T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

渡辺祐介監督「契約結婚」

今観ても古くない!小気味よくて楽しいラブコメ

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【映画についての備忘録その31】

渡辺祐介監督×沼田曜一主演「契約結婚」(1961年)

 

新生大学野球部の強打者岡村純平(寺島達夫)は、将来性ある逸材としてプロ注目の選手。各プロ野球団が日参して契約にこぎつけようと必死のスカウト合戦。そして女子大生たちはそんな純平の気を引こうと必死だ。中でも男女の利害一致で短期間の結婚を取り決めようという"契約結婚"に共鳴しているエリ子(大空真弓)は契約結婚の相手として将来有望な純平を口説くのに熱心だ。

大学の先輩には大阪ブルドックスに在籍している投手の清沢浩治(沼田曜一。この役名はきっと沢村栄治からとってますね!)がいるのだが、肩を壊して解雇寸前。その清沢に対して、ブルドッグスのオーナーは純平のスカウトを命じる。純平との契約を勝ち取れば、清沢の契約も更新してやるというのだ。清沢はホステスの加世子(小畠絹子)という女性と契約結婚中で、2年に渡る契約期間ももう間もなく終了してしまう。打算で交わした契約も今では加世子を愛している清沢。自分のクビと加世子を繋ぎ止めるため、エリ子を味方に引き入れて純平をブルドックスと契約させることを考える・・・。

 

シネマヴェーラ渋谷の「玉石混淆!? 秘宝発掘! 新東宝のまだまだディープな世界」特集で鑑賞。輝雄さん主演作で新東宝作品は多く観ているわけですが、スクリーンで観るのは今回が初!上映後には今作に出演された大空真弓さんのトークイベントもあり、そちらも楽しみに出かけました(パパあざっす!)。

 

さて、映画のほうはのっけからキュートな演出で気持ちをつかまえられ、出だしのワクワク感はかなりポイント高し。結婚を巡る二組のカップルのかわいらしい駆け引きとプロ野球のスカウトを巡るてんやわんやの騒動とを短い時間に上手く絡ませて進みます。

「結婚とは!」みたいなナレーションから始まり(これが「奥様は魔女」とかの外国ドラマみたいでかわいい!)、エリ子と大学の寮の友人が結婚式に参列したあと、お互いの結婚観について、言い合い。結婚を神聖なモノとする友達と、そんなのは古くさい、もっとドライでお互いいいとこ取りの期限付き契約とすればいいというエリ子。二人の言い合いが教会→飲み屋→寮のお風呂と場面が変わってもずーっと続きます。結婚に夢見る女の子と互いの利益のために結婚すべし、という進んだ!?考えの女の子と、お風呂ではさらに寮の他の女の子も加わっての”結婚観”トーク。寮では、床に転がってお菓子をつまみながら話してる姿があったりとか、「女の子が集まったらこういうのが楽しいんだよね♪」というシーンが他にもいろいろあって、なんだか少女マンガのようなかわいさをスクリーンに写し出しています。(男性監督なのに!)

大空さんの気が強くてちょっと生意気な雰囲気が、エリ子のユニークで進んだ(!?)考え方にあっていてはまり役。このエリ子にグイグイ迫られて弱り目の純平は、寺島さんのあの風貌と細かいことはマネージャーの山口におまかせ!っていう性格でややぼーっとしたように見えるんですがwそれでいて「バットがあれば全ての欲は満たせるんだ」と考えていて、エリ子に簡単に落とされそうで落ちなくてw押しまくっても暖簾に腕押し。お互いに考えてることに自信があってそれに従っていて、それ故に平行線でなかなか進展しない二人の駆け引きが楽しいです。

 

で、エリ子と純平のお話が中心ですすむのかと思っていたら(ポスター観たらそう思うよね)、実は清沢が主役でした!プロ野球選手として落ち目の清沢。2年前に計算尽くで契約結婚したのに、今では加世子のことを本当に愛していて、帰りが遅くなるだけでソワソワ。契約が切れたあとも一緒にいたいと思っているのですが、クビになってしまいそうで自信をなくしていて、言い出すことができません。加世子のいない時に契約書をしょっちゅうキャビネットから取り出しては契約内容を確認したり、帰りの遅い加世子に「何やってんだろう」と怒っているのに、いざ加世子が帰ってくるとベッドの中で寝たふりして平気な風を装ったりとか、(私の中では悪役イメージが強い)沼田さんが乙女のような素振りを連発して妙にかわいいですwギャップ萌えってやつかw

加世子のほうも清沢を愛するようになっていて、やっぱりこちらも相手の帰りが遅いとソワソワしたり。態度がはっきりしない清沢やお店にやってくる客が「男は畳と女房は新しいほうがいいと思ってる」なんて言うので、やはり契約を更新してもらえないのではないかとソワソワ。その客から「銀座に店をもたせてやるぞ」なんて誘いもあって、そんな話も清沢にするのですが、清沢が気にもしないような返事しかしないので、やっぱり不安で、愛されているという自信がない。オトナの二人は若い二人とは反対に素直になれない故に平行線をたどって、なかなか契約が更新できず、こちらの恋模様?結婚生活?もヤキモキして観られます(゜∀゜)

