!】

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浩三はやむなく一人で京都へ。服部のすすめもあって、同じ大学で研究をすることにします。一方のかつ枝は病院に一度は戻りますが、浩三の妹の竹子(「今年の恋」で正にビールぶっかけちゃった峯京子さん!)から、浩三を探すように言われ、京都へ向かいます。かつ枝は服部の家を訪ねますが、浩三は服部の妹の美也子(桑野みゆき)にドライブに誘われて留守中で、服部が応対します。服部は浩三にかつ枝は相応しくないと考え、「浩三はもうこの家から出て行ってしまった、行き先は分からない」とかつ枝に伝えます。かつ枝は浩三が戻ってくることがあったら、自分が来たことを伝えてほしいと言い残し、諦めて京都から帰ります。またもすれ違う2人(´;ω;`)

 

東京に戻ったかつ枝は津村病院を辞め職探しをしますが、子持ちのためなかなか看護師の仕事が見つからず、夜の勤めをすることも考え始めます。そんな折、新聞の歌詞募集に出した詞が入選。それをきっかけに歌手デビューが決まります。

一方の浩三はかつ枝のことを忘れられず、気晴らしのように美也子に誘われるままに出かけ、研究にも身が入りません。そのことを服部にとがめられて、かつ枝のことを忘れられないでいる苦しい心情を吐露します。

【医者(愛染かつら)⇒サラリーマン(秋刀魚の味)の順で先輩後輩】

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浩三のその姿を見て、かつ枝が来たことを黙っていた、と服部は打ち明けます。それを知って、東京へ帰ることを決意する浩三は夜汽車で東京へ戻ります。そして、浩三に好意を抱いている美也子も、「おうちのことや病院のことを調べてあげる!」と同じ汽車に乗って東京へ。

 

かつ枝が津村病院をやめて姉と高輪アパートというところに住んでいる、ということがわかり、美也子と浩三はアパートに向かいます。2人で歩いているところをタクシーの中から見かけてしまうかつ枝(´;ω;`)声をかけることもなく、タクシーは発車します。一方、浩三と美也子は高輪アパートの近くまで来て、近くで遊んでいた女の子にアパートまで道案内してもらいます。そして、「高石かつ枝さんって人のお部屋知ってる?」と美也子が訪ねると「私のママよ」という返事。浩三はかつ枝に娘がいることを知ります。その時、姉が帰ってきて、部屋にいるかつ枝を呼んできます、と呼びに行くのですが、その間に浩三は姿を消してしまうのでした。美也子を恋人と誤解してしまったかつ枝と子供がいてそして恐らくは夫もいるのだろうと誤解してしまった浩三(´;ω;`)三度目のすれ違い(´;ω;`)

 

しかし、最後にはその誤解も解け、歌手としてデビューしたかつ枝と、津村病院に戻ってきた浩三、そして娘の敏子と、三人が愛染かつらの木の下で手を重ね合わせ、ハッピーエンド。2人が幸せになれて良かったよー!

 

というわけで、ところどころ戦前の映画のリメイクらしい古めかしさ(医者と看護師の身分差がはっきりしていたり、かつ枝だけすごく丁寧な言葉で喋るという台詞の違和感とか)を感じることはあったし、メロドラマの教科書のような作品だと思うので、その後の作品でもって観る人によっては”ありがちなストーリー”なんて批評がされるかもしれませんが、中村監督の演出と(女性を主役にした映画が上手い方なのですかね)、主演二人の魅力(この二人がとても現代的な美男美女なので、それだけでも作品を今風にしているように思います)で、楽しむことができた映画でありました。

 

はい!で、輝雄さん主演なので、やはり今回もあれこれ書きますよ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

「愛染かつら」は松竹に移籍してから4作目の出演作品となっていて、同じく茉莉子さんと共演した「今年の恋」が移籍後初主演作(2作目)なのですが・・・監督の演出の影響か?「今年の恋」の正のほうが地に近いのか!?あるいはメロドラマに慣れていなかった故か!?「今年の恋」に比べると演技は随分と硬くたどたどしい印象で、台詞まわしとか表情とか「女体渦巻島」なみに硬いわ!って思うところもwなので、シーンによっては「下手だぁ」と思ってしまう場面もあるのですが。+゚(*ノ∀`)、この硬さがこの映画ではいいように作用しているところも多くて、普段あまり感情を露わにしない浩三がかつ枝に真剣に愛を伝えるというのが「かつ枝のことを本当に好きで好きで仕方ないんだ」と感じられ、また、絶対に二人は結ばれるのだという信念のような真っ直ぐさ(強引とも言う)が伝わってきます。「このままろくに話ができなくなるなんて、そんなのは嫌だ。」と言うシーンとか、もうこの浩三のまっすぐさに(//∇//)となるのです(当時、映画館で観た乙女達はきっとここでキャーキャー言ってたに違いない!)。男性主人公がステキって、メロドラマを楽しむ上での大事な要素であります(゜∀゜)

 

その後、敏子の存在を知って津村家に一人で帰って来た浩三は、悲しみをたたえた表情を見せます。捨てられた子犬みたいな切なさで、これまたすごくキュンキュンします(//∇//)(当時、映画館で観た乙女達は以下同文)。

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”浩三様”と呼ばれるのに違和感のないハンサムさであります(*´∀`*) ↓

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とか

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とかねヾ(o´∀`o)ノ

 

映画秘宝」(2017.4)の輝雄さんのインタビューでこの作品を撮る時の経緯をお話されていて、「今年の恋」のあとに茉莉子さんと再び組んで「愛染かつら」を撮ることになり、前作の参考試写がされたそうです。茉莉子さんからどう思うかと聞かれ、ストーリーが古すぎる、という意見だったそうなのですが、松竹の方から「松竹の大作品なのでぜひ二人でやってほしい」と言われた、とのこと。今作は俳優陣も本当に豪華で、佐田啓二さん、桑野みゆきさん、笠智衆さん、佐野周二さん、三宅邦子さん、沢村貞子さんと蒼々たる方たち。松竹の大作品を岡田茉莉子さんと組んで、豪華な俳優さんたちをそろえ、新東宝から移籍した輝雄さんを売り出すための力の入りようが想像できます。実際、この映画のヒットですぐに続編が作られることが決まったりしたようで、女性映画が強かったという松竹のメロドラマ路線をこの時期確かに支えた俳優さんだったんだな、と思ったり。

64年→65年の出演本数の変化がほんともったいないんですけど、それを経て石井輝男監督と再び組まれてからの作品は、また違うカッコよさを観ることができて(「ゴールドアイ」の吉岡さんなんて、輝雄さんのそれまでの役のなかでは実は結構レアなタイプなのだと分かったときの驚きたるや!)、次はどんな輝雄さんに出会えるか!引き続き50ウン年後のファンは追っかけていきたいと思うのでありました٩(๑❛ᴗ❛๑)۶