T’s Line blog-映画についての備忘録-

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

石井輝男監督「殺し屋人別帳」

 お兄様たちがカッコイイ映画。 

 

殺し屋人別帳 [DVD]

殺し屋人別帳 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2017/08/09
  • メディア: DVD
 

 


【映画についての備忘録その75】

石井輝男監督×渡瀬恒彦主演「殺し屋人別帳」(1970年)

 

 

浦波興業会頭・浦波(沢彰謙)は殺し屋の黒岩(田崎潤)と宇野木(小池朝雄)に金を積んで、福岡を縄張りとする組の組長を殺害させ、北九州一帯を傘下に修めていく。残るは長崎の竜神一家のみ。竜神一家の二代目・統一(吉田輝雄)がまだ若いこともあり、浦波はこれを自分で片を付ければよいと考え、用済みの二人を消そうとする。しかし、逆に黒岩と宇野木に射殺される。さらに黒岩は相棒の宇野木をも殺し、浦波の縄張りを手中におさめ黒岩組と改称した。

流れ者の真一(渡瀬恒彦)が長崎に現われたのは、黒岩組が竜神一家を潰そうとこの地に乗り込んで来たおりだった。ある日、真一は長崎港の岸壁で車に接触して転倒した松葉杖の娘ナオミを介抱した。この光景に感動した黒岩の娘ミッチーの世話で、真一は黒岩組の客分になった。同じころ、モンマルトルの鉄(佐藤允)も黒岩組の客人となる。

竜神一家は統一の父親・先代の遺言を守り、ドスに封印をかけている。黒岩組の妨害を受けながら、竜神海運は堅気として長崎の海運業者たちを守ろうと、木口(中谷一郎)や秀(荒木一郎)は統一を支えていた。しかし、黒岩組が荷上げ作業妨害作戦に出た。苦境に立つ統一。一気に竜神一家をつぶそうと、黒岩は一切を賽の目で勝負をしようと持ちかけるが…。

 

 

輝雄さんのファンになったばかりの頃、すぐにTSUTAYAでレンタルして観た映画。その後、東映チャンネルでの放送も鑑賞し、今回、石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷での上映で初めて大きなスクリーンで観られたので備忘録を書くことにしました。初めて見てから備忘録を書くまで時間がかかってるのは観てるとちょっと複雑な心境になってしまうからでして。

 

 

さて、まずは見ていただきたい、このポスターの惹句。「東映秘蔵っ子2大新人が競う殺しのアクション!」…競ってなかったし!

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渡瀬恒彦さんのデビュー作で、この惹句からも想像できるとおり、渡瀬さん(と、伊吹吾郎さん)を売り出したいから企画された映画のようです。映画のストーリーは「網走番外地 望郷編」をなぞっていて、主人公の名前は真一だし、舞台は長崎だし。渡瀬さんを健さん的に売り出したい、という思惑が分かります。

なのに、映画見終わった印象は「吉田輝雄佐藤允中谷一郎がカッコよかった映画」。若い二人じゃなくて、お兄様たちがカッコいい映画なのでありました(あとでちゃんと思い出すと、渡瀬さんにも伊吹さんにも見せ場はあるんだけど、お兄様たちがかっこよいせいで印象が薄いw)。

 

 

 

モンマルトルの鉄、佐藤允。白いスーツに黒のマント、口笛で”フランシーヌの場合”を吹きながら登場し、会話にフランス語を挟んでくるというとてもキザなキャラクター(「網走番外地 望郷編」の杉浦直樹さんの役みたいな感じね)。黒岩組にわらじを脱いでいても、自身のなかの”正義”みたいなものは曲げず、スマートにナオミや木口の苦境に手をさしのべる。しかし、最後は黒岩組の客人としての恩義を晴らすべく、真一との勝負を選ぶ。

 

木口、中谷一郎。統一の心の内をよく理解して、陰に日向にしっかりと支える男。黒岩組から因縁をつけられ、背中の彫りものが気にくわないと言われて、それならばと、ライターを差し出して「消してくれ」という時のかっこよさと言ったら。若い者にも慕われ、黒岩組と喧嘩になって先代に破門された詩郎(伊吹吾郎)も頼りにする男。

 

竜神統一、吉田輝雄。父親の遺言を守って、堅気として竜神海運の舵取りをし、長崎の他の海運業者を黒岩組から守るため厳しい仕事も引き受ける。竜神一家のシマを狙う黒岩の策略で賽の目で決着をつけようと誘い出されるが、その裏を読み取ってあえて黒岩の用意した賭場へ出向き、八百長を見抜いてシマを守る。黒岩組の横暴にも耐え続けるが、木口が犠牲になったことでついに封印していたドスを手にし、黒岩組との決闘に挑む。まさに任侠。

 

と、いった次第。お兄様たちだけじゃなくて、「網走番外地」と同じく鬼虎として出てきちゃうアラカンさんの立ち回り(ポスターにある“子守唄を聞くと人を斬りたくなる”とかいうの、鬼虎さんのことだったしwしかもこの子守唄、「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」のあの子守唄なのよ)、悪役の田崎潤さんの潔い死に様と、おじさま?おじいさま?達もそれぞれ素敵で印象的です。

 

 

なかでも、輝雄さん演じる統一はやっぱり、というべきか、かっこいいところをかっさらっていきます。賭場の緊迫した場面でのやりとり、黒岩組との多勢に無勢の決闘。とくに、銃の弾が飛び交うなかで黒岩にドス一本で迫っていく決闘のクライマックスなんて、この映画の中で最高の見せ場。このときの、黒岩目線でとらえた、迫ってくる統一の鬼気迫る表情は、美しいわ渋いわで、スクリーンに引き込まれます。もうね、これもすごいハンサムなの!!2年ほどの異常性愛路線の作品が続いている間に重ねた年齢とそれにともなってあらたに引き出された魅力―渋さの増したかっこよさと色気とでも言いましょうか―が、耐え忍ぶ統一を通して現れていて、その前に撮っていた2作の石井監督の任侠映画(「決着(おとしまえ)」「続・決着(おとしまえ)」)とは違った侠気で魅せてくれます。

 

 

と、いうわけで石井監督は今作でもとてもハンサムに輝雄さんをフィルムにおさめてくれているのですが、異常性愛路線をへて、これで輝雄×輝男の蜜月が終わってしまうという作品でもあります。先日のラピュタ阿佐ヶ谷でのトークイベントでもそのことをお話されていますが、統一のかっこよさにほれぼれしながら、撮影当時の輝雄さんの心境などを想像してしまって、観ていて複雑な気持ちもよぎったり(上で書いたのはそういうことで)。再びお二人が「無頼平野」で組むまで25年を要します。

 

kinakossu.hateblo.jp

 

 

殺し屋人別帳」のあとに、私が輝雄さんを知るきっかけとなったテレビドラマ「ゴールドアイ」があって、「ゴールドアイ」ではさらに渋く、大人の男のかっこよさ(後でこれで34歳だったと分かった時の衝撃と言ったら!)が増していて、遊び心みたいな大人の余裕も感じさせてくれます。だから、今作のあともっと二人の映画があったら、年齢を重ねていく輝雄さんの姿をかっこよく撮ってくれていたに違いない、と思ったり。

 

 

そうそう、この映画、最後に渡瀬さんが歌う映画の主題歌が流れます。真一が鉄と勝負して、傷つきながらナオミとの約束の船に乗ろうと港へと向かうシーン。本来ならとても余韻の残るシーンなのですが、渡瀬さんの決して上手いとは言えない歌で色々台無しになっている感wなんでそこに歌入れちゃうかな!輝雄さんを格好良く撮ることには注意を払いつつ、主演の扱いはぞんざいな石井監督なのでありました(笑)

 

石井輝男監督「神火101 殺しの用心棒」

 ジェームズ・ボンドが主役・・・じゃない!! 

