T’s Line blog~映画についての備忘録~

兼業主婦が仕事と子育ての合間に見た映画などについて、さらにその合間に綴るブログです。ブログタイトルのTは好きな俳優さんのお名前のイニシャルがことごとく「T」なため。LineはTのうちのお一人の主演作、新東宝「地帯シリーズ」から拝借しています。。

赤坂長義監督「スター毒殺事件」

見所:天知茂。以上!

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【映画についての備忘録その22】

赤坂長義監督×天知茂主演「スター毒殺事件」(1958年)

 

 

東洋映画のスター上原城二(天知茂)。彼は大学の恩師の娘で互いに好意を寄せる真理(万里昌代)の魅力と美しさに、「このような人と一緒に働けたら」と映画界へと誘い、女優デビューをさせる。
真理は城二の口ききと、天性の資質によって一気に人気女優に。そんな彼女を城二のライバルで、同じく東洋映画の二枚目スター須賀(江見渉)が目をつけ、共演を持ちかける。女たらしの須賀のアプローチに最初は戸惑っていた真理も次第に須賀にひかれていき、城二を疎ましく思うようになった。

真理の誕生日というその日。彼女を祝おうと真理の家へ城二をはじめ、知人・友人が集まって帰宅を待っていた。しかし、仕事が終わったはずなのに帰ってこない真理は須賀と共にいた。二人が抱き合う姿をみた城二は、二人への復讐を心にきめる・・・。

 

「女王蜂と大学の竜」と一緒にDMM.comでレンタル。石井輝男吉田輝雄もクレジットされていない新東宝作品はこれが初鑑賞であります。んで、何でこれを選択したかといえば、天知さん、三原さん、万理さん、とこれまでみた作品でなじみの!?俳優さんたちが出演されていたから。

 

「毒殺事件」とかいうくらいなんでなんかサスペンスチックな要素などがあるのかな、と思って観始めたのですが、わりとタイトル詐欺な感じで(もちろん毒殺しちゃうんですけど)、 事件の描き方はとってもわかりやすく(犯人は最初からバレバレ)、城二が嫉妬にもがいてストーカーみたいにグダグダになっていく様を観る、天知さんを楽しむための作品でしたw

 

登場したての天知さん=城二は爽やかキャラなんですが、もうなんとも言えない違和感でした(^-^;)ここまで石井輝男作品でしか観てないせいではないよねぇ、という、似合ってなさw女たらしの二枚目スター・須賀役の江見渉さんも、まぁ、確かに二枚目っちゃあ二枚目なんだけど、着物が似合いそうな和風の顔立ちなので現代劇で天知さんと並ぶ二枚目スターという設定がなんだかちょっと…(ハンサムタワーズの面々が現代劇向けの二枚目さん達だったのがよく分かりました(^-^;))。主要男性キャラの違和感が半端ない(城二にすがりつく三原さんとか、清楚な万里さんとかもなんかイメージ違ってたたなぁ…。でも、三原さんはイメージとは違ってても印象的でした)。

 

天知さんの本領発揮だなー!と思ったのは城二が嫉妬を心に抱きだしたあたりから。嫉妬心と、しかしそれを真理の前では隠そうとする振る舞いと、当てつけのように昔の恋人だった女優あけみ(三原葉子)と雲隠れして騒動を起こしたりとか、まぁ爽やかさと離れて妖しさが出てくるほど、私の中でピッタリくる天知さんらしさが発揮されておりました。

 

ストーリーや演出的にはとくに目を見張るなにかがあったわけではありませんでしたが、天知さんが主役で引っ張る安定の2時間ドラマ(2時間もないけど)を観たような、そんな映画でありました(でも、拳銃持ってるとこ真理に見られて「友達が置いていったんだ」という言い訳はひどすぎw)。

石井輝男監督「女王蜂と大学の竜」

吉田輝雄×三原葉子コンビのベスト作かも!?かわいくてカッコいい二人の楽しい映画。

 

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【映画についての備忘録その21】

石井輝男監督×三原葉子吉田輝雄主演「女王蜂と大学の竜」(1960年)

 

戦後間もない新橋。その露天地区では三国人連盟と名乗る外国人達が暴れ回っていた。ここを縄張りとする関東桜組は組長の千之助(嵐寛寿朗)と娘の珠美(三原葉子)を中心に三国人連盟とその手先となっている土橋組の横暴に悩まされる露天商達を必死に守っていた。

三国人連盟の幹部リ・トウシンが連盟の仲間を引き連れ、関東桜組に乗り込んできた。関東桜組が仕切る桜マーケットを明け渡せというのだ。不在だった千之助に代わり、珠美が話そうと出てくるが、銃をみせて「敗戦国は大人しく縄張りを明け渡せ」と脅してくる連中に啖呵を切る珠美。今にも乱闘が起ころうというその時、ラバウル帰りの特攻隊の生き残りだという竜二(吉田輝雄)があらわれ、珠美たちの助っ人として大暴れする。

出掛け先から戻ってきた千之助は竜二の助太刀に感謝するが、こんな争い事はヤクザに任せ、費用を出すから大学へ行き、世の中の役に立つ人間になれと諭す。しかし、目の前で苦しんでいる人達を助けたいのだと言う竜二は千之助とケンカして出て行く。しかし、竜二を心配した珠美は行く当てもなく野宿するという竜二を馴染みの雄太郎とその娘の美耶子(万里昌代)の家へ預けるのだった。

 

DMM.comでレンタル。TSUTAYAディスカスにもなくて、名画座にかかるかCS放送を待つしかないかなー、と思っていたらこちらでレンタルできる!とのことで会社のお昼休みにせっせと登録してwレンタルしました。公開時のポスターの「吉田輝雄の魅力をこの一作に集中」(「女体渦巻島」の“全女性あこがれのハンサム”につぐ印象度w)という惹句、嘘ついてないな!って感じで(๑'ᴗ'๑)輝雄さんと、そして三原葉子さんのかっこよさとかわいさがつまっていて、石井監督のテンポのいい演出とあいまってとっても楽しい映画でした。

 

展開としては三国人連盟(連盟の会長は大友純さん)と土橋組(組長:近衛敏明さん)、桜組にいながら土橋組に内通している達(沖竜次さん。最後は見せ場もあって存在感たっぷり。)と「女体渦巻島」か!?と思わせる(近衛敏明さんは美耶子に酒を飲ませて・・・とこちらでもやっぱりエロ親父キャラ。大友さんも朝鮮人組織のボスというキャラw)三悪人が関東桜組のシマを乗っ取ろうと画策するも、竜二や珠美の活躍で思うようにはいかず。。。という、安心のストーリー。 

 

【いろいろとキャスト/スタッフかぶってる女体渦巻島についてはこちら】

 

kinakossu.hateblo.jp

  

終戦直後の日本人と外国人の争いは実話に基づくそうです(だから駅前にパチンコ屋が多いのだと聞いたことがあります )。そんな時代のなか、特攻帰りで両親も戦争で死んでしまったという竜二は「生きてるだでもうけもんなんだ」という身を逞しく前向きに、明るく生きています。珠美のほうも父・千之助を支えながらも、女性だけの愚連隊を率いて土橋組の男達を相手に喧嘩をしてみたり、男勝りの勝ち気なところを見せます。で、この二人と二人を取り巻く仲間の活躍が描かれていてとってもかわいらしい(๑'ᴗ'๑)一応、任侠映画に分類されると思うんですが、どっちかっていうとさわやかな青春映画を観ている気分でした。

 

竜二はもう元気いっぱい!

