石井輝男監督「網走番外地~南国の対決 」
返還前の沖縄の風景を楽しみ、よく喋る高倉健に驚いた。
【映画についての備忘録その5】
石井輝男監督×高倉健主演「網走番外地~南国の対決 」(1966年)
竜神一家のために命を張って、網走刑務所に送り込まれた橘真一(高倉健)は、出所の日に先代親分が沖縄で事故死したことを知った。
何か裏がありそうだ、そう考えた橘は出所した自分を出迎えた大槻(田中邦衛)と一緒に沖縄へ。その途中の船で、橘は母を探して沖縄へ渡る少年・一郎(町田政則)と、先代親分の後を継いだ関森(沢彰謙)に雇われた殺し屋・南(吉田輝雄)と出会う。
やがて沖縄へ着いた橘は、関森が豪田と手を結んで、先代親分と関係の深ったギボ建設を潰そうとしていることを知った。
橘はギボ建設に義理立てして関森の企てを阻み、そして、先代親分の死の真相に迫っていく・・・
U-nextの配信で観ました。網走なのに南国?とかいうのはおいといて。。。
網走番外地シリーズ6作目。なんで6作目から取り上げるかというと、本作が私の初・網走番外地&初・石井作品だから。で、なんで6作目から観てるのかと言えば、そりゃ、吉田輝雄が出てくるからでして。これ以降何作か観ていますが、「健さんのライバル的立ち位置の役が誰か」を基準に順番にピックアップしているため、6→8→7→3→4(3と4は杉浦直樹さん)という、めちゃくちゃな順番です。
ただし、「神出鬼没の鬼虎(アラカン=嵐寛寿郎)」問題について自分の中でクリアできれば、というか、それを楽しめれば、順番は関係なく楽しめます。逆に「あ、なんかそういうのもありな映画なのね」っていうのがダメな人には向いてないかもしれませんw鬼虎さんは007における、Qの秘密兵器みたいな感じ。
上のようにストーリーは書きましたが、ぶっちゃけ、ストーリーというよりは、それぞれの個性たっぷりの登場人物(怪しい関西弁の調子のいい田中邦衛、めちゃめちゃかわいい大原麗子、千葉真一と由利徹の漫才のような掛け合い(千葉さんはもちろんアクションも!)、そして!キザな吉田輝雄)の見せ場と返還前の沖縄の風情を楽しみながら観てたら終わってた映画、という感じです。
美しい沖縄の海。あちこちに走ってるアメ車。守礼門の前でのエイサー。伝統漁船のレース、ハーリー。とっても印象深くとらえられています。
で、何より驚いたのが、渋くない、というかよく喋る高倉健。健さんの映画は「ブラックレイン」と「ミスター・ベースボール」くらいしか観たことはなかったのですが、まぁ、それでも「=寡黙な渋い男」のイメージ。が、健さんはパスポートを船で出会った少年にすられて入管で足止めをくらって、大槻と一緒に慌てふためく茶番劇(by 殺し屋・南)。南と船上で直接対決、のはずが、橘の男気に惚れていた南と殴り合う芝居をして関森の目を欺く、が、芝居なのにほんとに殴られてしまい、「芝居じゃなかったのかよ!」とキレて南と本気の殴り合いに発展してしまったり。コミカルなパートも受け持ち、よくしゃべります。こんな高倉健があったのか、と。
1966年度興行収入第 3位、ということのようですが、本当に、難しいこと考えずに娯楽として楽しむ映画、だと思います。石井監督はカルト映画の王様、みたいに言われるようですが、これ、結構疑問です。カルト映画って一部の人が楽しむ映画、って感じだと思いますが、そんな人が興行収入第 3位(ってか、同じ年に公開された 「網走番外地 大雪原の対決」が同年の1位だそうです)を撮る人がカルト?っていうね。稀代のヒットメーカーというほうが正しいのではないかなぁ、と。「へりくつこねないで皆が楽しめる映画を作ることに徹した人」なのだと思います。
最後に、我らが(?)吉田輝雄。 健さんもTシャツ1枚で過ごす暑い沖縄で、前半は黒のスーツにネクタイで、船上の喧嘩芝居の後の再登場では白のスーツにネクタイで登場します。黒のスーツ着て「暑い、暑い」とか言いつつ、決して着崩しませんw涼やかですw スタイル良すぎて、結婚式でもないのに白のスーツも違和感がありませんw 出番はそう多くないのに、印象に残る、素敵な殺し屋・南さんなのでした。
健さんはTシャツ1枚なんだよな~。暑いもんな、そりゃ。
白いスーツも似合います。さすがに黒いのは暑かったかw