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【映画についての備忘録その74】

石井輝男監督×竹脇無我主演「神火101 殺しの用心棒」(1966年)

 

香港ー偽札偽造組織がアジトにしているホテルの一室。組織の首領格の一人が電話を受け、秘密警察・神火が新たなエージェント・101(吉田輝雄)を香港に送り込んできたとの連絡を受ける。その電話の途中、部屋に盗聴器が仕掛けられたのに気づく偽造組織。神火はそれを察してアジトに乗り込み逮捕を試みるが、互いに大きな犠牲を払う。しかし、肝心の盗聴の記録となったテープは行方不明。そのテープは神火に追われた組織の一人が息絶えたナイトクラブの前の鉢植えの中に隠されていたのだった。

神火の手にも組織の手にもわたらないテープ。それを見つけたのはクラブで働く阿蘭(吉村実子)だった。阿蘭は自分の働くクラブの前で起きた殺人事件とそのテープに関連があるのではないかと考え、恋人のタンレイ(竹脇無我)にそのテープの存在を伝える。テープを聞き、偽造組織の存在と神火101の存在を知ったタンレイ。水上生活者・蛋民のボス(嵐寛寿郎)の手を借りながら、暗躍する悪の存在を追求することにする―。

 

 

 

石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 の鑑賞記録、まだまだ続きます。通いすぎw3回券何回買うねん。

 

石井監督が松竹で撮った3本の、3本目。1本目と同じく竹脇無我さんの主演。ポスター画像でもわかりますが香港とマカオでロケをした作品。「日本映画の輸出に貢献する」とかいう趣旨の今まで見たことない決意表明のテロップから映画が始まります。

 

さて、このタイトル「007は殺しの番号」(「007 ドクター・ノオ」の公開時のタイトル)とか「007 危機一発」(「007 ロシアより愛を込めて」の公開時のタイトル)とかみたいですよね。ね!ね!・・・ね!なんなら007シリーズの各タイトル、このルールですし。こりゃ、敏腕エージェント・神火101の大活躍だね!って思うじゃないですか!んで、竹脇無我主演ですから、竹脇無我さんが101だと思うじゃないですか!!…じゃなかったんだよぉ!101は吉田輝雄で、101は主役じゃないんだよぉ。+゚(*ノ∀`)輝雄さんはまさに、ジェームズ・ボンドのごとし、だったのですが(≧∇≦*)

 

 

タイトルと構成の不一致をはじめ、いろいろとあって、モヤモヤがつきまとうこの映画(笑)

無我さん(どうしてもファーストネームで書きたくなるお名前)は101じゃないんだったら何なのか?というと、よく分からない。国の諜報員というわけではない。警察官でもない。正義を貫くジャーナリストとかいうわけでもない。何のために我が身を危険にさらして秘密を探っているのか分からない。そして、後半になって明かされる、「国際冒険家」とかいうよく分からない分類。ん??何それ??とりあえず、悪には与しない、正義の人なのは分かったけど、我が身を危険にさらす趣味のある人?

タンレイは女性にモテて、切れ者で、偽造組織の手先(菅原文太さん)にも対等に渡り合う腕力もある(何なら途中、101と殴り合いになったりしますが、負けません)。黒いスーツでナイトクラブにあらわれ、ルーレットに勝ち、香港の夜の街をオープンカーで走ったり、彼女との甘いシーンもあるしで、裏も表も知った大人の男。この人物像は完全にジェームズ・ボンド意識してますやん。でも、演じている無我さんはそういう振る舞いをするにはどうにもまだ若くて大人の色っぽさが足りないし、榊原伊織のごとき生真面目さと表の世界でまっとうに生きてる人感が醸し出されていて、残念ながら、しっくりこない。「チャオ!」とか言っちゃうけど、全然似合ってないし(^◇^;)「日本ゼロ地帯 夜を狙え」の時もそうでしたが、演じている役に求められるもの(というか石井作品?)と個性が違いすぎない?しかも不運なことに(!?)神火101が輝雄さんなので、竹脇無我さんの役のあってない具合が目立つ。

タイトルロールが主役じゃない、国際冒険家というよく分からないお仕事、そして、この主演俳優と役との不一致。モヤモヤするぅ^_^;

 

加えて、ボンドガール的な立ち位置の阿蘭。キャラクター的にはかなりかわいいのですが(お別れのキスをせがむような女の子ですし)、吉村実子さんが、すみません、あんまり似合ってない、というか美人とは言い難いのもモヤモヤ(^◇^;)ボンドガールなのにこれはダメでしょ、っていうσ(^_^;バニーガール姿は可愛かったけどね。

 

 

さて、そんななか?神火101=吉田輝雄。はまりすぎ。似合いすぎ。ド派手なアクションと女の子とのイチャイチャは国際冒険家に譲りますが(というか、石井監督は輝雄さんに女の子とのそういうシーンは演じさせないですよね。異常性愛路線はあれだけど、それでもだいぶ抑えめにしている気がする。いつも硬派ないい男なんですよね)、まさに007、敏腕エージェントといった佇まい(〃ω〃)出番は多くはないけど、この年の輝雄さんのかっこよさを思う存分愛でることができます(〃ω〃) タキシード着てナイトクラブに現れるシーンとか、完全にジェームズ・ボンド。惚れ惚れします(いつもしてるとかいうツッコミはなしで)。単独行動のスパイなので、全然喋りませんが(台詞あるシーン、すごい後半なの!めっちゃ待たされるの!)同じ場所にいる黒いスーツ姿の無我さん、主役なのに完全に割り食ってます。神火101、デキる男感、いい男感、醸しだしすぎ(≧∇≦*)国際冒険家と二人で偽造組織を追いつめたときの銃撃戦も、スラリとした長身と長い手足で華麗にこなし、白い砂浜で銃を撃つシーンとかめちゃめちゃ絵になる(≧∇≦*)黒幕の乗ったセスナを銃で撃って、何やら目的を達成したようなニヤリ、も様になる。

ジェームズ・ボンドのようなハンサムがそこにいて、しかもタイトルロール。なのに主役じゃないwおかしいってばw石井監督もほんとは神火101を主役にしたかったんじゃないかなぁ。だって明らかに神火101のほうがかっこいいんだもん!!

 

今回の備忘録、どんな映画なのか全く伝わらないw後で自分で見返したときにストーリーを思い出す助けになるんだろうか、これw内容を知りたくて読んだ方も、こんなんですみません(;^_^A

 

香港の街を駆け回るアクションやオープンカーで疾走するシーン、たくさんの船が係留された場所で暮らしている水上生活の人達、レパルス・ベイ(「女体渦巻島」で死ぬ間際に百合が信彦に話してた思い出の場所はここなのか!と思いましたw)やマカオの様子、まさかの黒幕と面白い要素もあったのですが、映画そのものについてはモヤモヤがつきまとって消化不良な感じだった、石井輝男監督の松竹3本目。アラカンさんとか大木実さんとか、いつもの俳優さんも出てくるし、一つ一つのアクションの面白さといった部分はありましたが、石井監督らしいテンポのよさや切れ味はあまり感じられませんでした。香港の漫画が原作、香港のキャスト・スタッフ大勢、といった環境では、石井監督も思うようにできなかったのかな?とか思ったり。。。

 

 

今回のラピュタ阿佐ヶ谷の特集で、1966年の石井監督が松竹で撮った3本の輝雄×輝男作品をすべて観ることができました(ラピュタ阿佐ヶ谷さん、ありがとうございますー)!主演に竹脇無我さん、宍戸錠さんと普段起用しない俳優さんが使われたことで、かえって、石井作品における輝雄さんの存在感とその世界観の体現ぶり、また、石井監督作品だからこそ引き出される輝雄さんの魅力をあらためて感じたり。輝雄を1番かっこよく撮るのは輝男なのであります('◇')ゞ(持論)。松竹3作…輝雄さんの役はどれもテイストが異なっていて、そしてどれもかっこよかったなぁ(//∇//)やっぱり1966年の吉田輝雄は最高だヾ(≧∇≦)

これで、あと観られていない輝雄×輝男の映画は「恋愛ズバリ講座」のみ(あと、テレビで火サスで石井監督が撮ったものに輝雄さんが出演されているものがあるようですが。「おんな怨霊船」は鑑賞済み)。一気に観られて嬉しい反面、「見たことがない作品が観られる」楽しみがなくなってちょっとさみしい気分だったりσ(^_^;(わかっていただけますかね、この感じw)

 

そして、ほんとにこの3作、ソフト化してください!!お願い、松竹さん!!

 

石井輝男監督「霧と影」

あと15分長かったら、どんな映画になっただろう。

 

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【映画についての備忘録その73】

石井輝男監督×丹波哲郎主演「霧と影」(1961年)

 

能登半島の青蛾小学校の教員笠原が観音崖の上から遂落死を遂げた。毎朝新聞の記者・小宮(丹波哲郎)は、笠原とその妻・雪子とは学生時代からの親友で、地方版に載った笠原の死亡記事を不審に思う。高所恐怖症だった笠原が危険な断崖の上を歩くのは不自然だと感じたからだ。
笠原は事件のその日、猿谷郷に住む長期欠席児童宇田清の家庭訪問に行ったまま消息を断ったのだという。猿谷郷は宇田本家と分家、矢田本家と分家、という、たった4戸からなる貧しい集落で、清の叔父甚平(安井昌二)はその集落を嫌って東京へ出たという。
小宮は地方通信員の坂根(梅宮辰夫)と協力して、笠原の足取りを追った。その結果、笠原はその日、富山の薬売りと一緒に猿谷郷から山を下ったという情報を得る。
その薬売りは松本貞次郎という名で、もう一人の連れの男と東京へ発ったことも分った。また、「紳士録を作る」といって宇田甚平の身元調査をしている、興信所の井関と名乗る得体の知れない男の動きも知った。
東京へ帰った小宮は、デスクと緊密な連絡をとりながら、井関、宇田甚平の身辺調査にあたるが…。

 

 

