T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「徳川いれずみ師 責め地獄」

 エログロと笑いと悲恋物語のバランスが絶妙な娯楽映画

 

徳川いれずみ師 責め地獄 [DVD]

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【映画についての備忘録その42】

石井輝男監督×吉田輝雄主演「徳川いれずみ師 責め地獄」(1969年)

 

夜。一心不乱に墓を掘り起おこす由美(片山由美子)。彼女はそこに埋められている弦造の腹を引裂いて鍵をつかみだした。 その鍵は彼女にはめられた貞操帯を開ける鍵だ。鍵を探しながら、由美は自分の身の上を思い返す。

彼女は両親の残した借金の返済のため、与力鮫島の口ききで大黒屋に奉公することに。しかし、そこは女に刺青を入れさせて身体を売らせる売春宿だった。刺青師彫秀(吉田輝雄)にその美しい肌をゆだねることになった由美。女主人のお竜や下男の弦造は由美に執着し、自分のものにしようと責め立てる。そんな日々のなか、由美にとっては彫秀と過ごす時が心の救いであった。

一方、彫秀は師匠・彫五郎の娘・お鈴(橘ますみ)と将来を誓っていたが、兄弟子の彫辰(小池朝雄)もお鈴を欲しいと、将軍・綱吉上覧の刺青競演会で勝ったほうをお鈴と夫婦にすると、彫五郎に約束させる。

彫秀に嫉妬するお竜の企みで、彫秀が墨を入れた由美の背に、彫辰が入れ墨を入れ、二人は同じ女の背で競い合うこととなる・・・。

 

 

 

12月に入って、怒濤の「異常性愛路線」作品の放送が始まった東映チャンネル。吉田輝雄ファンにならなかったら知るよしもなく、知ったところでタイトル見た時点で絶対に観ようと思わなかった映画たちなのですが(^-^;)しかし、ファンにになったからにはいつか通らねばならない道(^_^;でも、やはり気持ち的にはかなりハードルが高くて観られなかった三作品(1番最初に観たのが、たまたまチャンネルnecoでやっていた「明治大正昭和 猟奇女犯罪史」だったので衝撃が大きすぎて、ご出演作の中では機会としてはレンタルなどで観やすい作品ではありましたが、アクセスのしやすさに反してなかなか手がつけられず(^_^;)をここで一気に鑑賞しました。「徳川女系図」「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図」そして今作です。これで全て制覇。我ながら頑張りました(笑)

せっかく全部制覇したのだし、やはりこの路線も感想をつけておかねばなるまい(何の使命感)ということで、見終わったあとに「(エログロはやっぱり強烈だけど(^_^;)映画全体として面白い娯楽作品だった!し、輝雄さんもかっこよかったし!」と感じた今作について感想をつけておきたいな、ということで書くことにしました。

 

 

で、面白い娯楽作品だと感じた要因は見出しの通り。大分、男性好みのほうへ寄ってはいますがw観客が楽しめる作品を作るということに全力を注いだような、エログロと笑いと悲恋のストーリーという「こういうの理屈抜きで楽しいでしょ(゜∀゜)」みたいなものをギューッと詰めこんだ、ある意味贅沢な作品でした。

 

 

エログロのほうは、初っ端、墓を暴いて弦造の腹を割いて鍵を取り出し、貞操帯の鍵穴にはめる、というシーンからもう結構なショック。しかし、悲壮感がにじみ出ている由美がキレイで、単純に衝撃的、という表現にはおさまりません。

全体的に1作目の「徳川女系図」がとにかく「おっぱいいっぱいだぞ!だけどなんか並んでるだけだぞw」みたいな映画だったのと比べ、(こちらも売春宿が舞台でいれずみ師が腕を競うというストーリーなので裸の女性がめちゃめちゃ出てくるわけですが)後ろからとか下からとか、あけっぴろげに並べるのではなくてキレイに撮ることを意識されているようなシーンが沢山あり、これが「石井輝男監督作品」「異常性愛路線」という看板じゃなかったら映像の美しさ、という視点で語られるかもなぁ、なんて思えるほど(でも、やっぱりエログロなんですけどσ(^_^;)。彫秀が由美の背にいれずみを入れるシーンは、夢中で彫る秀と痛みに耐えながら墨を入れられる由美の関係性は、なんなら、画家とヌードモデルの退廃的なムードのラブストーリー(時代劇に対してラブストーリーという表現はすごい違和感だな。きっと、もっと相応しい表現があると思うのですがσ(^_^;)といった風。んでまた、秀に思いを寄せる由美と、そんなことは露ほども気付かず、お鈴のために由美に彫りものを入れる秀という、このすれ違いが切なかったり。