達の企みで桜組の若い衆三人が千之助の言いつけを守らずに三国人連盟の事務所に殴り込み、待ち伏せていた連盟側に返り討ちにあいます。騒動を知って珠美とともに雄太郎の家から桜組へ美耶子の運転するオート三輪で戻ってきたところ、三人の遺体を乗せた霊柩車が桜組の前に。霊柩車の運転手から土橋組から頼まれたことを聞き出すと、霊柩車を土橋組に突っ込ませて一人で乗り込みます。派手だな\(^o^)/「仁義の切り方も知らないのか」と土橋に言われるといっぱしの口上を述べてニヤリ(ここで特攻隊の仲間から頭がきれるので大学とあだ名をもらったと“大学の竜”だと名乗ります)。土橋組が三国人連盟の手先として動き回っていると知ると、どうこの場を収めるのかと思ったら、組長に「日本人の同胞に対して詫び状をかけ!」ときますw喧嘩が強くて度胸満点の格好良さと、悪党相手でもどこか愛嬌のある裁き。この後も街を歩いて喧嘩を売られては勝って子分を増やしていったり、土橋が美耶子を手込めにしようとしたところに助けに入り、三遍回ってワン!と言ったら許してやるよ、とか、もう、とにかく元気いっぱいでかわいらしい場面がたくさん(๑'ᴗ'๑)輝雄さんもとっても楽しそうに演じているように見えて、それがまた観ているほうにも伝わって楽しませてくれますヾ(o´∀`o)ノ(女体渦巻島から半年でここまできたか!っていうw)

 

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そして、三原さんも啖呵をきった初登場シーンは、和服姿がとても似合っていてステキ。男勝りの威勢の良さでかっこよくその場を仕切ったかと思うと、千之助が戻ってくると娘らしい雰囲気に。千之助と喧嘩になって桜組の庭の池に落っこちてしまった竜二と、雨戸にもたれながら

特攻機、縁側から撃墜されたのね」

「不時着だよ」

と会話しているシーンは、大人の雰囲気もありながらとってもチャーミング(我ながら適切な表現のできない語彙力のなさが悲しい。。。)

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土橋組がかつぎだした神輿の上にストリッパーが乗っていると聞いて、対抗するようにさらしに鉢巻き姿で着物の裾をたくし上げて神輿にのってでてきた珠美ちゃんには爆笑してしまいましたがw(もう、ストーリー関係なしwまたここのシーンがやけに長いんだw)石井監督のサービス精神に必死にこたえる三原さんがまたよかったり( ̄∇ ̄)

 

かわいくてかっこいい二人のシーンでとくにいいなーと思ったのがトップの画像にした場面。千之助と喧嘩になって桜組を出てきた竜二の後を追って、大学進学の費用をあらためて渡そうとする珠美と、助けてやったのはお礼してほしいからじゃないという竜二。「だれがあんたみたいなフーテンに助けてくれって言った!?」と喧嘩になります。売り言葉に買い言葉、でも結局、珠美は雄太郎の家へ竜二を預け、竜二も言われるがまま世話になることにします。竜二とのやりとりは"意識しあってるのに素直になれない二人”という王道ラブコメのテイストです(やっぱり任侠モノじゃないな)(〃'▽'〃) 石井監督作品の二人のコンビは「セクシー地帯」がとってもステキでこれが一番かな、と思っていたんですが、キャラクターのかわいらしさと格好良さ、意地を張りながらやっぱり好き、という二人の関係性とか、「女王蜂と大学の竜」の二人はさらに上か!と思いました(๑'ᴗ'๑)

 

主演の二人だけではなく、これが初の現代劇への出演となったというアラカンさんの有刺鉄線を身体に巻き付けた体当たりの殺陣や、珠美を慕う美耶子と竜二を慕う正一の恋バナ(それぞれ演じる万里昌代さんと浅見比呂志さんもまたキュート!)とか、作り手のパワーが伝わってくるようなかわいくて楽しいシーンが盛りだくさんでした!先週観た「青春残酷物語」も同じ1960年の作品。松竹ヌーヴェルバーグより明るく単純明快な新東宝作品のほうが私の好みにあっているようですw

なお、石井作品常連の天知さんだけ大した台詞も見せ場もないまま退場してしまい、これがきっかけで天知さんが石井作品に出なくなったらしいのですが、いやー、それも納得の扱いでした(^-^;)「黄線地帯」のあとにこれってなぁ、っていう(^-^;)

 

【その他あれやこれと・・・】

今作も「女体渦巻島」と同じく、音楽は渡辺宙明さん。映画の導入はトラックとその荷台に三国人連盟の連中が大勢乗って押しかけてくるところから始まるのですが、ここでは管楽器の音が効いた大迫力の音楽。一方、竜二や珠美が暴れ回るシーンはなんだかちょっとコミカルで人情モノっぽい音楽になります。この対比が印象的。任侠モノとしてのアクションと、青春映画かラブコメかというようなお話と、観ている側のスイッチを音楽にあわせて切り替えてくれました。

 アクションシーンも印象的。冒頭の三国人連盟がトラックで乗り込んでくるところは迫力があって、観客は彼らに乗り込まれてくる側の視点を与えられた感じなんですが、その他の場面では上からのカメラの視点や時代劇の型をみているような立ち回りで第三者的な視点になり、なんだかとっても不思議な感じで面白かったです。(問題はクライマックスの対決シーンで服装で三国人連盟と関東桜組の見分けが全くつかなくて、竜二以外のとこはどっちがとうなってるのか全然分からなかったことか(^-^;))

 

そして散々書いているのに最後にまた書くw「女体渦巻島」から三作目の吉田輝雄はますますカッコよくなっておりました(๑'ᴗ'๑)軍服のハイウエストなズボンにショートブーツ、パイル地っぽい白シャツ、軍帽という出で立ちの前半はとくに精悍な顔立ちとスラッとしたスタイルが際立っていてめちゃカッコよく!それでなおかつ元気いっぱいでちょっとコミカルなシーンもあって、観ながら「何これ、かわいい!」を連発してしまいましたwもうほんと(依然として聴き取り辛い台詞をのぞいては!?)言うことなしの、吉田輝雄の魅力を集中した、満足の一作でありましたヾ(o´∀`o)ノ

