T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「女王蜂と大学の竜」

吉田輝雄×三原葉子コンビのベスト作かも!?かわいくてカッコいい二人の楽しい映画。

 

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【映画についての備忘録その21】

石井輝男監督×三原葉子吉田輝雄主演「女王蜂と大学の竜」(1960年)

 

戦後間もない新橋。その露天地区では三国人連盟と名乗る外国人達が暴れ回っていた。ここを縄張りとする関東桜組は組長の千之助(嵐寛寿朗)と娘の珠美(三原葉子)を中心に三国人連盟とその手先となっている土橋組の横暴に悩まされる露天商達を必死に守っていた。

三国人連盟の幹部リ・トウシンが連盟の仲間を引き連れ、関東桜組に乗り込んできた。関東桜組が仕切る桜マーケットを明け渡せというのだ。不在だった千之助に代わり、珠美が話そうと出てくるが、銃をみせて「敗戦国は大人しく縄張りを明け渡せ」と脅してくる連中に啖呵を切る珠美。今にも乱闘が起ころうというその時、ラバウル帰りの特攻隊の生き残りだという竜二(吉田輝雄)があらわれ、珠美たちの助っ人として大暴れする。

出掛け先から戻ってきた千之助は竜二の助太刀に感謝するが、こんな争い事はヤクザに任せ、費用を出すから大学へ行き、世の中の役に立つ人間になれと諭す。しかし、目の前で苦しんでいる人達を助けたいのだと言う竜二は千之助とケンカして出て行く。しかし、竜二を心配した珠美は行く当てもなく野宿するという竜二を馴染みの雄太郎とその娘の美耶子(万里昌代)の家へ預けるのだった。

 

DMM.comでレンタル。TSUTAYAディスカスにもなくて、名画座にかかるかCS放送を待つしかないかなー、と思っていたらこちらでレンタルできる!とのことで会社のお昼休みにせっせと登録してwレンタルしました。公開時のポスターの「吉田輝雄の魅力をこの一作に集中」(「女体渦巻島」の“全女性あこがれのハンサム”につぐ印象度w)という惹句、嘘ついてないな!って感じで(๑'ᴗ'๑)輝雄さんと、そして三原葉子さんのかっこよさとかわいさがつまっていて、石井監督のテンポのいい演出とあいまってとっても楽しい映画でした。

 

展開としては三国人連盟(連盟の会長は大友純さん)と土橋組(組長:近衛敏明さん)、桜組にいながら土橋組に内通している達(沖竜次さん。最後は見せ場もあって存在感たっぷり。)と「女体渦巻島」か!?と思わせる(近衛敏明さんは美耶子に酒を飲ませて・・・とこちらでもやっぱりエロ親父キャラ。大友さんも朝鮮人組織のボスというキャラw)三悪人が関東桜組のシマを乗っ取ろうと画策するも、竜二や珠美の活躍で思うようにはいかず。。。という、安心のストーリー。 

 

【いろいろとキャスト/スタッフかぶってる女体渦巻島についてはこちら】

 

kinakossu.hateblo.jp

  

終戦直後の日本人と外国人の争いは実話に基づくそうです(だから駅前にパチンコ屋が多いのだと聞いたことがあります )。そんな時代のなか、特攻帰りで両親も戦争で死んでしまったという竜二は「生きてるだでもうけもんなんだ」という身を逞しく前向きに、明るく生きています。珠美のほうも父・千之助を支えながらも、女性だけの愚連隊を率いて土橋組の男達を相手に喧嘩をしてみたり、男勝りの勝ち気なところを見せます。で、この二人と二人を取り巻く仲間の活躍が描かれていてとってもかわいらしい(๑'ᴗ'๑)一応、任侠映画に分類されると思うんですが、どっちかっていうとさわやかな青春映画を観ている気分でした。

 

竜二はもう元気いっぱい!

達の企みで桜組の若い衆三人が千之助の言いつけを守らずに三国人連盟の事務所に殴り込み、待ち伏せていた連盟側に返り討ちにあいます。騒動を知って珠美とともに雄太郎の家から桜組へ美耶子の運転するオート三輪で戻ってきたところ、三人の遺体を乗せた霊柩車が桜組の前に。霊柩車の運転手から土橋組から頼まれたことを聞き出すと、霊柩車を土橋組に突っ込ませて一人で乗り込みます。派手だな\(^o^)/「仁義の切り方も知らないのか」と土橋に言われるといっぱしの口上を述べてニヤリ(ここで特攻隊の仲間から頭がきれるので大学とあだ名をもらったと“大学の竜”だと名乗ります)。土橋組が三国人連盟の手先として動き回っていると知ると、どうこの場を収めるのかと思ったら、組長に「日本人の同胞に対して詫び状をかけ!」ときますw喧嘩が強くて度胸満点の格好良さと、悪党相手でもどこか愛嬌のある裁き。この後も街を歩いて喧嘩を売られては勝って子分を増やしていったり、土橋が美耶子を手込めにしようとしたところに助けに入り、三遍回ってワン!と言ったら許してやるよ、とか、もう、とにかく元気いっぱいでかわいらしい場面がたくさん(๑'ᴗ'๑)輝雄さんもとっても楽しそうに演じているように見えて、それがまた観ているほうにも伝わって楽しませてくれますヾ(o´∀`o)ノ(女体渦巻島から半年でここまできたか!っていうw)