 

 

笑いのほうは石井監督お得意の!と言った感じの由利徹さんによるおバカなシーンがちょいちょい挟まれ、グロいシーンも多いこの映画で清涼剤みたいな感じw今回は由利徹(と、大泉滉さんの)女装&まさかの女性の吹き替えとかいう変化球で「アホやなー」と多いに笑わせていただきました(吹き替えとか何で思いつくのさ!)w

 

 

そして悲恋物語の部分。互いに愛し合っている彫秀とお鈴をめぐって、由美と彫辰の伝わらない思いが描かれていて、クライマックスでの秀とお鈴の悲しい結末を際立たせます。

彫辰はお鈴と夫婦になりたいために策を講じます。

その一つが刺青競演会での勝負。強引ではあるけれど、なんとかお鈴を手に入れたい。そして、そこで勝つために美しい肌を、と既に秀によって刺青をされた由美の背を彫ります(秀の刺青はある仕掛けがないと浮き出ないため、パッと見は辰の刺青だけが見えます)。秀と過ごした時間を大切に思っていた由美にとっては、競演会で秀のいる前で、辰の刺青の入った背中を露わにすることの哀しさはいかばかりか。しかし、とうの秀はそういう感情が殆どなくて、お鈴と夫婦になるためには何としても勝ちたい!そのための渾身の刺青です(自分の作品を辰に汚された!と、芸術家のような感情でこのときの由美を見ています)。ここでも全く届きそうもない由美の秀への思い。で、辰もなんとしても勝ちたいわけですが、その感情がお鈴の背中を彫るほうへ直接向かうのではなくて、「他の誰かの美しい肌」へ向かいます。辰は二人を邪魔する嫌なやつなんだけど、お鈴への愛は真っ直ぐで彼女を無闇に傷つけたりはしない。秀とお鈴を取り巻く由美と辰の気持ちの行き場のなさが、二人の結びつきの強さを感じさせます。

そして、もう一つが、彫五郎殺害の冤罪を秀にかぶせるように証言すること。長崎の出島で外国人相手の商売を考える鮫島とお竜。(彫辰の腕を買ってか、お鈴に外国人相手の売春をさせるためか)彫五郎を殺害した二人は、辰を脅すような形で秀が殺したと証言させ、秀を島流しにします。辰は2人に協力して秀を島流しにすればお鈴を自分のモノにできる、というお竜と鮫島の口車に乗り、また、お鈴は秀に会わせてやると言われ、二人は大黒屋や罪人の女たち(これも出島で身体を売らせようと鮫島が連れてきた。この中に由利徹さんと大泉滉さんw)と一緒に船で出島まで行くことになります。

騙されて出島まで来て、辰に刺青を入れられてしまうお鈴。辰は念願だったお鈴を手に入れられる。

お鈴は、秀の「必ず戻ってくる」という約束を信じ、秀が島を抜けて迎えに来てくれるのを待ちます。しかし、秀以外に見せることなどあり得ないと思っていた肌に、辰に刺青を入れられることになった恥ずかしさと苦痛。刺青が彫りあがった時、実は売春宿の外国人へ売られるのだと知って、その絶望は極まり毒薬を口にします。島を抜けた秀がついにお鈴の居場所を知り、二人は再会するのですが、時すでに遅し。再会の喜びに静かに抱き合いながら、そのすぐ後に二人を襲う絶望。「ロミオとジュリエット」のようです。

お鈴役の橘ますみさんは健気に生きてるのに幸薄い役にはまりまくってるし、輝雄さんも安定の男前ヒーロー(ダークヒーロー)な展開で彫秀さんめちゃめちゃカッコいいし(//∇//)、「異常性愛路線」の看板ながら、切ない悲恋物語

 

 

この後、彫秀はあっという間に(^_^;復讐の鬼と化して(もう少し悲しめ!)破滅に向かい、キレイなままで話が終わらないあたりはやはり「異常性愛路線」なのねって感じではありましたが、最後まで観客の求めるものを追求して作った娯楽作品、という感じで、石井輝男監督のヒットメーカーとしての矜持を感じた映画でした。

そして、見終わった後にあれこれ検索していたら、長谷川博巳が好きな映画にこれをあげているというのを知って、「シン・ゴジラ」に続き、長谷川博巳さんの好感度がアップした案件でありましたw

 

あー!あと、出島の中を逃げ回るシーンも面白かったなぁ!

