T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

佐藤肇監督「怪談せむし男」

怪談より怪優。

f:id:kinakokan0620:20190813135627p:plain



  

【映画についての備忘録その62】

佐藤肇監督×西村晃主演「怪談せむし男」(1965年)

 

宗方信一はある会社を経営していたが、死の数か月前、精神的な異常をきたし、父親の圭介(加藤武)が院長を務める精神病院へ入院した。その臨終の際、妻の芳江(楠侑子)は自宅で、彼女に何か伝えようとする信一の夢を見る。その後、病院へと向かった芳江は、圭介の助手の山下(江原真二郎)もまた、死の間際に信一は何か伝えようとしていた、と言うが、圭介は脳髄が破壊されていた信一にそんなことが起こるべくもない、と取り合おうとはしなかった。

芳江のもとに信一の会社の弁護士を務めていた磯部(加藤和夫)が訪ねてくる。彼は信一の会社は潰れ財産はほぼすべて抵当に入ったが、唯一、精神に異常をきたす直前に信一が購入した別荘だけが残ったことを告げ、彼女にその鍵を渡す。

芳江はその別荘に信一の病の原因があるとみて、別荘へと向かう。そこには一人、別荘の管理をしているらしい、気味の悪いせむし男(西村晃)がいた。その晩、寝室で信一の陰惨なふくみ笑いと、女の悲鳴を聞き、恐怖におびえる芳江。その翌日、圭介と山下、姪の和子(葉山葉子)が芳江を心配してこの別荘へと訪れるのだが…。

 

 

 

佐藤肇監督3作品目!こちらもオススメをいただいたのをきっかけに、東映チャンネルで鑑賞。ホラー映画なんで、今回も、「観ようと思って検索したらこのページがひっかかって読んだらネタバレじゃんorz」みたいなことがおこならないように詳しく内容は書かずにおきますw

 

さてさて、三作見てくると佐藤肇監督のお馴染みさんというのがだんだん分かってきて「吸血鬼ゴケミドロ」と「散歩する霊柩車」とのスタッフや俳優さんの共通点なんかも見えてきます(・∀・)音楽はやはり菊池俊輔さんで、これまた、ホラー映画っぽい、おどろおどろしい感じ。始まりは月夜の中の洋館、悲鳴をあげて目覚める芳江(こちらは「ゴケミドロ」の楠さんで、訳ありげな雰囲気w)、別荘は東欧あたりの古城ですか?みたいな洋館で、ドラキュラでも出てきそうな雰囲気と、舞台装置はバッチリ。

信一の亡骸が入れられた棺桶からガタッと音がして、開けたら口に白い花をくわえていたりとか、別荘につけば、中にカラスが突然侵入して芳江を襲いそうになったり、扉が突如バタバタとスゴい音を立てて開いたり閉まったりを繰り返したかと思うと、今度はどうやっても開かなかったり、とか、“怨霊”の存在を感じさせるホラー映画の定番のような煽りが次々やってきて、遊園地のお化け屋敷のよう。

 

とはいえ、電気ついた部屋でまっ昼間に観ちゃったのとそしていい大人なので(笑)、それらについては「おお、きたきた!」みたいな楽しみ方をしたわけなのですがw、それは置いておいて、この映画の見所はもう、西村晃さん(と霊媒師役の鈴木光枝さん!)につきるのでありました。

 

西村晃さんのせむし男は見るからに怪しくて異質。芳江たちが彼を忌避するような振る舞いをしてしまうのもやむをえないように見えます。だから、彼に自然に接している和子の特別に“選ばれた”ような感覚や、それ故にせむし男が和子にだけは彼の抱えているものの重み、その心の中に少し立ち入らせそうになることもまた、当然のように思えてきます。

西村晃さんは一人二役で、もう一つの役はせむし男のお兄さん、富永男爵。回想シーンに登場します。戦時中までこの館の持ち主だった男。で、せむし男はみすぼらしい身なりなのですが、回想の中のお兄さんは男爵なので、ザ・貴族な服装。んで、男爵のときは、それを見事に着こなして、まさに貴族の品の良さを感じます。

怨みの感情に飲み込まれた兄と、その兄の呪縛から逃れられない弟の、見た目とは反した兄を思う純粋さを演じて見せる怪優。兄弟の関係性はストーリーとしては詳しく描かれていませんが、そこはとりあえず横に置いておいて(2回目)、西村晃さんの演技で補完して、何だか納得できるのであります。

 

んで、霊媒師の鈴木光枝さんの迫力。これはもう、言葉で説明するより観てください!って感じ。。お化け屋敷のように楽しんでいた映画のなかで、本気で怖さを感じたのが、鈴木光枝さんの霊媒師が霊を自分におろたときの変貌ぶり。別荘の近くをたまたま通りかかった霊媒師は、この屋敷に何かを感じて訪ねてきます。彼女なら信一になにが起きたのかがわかるはず、と降霊させると…柔和なの面影は完全になくなって、迫真の演技。中年男性のような声と振る舞い、そして、暴力性。んー、やっぱり文章にするのは難しいので、観てみて下さい!もう、ほんと怖いから!鈴木光枝さんは今作で初めて拝見した女優さんだったのですが、Wikiみたら新劇界の重鎮で、「新劇界の三大婆さん(役)女優」とか呼ばれていらしたのですね(笑)

 

はい、というわけで怪談のストーリー自体はなんだかちょっと「これは結局なに?」みたいなとこもあったんですが、それは横に置いておいて(3回目)ストーリーよりも怪優の演技が楽しかった本作。どうしてこの人が晩年、水戸黄門になるんだろう(「散歩する霊柩車」から2回目)。

 

そうそう、ググったりしてでてくる映画のデータベース、本作の紹介文やキャストが少し違っています。圭介役は実際には加藤武さんだったんですが、データベースでは北村和夫さん。加藤さんは私が小さいころにドラマでみていた役のイメージに近くて、加藤さんってこういうキャラでずっと来てたのかな、なんて思った次第。