 

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そして、三原さんも啖呵をきった初登場シーンは、和服姿がとても似合っていてステキ。男勝りの威勢の良さでかっこよくその場を仕切ったかと思うと、千之助が戻ってくると娘らしい雰囲気に。千之助と喧嘩になって桜組の庭の池に落っこちてしまった竜二と、雨戸にもたれながら

特攻機、縁側から撃墜されたのね」

「不時着だよ」

と会話しているシーンは、大人の雰囲気もありながらとってもチャーミング(我ながら適切な表現のできない語彙力のなさが悲しい。。。)

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土橋組がかつぎだした神輿の上にストリッパーが乗っていると聞いて、対抗するようにさらしに鉢巻き姿で着物の裾をたくし上げて神輿にのってでてきた珠美ちゃんには爆笑してしまいましたがw(もう、ストーリー関係なしwまたここのシーンがやけに長いんだw)石井監督のサービス精神に必死にこたえる三原さんがまたよかったり( ̄∇ ̄)

 

かわいくてかっこいい二人のシーンでとくにいいなーと思ったのがトップの画像にした場面。千之助と喧嘩になって桜組を出てきた竜二の後を追って、大学進学の費用をあらためて渡そうとする珠美と、助けてやったのはお礼してほしいからじゃないという竜二。「だれがあんたみたいなフーテンに助けてくれって言った!?」と喧嘩になります。売り言葉に買い言葉、でも結局、珠美は雄太郎の家へ竜二を預け、竜二も言われるがまま世話になることにします。竜二とのやりとりは"意識しあってるのに素直になれない二人”という王道ラブコメのテイストです(やっぱり任侠モノじゃないな)(〃'▽'〃) 石井監督作品の二人のコンビは「セクシー地帯」がとってもステキでこれが一番かな、と思っていたんですが、キャラクターのかわいらしさと格好良さ、意地を張りながらやっぱり好き、という二人の関係性とか、「女王蜂と大学の竜」の二人はさらに上か!と思いました(๑'ᴗ'๑)

 

主演の二人だけではなく、これが初の現代劇への出演となったという(2作目のようです)アラカンさんの有刺鉄線を身体に巻き付けた体当たりの殺陣や、珠美を慕う美耶子と竜二を慕う正一の恋バナ(それぞれ演じる万里昌代さんと浅見比呂志さんもまたキュート!)とか、作り手のパワーが伝わってくるようなかわいくて楽しいシーンが盛りだくさんでした!先週観た「青春残酷物語」も同じ1960年の作品。松竹ヌーヴェルバーグより明るく単純明快な新東宝作品のほうが私の好みにあっているようですw

なお、石井作品常連の天知さんだけ大した台詞も見せ場もないまま退場してしまい、これがきっかけで天知さんが石井作品に出なくなったらしいのですが、いやー、それも納得の扱いでした(^-^;)「黄線地帯」のあとにこれってなぁ、っていう(^-^;)

 

【その他あれやこれと・・・】

今作も「女体渦巻島」と同じく、音楽は渡辺宙明さん。映画の導入はトラックとその荷台に三国人連盟の連中が大勢乗って押しかけてくるところから始まるのですが、ここでは管楽器の音が効いた大迫力の音楽。一方、竜二や珠美が暴れ回るシーンはなんだかちょっとコミカルで人情モノっぽい音楽になります。この対比が印象的。任侠モノとしてのアクションと、青春映画かラブコメかというようなお話と、観ている側のスイッチを音楽にあわせて切り替えてくれました。

 アクションシーンも印象的。冒頭の三国人連盟がトラックで乗り込んでくるところは迫力があって、観客は彼らに乗り込まれてくる側の視点を与えられた感じなんですが、その他の場面では上からのカメラの視点や時代劇の型をみているような立ち回りで第三者的な視点になり、なんだかとっても不思議な感じで面白かったです。(問題はクライマックスの対決シーンで服装で三国人連盟と関東桜組の見分けが全くつかなくて、竜二以外のとこはどっちがとうなってるのか全然分からなかったことか(^-^;))

 

そして散々書いているのに最後にまた書くw「女体渦巻島」から三作目の吉田輝雄はますますカッコよくなっておりました(๑'ᴗ'๑)軍服のハイウエストなズボンにショートブーツ、パイル地っぽい白シャツ、軍帽という出で立ちの前半はとくに精悍な顔立ちとスラッとしたスタイルが際立っていてめちゃカッコよく!それでなおかつ元気いっぱいでちょっとコミカルなシーンもあって、観ながら「何これ、かわいい!」を連発してしまいましたwもうほんと(依然として聴き取り辛い台詞をのぞいては!?)言うことなしの、吉田輝雄の魅力を集中した、満足の一作でありましたヾ(o´∀`o)ノ