 

大島渚監督「青春残酷物語」

救いゼロ共感ゼロの青春映画 

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 【映画についての備忘録その20】

大島渚監督×桑野みゆき主演「青春残酷物語」(1960年)

 

いつものように夜の街で遊んだあと、気まぐれに男の車の窓をたたき、家まで送らせる真琴(桑野みゆき)と陽子の二人。そうしたある日、そのまま中年男にホテルに連れこまれかけたところを大学生の清(川津祐介)に救われる。翌朝、その男から奪った金でボートに乗り、材木置き場で清は真琴を抱いた。

その後2人はお互いをいたぶるかのように遊び、身体を重ねていく。清は人妻と不倫をしていたが、真琴のことが忘れられず同棲を始めた。やがて真琴が妊娠していることが発覚するが、清は当たり前のように真琴に子供を堕ろせというのだった・・・。

 

U-nextの配信で観ました。旧作邦画初心者、大島監督作品は初です。というか「松竹ヌーヴェルバーグ」自体が初です。でありますからして、これをチョイスして鑑賞した理由は、怒ってるおじいちゃん=大島渚監督とガメラ2のほんわかした札幌の科学館の所長・川津祐介さんと「求人旅行」のキュートな桑野みゆきさん(ググるとちょっと動画が観られるのですよね)と、はてさてこの組み合わせでこのタイトルでどんな映画なんだろう、という、知識ないがゆえのw興味からでした。

 

いやー、そしたら、救いもないし共感もないし、とりあえず私の好みとしては観てはいけないジャンルの映画で、見終わったあとの観なきゃ良かったの後悔がすごかった(^◇^;)たぶん、この手のジャンルが好きな方には共感できる点とかたくさんある、傑作なのだと思うのですが、自分的にはひたすら平行線をたどる登場人物たちでした。。。

 

清はただただ嫌な奴にしか見えず(最後は命がけで真琴を守りますが)、世の中に対する怒りを女を傷付けたり、あるいは誰かを殴ったり(真琴と同棲を始めてからは二人で美人局を仕掛けて中年男を脅し、殴って金を手にします)することで発散しているという人物。真琴もそんな清と離れることができず、二人は「こんな世の中のせいで俺たちはこんな目にあっている、こんな鬱憤を内に抱えている」というような生き方です。若いうちはそういうもんだ、みたいな見方もあるのかもしれないですが、少なくとも自分はそんな風には過ごしてないし、そんな友人もいなかったし・・・。安保闘争学生運動まっさかりの時代の映画。当時の大学生やインテリ層というのはこういう感じだったのでしょうか。当時の風俗の中の映画ではあるのだと思いますが、最初からずっと何か違う異世界(住む世界が違うとかそういう事ではなく、地に足がついてない、フワフワした現実というか)を見させられているような気がして仕方なかったです・・・。多分、私はこの手の映画が苦手なのですw若者の鬱憤が自分を破滅させてかつ世の中にあたるとかいう方向性が理解できないσ(^_^ いや、もう、ほんと、なんでこれ観ちゃったかなっていうwこういうタイプの映画も好きな方には傑作なんだと思います。相性の問題、ほんと。

 

作品全体に流れる雰囲気は最後まで苦手なままではありましたが、材木置き場での清と真琴のやりとりや、自由に生きようとしている真琴とそうしたかったけれどできなかった姉(久我美子)との確執など、印象的な演出や人物もたくさんありました。映像としては最後のあまりに残酷な終焉もふくめて印象的で、そういう意味では大島渚監督が映画史に名を残す監督であることはとても納得の作品でありました。

 

次に観ることになる大島監督作品はもう少し慎重に選んでみたいと思いますσ(^_^

 

またまた松竹大谷図書館で50年前の吉田輝雄を追っかける

またまた行ってきました松竹大谷図書館。 (もう完全に趣味に振り切ってる記事)

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2カ月ぶり!4月は「真赤な恋の物語」をシネマヴェーラ渋谷で鑑賞するためにお休みとっちゃったので我慢。自分のご褒美的な有給の利用は月一で、という誰も何も言ってこない会社ですがマイルールですσ(^_^;

 

はい、で、今回も松竹大谷図書館の近くで10時から朝ごはん食べてから図書館に向かい、夕方近くまで引きこもっておりました(昼ご飯抜きでも大丈夫なように近くのサブウェイで朝からポテトのついたガッツリなセットで腹拵え)。

 

前回の図書館備忘録はこちら

kinakossu.hateblo.jp

 

今回は五所平之助監督で岩下志麻さんと共演の「100万人の娘たち」、倍賞千恵子さんと共演した「恋人よ」、井上梅次監督の「踊りたい夜」、中村登監督の「求人旅行」そのほかに「渚を駆ける女」「恋と出世に強くなれ」「彼女に向かって突進せよ」「泣いて笑った花嫁」の計8作品の資料を借りては返しを繰り返し(≧▽≦)

松竹大谷図書館は閉架式の図書館なので、資料を借りる時には目録から借りたい作品を探し、そのコードや資料名を貸出カードに書いて司書の方に渡し、書庫から該当の資料(スチル写真やスクラップブック(宣伝・公開時の新聞記事、ポジフィルムなどが貼られています)、パンフレットなど。ポスターは事前に予約すると見られるそうです)を持ってきてもらう、という形式です。

で、休みも取らず資料を連続で借りまくっていたため、最後に借りた「泣いて笑った花嫁」の資料を戻す時には図書館の司書の方に当然のようにまた貸出カードを渡されそうになり、「あ、今日はこれでσ(^_^;」と返事をすると「あら、そうですかー」と少し残念そうに返事をされた次第ですw

 

 で、今回見た資料のなかから印象深かったものについての備忘録。

 

まずは

「100万人の娘たち」(1963年公開)

宮崎で観光バスのバスガイドを勤める岩下志麻さんとお姉さんの小畑絹子さん。志麻さんの応援もあって小畑さんはバスガイドの教官でホテルの支配人の輝雄さんと結婚するんだけど、志麻さんも実は輝雄さんのことが好きだった、というお話(100万人の娘というのは東京で働くBG(ビジネスガール)のことで、志麻さんは最終的には宮崎を出て東京で働きます)。スクラップブックにあった新聞記事の最初は岩下志麻さん主演だということだけが決まっていて、志麻さんの姉役を誰にするかなかなか決まらない、という記事から始まっていました。最初は司葉子さんともうお一人(こちらも有名な女優さんでした。失念。。。)が候補にあがっていて、お姉さん役が誰かによってメインの男性キャストが佐田啓二さんか輝雄さんになる、と書かれていて面白かったです。松竹専属だからこういう流動的な感じでもキャスティングできちゃうんだな~と。