今回も 石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 での鑑賞記録。

3回目の「大悪党作戦」の鑑賞(行き過ぎw)のあと、観てきました。水上勉原作×石井輝男監督。そしてはからずも梅宮辰夫さん追悼。

 

 

原作を読んだことはないのですが、それでも「これは上映時間83分じゃ足らないだろ…」という映画でした。水上勉原作の映画は「はなれ瞽女おりん」を観ていて、その内容と、本作の設定を思うと、せめて100分くらいにしておくれ、と😅

 

なぜかというと、登場人物が多いのと、猿谷郷の設定がおもしろかったから。

 

笠原は東京の大学を出たのに能登で教員をしているという、少し変わった人物だし、小宮と雪子には、それぞれはっきりとは言わないけれど何かの思いがあったんじゃないかと思えるような表情や空気。笠原の教員生活はどんな風だったのかな?とか、宇田甚平が猿谷郷を出る決意をした経緯(貧しかったことは語られるけど)、一人をのぞいて名前しか出てこない矢田本家の人とか、学校に来られない清はどんな風に過ごしてるのかとか、もうとにかく、気になる人物が多過ぎ!最終盤に明かされる井関の正体も、分かるとまた、そちらのお家の人達はどんな思いだったのか!?とか。少ししか出てこない人達の、背景がめちゃめちゃ深そうなんですよね。でも、83分なのでそういうとこはバッサリ😅そんでもって、人はやたらと出てくるから、もう、誰が誰やら整理しながら観るのが大変σ(^_^;原作読んでから観てたらもう少し違ったかなぁ。

 

そして猿谷郷。たった4軒の、しかも里のほうとは離れた集落。清のお父さんは気が触れてしまって土蔵に閉じ込められてるし、奥さんと父親がくっついちゃってるし。貧しくて子供が学校に行けない(父親の代わりに働き手にされているため)ほど、それでたった4軒とかもう、中にいたら絶望的な気分になりそう。そういう環境は別としても、小さな集落がどう過ごしてるのか、っていう人間関係の密度(矢田の家とはどういう風に関わってるのか?とか甚平と父親の関係は?とか)こっちもすごく気になる!でも83分じゃそこまではむり(^◇^;)っていう感じ。

 

小宮の勤める毎朝新聞の記者達の様子(電話がモリモリで、デスクがさばき、記者達がかけまわる。そして、鉛筆をやたら鼻に突っ込んじゃう面白い人がいるのは石井監督的(笑))はテンポよくて面白かったので、それとの対比で、その辺の人間関係をもう少しじっくり描いていたら、どれだげ面白かったのだろうか!?と。そんなわけで見出し。今回は作品の時間の短さ、テンポの良さで“石井監督らしいね”というよりはあと15分ほど長く“石井監督がそこを描いていたら、いったいどんな風に物語にし、どんな映画になっていたのかな!?”という興味がわいた作品でした。

 

そして梅宮辰夫さん。田舎の通信員で雪子の妹・良子に恋心を抱く、爽やか好青年(驚)。これ以前に私が観た最も若い梅宮さんは「決着」(1967年)で、この時はすでに、私の知ってる梅宮さん(「スクールウォーズ」のラーメン屋?中華料理屋?の主人。ぽっちゃりしたオジサン)だったので、本作を観て、爽やかさにビックリ。「決着」で硬派なほうに軌道修正させようとした、というのに納得なのでした。

丹波さんは「ホテル」の丹波さんを思い出し(「Gメン」の丹波さんは知らないのでσ(^_^;)、とっても似合っておられました!

 

そうそう、亀石征一郞さんが出ていたんですけど(オープニングのクレジットにも名前があった)、結局どこにいるか気付くこともなく、データベースみて井関役だったことを知りましたw次観た時は気をつけてみます(笑)

 

 

(あ、矢田本家って言ってたと思うんですが、確認できる資料が検索してもひっかからなかったので、違ってたらすみませんσ(^_^;原作読んでみよう。)

 

石井輝男監督「大悪党作戦」

競馬。雪山。ため息が出るいいオトコ。

 

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サインしていただいた「大悪党作戦」のスチル写真です。



 

【映画についての備忘録その72】

石井輝男監督×吉田輝雄宍戸錠主演「大悪党作戦」(1966年)

 

勝負は競馬の最終レースの2分間。売上金の1億を奪う―。

ボスの郡(嵐寛寿郎)が計画をたて、轟一郎(高英男)、その弟分の次郎(アントニオ古賀)南(吉田輝雄)、角(待田京介)、真弓(三原葉子)、郡の若い愛人・リカ(真理明美)らによって、実行される。が、その決行前日、下見にきた轟は見知らぬ男に突然顔を切りつけられ、大けがをする。筧(宍戸錠)というその男は、自分がその計画に加わるために、あえて轟を襲ったのだ。顔に怪我をおった男が仲間にいては目立ってすぐにつかまってしまう。代わりの人間が必要なはず・・・。郡は筧の魂胆とその裏にいるであろう仲間たちの存在に感づいてはいたが、計画を実行するため、筧を仲間に入れることにする。ただし、計画の詳細は教えないまま。筧もまた、その腹を探るために郡が仕向けたリカの誘惑にのるでもなく、逆に、リカには金を二人で山分けしないか、と持ちかける。そして、郡の読み通り、筧は仲間の槙(安部徹)や工藤(諸角啓二郎)たちにこの計画を伝えるのだった。

そして決行の日。大観衆で熱狂している競馬場の馬券売り場の中へ、警備員に化けた角と、事務員真弓の手引きで筧と南が押し入った。最終レースの2分の間に袋いっぱいに1万円札を詰め込む。角と真弓がその間に逃げる。2分きっかり、南は外で待っていた次郎に袋を渡す。次郎はその袋を運び屋に渡す。そして、別に用意していた千円札をバラまいて、これに殺倒する群衆の混乱を利用して、運び屋は無事に場外に袋を持ち出し、南と筧も場外へ。その袋は最後は角の恋人路子(清水まゆみ)に渡り、路子は貸別荘で郡とたちと落ち合い、金を渡す手はずだった。だが路子はホテルへ向かわず恋人の角と落ち合う。そして角と路子は奪った金を二人で山分けするつもりで、立山連峰へ逃げ込む。金を取り返そうと追う郡たちと、その金を横からかっさらうつもりの筧、そして筧の後を追う槙。大金は誰の手に・・・!?

 

 

石井監督作品の感想が続きます(゜∀゜) まぁ、石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 に通いまくってるからそうなるんですけどね(笑)

 

石井監督が松竹で撮った2本目、「大悪党作戦」。前作「日本ゼロ地帯 夜を狙え」とは打って変わって、スタイリッシュなクライムムービー。たった2分間の大仕事、大金を巡っての雪山でのチェイス&アクション、そして、文句なしのいい男。最初から最後までハラハラドキドキが散りばめられ、最後に予想外の結末と胸が熱くなる展開が待っている、最高に楽しい映画でした。

 

 

ド迫力の競馬のレースからはじまるオープニングタイトル。八木正生さんの軽快なジャズっぽい音楽もはまって、お馬さんたちと一緒にストーリーもスピーディーに展開します。筧が轟を切りつけ、逃げ、追いかける南に捕まってチーム・アラカン(勝手に名付ける)の待つホテルへ。郡は筧が乗り込んできた裏に感づいて、大まかな計画を伝えるだけ。裏を探るために仕向けられたリカに誘いをかける筧。チーム・アラカンはどうやって競馬場から金を持ち出すのか?リカは郡を裏切るのか?そして筧とその仲間達はどうやって郡たちから大金を奪うつもりなのか?この映画の仕掛けの種が一気にばらまかれて、最初からワクワク!

 

 

作戦決行当日。レース開始のサイレンがなり、南の時計は4時ちょうど(筧の時計は3秒早いw)2分間の仕事の始まり。時計とレースと、やるべき仕事。時間との勝負のドキドキ。チーム・アラカンのメンバーは計画を立てるアラカンさんをリーダーに、それぞれ大事な役目を担っています。メンバー全員個性があって、役割があって、疎かにされてるキャラクターがいない。みんな手際よく仕事をすすめて、この2分間と、その後1億円を競馬場から持ち出すまで、瞬間瞬間で誰が写っていても楽しいです。

 

 

前半の競馬場を舞台にしたワクワクが終わると、次は金を巡っての立山でのチェイス。最初はゆっくりと。登山客の風情で列車に乗り、今にも崩れそうな吊り橋を渡る角と路子。同じ道をたどり追いかける郡、リカ、南、真弓、一郎、次郎、筧。ひたすらに山道を登る角たちと追いかける郡たち。この登って行く先、どこで二組がかち合うのか。こちらは郡たちの目線と歩くスピードに合わせて、一緒に追いかけていきます。途中立ち寄った山小屋で朝早く角と路子がたったことを知ると、険しい道行きに、郡だけを残して再びの行軍。そして、そこに槙たちが追いつくと、雪の残る美しい立山をとらえながら、三者で激しいチェイスと銃撃戦になります。雪山の斜面を走る角や筧、南たちを、地面スレスレと思えるような位置から見上げるように捉えていて、それが斜面を転げ落ちるようなスピードを感じさせます(あと、多分少し早回ししてるのもあるな)。そして、その映像がほんのりと白くなっていて、それが降り積もった雪がその激しさで舞いあげられてるように見え、追いかける側と逃げる側の高揚感みたいなものを体験させらているよう。体当たりのアクション。スタントなんかなしで役者がガチでやってるんだな、っていうのが分かるんですよね。壮大でスピーディーで、美しく、そしてカッコイイ。角以外の男達は雪山をスーツで駆け回ってるし、路子以外の女たちーリカと真弓はミニスカートで男達を追いかけてるし、リアルではあり得ないんだろうけど、これがめっちゃクールでめっちゃかわいいくて、いい!

