T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

黒澤明監督「羅生門」

人間の本性ってどっちなんだろう。 

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【映画についての備忘録その10】

黒澤明監督×三船敏郎主演 「羅生門」(1950年)

平安時代、朽ち果てた羅生門の下。旅法師(千秋実)と杣売り(志村喬)が呆然と座り込んでいる。
そこへ雨宿りをしに下男(上田吉二郎)がやってくる。二人は、下男相手に自分たちが経験した奇妙な話を語り始める。
京の都で悪名高き盗賊多襄丸(三船敏郎)が山中で侍夫婦の妻(京マチ子)を襲い、夫(森雅之)を殺害したという。
だが、検非違使による調査が始まると、盗賊と妻の証言、はまったく異なっていた…。

 

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超・超有名作品ですし、詳しいストーリーとか解説とかは他の方がきっといっぱい書いておられると思うので・・・。感想をツラツラと、まさに備忘録として。

 

ここまで1960年代の作品を観てきてましたが、一気にさかのぼって1950年。古い邦画初心者、初・黒澤明、初・三船敏郎

 

まず、のっけから羅生門のセットに圧倒されました。全編通してセットらしいセットはこの羅生門だけなんですが、ほんとに平安時代羅生門が目の前にど~んと出てきたのかなっていう感じ(ほんとの羅生門知らないけど)。かつては威容をほこっていたであろうその門が、都の衰退とともに、門扉がやぶれ、屋根が崩れている姿がこの映画全体の雰囲気を体現しています。華やかに飾られているのは表向きだけ、人の真の姿なんてこんなモノだ、とでも言いたげ。

 

羅生門はひどい雨の中にたたずんでいて、鬱々とした雰囲気。そこで旅法師と杣売りが話す多襄丸の話は夏の暑い日射しの中での出来事。白黒映画ですが、それがかえって日射しのきつさを露わにして、うだるような暑さであることが伝わってきます。そしてこの暑さと日射しが人間性の底のほうの何かドロドロしたもの、決してキレイではない何かを一緒にあぶり出している感じ。こんなクソ暑いときに畏まってらんねぇぞ、みたいな。んでもって、それが三船敏郎によって輪をかけて伝わってくるんですね。

 

初・三船敏郎。いやー、もう、「すごいな、この人😲」って思った俳優さんでした!熱演とかそういうんじゃなくて、ほんとに多襄丸がそこにいるみたい。演技を見てるって感じがしませんでした。

 

あともう一つ印象的だったのが、登場人物が山の中をひたすら歩いてるシーンがよくでてくるんですが、そこの躍動感。イキイキしています。ほんと、ただ歩いてるだけなんですが、ズンズン先にすすむその先に何が出てくるのかとか、それを思って今どういう心境でこの人物が歩いているのかとか、ひたすら歩くだけのシーンでそれを観てる側に想像させて面白かったです。

 

映画は基本的に人のキレイでない面、「人間は結局自分が一番大事なんだ」っていう方向で話が進むのに、最後は自分以外の人間に救いの手を差し伸べる、誰かを大切にする、やっぱり人を信じたくなるようなエピソードで締めくくられるます。黒澤監督が言いたかったのはきっとこの最後のシーンのはず、と救われた気持ちで映画を観終えることができました。