あと、舞台が宮崎。 志麻さんの役のようなお仕事がんばってる女性は「BG」。そして仕事はバスガイド。当時の空気感がめっちゃ伝わる映画&資料の数々でした。そしてこの映画用に松竹がデザインしたバスガイドさんの衣装がかわいかったということで、撮影に協力した宮崎のバス会社の制服に実際に採用された、という記事も面白かったです。

 

「求人旅行」(1962年公開)

岡田茉莉子さんと「霧子の運命」を撮ったあとの作品のようなのですが、なんと、一ヶ月半くらいの病気療養後の復帰第一作とのことで。「男の影」の資料を同じくこちらの図書館で見たときも復帰第一作、と書かれていたので、2年の間に二回もダウンなのかよー!と、療養期間考えたらダウンしてなかったらこの間にあと二本くらい映画撮れてたのかもしれん、とか想像するととてももったいないです(。・ω・。) 

この映画は日本を旅行しながらホテルの従業員を集める、という喜劇(すごいざっくり)。ホテルの女将の高千穂ひずるさんと桑野みゆきさんの義理の親子と、南原宏治さんと輝雄さんの今で言う人材派遣会社みたいなところの社員の先輩後輩コンビが旅の先々で一緒になり・・・というお話。で、なかなかの強行スケジュールで日本平や伊勢志摩、大阪(あと中禅寺湖だったかなー、関東にも)とあちこちで撮影したようで、復帰第一作なのに容赦のないしんどい撮影だったようですw ただ、関西での撮影中に少し休暇が取れたようで、でもその休暇も宣伝のためなのか、建て替えた大阪のご実家に桑野みゆきさんを伴って帰って、「吉田輝雄」と表札の出てるお家の門の前で取材wすごい時代ですw 大阪の撮影では輝雄さんと桑野さんの人気ぶりに中村監督もご機嫌だった、なんて記事もありました😃あと、伊勢志摩で撮影してるときに取材にきた新聞記者さんのコラムみたいなのがあって、その記者さんと一緒に飲みに出かけたらお店にいた女性たち大騒ぎ。「触らせてー!」とか言われてたってあって笑いました( ̄∇ ̄)気持ちは分かりますw

 

 

「踊りたい夜」と「泣いて笑った花嫁」はスクラップブックの内容はあんまり覚えてなくてσ(^_^; ただ、こちら、どちらも倍賞千恵子さんと鰐淵晴子さんの共演作。で、お二人ともかわいいのですが、鰐淵さんのカワイさと言ったら(๑'ᴗ'๑)「泣いて笑った花嫁」では輝雄さん×倍賞千恵子さん×鰐淵晴子さんのスリーショットのスチル写真とかもあったんですけど、倍賞さんが霞むレベル。ほんとめっちゃ可愛かったです(๑'ᴗ'๑)

「渚を駆ける女」は主演の女優さんは"脱ぎっぷりがいい”みたいなことで注目された女優さん(「決着(おとしまえ)」では梅宮さんの相手役です)。共演は佐野周二さんとか高峰三枝子さんとか蒼々たるメンバー。撮影は小津監督作品でカメラマンをされていた厚田雄春さんとすごいメンバー。そして輝雄さんも船員姿でとてもかっこいいスチル写真も観られたんですが、映画そのものはそういう女優さんを使っているのでう~んという感じでσ(^_^;あと、第二の佐田啓二って期待されてたのにいまいち伸び悩むみたいな感じでインタビューされておりました(^◇^;)相変わらずかっこいいんだけどな~。松竹ももっときちんとした作品をふってくれませんかね(。・ω・。)

 

 

 

「恋と出世に強くなれ」(1963年公開)

 こちらは「おいおい!」と言いたくなるほうで印象に残っちゃった作品σ(^_^;この作品、渥美清さんの映画がクランクインする予定だったのに渥美さんが病気で倒れてしまって、急遽企画されて作られた映画で撮影期間は10日あまり。桑野みゆきさんとの共演ではあるのですが、松竹で今からスターに育てようとしてる俳優にそんなやっつけ作品やらせるのかよー(◎-◎;)と思いました。この年は「古都」の公開があったり、江利チエミさんからのご指名で共演作を撮っていた時期。もっと大事に使ってくださいよ~!と思っていたら、同じような指摘の記事が貼り付けてありましたw

と、今作についてはスチル写真が衝撃的でした!なんと吉田輝雄女装写真がw 輝雄さんと寺島達夫さんの共演で二人はベビー用品の社員という設定。粉ミルクを宣伝するCMを作るのに寺島さんが赤ちゃんの扮装、輝雄さんがママの扮装ということのようで、割烹着にオバチャンパーマで微笑む吉田輝雄が写っておりましたw (デカそうな感じは否めないですが、以外と似合っていましたw)

 

「彼女に向かって突進せよ」(1963年公開)

寺島達夫、松原縁郎(このときには光二に改名)の元新東宝組で4代目の松竹三羽烏を結成?しての作品。松原さんいれるなら高宮さんか文太さん入れれば良かったのに、と思いつつ。ヒロインの鰐淵晴子さんをめぐって輝雄さん、寺島さん、松原さんが頑張ります(この3人の誰かが結ばれるというのではないので、誰がハートを射止めるか!?とかそういう話でもないようですwタイトルと違ってるw)。またもや鰐淵さんめちゃかわ!

東宝組ということでスクラップ記事も新東宝の頃からの仲間みたいな感じのお話が多く、輝雄さんとか新東宝の頃も主役だったけどお給料全然違う!みたいな話もwまた、この作品の役はラジオのDJで、まだ大阪弁が抜けないのにこんな役!なんていうボヤキもありましたw(ゴールドアイでもちょいちょい関西なまりが出てましたね)

そして「女体渦巻島」観たときも思ったんですが、松原さんも結構な長身でそこそこ男前なので、新東宝はなぜ寺島さん、高宮さん、文太さんにプラス松原さんと俳優デビュー済みの4人でハンサムタワーズにしなかったんだろうな?と。まぁ、そうしなかったお陰でめっちゃハンサムなサラリーマンがハンサムタワーズになってくれたわけですけど(〃∇〃)

 

「恋人よ」(1964年公開)

今回もっとも自分的に「めっちゃ観たい!!」とヒットしたのがこちら(๑'ᴗ'๑)倍賞千恵子さんとの共演作。藤原審爾さんの「結婚までを」という小説が原作。倍賞さんは小さな出版会社に勤める女性で5人家族の実質的な大黒柱。輝雄さんは町工場の工員という、決して裕福ではない二人が色々乗り越えて結婚を決意するまでのお話。輝雄さんの松竹での役は大体「今年の恋」だとか「古都」みたいな“いいとこのボンボン”みたいな設定か、新東宝から引き継いでるアクションものの作品の役が多く、ここまで図書館で観た作品のスチル写真などはいづれも大学出の身なりのきちんとした青年とか、アウトローな雰囲気の役か。。。という感じ。ですが、今作は町工場の工員という役で、スクラップブックに最初に載っていた取材記事のビジュアルは角刈りに下駄。おそらく輝雄さんの役としてはかなりレアなタイプかと思います。その記事では当時工場の多かった川崎駅を通過する路線に乗って、工員の方たちの観察をしたりして役作りをされたようです。そして、「今まではどの役をやっても吉田輝雄だったので」みたいな反省(?)があって、これから演技も頑張ってくぞ、的なコメントが載っていましたw(それがまた余計に観たくさせるwでも、この翌年、映画出演が2本だけなんですよねぇ。。。何でなんだろ)

