T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「黄線地帯(イエローライン)」

二度目で世界に引き込まれた。カスバの街と主演3人の個性が魅力的。

黄線地帯 [DVD]

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 【映画についての備忘録その24】

石井輝男監督×天知茂三原葉子吉田輝雄主演「黄線地帯」(1960年)

 

殺し屋衆木(天知茂)は阿川という男から銀座のホテルに宿泊している神戸税関長の殺害を依頼される。時計をしたまま寝るという税関長の腕時計を殺しの成功の証拠とし、その時計と引き替えに阿川は西銀座の酒場・ドミノで報酬の残りを払うという。
しかし、殺害後すぐに警察がホテルへ。警察から逃れてドミノに向かうも阿川はあらわれなかった。騙されたと知った衆木は阿川を殺そうと、東京駅から神戸へ向かうことにする。
東京駅では踊子のルミ(三原葉子)が新日本芸能社の踊子募集に応じて神戸へ旅立つところだった。ルミの恋人で新聞記者の真山(吉田輝雄)は税関長殺しで新聞社が大騒ぎになってしまい、ルミの見送りに来ることができない。そんな真山をせめるように電話をかけているところを衆木に電話を切られてつかまり、ルミは二人で新婚夫婦を装って神戸のカスバ街まで道ずれにされることに。
また、電話が突然途切れたことを心配した真山も、新日本芸能社が国際売春組織である黄線地帯と関連があるとみて、ルミの後を追って神戸へ急行する・・・。

 

DMM.comでレンタル。今年の1月にTSUTAYAディスカスでレンタルして鑑賞しているんですが、それ以来、半年ぶり2度目の鑑賞でした。で、見出し。

 

初鑑賞は「女体渦巻島」「セクシー地帯」を観たあとの石井監督×吉田輝雄の新東宝作品としては三つ目。で、ありますからして、観終わったあとに残ったものは、「主演とかいいつつ輝雄さんあんまり活躍してないやん!」ってこと(笑)それから、渡辺宙明さんの音楽が今作ではなんだか目立ち過ぎているように感じてそっちに意識が持って行かれたこと、そしてそれ故、どこで真山とルミが会えるのかな!?ってストーリーの仕掛けとしての面白さとっていう、分かりやすい部分だけでした。

 

で、2度目の鑑賞。輝雄さんの出演作は言わずもがな、天知さんの他の作品も、三原さんの作品も色々観たあと、ストーリーもカスバの街も(初めて観たときは神戸にカスバってとこがほんとにあるんだ!?と思ってましたw中華街的に)頭に入った上での鑑賞です。

 

したら、もう、オープニングの宙明さんの音楽が全然違うように聞こえて、その後に出てくるカスバの街のイメージとあわせて「映画の世界観にめっちゃあってるー!!」と音楽と一緒に一気に映画に引き込まれてしまいました(゜∀゜)(知識の量で違ってくるのかどうかは不明)

 

宙明さんの音楽はフラメンコのような曲調で、ギターの弦を弾く音が聞こえてきそうな感じ(こういうのを乾いた音というのかしら)。そのどこか寂しげな音色をバックに衆木は阿川から依頼を受け、税関長を暗殺します。この音楽は衆木が自身の生い立ちをルミに語る時にも印象的に流されます。彼は孤児院育ちで、自身が刑務所にいる時には愛を誓った女性に裏切られ、と信じる者もいない孤独な人間です。人殺しを何とも思っていないといいながら、殺す相手は真っ当な人間をくいものにするような悪人だけで(阿川は税関長を悪人だと吹き込んで彼に殺させます)、逃亡の道連れにしたルミと同じ部屋に泊まりながら、ルミが真山のことを心から愛していると知ると彼女に手を出すことはしません。悪人でありながら純粋な何かを心にしまっています。ギターの乾いた音と寂しげで叙情的なメロディーが衆木の人物像を表しているかのようでした。

んで、天知さんはやっぱり素直でない斜に構えた人物像がはまっているようで(「スター毒殺事件」の爽やかさの後で確信しましたw)、悪のなかに善を隠し持っている、そういう人物をとても魅力的にみせています。こういう生い立ちなのにドライに描かれていて、自分の身の上を世の中を恨むというような形ではなく、自身に対する怒りと諦観みたいなものでとらえていてそこがまたカッコよく(「人生は最初から見込みのない人間がいるんだ」って台詞がそれを象徴している感じ)、そのニヒルな雰囲気がカスバの、狭い路地の、人であふれたほこりっぽい街並みに溶け込みます。

【溶け込んでる人】
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ルミはこれまた、三原さんにぴったりな天然なキュートさを全開にしたようなキャラクター。白いワンピースに赤い靴(真山からのプレゼント)、赤い帽子の出で立ちから始まって、衣装もとってもかわいらしい。殺し屋の復讐のために東京→神戸→カスバと連れ回されていて、何とか逃げたそうと細工はするけど全然焦ったり怖がったりしている感じがありません(笑)衆木の孤児院育ちの辛い身の上話を聞いても「下宿代がタダなんてステキじゃない!?」なんて斜め上のほうのなぐさめ方(笑)でも、そんなキャラクターも三原さんならわざとらしさもなくて、衆木の陰とルミの陽とが鮮明で、そして衆木がルミの明るさに取り込まれそうになり、そちらの世界へ行けるのではないかと感じさせるのも当然という感じ。

 

そして「あんまり活躍してないやん!」な吉田輝雄ですが、あらためて観ると天知さんとの対比で輝雄さんの個性もまたよく生かされてるなぁと感じました。素直で純粋(デビューしたばかりで一生懸命なだけか?でもやっぱりその一生懸命さが伝わってくるのがまた良さか)。ルミを探すための情報を集めてカスバの街を歩いていても、衆木が馴染んでいるのとは違ってよそ者が迷いこんできた風で、衆木と反対側の世界の人間だと分かります。貧乏な踊り子(ルミ)と新聞記者(真山)なんて育ちが真反対のような組み合わせなのに、輝雄さんの純粋で素直な雰囲気がそこの違和感をひょいっと飛び越えてしまいます。そして、ラストではその素直さで自分の命も顧みず、ルミを助けるため、衆木の銃の前に立ちます。最後がちゃんとかっこいいとこも“らしい”です。

 

【よそ者感漂う人】
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そんなわけで2度目の鑑賞では音楽もカスバも俳優陣も違ってみえた「黄線地帯」。三人の個性が際立つラストシーン(TOPのDVDのジャケ写ですね)まで、映画の世界に入り込んで観ることができました。また次に観たときにはあらたな発見があるかな。