 

この立山のシーンは、雪の部分と緑が目立っている部分があって、郡と離れてからは、両方が代わる代わる映し出されながらのチェイスが展開されます。この2つは画面のなかで役割分担しているように思え、緑の目立っている部分では三者が直接にぶつかり合うということがなくて、“次をどうするか”を考える、一時の安堵の場所・安全地帯のような役割。一方、銃撃戦や殴り合い、金と女の交換の駆け引きは雪の多く残る部分で展開されて、ここはいつ命を失うか分からない危険地帯、そんな感じに見えます。この役割分担が、最後に追いつめられた5人―南、轟、次郎、真弓、リカ―の結末として、南が残り、轟、次郎、真弓、リカは山を降りる、というシーンで、雪へ向かって再び歩き出す南の置かれた状況の絶望感とそこへあえて飛び込んでいくかっこよさと、緑のある麓へ向かっていく真弓たちへ抱く安堵感とがないまぜになった複雑な感情を観ている側が抱くという、すごい場面を作り上げています。

 

 

そして、競馬場でも雪山でも、ため息のでるようないい男、南。スラリとした長身に浅黒い精悍なマスクの超ハンサム(吉田輝雄ですからヾ(≧∇≦))。口数少なくクールだけど、情に厚く仲間思い。郡を信じ、轟を信じ、物静かに正確に仕事をこなす。いい男なのに女には興味がないと言って、心地いい言葉をかけたりはしないけれど、さりげなく優しくてそしてちょっと少年のような部分を残し、”母性愛をくすぐる”ような魅力を持っている。男の理想とする男と、女の理想とする男の両方を持ち合わせています。そして、最期は自分を犠牲にして仲間を助ける男気。白いスーツに白いコートで雪山を駆ける南の、雪に同化したような最期は、その心の美しさを表しているようで、ため息がでるようないい男(書きながら思い出して(。ノωノ)ってなるわw)。新東宝時代、若き吉田輝雄の真っ直ぐで、素直な雰囲気をとらえた石井監督は、そこに年齢を重ねて加わった渋さをのせて、さらにカッコよくカメラにとらえてくれているのであります(仲間を逃がすためにしんがりを務めて、雪山を銃を撃ちながら逃げるシーンがあるのですが、ライトがあてられるてるんだろうと思うけど、真っ白な雪山のなかに南さんが一人浮かび上がるように写し出されて、ここもすんごいカッコいいです(。ノωノ))。

 

 

と、輝雄さん@南のかっこよさを思う存分書いておいて(゜∀゜)この映画、日活の宍戸錠さんが他社出演作の第一作目として選んだ作品ということだそうです。が、ヒットメーカー・石井監督の作品、初の他社出演で主演、とかいう話題になる要素が多かったであろう作品ですが、宍戸錠さんの扱いはなかなかにひどいような気がします(笑)私は「肉体の門」しか見たことがないので、宍戸錠の個性とか良さが生きるのはどういう役、とかいうのは良く分からないのですが、まずもって、輝雄さんとW主演の位置なのに、ただひたすらにイヤな男でヒーロー的要素はなく(笑)そして何より、出番多い役で待田さんとのアクションの見せ場とか、色男っぽくリカを誘惑したり、なんてシーンも用意されているのに、その割に印象が・・・薄い!!(最後は「え?これでスクリーンから退場なの!?」っていう終わり方だし(笑))監督の愛情が感じられないっていうか。+゚(*ノ∀`)(ちょっと絡むだけの田中邦衛さんとか、無理やり役を作ってる感もあるw由利徹さんへの愛はすごい感じますw由利徹さんめちゃ笑わされるしw)

 

 

まぁ、でもこの扱いの酷さ(^_^;)が、石井監督お気に入りのキャストで揃えたと思われる、チーム・アラカンのメンバー―クールな切れものだけど弟分(次郎・アントニオ古賀さんも兄貴を慕ってついてくるピュアな感じが良かったです!)との絆を大切にする熱い男・轟(高さんがこの役に意外にもwハマっている!そしてアントニオ古賀さんのギターにあわせて歌うシーンがあるとかいうサービスも!)、待田さんの、頭の良い武闘派だけどどこか危険な感じのする角(最初の登場がシャワー浴びて上半身裸で出てくるんですが、素晴らしい肉体美w)、三原さん演じる真弓の天然の可愛らしさ、真理さんのリカの小悪魔的な美しさ、そしてもちろん!な輝雄さんと!―の魅力を引き立てていて、それはそれで良かったのかもwそうそう、南と真弓のシーンは、この二人、新東宝に戻ってきたのかな!?って思うような可愛らしさで、そこも石井監督の愛情を感じたりw相変わらず、輝雄さんは三原さんに振り回されるような役だしね(*´ω`*)

 

 

というわけで、ストーリーの面白さと映像の魅力と何よりいい男・南と、最初から最後まで楽しかった「大悪党作戦」。「日本ゼロ地帯 夜を狙え」と同じく、めちゃめちゃ観てみたかった松竹の輝男×輝雄作品は、期待以上に面白くて格好良くて。この特集でついに観られたことに感謝感謝、なのでした!(・・・松竹さん、DVDにしてよぉ!)

 

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石井輝男監督「リングの王者 栄光の世界」

 石井輝男ワールド、夜明け前。

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【映画についての備忘録その71】

石井輝男監督×宇津井健主演「リングの王者 栄光の世界」(1957年)

 

魚河岸の青年塚本新一郎(宇津井健)はかねて東洋新聞の記者・畑から拳闘界入りをすすめられていた。新一郎も拳闘の世界で勝負をしたいという思いはあったが、母志づや恋人の京子(池内淳子)の反対もあり、その一歩を踏み出せずにいた。しかし家の借金や足の悪い妹敏子の手術代を手に入れるため、新一郎は拳闘家になることを決心し、畑を訪れた。畑は銀座裏のバーに彼をつれて行き、元ボクサーの岩崎(中山昭二)にトレーナーを頼む。岩崎は一旦は断ったが、畑の情熱と新一郎の熱意に動かされてトレーナーを引き受けることにする。

クラブで岩崎を相手に猛練習を続ける新一郎。その才能の片鱗に、同じクラブでライト級の有力選手、三田村(細川俊夫)やその取り巻きからは疎まれるのであった。やがて新一郎は前座に出て派手なデビューをしたが岩崎や畑の祝をよそに京子と連れだって帰る姿に、畑は京子を訪ね拳闘に女は禁物だ、彼の将来のために暫らく遠去かってくれと頼む。京子の姿がみえなくなり新一郎は落胆するが、果されなかった自分の夢を彼に託す岩崎の指導は厳しく、新一郎もそれに答え、連戦連勝を重ねていく。

その頃、試合毎に観戦に現れる女がいた。キャバレーのマダム、ルリ子。彼女の誘惑に心ならずもひきづられて行く。岩崎はそんな新一郎にかつて女のために身を持ち崩した自分を見て忠告をするが、新一郎はだんだんとルリ子にのめり込んでいくのだった―。

 

 

 

 

石井輝男監督の監督デビュー作。そして「無頼平野」で岡田奈々さんが歌う「ジュテーム」がもともとはこの映画で歌われていた歌だと教えていただいて気になっていた作品。石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷 で観られる!と思って楽しみにしていたのですが、なんせ輝雄さんのトークイベントのあった日の、その前の上映回だったもので、映画への集中力はややかけ気味での鑑賞だったのは否めませんσ(^_^;

 

 

そんな状況で観た映画のほうは「やっぱり石井監督だね」よりも「やっぱり宇津井健だね」のイメージの作品でありましたw私にとっての宇津井健さんは”薄汚ねぇシンデレラ”(By 石立鉄男)をこっそりと助けに来る刑事(笑)品行方正、公明正大な真面目な大人。で、本作はそういう映画で、石井作品に抱くイメージよりも宇津井健さんに抱くイメージの映画。石井監督も元々は清水宏監督とかにつかれたりしてたわけですし、そういう系統の映画になっても不思議じゃないか。

 