と、地味に気になったのが、この作品のPRで「倍賞さんと輝雄さん初コンビ!」みたいな文章が結構ありまして。「踊りたい夜」や「泣いて笑った花嫁」ですでに結ばれてる役を演じているんですが、なぜなのか!?という。倍賞さんは下町舞台の映画に当時よく出られていたようで、一方、輝雄さんはメロドラマかアクションものかということでお互い出る作品のジャンルが違ってて。。。みたいな感じで煽られておりました。 この映画がヒットしたら新しく二人のコンビで映画撮ろうかな、とかあったのかなぁ。

 

というわけで、オタク(もう絶対目的がバレてる気がするσ(^_^;)がキャッキャッしながら読んだ資料のあれこれについて、印象的だったことを書き残し。まだまだ見れてない作品の資料もあるし、「永遠の人」についての疑問や65年たけなんで出演作があんなに少ないのかとか(映画は2本とテレビの愛染かつらだけ)色々と気になることも分かるかな、というわけでまだまだ図書館通いが続きそうです(๑'ᴗ'๑)

木下恵介監督「永遠の人」

映画の結末よりも過程を描いてみたかったのかな、という昼ドラも真っ青な30年に及ぶ愛憎劇

 

木下惠介生誕100年「永遠の人」 [DVD]

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【映画についての備忘録その19】

木下恵介監督×高峰秀子主演「永遠の人」(1961年)

 

昭和7年上海事変たけなわの折。阿蘇の大地主小清水平左衛門の息子平兵衛(仲代達矢)と小作人の息子・隆(佐田啓二)、二人はともに戦争に行っていた。しかし、平兵衛は足に負傷、片足が不自由になって除隊となって帰ってくる。隆には同じく小作人の娘であるさだ子(高峰秀子)という恋人がいた。しかし、平兵衛もまたさだ子を好きで、二人が恋人同士であることを知りながらさだ子をなんとか自分の妻にしたいと考え、無理矢理にさだ子を犯す。そして結納の日取りも決められていくなか、隆が凱旋。隆は兄から事情を聞かされ、さだ子と村を出ようと決心したが、その当日、「幸せになってくれ」と置手紙を残し行方をくらました・・・。

 

と、今回のストーリー紹介はあえて映画の導入部分だけで。全部で30年に及ぶ物語のエピソード一つ一つがかなり濃い物語。音楽もとても印象的で、昭和7年の第一章から昭和36年の第五章までという構成なのですが、劇判としてフラメンコが使われていて、章の変わり目にはさらに歌詞がつきます。で、その歌詞の内容がその章のストーリーをまとめたもの。こんな映画は初めてみたのでこの仕掛けも面白かったです。

 

木下監督作品4作目。どれもカラーが全然違うんですが(◎-◎;)で、今作はそれらしい結末が用意はされているんですけど、それよりもその過程(ドロドロした愛憎劇)を映画でやってみたかったのかしらね、って感じでした。30年目の結末は、「こういう結論のほうが観客は納得するでしょ?」って興行的に考えた結論なんじゃないかと思ってしまうくらい(いや、もうただの印象なんですが)、30年目にいたる過程がすさまじい映画でした。「なんかすごい映画みたな~」が最初の感想でw

 

映画はこの昭和7年の出来事がきっかけで結婚することになったさだ子と平兵衛が子供を3人生み育てて家族という形をとりながら、決して平兵衛を許すことのないさだ子とそれ故にさだ子を憎む平兵衛の物語。憎しみあい続けることでいろいろな不幸が起きますが、決して離婚することはありません。さだ子は一緒に暮らしながら平兵衛を憎むことで手込めにされて無理矢理嫁にされたことの復讐をし続け、平兵衛を苦しめます。そして憎まれながらもやはりさだ子を愛し、子供達を愛している平兵衛は苦く腹立たしい気持ちをさだ子にぶつけながらも別れようとはしません。もう、これが壮絶。「そんなに嫌なら別れちゃえばいいのに!」って、普通のドラマなら思うところなんですけど、さだ子の情念みたいなものを感じさせる高峰秀子さんの演技がすごくて、一緒にいて復讐してやろうと思うわね、これ、っていう30年間なのです。んで仲代達矢さんの平兵衛の屈折ぶりも、この憎まれてるって分かってるのに別れない、というのが納得の30年なのであります。

 

30年の物語の中で、とくに印象的だったのが長男の栄一(田村正和)をめぐる話。栄一はさだ子が犯された晩に出来た子供でした。その後に弟と妹二人を設けて可愛がっていますが、さだ子は栄一にだけはどうしてもどこか冷たくあたります。平兵衛や実父に「子供に罪はない」と言われてもどうにも変わりません。そして、栄一は愛されていないことを感じ取っていて、さだ子に反抗的な子供に育ちます。そして高校生になった栄一は周囲から自分がどうして産まれたのかを聞かされ、自分などいないほうがいいのだと感じ、ノートに遺書を残して阿蘇山の火口に向かってひたすら歩いて自殺します。一瞬の身投げではなく、火口に向かって歩くのです。この長い間、火口に向かう恐怖とそれを押しのけてでも火口に向かわせるなにか。一人栄一は何を感じていたのだろうか、と。そして、その一方で、ここまで息子を追い詰めてしまうまで息子を愛せなかったさだ子の憎悪の深さが際立って恐怖みたいなものを感じました。

また、(自分はこんな目にあったことはありませんが(・・;))こんな事が我が身に起きたとき、「子供に罪はない」と全ての女性がそう思い切れるかと言えば決してそうではないだろうな、というのも直感的に感じられる部分であり、母性云々という単純なところにもっていかず、男性でありながらそこを映画にした木下監督の凄さも感じたシーンでありました。

 

さて、「映画の結末よりも過程を描いてみたかったにちがいない」と思ったのは、結末が30年の憎しみあいに対してなんだかあっさりしてる気がしたからです(高峰秀子さんと仲代達矢さんの演技合戦としての熱さはあるんですけど)。

