T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

木下恵介監督「不死鳥」

主演二人の組み合わせの違和感が拭えぬまま、映画終了。

 

木下惠介生誕100年 「不死鳥」 [DVD]

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【映画についての備忘録その38】

木下恵介監督×田中絹代主演「不死鳥」(1947年)

 

戦時中、学生時代に知り合い、交際中の真一(佐田啓二)と小夜子(田中絹代)。戦況が悪化して、真一の出征の可能性を感じた二人は結婚を決意する。しかし真一の父は学生時代から付き合うような女と真一を結婚させるわけには行かないと二人を認めようとせず、小夜子を紹介しようとしても、自分は会わないと激怒。それでも深く結ばれていた二人は、真一の出征の前日、再会を果たす。しかし、いよいよ出征という当日には、駅で万歳をしながら送る真一の家族たちとは離れ、小夜子はひっそりと見送ることしかできなかった。

その後、長野へ疎開した小夜子の元へ真一の父が訪れる。父は息子と縁を切ってほしいと伝えるが、小夜子はどんなに反対されても真一と一緒になると主張する。小夜子の情熱に真一の父も理解を示し、一時帰国した真一と小夜子は夫婦生活を送り始める…。

 

 

U-NEXTの配信で観ました。「永遠の人」以来の久しぶりの木下監督作品です。

 

戦争未亡人となった小夜子が、子育てや夫の家族(義父、義母、義理の弟、妹もいっぱい!)の世話を忙しく焼きながら、義弟の結婚を前に、夫と知り合ったときから結婚するまでを思い出して、、、という始まり。「不死鳥」のタイトルロゴが炎の中から浮かび上がるという演出も印象的で、波乱万丈が二人を待ち受けるのね!みたいな期待を抱いて見始めました。

その回想の物語は戦争に翻弄され、愛し合っているのに離れ離れにならなければならない二人の切なさ、お嬢様だった小夜子が真一との楽しいデートのあとに家に戻ってくると父親が急死。病弱な弟と二人残され、叔父や叔母にいじめられ…さらには絶対に結婚を認めてくれない真一の父。二人の前に立ちはだかる数々の障害とそれでもその障害を乗り越えて結婚する二人・・・泣ける要素はいっぱいの王道のメロドラマ!・・・のはずなのに、映画に入り込めないまま、泣くこともなく映画終了。

 

その理由の一つは、なんだか冗長というか、最初から「人間ができている二人が愛し合っている」状態で、最後までそのまま、という、イマイチ起伏のない展開のせい。愛し合っている二人の間に、「裏切られた」という誤解があったり、あるいは身分や境遇に差があったりとか、すれ違いというか、そういうタイプの困難が横たわってなくて(小夜子の父親が亡くなる、ということはあるのですが、家もそのまま、ばあやもいて貧しくなったような雰囲気はなしだし、お父さんはその点で結婚を反対している風でもなく、あまり大きな問題にみえません)、ヤキモキしないのでありますσ(^_^;メロドラマ観る上で私の中で大事なポイント(私だけか?)、「引っ付いたり離れたりで上手くいかない二人の恋愛にヤキモキする」がありません。最初から絶対に離れないと分かる二人なので、盛り上がりポイントがないのです。

 

入り込めなかった理由の二つ目が見出し。1947年の作品なので、撮影当時の年齢は1909年生まれの田中絹代さんが38歳か37歳、1926年生まれの佐田さんは20歳か21歳か。

田中さんは回想前の割烹着姿は違和感ないのですが、回想が始まると女学生(セーラー服に三つ編み)。佐田さんは学ランに下駄、角帽の男子学生。その後も、田中さんの衣装は可愛らしいのですが、いずれも若い女性が着るのだろうなー、という服装。

佐田さんは実年齢そのままの役なのに、田中さんは元々お綺麗な方なのは知ってはいてもやはりアラフォー、目尻のシワやアゴのたるみは隠せず(しかも、感覚的には現代より老けてみえます)。どうにも若作りのように見えてしまい、この二人の組み合わせの違和感が最初から最後までずーっと横たわります。例えば、相手役が佐田さんではなくて田中さんと同年代の方だったり、実年齢に近い設定であれば気にならなかったのかもしれませんが(「風の中の牝鶏」の時は20代後半という設定で、これもまぁ「?」ってなったのですが、相手が佐野周二さんだったのでそこまでひっかからなかったんですが)、どんなにキレイな方でも、やはりこれにはちょっとムリが(^◇^;)しかも、木下監督なので佐田さんがめちゃめちゃハンサムに撮られていて(ジャケ写でも分かる!)、その対比で余計なのですσ(^_^;

 

と、そんなワケで、久しぶりに観た木下作品。これまで観た作品はどれも観終わった後に作品として印象深いものでしたが、今回は残念ながら、印象深かったのはタイトルロゴと佐田啓二さんの美しさ、ということになりました(キレイな田中絹代さんを観るためには何を観たらいいのだろうσ(^_^;愛染かつらあたりか?)。しかし、観る作品ごとにうけるものが違っていて、すごい監督さんだなー、とあらためて思うのでした。