メリーゴーランドに乗る宇津井健さん。デートで照れる宇津井健さん。池内淳子さんも「セクシー地帯」の時とは違って少しふっくらしていて純情な少女。最初から爽やかすぎて、石井輝男監督の映画を観ている気がしません。まだ若い宇津井健はふらっと道を外してしまったりもしますが、ちゃんと軌道修正して真っ当に生きて、最後は京子と元サヤにおさまり、そしてボクサーとして成功をおさめる。ファイトマネーで妹の足も手術ができて治り、素晴らしいハッピーエンド。よくまとまった、絵に描いたような青春映画。

 

 

石井監督のインタビューを読むと、プロデューサーの佐川さんがこの企画をもってきたんだけど、アクションなんてやったことないから監督をうけるかどうか渋った、なんて話があります。でも、三田村とのノンタイトルマッチはスピード感があって流石。この後にアクション映画でヒット作を作っていく才能がすでにこの時点で感じられるのでありました(細川さんのほうがボクサーの雰囲気があってかっこよかったなw)。

 

 

とかなんとか書きつつ、やっぱり印象度としては石井輝男監督より宇津井健さんなわけです(笑)というわけで見出し。このコンビでいくつか作品もあるのは知ってはいるのですが(「スーパージャイアンツ」はいつか観たいw)、やっぱり石井監督の作品のイメージからするとあまり結びつかない宇津井健さん。作品自体が石井監督の世界観ができあがる前という感じで、だから可能だった組み合わせなのかも、と思ったり。そりゃ、天知茂(天知さん、この映画にも出演しているんですけど台詞が殆どなくて見逃しそうになりますw)、吉田輝雄と主演俳優が変わっていくわけですわ。

 

 

そうそう、劇中で歌われた「ジュテーム」。キャバレーの男性歌手(旗照夫)が白い手袋をはめて(歌詞の通りですね)歌います。「無頼平野」のレビューシーンとは違ってしっとりと歌い上げる歌は、旗さんの歌声の魅力もあって、これもまたとっても素敵でありました。(旗照夫さんについてWikipediaを読んでいたら「おかあさんといっしょ」の初代レギュラー、と書いてあって、「どんな”おかあさんといっしょ”だったんだ!?」と思ったことも書いておきますw)

 

石井輝男監督「日本ゼロ地帯 夜を狙え」

 「地帯シリーズ」の世界には吉田輝雄がよく似合う。

 

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【映画についての備忘録その70】

石井輝男監督×竹脇無我主演「日本ゼロ地帯 夜を狙え」(1966年)

 

とあるクラブー衆木直也(竹脇無我)の目線の先には、美少女・弓子(真理明美)がいた。その様子をみていた令嬢風の女・ルミ(三原葉子)は、彼女を紹介しましょう、と声をかけてきた。警戒心を露わにした衆木に、代償はいらない、名刺さえもらえればいい、という。衆木の名刺の肩書きは東洋精機社長秘書。弓子に誘われ、二人は豪華なマシションで一夜を共にした。

翌日、ルミに呼びだされていった喫茶店で、衆木は弓子との情事が写された写真を見てがく然とする。ルミは、衆木の地位を利用して部課長以上のクラスの客を紹介してくれれば写真を他に発表しない、と脅迫した。弓子との一夜は、阿川(山茶花究)がボスを務める売春組織の罠であった。ルミは雑誌のモデルやダンサーを紹介してやるという。にわかには信じがたい衆木に、ルミは、今日の夜あるホテルで待つようにと指示をする。ホテルには人気のダンサー・朱美がやってきて、一夜を共にするのであった。

情事のあと、次の商談に訪れたのは橘(吉田輝雄)という男。その顔を見て、それがかつて姉・千代(香山美子)の恋人であった男だと気づく。戦争の激しくなるさなか、千代は貧しさのため、阿川の遊郭に売られていた。彼はその姉を愛し、遊郭から一度は連れ出してくれた男だった。しかし、それも半月も経たず連れ戻され、橘は学徒出陣で招集される。千代を思い続け、復員した橘は、千代の消息を知るため、アメリカ兵相手の売春組織を作り上げていた阿川の元を訪れる。新橋のガード下でアメリカ兵を客にとっていると言われた橘は、まさにその場所で娼婦姿でたっている千代を見つける。橘にその姿を見られた千代は「愛していたのは貴方だけだった」と言い残して、トラックの前へ駆けだし、その命を自ら絶つのだった―

 

 

 

 

ついに観れたー!「日本ゼロ地帯 夜を狙え」(石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷))。観たこともないのにスチル写真をこのブログのアイコンにしちゃってるくらいwすごく観たかった本作。石井輝男の世界を全開にし、その中で吉田輝雄が最高にカッコいいという、この上ない映画でした(・∀・)

 

 

肌を露わにしたダンサーとダンスフロアのめくるめくライトが交互にうつるタイトルバック。「地帯」とついているだけあって(!?)新東宝「地帯シリーズ」のごとく売春がテーマで、「女体渦巻島」とか「黄線地帯」のような、新東宝作品で観た石井監督らしさが全開の演出で始まります(こんなふうに思えるほどには石井作品を観てきたのだな、とか思ったり(笑))。真理明美さんのミステリアスなかわいさ、三原葉子さんのゴージャスな雰囲気。この映画の雰囲気を最初にしっかりと見せられ、観ている側はそこに入り込んでいきます。そしてその出だしで抱いた印象は間違っていなくて、田中邦衛さんや由利徹さん、待田京介さんなど東映で起用している俳優陣も使いながら、そこにあるのは同時期の「網走番外地」などとは違う世界でした。

 

話は1966年と戦中・戦後を行き来して進みます。

衆木は、実は関西の売春グループの一員(で、さらに実は…)で、あえて罠にかかり、阿川に近づくきっかけを探ります。そして、ルミの代わりに現れた橘をみて戦時中のことを回想します。

 

まだ子供だった直也は、母親と上手くいかず、“入船楼”という旅館で働いていると聞いていた姉のもとを訪ねてきます。姉と一緒のところで働きたい。しかし、そこは旅館ではなく遊郭。千代は借金のカタに売られ、5年は働かねばならない。橘はちょうどその時に千代を訪ねていて、直也が突然やってきたことに困った様子の千代をみて、直也のことを自分に任せてほしい、と言います。橘の下宿へ向かおうとする直也を、遊郭のほんの少し先まで送っているところを阿川にみつかり、無理矢理に連れ戻される千代。橘は、酷い扱いをうける千代を「救い出してやる」とつぶやきます。

その日以来会うことのなかった直也と橘。直也はその後におきたことを橘から聞きます。一度は遊郭から連れ出したがすぐに連れ戻されてしまったこと。学徒出陣で招集され、出兵したこと。千代に会いたいと思い、生き抜いてきたこと。千代が自らトラックの前に命を投げ出して死んだこと。

そんな過去を持ちながら、現代の二人はかたや関西の売春グループの幹部、かたや関東の売春グループで、愛する女性を奪ったも同然の男・阿川の組織の幹部として再会します。橘は千代が死んだ新橋の街並みのなかで自分がしていることへの葛藤を抱え、直也は他の女たちに姉と同じ思いをさせることが姉への弔いのような気でいる。直也は葛藤を抱える橘の純粋さに対し、もうあのときとは街も人も違うのだ、とつぶやきます。

 

戦中~敗戦直後の場面と、現代の橘と直也が二人だけで語り合うシーンはとても真摯なつくり(突然現れるアラカンさんのとこだけちょっと番外地風味なんだけどw)。戦時中の橘と千代のシーンは由利徹さんや田中邦衛さん、砂塚秀夫さんらが柔らかい空気を入れてくれますが、学徒出陣から敗戦にかけての場面は撮影シーンと実際の映像とを組み合わせて構成されていて―学徒出陣式のシーンは実際のモノクロの映像にあわせて橘と千代の部分もモノクロで、敗戦後は飛行機から降り立つマッカーサーのセピア色の映像にあわせ、入船楼の焼け跡にたつ橘はセピア色に―二人の物語にも、この時代の作り物でない緊迫した空気が流れます。だから、帰還した橘が、自分が命をかけて戦ってきた米兵を相手にガード下に立つ千代をみて、怒りを感じ裏切られたという思いを抱いてしまうこと、そして、千代にとってはそれが生きる術でありながらその姿を橘に見られたショックでトラックに飛び込んでしまうこと、二人それぞれのつらさや、やりきれない思いが胸に迫ります。映画のなかで回想シーンに割かれている時間は決して多くはないのですが、時代の流れの中で懸命に生き、真っ直ぐに愛してきた恋人同士の物語が、強い印象を残します(この場面の輝雄さんのかっこよさによる加点もあるかw)。

 

回想と二人の邂逅が終わると、また、現代の石井輝男的世界に戻ります。麻薬、売春組織の裏、激しく踊るダンサー。ただ、この戦中~戦後の橘と千代の場面、そして現代の橘と直也の場面が真摯に描かれていることで、阿川の元で働く橘の心のうち、直也の真意、そういった部分がストーリーの根底に流れ続けていて、橘も直也も別の人間になってしまったわけではない、戦中からの物語との続きを感じます。