隆が病気で死んでしまうというそのとき、さだ子がこれまでのことを許してくれと平兵衛に謝ります。それは隆に穏やかな気持ちで死んでいってほしからという気持ちから発しています(隆は「幸せになってくれ」と置き手紙を残して姿を消したのにさだ子の30年が憎しみだけだったからです)。そして、平兵衛にも隆に謝ってくれ、と。一旦は拒否する平兵衛もさだ子と二人で30年分の思いをぶつけ合って話した結果、隆に謝りに行くことにします。この二人の会話(言い合い?)はもちろん中身の濃いものなのですが、さだ子が謝っている動機が自身のこれまでの行いを反省して「悪かった」と謝りたいというよりも、隆のため、という感じで。30年のわだかまりには隆の存在が常にどこかにあったからなのに、隆がきっかけの動機で溶けちゃうの?ええ??となってしまったのでしたσ(^_^;この映画の30年間は、栄一の話だけではなく他のエピソードも「人って許せないものはいつまでたっても許せないし、理性で割り切れる聖人君子じゃないですよね」という部分の描き方が強烈であったため、結論のやや唐突な描き方との対比で“過程を描いてみたかったんだろう”なという印象になったのでありました。

 

さて、数ある木下作品の中で王道の「二十四の瞳」とかじゃなくて、「永遠の人」を観たのはなぜか、というと吉田輝雄の松竹移籍の最初の出演作品が「永遠の人」になる予定だったからです( ̄∇ ̄) 「映画秘宝」2017年4月号で下村健さんがインタビュアーをつとめて松竹~東映時代の話をされていて、そこでこの事を話されています(移籍の時の松竹が提示した条件のなかに移籍第一作は木下作品で、というのがあったのですが、実際には川頭義郎さんという木下監督のお弟子さんが監督をされた作品に出ています。インタビューによると体調を崩したか何か、事情があって出られなかった、と)。で、じゃあ、一体吉田輝雄がやる予定だった役はどんな役だったのかな!?という興味から発してこちらをチョイスした訳なのです。で観たけどどの役か分からねー!!でしたσ(^_^;登場人物の年齢的にあり得そうなのは平兵衛、隆、豊(隆の息子で、大人になってからはさだ子の娘と結婚して子供をもうけ、隆の死に際に子供を連れて帰郷します)の三人。松竹で演じておられた役柄からすると佐田啓二さんの演じた隆が一番それっぽいんですけど、木下監督の作品で沢山主演している佐田さんなので、その佐田さんの役が輝雄さんがやる予定だったけど佐田さんになったよ、なんてことがあるのかなー、とσ(^_^;仲代達矢さんの平兵衛は役柄的にあり得なさそうだし(演技力がかなり必要そうなのですσ(^_^;)、豊は石濱朗さんが演じていましたが台詞も出番も少なく、期待してる俳優を木下作品に出すのにわざわざこんな小さい役をふるかな?となり、結局、確信なしw今度、松竹大谷図書館に行った時にはぜひこの資料を借りてそのあたりを調べてみたいと思いますw

まー、どの役だったとしても、吉田輝雄にあいそうなのは「永遠の人」じゃなくて「今年の恋」だなー、と、これに出られなくて結果、「今年の恋」撮ってもらえて良かったなぁ、と思うのでありました( ̄∇ ̄)

 

【今年の恋についてはこちら】

kinakossu.hateblo.jp

 

木下恵介監督「カルメン故郷に帰る」

観終わったあとに受け止め方に悩んでしまった。

木下惠介生誕100年 「カルメン故郷に帰る」 [Blu-ray]

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【映画についての備忘録その18】

木下恵介監督×高峰秀子主演「カルメン故郷に帰る」(1951年)

 

軽井沢浅間山のふもとの村で育った娘・きんは東京に出て劇場で”芸術家”として踊り注目を浴びているという。秋には友達マヤを連れて故郷に錦を飾るべく帰郷したいと父親にあてて手紙を送る。その手紙の署名は「リリィ・カルメン」。父・正一はそんな名前の娘を持ったことはない、と怒り、きんの帰郷を許す気がない。姉のゆきは父を説得するにはどうしたらいいかと小学校の教師をしている夫・一郎に相談し、校長先生に説得してもらうことにした。校長は村から芸術家が育ったのだからと喜んで説得に応じる。

そうして故郷の村に帰ってきたきんとマヤ。大胆なスリットの入った派手な色のワンピースで村を歩く二人に村の男達は「なんだありゃ?」「パンパンだよ」と好奇の目を向ける。

かつてきんがあこがれていた教師の田口春雄は出征して戻ってきたが失明していた。戻ってきてからは妻が馬引きを仕事として生計を立て、借金をしてオルガンを買い、それで作曲をすることを楽しみとしていた。しかしそのオルガンも借金先の運送屋の丸十に借金の形にもっていかれてしまい、今は小学校へ息子に手を引かれてやってきて学校のオルガンを弾くのを楽しみとしていた。

小学校の運動会の日。その春雄が作曲した「故郷」を披露するなか、二人は大失態をおかしてしまい、春雄は怒って演奏をやめてしまう。

二人は運動会をめちゃくちゃにしてまった失態を取り返すため、東京で人気を博している自分たちの”芸術”を披露することを思いつき、丸十はそれを興行にすることに・・・。

 

U-nextの配信で観ました。自分にとっての木下監督三作品目は日本初のカラー映画という「カルメン故郷に帰る」です。こちらも古い邦画に興味を持つ前から名前くらいは知っていた!というほどの有名作品。どんなお話なんだろうと、あまり予備知識を入れないまま観ることにしました。

 

浅間山をのぞむ村の美しい風景がよくとらえられていて、カラー映画ってことをすごく意識して作られたのかな、と思います。映画は春雄が作曲したとして劇中で歌われる「故郷」をオープニングテーマとして始まります。美しい故郷を歌う歌に、浅間山の麓の村の風景。とても美しい映像なのですが、見終わったあとは考え込んでしまった映画でしたσ(^_^;

 

なぜかというと、見出しのとおりでこの映画をどう受け止めていいのか分からなかったからです。

きんと友達のマヤは本気で自分たちのことを「芸術家」だと信じています。父親への手紙には「劇場が改築のために閉鎖されるので、その間そちらへ戻ります」。そして戻ってきてからもマヤとは“芸術家としてどうなのか”みたいな会話をしながら自然豊かな村の中を散歩をしています。親に言えないことをしているとか恥ずかしいとかいうようなものではないと思っているのが分かります。ただ、映画を観ているほうは二人の派手な服装とお化粧、挨拶代わりに丸十に差し出したプロマイド写真の姿(お腹など肌を思いっきり露出している)、「パンパンだろう」という村の男、そういった姿を見ると芸術家としてのダンサーではなくて“ストリッパー”であるというのが分かります。

 

映画はずっと、この芸術家だと信じているきんと、そんなきんをかわいくも憐れだと思っている父親(子供の頃、牛に頭を蹴られたせいで頭が弱くなってしまったとかわいそうに思っている)、非難するようなことはしないけれどどこか面白がって見ているような村の人達という構図で進みます。田口すらもきんのことを妻に話すときには少しの嘲りを含むような話し方に見えます。姉や姉の夫の一郎、同じく学校の先生の小川先生、それから校長先生はそういったわだかまりみたいなものがなくきんに向き合っていますが(校長先生はストリッパーだと気づくと真剣に芸術を披露することを辞めさせようと考えます)、きんにとって特に思い入れをもって描かれている人物二人(父と田口)が実はストリッパーであるきんに対して正面きって向かい合わないまま。