 

恋バナに絡む野球の描写は(プレイしてるシーンは純平の練習風景だけ)、パイレーツ(=巨人?)とブルドッグス(=阪神?)のスカウト合戦と、追いかけまわすマスコミのかまびすしい様子がコミカルに描かれていて、国方伝さん演じるマネージャーの山口のキャラ(「政治が悪いんだ」が口癖で何か都合が悪くなるとこれを言います。でもって、どう見ても学生マネージャーに見えない老けっぷりw)とあわせてたくさん笑いましたwいろんな球団が贈り物をしまくるので、住んでる部屋(焼き鳥屋の2階を間借りしているらしい)が家電だらけになったりとか、契約前に純平に挨拶にやってくるスカウトやマスコミで焼き鳥屋の周辺が大渋滞で警官(まさかの菅原文太さん!見逃すと気づかないくらい一瞬の登場!)が交通整理したりとか、純平の注目されっぷりが半端なくて面白いw長嶋さんが巨人に入ったのが1958年のようですし、純平もバッターで内野手という設定で、この辺も意識してのことかな!?とか思うとこれも楽しく。寺島さんご自身も元プロ野球選手という経歴らしく(投手ですが)、野球好きの私がみても強打者っぽくて、バットを振った姿もさすがにさまになっていて、野球モノのドラマとか映画とか観るとそういうとこが気になってしまう私としては(^-^;)ひっかからずにすんなり受け入れられたのも良かったですw

 

今作は基本的には明るい展開で、恋バナのパートは女性向けの映画って感じ。一方で清沢と純平の二人のシーンは、どんなことをしてでも野球を続けたいという清沢の思いや、純平がスカウトとして現れて接待のようなことをする清沢に対して、「先輩と野球の話ができると思ったのに!」と失望してしまったりとか、野球という仕事にかける男性をシリアスに描いていたりもします。また、すべてが丸くおさまってよかったね、みたいなコメディにありがちな展開にもなってなくて、テンションが高いだけのラブコメじゃなく、硬軟あわせてよくできた一作だなぁと思いました。「今リメイクしてもフツーに通用しちゃうよなー」と思ったくらい、古さを感じない、かわいくて楽しい映画で、玉石混淆、「玉」のほうの映画だったようです( ̄∇ ̄)

 

 

【2018/9/2 トークショーシネマヴェーラ渋谷

さて、上にも書きましたが、今回出かけた回は上映後に大空真弓さんのトークショーがありました。この特集上映ではハンサムタワーズ主演の「男の世界だ」の上映もあり、この作品に大空さんがヒロインで出演されているので、この辺りのお話なんかも聞けるかなー、とそんな期待もいただきつつ。

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上映は12:45から。シネマヴェーラの開館時間は10時半なので(たぶん。前回「真赤な恋の物語」の朝いち上映を観にいったときの開館がこの時間だった)、10時半ちょっとすぎに到着。さすがにトークショーもあってか、私の前にはすでに何人もの方が並んでいて、自分の整理券番号は40番!今までで一番遅い順番です。(今後、また何か行きたいトークショーとかあったときは参考にして出かけなくては!)

 

映画を観てホクホク気分のところで大空真弓さんと下村健さん登場。しかし、大空真弓さん、今回の「契約結婚」と私が聞きたくてしょうがなかったw「男の世界だ」については殆ど覚えてなかったらしく撮影時のエピソードなどは聞けず(^-^;)それでも今作の渡辺監督(ゆうすけ~!ってからかって呼んでたらしい。頭が良さそうな監督で好きだった、と)や「男の世界だ」の土居監督(態度がよかったら楽屋にチョコレート置いてくれたそうです)の思い出を楽しそうに語られていて、それがやんちゃな女の子って感じで、スクリーンに映る雰囲気そのままでした。

 

面白いなぁ、と思ったのが新東宝に入った経緯。歌舞伎を観に行って松竹の人にスカウトされたのに、近所のうなぎ屋さんに「映画界に入るなら中の人に会ってみないと!」みたいに言われて紹介されたのがまさかの新東宝の専務の方だったという。わけが分かりませんw

 

ハンサムタワーズについてはとにかくみんな大きくて、壁があるみたいで驚いた、とお話しされてました(゜∀゜)当時180cm前後の男性が4人集まるって相当の迫力だったんでしょうね( ̄∇ ̄)輝雄さんと共演作があったことは覚えておられて(1本だけだそうですが)、それを聞けたのは嬉しかったり(゜∀゜)

 

その他にも亡くなられるまで仲良しだったという池内淳子さんのことや、高島忠夫さん、星輝美さん、など新東宝の監督さんや俳優さんについての思い出を沢山聞くことができて楽しいトークショーでありました。