この映画のジャンルとしては”アクション映画”で、それに相応しく現代(1966年)の阿川対直也という構図に時間がさかれているのに、映画を見終わった印象は、戦争に翻弄された若者たちの物語、という感じなのでした。(私もその本筋のはずのパートの感想書いてないしなσ(^_^;)

 

 

と、本編についてはこの辺でwやっぱり輝雄さん出演作なので、そこに触れないわけにはいかないのであります(≧∇≦*)

この作品は石井監督が松竹に招かれて作った、新東宝作品を思わせるような映画です。主演の竹脇無我さんは当時、松竹売りだし中の若手俳優。脇で支える輝雄さんは、石井監督から直接オファーを受けての出演。そして、映画を観ると、この作品における、役以上の吉田輝雄の存在の大きさを感じます。

無我さんは撮影当時、22歳。直也の設定は30歳はこえていそうな人物ですが、まだどこか幼さが残っていて素直な感じがします。だから、戦時中の千代を頼ってきた姿や秘書という肩書きにははまるのですが、関西の売春グループの一員という割には、どことなくお日様の下を堂々と歩けそうな雰囲気。

一方、橘の設定は40歳はこえていそうなのですが、撮影当時の輝雄さんはまだ29歳。が、この年からの輝雄さん、若さに渋みが加わっていて、だから、学生時代の爽やかさ、学徒出陣のシーンの覚悟の表情、戦後の、闇をのぞいてきた男の凄み、そのいずれもがはまっていて、物語の時間を無理なく繋いでくれます。

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学徒出陣のシーン。このとき千代が渡した千人針が最後にまた意味を持ちます。


 

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復員兵として戻ってきた橘。

 

そして、無我さんに幼さが残っている分、この映画の大人の格好良さを全部請け負っていて、作品の世界観を表していて、まぁ、要するにめっちゃカッコいいわけです(〃ω〃)(画像ないですが、学生服の爽やかな姿もいいんですよぉ!なお、キャプチャ画像は下村健さんからのいただきものですw)

 

と、この映画の世界観にはまって、ハンサムさについては吉田輝雄史上最高と思われる1966年の吉田輝雄(この年ほんと甘さとハードな雰囲気が混在してて色っぽいくていいんです(〃ω〃)何回言うw)。さすがは石井監督って感じで無我さんよりアクションの見せ場も多くて(笑)かっこいいわ、千代との恋のお話はさすがメロドラマ作品に主演してきただけあるわなって感じでいい男だし、で言うことなしだ(゜∀゜)と思ってたら・・・。最後、「網走番外地」のごとくアラカンさんに看取られるシーンがあるのですが、二人の悲恋の結末としてとても切なくて涙を誘う展開なのに、看取られなれてないせいか(石井作品では新東宝時代死んでないんですよね。って看取られ慣れるってなにw )、・・・泣けない!勿体ない!直前まで完璧だったのにw(これが、あと2年すると演技がビジュアルに追いついて、「続・決着」の譲二さんに泣かされるわけなのです!)

 

ま、でも、そんなことは小さいことでw松竹で撮ることになった石井監督が「助けてほしい」と直接声をかけたというのもよく分かる、本作における吉田輝雄の存在感。どこか新東宝での石井監督作品を思わせる映画で、新東宝「地帯」シリーズの主演俳優は松竹でもその世界を展開するのに重要なパーツで、そしてそれがよく似合う!輝男の世界の輝雄はやはり、特別な輝きを放つのでありました。

 

 

【おまけ】

上に入れられてないけど思ったことをツラツラと、まさに備忘録的に。

三原葉子さんは豊満ボディが少しふっくらとしてきていますが、それがゴージャスさを増していてファーを纏った姿の似合いっぷり。しかし、なぜあんなにクスリ漬けにされる演技がハマるのだ!

待田京介さんの役は売春組織で輝雄さんと同格くらいのポジションで、後から組織に加わった橘を快く思っていない、と言った感じ。お二人の共演はこの前の「犯罪のメロディ」(井上梅次監督)がありますが、二人とも石井監督のほうが個性がいきてる感じがします。あと、二人ともその時より演技上手くなってる!

・クスリがきれて悶えるルミとオーバーラップする、クラブで踊る黒人ダンサー。「無頼平野」のクライマックスのナミとサブを思い出す。

・アイコンにしてるくらい好きなスチル写真(これはネットの拾い物)。黒いスーツでそろえて映る杉浦直樹田中邦衛藤木孝竹脇無我、そして吉田輝雄アメリカのギャング映画かと思うようなかっこよさ。だがしかし、このメンバーが全員同じ画面に出てくることは一度もなかったし、杉浦直樹さんは、その役いる?みたいな役だし、とりあえずスチル写真と実際は全然ちがったw

 

阿佐ヶ谷に降りたった吉田輝雄がまさに“ハンサムタワー”だった話

 

12月3日(火)、石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲/ラピュタ阿佐ケ谷の特集に合わせ、吉田輝雄さんのトークショーがありました。今回は、その備忘録とその後に起きた、夢のようなお話のこと。

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ラピュタ阿佐ヶ谷でのトークショーの様子。カッコいい。

 

吉田輝雄ファンになってから、「この時がいつか来ますように」と思っていた、映画館で石井輝男特集が組まれる日(なぜって、それは吉田輝雄をスクリーンで観られるから!)。それがついにやってきました!これでもかってくらい石井作品が並んでいて、ずっと観てみたかった「日本ゼロ地帯 夜を狙え」や「大悪党作戦」だとか、DVDで鑑賞してスクリーンで観てみたいと思っていたたくさんの作品がラインナップされているではありませんか(輝男じゃなくて輝雄基準)ヾ(o´∀`o)ノ

 

それだけですごく嬉しかったのに、なんとー!!輝雄さんがこの特集にあわせてトークショーに出てくださる(≧∇≦*)(めっちゃカッコいい作品がたくさんあるのに、よりによって「温泉あんま芸者」の上映後なんですがw) 現在、大阪・高槻市にお住まいということはインタビューを読んで存じ上げていましたので、東京でトークショーに出られることは難しい。。。今回も「出演作品のスタッフとかキャストの方のお話が聞けたらいいな」なんて思っていたのに…盆と正月がいっぺんに来たってやつですよ!みなさん!で、ラピュタ阿佐ヶ谷では石井輝男特集になる前のラブコメ特集の最終週に「泣いて笑った花嫁」と「今年の恋」がかかることもあって、私にとっては11月から年末にかけて(年明けも)阿佐ヶ谷は“吉田輝雄祭り”状態。

 

輝雄さんがいらっしゃると分かって、会社の仲の良い同僚さんにその報告をしたら、「そりゃ、お花用意して渡さなきゃ!」という、まったく考えてもなかった提案w 私は大好きなものをアツく追いかけるオタク気質ですが、遠巻きにそっと眺められたら満足、という人間。同僚さんに背中を押され、大阪に戻られるときにお荷物にならないものにしようと、「泣いて笑った花嫁」をラピュタで鑑賞した帰り、プレゼントを購入。準備万端!あと用意するものは渡す勇気だけ(笑)そこで、「サインをいただいたお礼をするのだ!」と自分に言い聞かせ、12月3日の朝ラピュタ阿佐ヶ谷に向かいました。お礼って、どういうことかっていうと…

kinakossu.hateblo.jp

 

 

当日、輝雄さんを東京駅にお迎えに行かれるのは今回の特集の監修をされてトークイベントで司会もされる下村健さんと、輝雄さんのかねてからのお知り合いで、上で引用した記事にも登場されるMKBさんこと、真壁邦夫さん。真壁さんはこんなご本を書かれている方。「海の上のピアニスト」とかめっちゃ好きだ!パンフも買ったわ。

エンニオ・モリコーネ映画大全

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真壁さんとは前日にメールをさせていただいていて、お迎えに行かれることをうかがい、そして、「プレゼントをお渡ししたくて前のほうに座りたいけど、いつから並べばチケットが取れるのか悩んでますσ(^_^;」なんてメールを送っていました。

 