一方できんとマヤは興行を終えて村を去る時まで「自分たちは芸術家である」という意識です。自らを「芸術家」と信じている(勘違いしている)きんとマヤは最後の最後まで真っ直ぐです。ストリッパーであるために好奇の目で見られているとかいう後ろめたい意識などは全然なさそう。

 

この主人公の明るさと主人公を取り巻く人達の思っていることのチグハグさが、その滑稽さを喜劇的に笑うために描いてるのか、それとも何かシニカルなものを込めて描いたのか。だとして、そこに込められた皮肉ってなんなんだろう?見終わった後のスッキリしない感じが残るのは恐らく後者だからなのでしようが、観てる方はシニカルだとか何だとか言うより、なんだかこのちぐはぐさが悲しくなってくるというか、辛い、いたたまれないような気持ちだけが残ってしまったのでした。きんとマヤの二人が終始あっけらかんとしているので、その対比が余計に”いたたまれなさ”をまして。

 

と、いうことで、『今年の恋』は「わー、幸せな気持ちになるステキな映画が観られた(๑'ᴗ'๑)」、『喜びも悲しみも幾年月』は「あー、色んなこと乗り越えてそしてかけがえのない夫婦、人生になっていくのだな」とどちらも明るい気持ちで終わった過去二作品と全く違った「カルメン故郷に帰る」。つぎに観ることになる木下作品はいったいどんな印象が残るのやら、ですσ(^_^;

石井輝男・武部弘道脚本/武部弘道監督「火線地帯」

少年と大人の間を行き来する、吉田輝雄×天知茂のバディムービー。

 

火線地帯 [DVD]

 

 【映画についての備忘録その17】

武部弘道監督×吉田輝雄主演「火線地帯」(1961年)

 

 幼馴染みの伸一(吉田輝雄)と健次(鳴門洋二)。健次は口がうまく、伸一は銃の腕と度胸は満点。二人で組んで地元の競馬場で土地のヤクザ・梶川組を騙って嘘の八百長レースをでっちあげ、競馬場の客から金を巻き上げていた。その様子を見た梶川組から追われて逃げる途中、騙し取った金で遊ぶ算段をしていたところを、競馬場でだました客の一人・黒い背広の男(天知茂)に見つけられて「弱い者イジメなんかしないでもっとでっけーとこで勝負するんだな!」と金を取り返されてしまう。それでも何とか梶川組からは逃げ切れたと思った二人は、健次の妹・幸子の勤める映画館で一息つくと再び街へ出る。しかし、またしても梶川組に追われ、駐めてあった無人の車に逃げ込んで後部座席に身を潜めた。それは梶川組と対立する重森商事のボス・重森(田崎潤)の情婦・ゆみ(三原葉子)の車だった。ゆみは車に戻ってきて二人が乗っていることに驚くが、ゆみに慌てて言い訳をする健次とそんなことはお構いなしで「ご機嫌な車だな。俺もこんな車もって思いっきりぶっ飛ばしてみたいや!」と上機嫌な伸一の様子を面白がり、二人をそのまま乗せて自分がダンサーを勤める重森のキャバレーへ連れて行った。

その日は、土地のヤクザたちが集まって大量の銃の取引が行われることになっていた。キャバレーで揉め事を起こしてしまう伸一と健次だったが、その時に見せた伸一の銃の腕を見込んで、重森は二人を重森商事に引き込む。二人の仕事は銃を競り落とした梶川組の車を人気のない通りで襲い、銃を横取りするというもの。そして、その銃の取引を仕切っていたのは、競馬場にいた黒い背広の男・黒岩だった。競り落とされた銃の値に不満だった黒岩も銃を取り返そうと梶川組の車を襲う気でいたが、先に重森商事が銃を奪い、それを見ていた黒岩は重森商事に強請りをかけるのだった。梶川は銃を横取りしたのが重森商事だと疑い重森商事に乗り込んでくるが、重森は伸一の仕業だと言い、伸一を捕まえて梶川に差しだそうと約束する。それを知ったゆみは罪を着せられた伸一を助けようと、ホテルを用意してそこに隠れるようにと伝える。一方、黒岩は伸一を気に入り二人で組んで銃を取り返し、金にしようと話をもちかけるのだった―。

 

1月にTSUTAYAディスカスでレンタルして観たあと、つい先日(もう中古しかないんですが)Amazonで購入しました(゜∀゜)久しぶりに観た記念に!?備忘録をつけてみたり。

 

東宝「地帯(ライン)シリーズ」最終作。ずっと「地帯シリーズ」の脚本と監督を務めていた石井輝男監督は今作は脚本のみで、石井監督のもとで助監督を務めていた(「女体渦巻島」などでも助監督してクレジットされています)武部弘道さんという方が監督。新東宝末期で監督作はこれが最初で最後の一本のようですが、きちんと楽しめる作品に仕上がっています。輝雄さんと三原葉子さんのシーンだけ突如としてメロドラマのようになっちゃう違和感とかはあるんですがσ(^_^;、街(たぶん川崎)や海辺の道路を駆け抜ける疾走感や、輝雄さんや天知さんをはじめ、田崎さんや重森の部下の中本を演じた成瀬昌彦さんなど俳優さん達の雰囲気の今っぽさとか、ストーリーのテンポの良さとか、いろんな要素が絡んで今観ても古さを感じない映画でした。

 

映画のなかで伸一をとりまく相手は、前半では幼馴染の健次と健次の妹・幸子。後半では裏の世界でも大きな仕事をこなす黒岩とヤクザの情婦・ゆみ。この人間関係の違いが映画のムードに変化をもたらします。前半は伸一と健次の組み合わせで少年っぽく、後半は伸一と黒岩の組み合わせで少年と大人が混ざり合うような、という前半と後半でムードが異なるバディムービーです(少年から大人になっていく、という意味では青春映画の様な感じもあり、DVDに収録されている当時の予告編では青春映画という感じの宣伝のされ方です)。

 

健次と連んでいる前半は伸一の少年っぽさが随所に見られ、少年が頑張って大人になろうとしている、そんな雰囲気で進みます。

健次と二人で競馬場から梶川組に追われる時は身を隠すような場所もない小道で平気で銃を撃ち、幸子の勤める映画館では小銭をジャラジャラしながらサイダーを飲み、幸子には子供の時のまま「伸ちゃん」と呼ばれています。乗り込んだゆみの車では目をキラキラさせて、「こんな車でぶっ飛ばしてみたい!」。無鉄砲さと無邪気さに溢れたシーンが続きます。それでも、藤森商事に入れといわれると簡単に返事はせず、「どうせたいした専属料なんてくれやしないさ」と突っぱねて、大人の顔を覗かせてみたりします。でも、それも頑張って大人びて見せているよう。