 

【異常性愛路線まとめ】

全部がっつり感想を書くにはハードなこの一連の作品群(^_^;ここで思ったことをまとめてつけておきたいと思います。

 

「徳川女系図」(1968年)

シリーズ1発目。人間不信の将軍・綱吉というちゃんとした筋もあるんですが、それより、アホっぽいエロシーンの印象が強すぎてwなんだか場末のスナックのような感じのエロさというか(^_^;(場末のスナックとか入ったことないですけどw) 肝心の(!?)輝雄さんも白く塗られすぎだわ、監督も輝雄さんも初の時代劇かと思うのですが撮るほうも撮られるほうも見せ方が馴染んでない感じがしてカッコよくない!何とも言えない違和感(^_^;キャラ的にも当事者としの主人公だし(他は狂言回しの第三者だったりする訳ですけど)、当時これを観た吉田輝雄ファンの女性の方達のショックやいかばかりか、と想像してしまいましたσ(^_^;(だって50年後に観て相当な衝撃ですよw)

 

「異常性愛記録 ハレンチ」(1968年)

いや、もう、吉岡さんかっこいいー!王子様だわー(っ´ω`c)でしたw

「愛してるんだよーん」の若杉英二さんの深畑さんの気持ち悪さがまたすごくてw典子ちゃん、逃げてー!!王子様早く助けてあげてー!って感じw

特に王子様ぶりがステキだったのが(何の感想だw)朝早く湖畔を2人で散歩してて道の真ん中でキスをしているとジュースを配達するトラックが走ってきてクラクションを鳴らされるシーン。恥ずかしそうに離れる二人、で、吉岡さんはさらりと「ねぇ、2本分けてよ」とトラックの運転手に声かけます。何このスマートさ(//∇//)(って、この映画でそこにキャーキャー言うヤツはお前だけだ)吉岡さんと典子のシーンだけは王道のラブストーリーのようで別の映画を観ている気分でしたw

そうそう、今作ではとことん気持ち悪いオッサンだった若杉さん、「徳川いれずみ師 責め地獄」では綱吉役で登場。その姿はかつて二枚目の時代劇俳優として名をはせていたことがよく分かる姿でした。

 

「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図」(1969年)

これはもう、輝雄さんの格好良さも吹き飛ぶ作品(^-^;) 山本豊三はイヤなやつだし、石濱朗さんは毒のない二枚目かと思ったらすんごい下僕具合(^-^;)松竹では文芸作品なんかに出られていた人達がこの役(まぁ、そもそも輝雄さんもそうなんだけどw)って言う衝撃と、小池朝雄さんの狂気の殿様とその残虐な描写が強烈で。闘牛士みたらしばらくこれ思い出しそうな状況(^-^;) そして、ストーリーに絡むのにほぼ何もしない吉田輝雄。不思議なポジションの役でしたw

 

「明治大正昭和 猟奇女犯罪史」(1969年)

最後の「何も解決してへんやん!」という唐突な終わり方と、狂言回しに徹する輝雄さん(あと安部定にインタビューしてたけど)というハンサムさんの無駄遣いに呆然としてw終わった作品wこれはエログロもグロいほうに極まっててキツくて(最初に観たのでショックが大きすぎたのもあるかな)、再視聴することはなさそう(^_^;

 

「温泉あんま芸者」(1968年)

おバカ展開が過ぎてまともに観れなかった作品(^_^; 橘ますみさんが可愛かったことと、輝雄さん(吉岡先生)がカッコよかったことだけしか記憶にない。今観たら違った感じで面白く観られるかなぁ。

 

「徳川女刑罰史」(1968年)

一話目の橘ますみさん×輝雄さんの兄妹のお話はこれまた美しい(畜生道に堕ちるけど)。この路線で石井監督が大事に撮った二人なのかなぁ、と思います。お兄ちゃんは包帯巻いて寝たきりだったので、ハンサムさを十分には発揮できずw

輝雄さん二役の吉岡(同心)はやっぱり、何もしない狂言回し的な役割でw二話目の賀川雪絵さんと三話目の小池朝雄さん、渡辺文雄さんのクレイジーさが強烈な作品でありました。上田吉二郎さんも忘れずに。

 

 

全体として、今これを封切り作品として劇場にかけたらフェミニストの方々からすごい批判がきそうな映画ではありましたが、ただ、橘ますみさんや賀川雪絵さんはもちろんのこと、片山由美子さんや尾花ミキさんなど、(撮影はとっても大変だったとは思いますが)女優陣は皆さん各々個性が光る美しさで、それも印象的でありました。