チケット配布予定時刻(10時15分)の一時間ほど前に着いたのですが、すでに列ができています。人が多いと通路が客席になっちゃうラピュタ阿佐ヶ谷。前の席座れなかったら渡せないやん…orz 出かける直前に「デートにでも行くんですか⁉」って勢いでネックレス選ぶのに時間がかかり、乗ろうと思っていたバスにも、乗ろうと思っていた電車にも乗れなくて、到着時間が予定より遅れてしまっていたので、「ネックレスに悩んだ結果、目的を達成できないかもしれないとかアホか私はorz」とかなりながら14時10分の「温泉あんま芸者」の入場が開始されるのを1Fのロビーで待ちます(上映スペースは2階)。 人が多くて、受付でチケット買えなかった人がいたり、通路に席ができるのは確定的。そこには、長いこと旧作邦画を観ていて、知識も豊富そうな方々がたくさん。にわかファンの私は場違いなような気持ち…で、また、そんなところでプレゼントを手渡そうとしているとかなんと生意気な、とか思ったり(^_^;) とかなんとか考えていたら番号が呼ばれ、最前列、左奥(上手側)の席に座れることに。ラピュタは客席最前列からスクリーンまでが平でステージのようにはなっていないので、この斜め前あたりに輝雄さんが座られるに違いない!と映画どころではなく(笑)気もそぞろなうちに映画は終了。そしてー!!輝雄さんご登場♪長身のスラリとした立ち姿、黒のスーツに赤のネクタイの組み合わせはめっちゃオシャレでスマートで(TOP画像参照)、まさに”本場仕立てのスーツをさらりと着こなすハンサム”吉岡さん@「ゴールドアイ」がまんまそこにいるのであります!(ここまで長いw)

 

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はい、でこっからいよいよトークショーについてです(`・∀・´)

平日昼間の回にラピュタの会場を通路席までいっぱいにしてるのに、「私のようなもののために集まっていただいて」と挨拶され、謙虚に話される姿が素敵。

お話は「温泉あんま芸者」についてはあまり覚えてないっていうことから始まりw新東宝でのデビューからの石井監督との思い出、松竹でご一緒されていた名匠とのこと、東映に移ってからのこと、高倉健さんや江利チエミさんとの思い出話とか、貴重なお話を聞かせていただきました。軽妙洒脱で、関西人らしくユーモアを交えながらのトーク。本で読んで知っていたことも、目の前のご本人から聴けるとなると、またすごい幸せ(*´ω`*)さてさて、お話しされた内容はというと、

 

【新東宝

・モデルのバイトをしていたら(本職は営業マン)ハンサムタワーズの最後の一人として、大蔵社長のスカウト(もっというと、奥様が気に入ったらしい)で決まったこと。もともと俳優をやる気はなかった。

・石井作品に出ることになったのは石井監督がハンサムタワーズの中で輝雄さんを指名したから。(輝雄さんはそのお話を直接されたことはなかったそうで、「という風に聞いています」とお話されていましたが、ホストの下村さんは石井監督から直接そのことをうかがっていたそうです。)

・新東宝でたくさん石井監督と映画撮ったけど、怖かったこと以外覚えてない。「よしだぁ!!」ってめっちゃ怒られた。「女体渦巻島」(初主演作&初石井作品)を撮っているときに何度もやめようと思ったけど、会社が宣伝して「明星」とか「平凡」とかに載っちゃうからやめらるにやめられないヽ(;;)ノ(頑張ってくれてありがとう、当時の輝雄さん)

・関西なまりがひどいので、俳優座の先生を専属でつけてもらって練習していた

・大蔵社長はケチな人で、ハンサムタワーズ4人を飲みに連れて行ってくれたりするんだけど、渡されるお小遣いは一人500円(笑)で奥様がそっと、10万円くらい出してくれる。当時は銀座に4人で飲みに行っても2,3万あれば十分だったそう。

・新東宝がなくなるというときに石井監督がすでに東映に移られていて、輝雄さんも東映に誘われ、大川社長にも会い、九分九厘決まっていたところ、松竹から木下監督で第1回の作品を撮るよと誘われ、お給料もいいし、木下恵介監督の作品に出てみたいと思って松竹に移籍したこと。石井監督にそのことを伝えたらめっちゃ怒られた(怒られるアゲイン)

・大蔵社長は組合から退陣要求された際に、「お前らが何を言っても辞めないが、役者に言われたら辞めてやる」と言ったそう。そこで組合から頼まれて俳優さんたちが大蔵社長のところに行くことに。輝雄さんも行ったけれど、大蔵社長にお世話になっているのでとても辛かった。そして、最後に社長に残るように言われ、「これからが大変だぞ。何かあったら俺のところに来い」と言って下さったそう(自分にとって得なほう―この場合は組合側につくとだと思う―に流されて行くんじゃなくて、大蔵社長とのご縁を大事にされて悩まれる―新人なわけですから、流れに逆らうのってすごい大変だと思うんです―というところが、この後の石井監督のこととかにも通じて、輝雄さんの純粋さを感じます)

 

【松竹】

・木下監督がそっちのほうの(^◇^;)趣味をお持ちらしいということで。。。「永遠の人」に決まっていたんだけど(高峰秀子さんの次男役ね)、医大にいる友達に頼んで仮病を使って1か月半、大阪に引き込もる(笑)

・でも、木下作品に出ないと他の映画にも出られない…(1回目は木下監督のお弟子さん、川頭義郎監督作品でお茶を濁すw)。会社にも医者と看護婦をつけるから出てこい、と言われて出てきた。そして何かあったらお断りしようと(笑)覚悟を決めて「今年の恋」へ出演。撮影中は休憩で食堂に移動するときとか、木下監督と手をつないでいたそうですw(イケメン好きすぎだろ)

・ハンサムタワーズがみんな松竹に移籍していたのは、撮影所が大船で遠くて心細かったので、「文太と高宮君も一緒でいいですか」って言ったらいいよ、ということになったらしい。なお、寺島さんはすでにテレビの仕事などもしていて、一緒に移籍していたわけではないそう。

小津安二郎監督にも可愛がってもらい、「秋刀魚の味」の撮影中にお天気が悪くて撮影が中止になったときに小津監督に誘われて新橋の天ぷら屋さんで二人だけで食事をしに行ったことがあった。その時に次回作として準備していた「大根と人参」にキャスティングしていることを小津監督から直接言われた(私はこの「大根と人参」に輝雄さんがキャスティングされていることを知った時からその経緯が気になっていたのでー「秋刀魚の味」の備忘録にもつらつら書いてますw―その話が聞けてめちゃめちゃうれしかったです!小津監督は「秋刀魚の味」の撮影前の記者発表で輝雄さんの映画を見たことがない、とお話されています。きっと撮影していく中で、変に色がついてなくて、小津カラーにそまっていく輝雄さんを気に入られたんだろうな、と思ったのですが、まさにその撮影途中で決まっていたというのに感動。小津監督がもう少し生きて映画を撮っておられたら、まったく違う系統の作品で活躍されたのかもしれません)

・石井監督が松竹で映画を撮ることになって、電話をもらい、そしたら新東宝時代は「吉田!」って呼ばれてたのに「輝雄ちゃん」になったこと(笑)

 ・竹脇無我さん主演で「日本ゼロ地帯 夜を狙え」を撮ることになり、無我さんは石井監督の怖いという評判は知っていたので、輝雄さんにどんな監督なのか聞いてきた。輝雄さんは「怖い人だ」と脅していたとかwで、心配な無我さんは輝雄さんのお宅から撮影に通われていたそう(笑)。ところが当の石井監督は輝雄さんの(デビューしたばかりの

)時は「吉田!」って感じだったのに、竹脇無我さんのことは「無我ちゃん」ってよんでいた。

江利チエミさんとの共演が三作品ありますが、チエミさんが忙しいので夜遅い撮影が多かったそう。それで高倉健さんがよくチエミさんに差し入れをもってきていて、輝雄さんの分まで一緒に持ってきてくれていたそう。

・チエミさんとは撮影後に飲みに行くことがあって、誘われて行くとそこには美空ひばりさんと清川虹子さん(すごっ)。輝雄さんが健さんも呼ぼう、というと「ダーリンは飲めないから😞」と言うんだけど、無理矢理呼んだらカウンターの隅のほうで健さんはコーヒー飲んでた(笑)

(あと、輝雄さんは高倉健さんのことを“健ちゃん”とか“健坊”とかお話しされてて、なんかお二人の間のステキな関係が感じられてよかったです(*´ω`*))

 

東映

・松竹で石井監督と撮ったあと、「網走番外地に出てよ」と言われる。「大雪原の対決」と「決斗零下30度」は真冬の北海道での撮影。だれもどのくらい寒いのか教えてくれなくて、防寒対策もまともにできず、パンツの上にズボン1枚で撮影(革パンとかですやん、あれ。めっちゃ寒いって)。松竹でチエミさんと共演していた時のこともあって、健さんにも歓迎された。

・「決着」と「続・決着」はどう見ても輝雄さんが主演で(笑)、梅宮辰夫も現場でそれは感じていたらしい。

・「異常性愛路線」の作品についてはこれに出ることに周囲の方から「役者人生終わるぞ」と言われたこともあったし、「こういう映画に出るならファンをやめます」とお手紙をもらったりしたこと。

・俊藤プロデューサーの作品で唯一出ている「任侠魚河岸の石松」で演じた役(直さん!めちゃめちゃカッコよくて好き)はもともとは鶴田浩二さんがやる役だったとのこと。鶴田さんがほかの作品で出られなくなってしまい、テレビの「愛染かつら」で共演した長内美那子さんを恋人役にして輝雄さんの役に書き換えられた。

・「任侠魚河岸の石松」を観た俊藤さんに京都のほうに来ないかと誘われ、当時の中目黒のご自宅に俊藤さんが何度も通われて、「人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊」(1968年のオールスターのお正月映画)のオファーを受けたけど、石井監督の次回作が決まっていて、オファーを受けられなかった(「ここでほんとに悩んで人生をかけたけど、かけるとこ間違ったかもしれないですね」と冗談交じりにお話しされていましたが、ほんと、ここで違うほうに人生かけていたら輝雄さんがスクリーンで活躍する姿がもっともっと見れたのかも。。。)

・「徳川女系図」のあとも「次も頼むわ」となって、もうこういう映画は撮らないだろうと思っていたのにずっと”異常性愛路線”が続いてしまったこと。周囲からの忠告もあり、石井監督をきることも何度も考えたけど、石井監督が自分を頼りにしてるのも感じていたし、初めて主演で撮っていただいた恩を返すのはこれだろうという思いがあって、切ることができなかった(なんちゅういい人やねん!)