なかでも、梶川組から逃れて潜り込んだゆみの車でキャバレーへ向かう描写は印象的。海辺の道をゆみの運転で飛ばし、助手席に伸一、後部座席に健次が乗っています。伸一は健次にサイダーの瓶の蓋を歯でくいっと開けて渡してやり、健次は外を歩く女の子たちに車から声をかけます。伸一はといえば丸ごとのリンゴをゆみに渡して自分はサイダーを開けます。リンゴを一口かじるゆみとサイダーを一口飲む伸一。そしてそれを二人で交換しあいこ。三人ともたくさん笑ってとても楽しそう。伸一の少年っぽさがこのシーンに凝縮されています。その時流れてる音楽が軽快なジャズなのですが、なんだか日本版の「アメリカン・グラフィティ」の世界を観ているような気分で、スクリーンのこちら側も一緒に楽しくなります。(この少年っぽい吉田輝雄ってのがかわいらしく(๑'ᴗ'๑)、現在観られる映画の中ではとっても貴重で!そこも良かったりヾ(o´∀`o)ノ )

 

ですが、重森商事の仕事を手伝い、ゆみに匿われたあたりから大人の世界へとぐんと足を踏み入れていきます。

ゆみは無邪気で無鉄砲な伸一に惹かれ、伸一ならヤクザの情婦でキャバレーのダンサーという夜の世界で生きる自分を明るい場所へ連れ出してくれると感じ、伸一をかくまいながらも自分を今いる場所から救い出してくれることを期待します。黒岩は銃を売った金を元手に南米に渡って牧場主になって真っ当に生きることを考えていて、伸一にもケチな仕事は辞めて自分と組んで大金を手に入れて南米へ渡ろうと誘います。伸一は自分の居心地のよさそうな現在地から外に飛び出すことを躊躇わず、外の世界へ出たい女を助け、そしてまた、自分も広い世界へと出て行こうとします。

ゆみと二人の時は、彼女の身の上にあわせるように完全に大人の男の表情になります(でも、服だけずっとロカビリースタイルのジャンパー着てるんでなんかそこだけ子供っぽいんだけどw)。重森の情婦である自分を蔑むようなゆみに、「いずれ女は誰かのものになるさ」と気にしないそぶりで優しい言葉をかけ、なじるようなことは言いません。ヤクザの女だということなど関係ない、という風です。

黒岩と一緒の時は大人と少年の間を行き来します。黒岩は、銃を100丁売りさばきながらも、その金で「南米へ渡って牧場主になる」という素直な夢を抱く少年っぽさを残した男。それ故か、黒岩にあわせるように伸一の見せる表情も変化します。健次の時は「自分が引っ張ってやらないと」って関係が、黒岩相手だとできる大人の男との対等な関係という風になり、変に肩肘張ることもなく自然体。

ゆみが伸一を匿うために用意したホテルで、黒岩が話します。「俺だって趣味や道楽でこんな危ない仕事をしているわけじゃない。まとまった金を手にして真っ当に生きるんだ」。銃を重森から取り返す計画、そしてそれを売り捌いた金で南米へ行くこと。そして、伸一には俺と共同経営者になろう、お袋も安心するぞ、と。しかし、伸一は母親の居所を知りません。母親は若い男を作っていなくなり、父親はそれがきっかけで酒に溺れて死んだのだ、と。黒岩の思わぬ夢の話に楽しそうに耳を傾ける一方、自身の過去を憎しみと少しさめた表情で話す。少年っぽさと大人になっていく部分との両方が顔を出します(このホテルの部屋には幸子が来たと思ったらゆみが訪れたりで、女性二人との関係性の違いでも少年と大人を行ったり来たりします)。

このくだりは狭いホテルの部屋で酒を飲みながら話しているだけなのですが、伸一の思いもよらない過去、黒岩の大きな夢、それによりくるくると変わる二人の表情で、輝雄さんと天知さんという世代の違う新東宝のスター二人を組ませた魅力がギュッとつまっていて好きなシーンです(๑'ᴗ'๑)

 

天知さんの黒岩がまた良い味を出していて。黒岩は黒い背広に黒いパナマ帽という出で立ち。「銃と見せかけて実はライター」なんてものを持ち歩いていてお茶目です( ̄∇ ̄)100丁の銃を取り返して金にするためにあれやこれやと二人で動きますが、その過程で伸一が中本とした取引に「気が乗らね~な」と、あっさり手を引こうとしたり、そうかと思うとやっぱり伸一と一緒に行動したり。そんな飄々としたキャラクターがよく似合っています。天地さんは今のように古い邦画を見る前から名前は知っていた俳優さんですが(リアルタイムでは見た記憶がありません)、まだ映画は輝雄さん出演作でしか拝見したことはありません。で、「黄線地帯」も「女体渦巻島」も天知さんはニヒルな役なのですが、本作のような正反対のキャラクターもさすがの上手さ。

んで、この天知さんにあわせるように輝雄さんの表情にも硬さがなくて、自然と変化していきます。この作品よりもあとに撮った「真赤な恋の物語」のほうが演技は硬くみえます(ノ∇`)今作では天知茂という先輩俳優に引っ張られて、デビューしてまだ1年少々(「女体渦巻島」での初主演が1960年2月の公開、「火線地帯」が1961年5月の公開)の吉田輝雄が安心して演技をしているように見えて、映画を観ながらちょっとニコニコしてしまいます(๑'ᴗ'๑)(いや、だからって別に演技がすごくうまくなってる訳ではないんですけどw) この後すぐに新東宝がつぶれてしまって、天知さんと輝雄さんの共演作はこれが最後になってしまうのですが、もっといろんな作品で観てみたかったコンビでした。

 

さて、トップの画像はAmazonの商品ページから引用しているのですが、この写真の通り、本作の吉田輝雄はハンサム通り越してキレイの域です(はい、もう個人的な好みの問題ですw)。デビュー作「女体渦巻島」の時より確実に【全女性あこがれのハンサム】になっていますヾ(*´∀`*)ノ デビュー作では「されるがままに撮られている」感じでしたがwそこから何本も映画を撮って主演俳優としての自信がついて、それ故にハンサムさに磨きがかかってるのかしら、なんて考えたり(o´ω`o)惜しむらくは今作の服装がずっとロカビリースタイルのジャンパーでいまいちダサいということか(´・ω・`)

 

石井輝男監督じゃないため、恐らく他の「地帯シリーズ」よりも語られることの少なそうな「火線地帯」。「地帯シリーズ」の各作品で主演を勤めた俳優二人の共演がとても魅力的な、そんでもって最高にハンサムな吉田輝雄を楽しめる、秀作でした(๑'ᴗ'๑)

 

【この頬杖ついたシーンがめっちゃかわいくていい】

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