T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「花と嵐とギャング」

ここは日本かアメリカか!?国籍不明のしゃれたギャング映画。

 

花と嵐とギャング [DVD]

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  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: DVD
 

  


【映画についての備忘録その81】

石井輝男監督×高倉健主演「花と嵐とギャング」(1961年)

 

まさ(清川虹子)は今は大阪に安宿を経営しているが、かつて、大陸では凄腕の女傑で通っていた。その子供たちもいずれ劣らぬ悪党ぶりで、長男は香港ジョー(鶴田浩二)の異名をとる国際的大物。長女・佐和(小宮光江)は前科者で肝っ玉も十分。河北組の兄貴株で刑務所帰りのやくざ・スマイリー健(高倉健)を夫にしている。気が弱い次男正夫も一ぱしやくざを気取っている。

出所してきたスマイリーを邪魔に思う河北組のツンパ(沖竜次)は、スマイリーを蹴落そうと銀行ギャングを計画、その指揮にスマイリーを指名した。スマイリーと佐和は、正夫と、犬猿の仲の殺し屋二人・楽隊(江原真二郎)とウィスパー(曽根晴美)、それに権爺を加えて作戦を実行する。銀行ギャングは成功すると思われたが、ツンパが計画を失敗させるために客として潜り込ませていた男(八名信夫)が楽隊の拳銃を奪い、そのドサクサにまぎれてウイスパーが、楽隊を撃った。スマイリーは金庫の中にいて騒動に気づかなかった。

一方、楽隊は警察病院に収容され一命をとりとめるが、ウイスパーを狙って病院を脱走した。

5000万円を奪い、楽隊を残したままスマイリーと佐和、正夫、そしてウイスパーは銀行から逃走する。5000万の札束がつまった袋は助手席で正夫が大事そうに抱えている。しかし、車が踏切の前で停車したその瞬間、正夫は袋を抱えたまま車を降り、逃走する。正夫が5000万円を盗み、さらには以前に河北組組長から出された足抜けした組員の殺害命令に従わなかったことが分かり、河北は佐和を人質とし、正夫を河北組に連れ戻してくるようにスマイリーに命令する―。

 

 

ラピュタ阿佐ヶ谷で見た石井監督の東映ギャングもの二作品が面白かったもので、他のも観たいなぁ、と思っていたところ、JUNK FILM by TOEI ” で観られるじゃん!と「やくざ刑罰史 私刑」のためにお試し入会した流れでw鑑賞。数ある中でこのタイトルにひかれてチョイス(「恋と太陽とギャング」のタトルも好きw)。あとで調べたらこれが石井監督の東映移籍第一作ということだそうで。第一作からきっちり面白いモノを作るという、さすが石井監督。

 

 

高倉健さん主演ではありますが、登場人物それぞれにスポットがあたっていて、5000万円をめぐってのあれこれと、そんなことはそっちのけな楽隊のウィスパーへの執念と、どっちのストーリーも飽きることなく追いかけながら観ることができました。

 

 

そして、満州とか戦前から続く日本的なヤクザの流れをチラつかせながら、“香港ジョー”とか“スマイリー”とか“楽隊”とか“ウィスパー”とか、呼び合う世界観も楽しい。仕事がなくて埃っぽいアパートに女の子たちとすし詰めで寝ているウィスパーが、仕事で集められるとストローハットでビシッときめて出てきたり。正夫が彼女と住んでいるのは日本的な狭い木造アパートな一方、佐和とスマイリーが経営し二人の住まいにもなっているバーは、フランク・シナトラの絵がデカデカと飾ってあって、白くて綺麗で、アメリカ映画から抜け出てきたような感じだったり。豊かになっていく途中の日本的なリアルさを感じさせながら、少し現実離れしたしゃれた雰囲気が同居していて、憧れのものをみせられているような感があり、この映画に存在している独特な世界観に最初から最後までワクワクさせられます。

 佐和が人質として河北組に取られたり、スマイリーと香港ジョーを邪魔に思うツンパの策謀のあれやこれやとか、最後に一気にギャングが集まって牧場でドンパチが始まる展開は「ここでこれきたかー!!」って感じだし、ヒットメーカーが観客を純粋に楽しませるためにそつなく作った、という感じの、まさに娯楽映画です(最後のドンパチに香港ジョーの格好良さをさりげなく入れているのも石井輝男的で良かったり)。

 

 

江原真二郎さんは二枚目なのに少し頭が弱くて執念深い楽隊を快演し(優しそうなおじいちゃんのイメージしかなかったので、石井作品の役柄は意外すぎ)、小宮光江さん(今回初めて拝見しました)は綺麗で貫禄もあって姐御って感じだし、沖竜次さんを新東宝以外で初めて観られたし、そして何より健さんの茶目っ気と侠気の同居したスマイリーはかわいくてかっこいいし、で、俳優さんも魅力たっぷり(さすがの沖さんも健さんを相手にするとなんだかちょっと食われてるような感じでしたが)。…相変わらず、鶴田浩二さんにははまらなかったなぁ(^◇^;)美味しい役なのになぜなんだろw

 

 

色々と調べてると石井監督がそれまでのモッサリした“東映ギャング映画”に新風を吹き込んだ、みたいな感じの解説に出会いますが、見出しに書いたように感じた雰囲気がそういうことなのかな、と思い、逆に石井輝男以前のギャング映画が気になったりする鑑賞後なのでした。