・京都撮影所では石井組だというだけで風当たりが強く、大部屋俳優さんですら無視してくるような状態だった。

・やっとまともな作品を撮るということで「殺し屋人別帳」のオファーをされたが、異常性愛路線で主役を演じ続けたのに、まともな作品で脇に回されたので「今までのことは何だったんだろう」となって(とはいえ、この役もかっこよくて、渡瀬さんじゃなくて輝雄さんが主役みたいな映画なんですけど)、オファーされた時点で一旦は断っていた。石井監督から役を書いているからとあらためてお願いされて、「これ一本だけです」と出演した。

(散々「異常性愛路線」に付き合ったのにまともな作品をまた撮るようになってから縁をきることになる、と言う、輝雄さんの素直さと言うか純粋さというか。そういうところが石井監督や小津監督を引きつけたのかな、とか思ったりします。東映のこの辺のお話は聞いてて切なかったです。) 

 

【無頼平野】

そらから25年たって、石井監督から電話があって「無頼平野」のオファーをされる。輝雄さんをイメージして役(リュウ)を書き、音楽も決めているから、「輝雄ちゃんじゃないとできないからどうしてもやってほしい」と(「口が上手いんですよ」なんておっしゃってました(^_^))。

 

最後に石井監督とのことを振り返ってと問われた輝雄さんは、石井監督への感謝を述べ、向こうでもまた一緒に映画を撮りたいとおっしゃっていました。東映での色々な出来事をこえてもなお、石井監督を恩師として慕うその真摯なお人柄が伝わってきて、外も中もまさにハンサムタワー!目の前でみたダンディな吉田輝雄のハンサムさにフワフワした気分のまま、トークショーは終わったのでした!あ、最後にこれ以上ないくらいの勇気出してプレゼントを(無言で(^◇^;))渡しました。何か喋れ、お前!

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…が、話はこれで終わらなくて!フワフワした気分どころかそのままどこかへ飛んでいきそになる出来事が待っていました(〃ω〃)

 

トークショーが終わって外に出てくると、サイン色紙をもって待っている方たちが。私は次の回の上映(「徳川女系図」(^◇^;))は飛ばしてその次の「日本ゼロ地帯 夜を狙え」を観て帰る予定。いつもなら阿佐ヶ谷駅のほうで時間を潰すのですが、「待ってたらサインもらえる!?」と(過去のトークイベントでサイン会があったことを知って、家にあるものから厳選して「大悪党作戦」のスチル写真を持ってきていたw)、隅のほうで一人座っていました。そしたら、誰かに名前を呼ばれ、「???」となって呼ばれたほうに行くと、下村さんと初めましての男性。真壁さんだ!真壁さんにご挨拶できて良かったなぁ、とか、下村さんがそこにいるよー!すごーい!とか思ってたら(笑)エレベーターへ案内されます。

 

この時に何が起きてるのか理解して、エレベーターで上のフロアに移動してる短い間、ドキドキとフワフワがやってきて足の力が抜けそう。着いたのは普段はレストラン「山猫軒」として営業している場所。そこの、8人ほどが座れそうなテーブル席に…輝雄さんがいるー!!私は輝雄さんの隣の席に座るように促され、あまりのことに泣きそうになって、ウルウルしながら隣に座らせていただきました。誰かに会って、嬉しくて胸いっぱいで泣きそうになるっていうのは生まれて初めての体験。

 

輝雄さんは突然やってきた私に、プレゼントのこと、このブログのことなどを話しかけてくださり、その場に居やすくなるように気遣いをしてくださいました。ラピュタまで1時間ほどかけてきたとお話したときは「遠くから大変だったね」と言ってくださったり(ご自分は大阪から来てるのに!)。その立ち居振る舞いのすべてがスマートで、こういう気遣いを当たり前のようにされている方なんだなぁ、というのを感じます。外も中もかっこよくて、まさにハンサムタワー(*>ω<*)(2回目)。

 

サイン会の準備が整って輝雄さんが1階に降りられることになったのですが、降りる前にその場でサインをしていただき(*>ω<*)さらに一緒のエレベーターで1階へ。めっちゃ近いよぉ!背高いよぉ!また、足元の靴までオシャレでスキがなくて、まさにハンサムタワー(〃ω〃)(3回目)。

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サインしていただいた「大悪党作戦」のスチル写真。家にあるものから1枚だけ選んでもっていきました。

 

サイン会の間は端っこから様子を眺め、サインしながらお話しされるファンの方をみながら、もっと前から輝雄さんのファンの方がここにたくさんいるのに、私がこんなふうにお話しさせてもらっいていいんだろうか!?とかなってました。

皆さんへのサインが終わられたあと、一緒にいた輝雄さんのお知り合いの方に「写真撮ってもらいますか?」と言っていただき、そこから撮影タイム。側でみていた方にも「君たちも撮ろう」と声をかけられてそれぞれツーショットで写真を撮られ、優しい!カッコいい!で、まさにハンサムタワー!!(4回目)

 

握手をしていただき、サインももらい、写真まで撮っていただいて(さりげなく肩に手をかけてくださって、めっちゃカッコいいの😆)、もう胸いっぱいだよぉ!ありがとうございましたー!!って思っていたら、撮影会(!?)が終わったあと、上のフロアへ戻るエレベーターにまた促されて、もう、(゜-゜*;)オロオロ(;*゜-゜)え?いいんですか??ってなりますやん。だって、今日はじめてご本人のトークイベントに参加したとかいうただのファンですよ。

 

その後、タクシーが来るまで、またお隣に座らせていただいて(〃ω〃)お話しを聴いていました。文太さんとの思い出や、亡くなる前の電話でお話されたこととか(さらりと話されたこのお話がステキで、なんか私みたいなモノがここに書いちゃいけない気がするので書かずに心にしまっておきます。すみませんwきっといつか、下村健さんがご本に書かれるか、トークイベントの機会がまたあったら、引き出してくださるはずー!)。

 

その後、ラピュタの前にタクシーがきたので、エレベーターを降りてラピュタのビルの外へ。最初から最後までとにかくステキで、映画やドラマのイメージそのままだった輝雄さん。タクシーに乗られるところまでお見送りさせていただき(真壁さんとラピュタ阿佐ヶ谷石井館長と一緒に!)、「ハンサムタワーはほんとに“ハンサムタワー”だったよぉ(≧∇≦*)」(5回目)という印象を残し、大阪に帰って行かれました。

 

で、その後も夢心地で、「日本ゼロ地帯 夜を狙え」の輝雄さんを観ながらフワフワ。その後の帰りの電車もまだフワフワ。次の日は例の同僚さんにランチで思いっきり話してデレデレ(!?)し、そして今これを書きながらまたあの時の感激を思い出して泣きそうになってます(〃▽〃)

 

そうそう、最後に1個だけ、聞いてみたかったことを勇気を出して聞きました(妄想のシミュレーションでは聞いてみたいことは山ほどあったんだけどw)!「今年の恋」で美加子(岡田茉莉子さん)と二人、車で弟たちを追いかけて熱海へ向かう途中、思い直して銀座に戻る場面。二人で車に乗っているシーンはすごく楽しそうだけど、音楽がかぶさっていて何を話しているかは分かりません。「この時はセリフがあったのですか?」と伺ったところ、そこはセリフはなくて自由に会話していたよ、とのこと。それであんなにナチュラルに楽しそうな雰囲気なのか(っ´ω`c)と、そんなお話を直接きくことができて、これはやっぱり「夢のよう」とかじゃなくて夢なのかもしれない、と思うのでありました(笑)

 

 

(なお、これが起きたのはパパが息子の保育園のお迎えを早退して引き受けてくれたおかげで、オタな嫁のフォローをしてくれるパパにはほんと感謝なのでした。お迎えあったらトークショーのあと速攻で帰ってたもんな(^_^;))